第6章 使用資産価値の 測定と管理 1.分析の構造 2.使用資産価値の測定 3.EVA対ROI 4.マネジャー評価のためのさらなる考察 5.組織体の経済的業績を評価する 6.要約 はじめに ここでは、投資センターの問題を扱う。その場 合の課題は、1)使用資産の価値の測定であ る。2)資産の主要なタイプの総和を投資ベー スと呼ぶ。3)投資ベースに利益を関連づける 2つの方法。4)その方法とは、ROI法。5) EVA法。6)マネジャーの評価でなく投資セン ターの評価の課題。 1 分析の構造 資産の価値測定の目的は 1)使用資産に関する意思決定をするに必要な情報を提供 することと、目標整合的な決定をするようにマネジャーを 動機づけることにある。 2)経済的単位としての事業単位(BU)の業績を測定するこ と。 BUの業績が優れているかどうかは、それに利用された 資産に対して、どれだけの利益が生み出されたかで判断 すべきであり、同じリスク状態では、 その投下された資産に対する利益で業績を測定するべ きである。 しかし、そのための方法には、実践的な課題がある。 ここではその課題というのを、ROIとEVAの2つの有力な 方法で考察する。 1)ROI:分数で使われ、分子に会計利益、分母に使用資産 の価値(額)をつかう。この使用資産の価値としては、固 定負債と資本あるいは、資産から流動負債を引いた分に なる。 2)EVA:比率でなく、絶対額で測定される。正味営業利益か ら資本費用を控除する。 資本費用の計算は、使用資産価値に資本コスト率(資本 費用率)を掛けたものである。 EVAは、日本では、ソニー、花王が最初に導入した。他に は、東芝、NEC,日立、松下、HOYA、オムロンなど代表的 な企業では、それぞれ自社流のEVAを導入している。 アメリカでは、78%の企業が、投資センターを導入し、そのう ち、36%が、EVAを導入している。30%程度。 2.使用資産価値の測定 2つの投資センターの評価における課題がある。 1)どのような方法が、BUのマネジャーに効率 的に資産利用をうながし、かつ資産獲得を促 すか。 2)どのような方法が、BUの業績を経済的単位 として最もうまく測定するか。 資産の種類 現金資産:現金資産は、BUでは、同等規模の事業会社より効率化され ているので、しばしば他社比較では効率的に見える。 受取債権:2つの考え方がある。1つは、売上原価ベースで債権資産を 計上するべき、もうひとつは、通常の売上ベースでそこから貸倒予想 分を控除した金額。しかし、後者については、債権の回収・与信に権 限ないBUでは、公式ベースで資産評価する。 在庫資産:期末残高で計上する。棚卸資産と買掛債務とは、運転資本 の裏表の関係なので差額を算定する必要がある。また、クレディト期 間の交渉権限の有では、含めるのが望ましい。 一般的な運転資本:資産と負債を相殺する方式とそうでない資産をグロ スで計算する方式の2つが極論として存在する。前者は、管理をBU に委ねていることを暗にしめす。後者は、管理については、 BUがも つときには、買掛金残高を資産・負債計算で入れるので、その管理 は、基本的に、BUにないことを示している。 固定資産・建物・設備:取得原価から減価償却を控除する方式が一般 的である。 課題は、会計計算によるEVAでも、資産の利益率を多めに計算する。 ROIでは、16%ということで、真の値より、5%も高い。 購入簿価の採用:簿価を利用する方が、過大な評価を回避できる。 資産処分:機械の取替えにおいて、資産価値の計算に過大評価の影響 が利益計算にでる可能性がある。 年金減価償却法:減価償却分に年金計算方式を導入することで、正しい 経済価値が計算できる。この方式では、後ほど、資産の経済価値 が下がるので、減価償却費用が増加する。これは、マネジャーは減 価償却というのは、物的ロスと機能減価の合計と考えているので、合 わない。しかも、税金の費用などを考えると、後で減価をますという のは、合理的な行動でない。 其の他の評価方式の課題:取替え価値やマネジャーの交換のおりに、 時価再評価などの方法もあるが、現実的でない。このことは、取得原 価からルールとしての減価償却費を控除する方法が一般的だという ことである。 リース資産:資産をリース化するとこで、EVAを上げることが できる。しかし、この資産の保有形態の決定は、本部でな されるので、方法の変更による評価への影響はすくない。 不働資産の問題:資産の機会価値があれば、例え利用して いない資産でも投資ベースに入れるべきである。 無形資産:無形資産への投資をどう評価するか、資産化か 費用化は、投資に影響する。 非流動負債:事業目的外の資産の評価 資本費用:企業は、流動資産に対する資本費用は、固定資 産に対するものよりも低く設定する。これは、流動資産の グロスを評価にいれる場合に、リスクの低い資本コストは、 その分下げておくという意図が反映されている。 実務のサーベイ(257ページ) 多くの実務のデータが示すのは、財務会計と一貫した 評価方法を資産について、管理会計でも利用してい ることである。固定資産については、正味簿価であ り、資産の取得原価から減価償却費を控除したもの で、年金法は、理論どおりに合理的とは、思われて いない。理由は、客観的でないことである。 3.EVA対ROI ROIの利点は、3つある。1)シンプル、2)包括的、3) 共通基準(ベンチマーク)。 EVAの利点は、4つある。1)事業部が異なっても、本 社と同じ投資行動をうながく。2)利益センターの投資と 本社の投資との行動がROIでは乖離する。3)資産 が同じであれば同じ投資行動をEVAはもたらす。4) 資本市場の変化に連動した方法がEVAである。 計画と管理のためのEVAの利用 戦略的方向性:IBM、花王、ソニー 買収:AT&T 業務活動の改善:ソニー 製品ラインの見直し:TDK 運転資本の節約:松下 事業資本コストへの注目:ダウケミカル、東芝、日立 報酬制度の方式として:花王、HOYA 4 マネジャー評価のための更なる考察 投資資産のどこまでを評価にいれるかは、投資行動 や管理行動に影響があるので 慎重にその正負を判断する必要がある。また、生産的 資産とマーケティング資産で比べると、後者がより、 評価が難しい。 また、マネジャーの管理可能性からみて、資産を投資 ベースに入れるか考慮する必要がある。しかしこれ も、棚卸資産の削減のみが、課題でなく、ストックア ウトを来たさないようにすることも大事である。 5 組織体の経済的業績を評価する 経済価値の計算は、 1)不定期に行なわれる、 2)会社の解散価値を明らかにする。このレ ポートは、将来価値の推定であるので、 3)会計ベースの計算価値とは、異なる。後者 は、事後評価である。 6.要約 1)投資センターでは、測定に関する全ての課題が 議論される。 2)BUの重要な目標は、株主価値の最大化である が、これは、月次・四半期では利用できないので、 ARR(会計利益率:当期の税引後純利益を純資 産簿価で割る。)が利用される。代わりに、EVAも ある。 3)年次利益目標を設定するときは、通常の損益項 目に加えて、管理可能運転資本や債券について、 資本コストが、チャージされるべきである。 4)投資センターの経済業績については、マネ ジャーの業績とは全くことなる意義がある。
© Copyright 2024 ExpyDoc