ファイル交換サービスと著作権問題 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター リサーチアソシエイト 福島 直央 講演の概要 P2Pに関する事件の今までの経緯 そもそも何が権利侵害なのか? ファイル交換サービスの訴訟のタイプ Napster型ファイル交換の訴訟 Gnutella型ファイル交換の訴訟 Winny関連の訴訟 これからについて……? 今までの経緯(1) 2000.07 Napsterサービス停止の仮処分 2001.02.12 Napster控訴審判決 中央管理タイプの違法化 2001.11.28 WinMXユーザー初逮捕 世界初のファイル交換の利用者逮捕 送信可能化権の侵害 2002.03.26 WinMXユーザーに罰金命令 2002.03.27 KaZaAオランダ控訴審判決 ピュアP2P型ファイル交換の初の合法判決 2002.04.09 ファイルローグ差止仮処分決定 今までの経緯(2) 2003.01.29 ファイルローグ事件東京地裁中間判決 中央管理型の日本初の違法判決 2003.04.25 Grokster / Morpheus 地裁判決 ピュアP2P型についてアメリカ初の合法判決 2003.06.26 RIAA個人を対象にした訴訟活動開始 サービスそのものを止められないため個人を標的 2003.09.08 RIAA個人を対象にした民事訴訟開始 2003.11.27 Winnyユーザー初逮捕 2003.12.19 ファイルローグ事件東京地裁判決 今までの経緯(3) 2003.12.19 KaZaAオランダ最高裁判決 オランダでピュアP2P型が合法確定 2004.05.10 Winny開発者逮捕 ピュアP2P型の開発者に責任が及ぶか? 2004.08.19 Grokster / Morpheus 控訴審判決 ピュアP2P型についてアメリカで再度合法判決 2004.09.01 Winny開発者訴訟開始 2004.11.30 Winny利用者京都地裁判決 公衆送信権侵害 2005.03.30 ファイルローグ事件高裁判決(予定) 権利侵害? 著作権法23条 1 著作者は、その著作物について、公衆送信 (自動公衆送信の場合にあつては、送信可能 化を含む。)を行う権利を専有する。 2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受 信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。 自動公衆送信行為・送信可能化行為が権 利侵害になる。 自動公衆送信と送信可能化 公衆からの求めに応じ自動的に行う送信 要はWebサイト等で一人一人の求めに応じてデータ の送信が行われるという行為全般が対象 自動公衆送信の前段階 著作物を公衆に利用可能にした段階 著作物が現実に送信されていなくても、アップロード 可能な状態になった時点で、権利の侵害となる。 権利侵害者は誰か? 自動公衆送信も、送信可能化も、行ってい るのはユーザー しかし、IPアドレスがわかっても個人情報をプロバイダ が開示してくれるわけではない。 膨大な人数を全て捕まえられるわけではない。 権利者は「サービス提供者を捕まえること ができないか?」と考えることになる ファイル交換ソフトのタイプ別訴訟 Napster型(Napster、ファイルローグetc…) ・中央サーバを持つタイプ ・諸外国・日本ともにサービス運営者が敗訴 Gnutella型(KaZaA、Morpheus、Winny etc…) ・中央サーバを持たないピュアP2Pタイプ ・アメリカ、オランダで合法判決 ・日本……? Napster型の訴訟(1) アメリカ(Napster) 寄与侵害責任: ・ 利用者の侵害行為を知りながら、他人の侵害行為 を引き起こし、生じさせ、または重大な関与を行う 行為 ・ 直接侵害のための「敷地と設備」を提供(重要な寄 与) 代位責任: ・ 侵害行為によって直接の経済的利益があること ・ 侵害行為の監督を行う権利及び能力があるのに、 取り締まりを行わないこと Napster型の訴訟(2) 日本(ファイルローグ) カラオケ法理(利用主体拡張法理) • 管理性と図利性があれば、場所を管理して いる人 間が侵害者として責任を負う。 • ex. クラブキャッツアイ事件(昭和63年3月15日) • この法理では、ユーザーではなく、管理者が著作 権を侵害しているものとして構成されている。 → 直接侵害 Napster型の訴訟(3) ファイルローグにおける管理性と図利性 管理性 利用者が本件サービスを利用して,電子ファイルを自動公衆送 信するには,被告サイトから本件クライアントソフトをダウンロー ドして,これを自己のパソコンにインストールすることが必要不可 欠である。etc… 図利性 将来,本件サービスを利用してMP3ファイルを受信した者から 受信の対価を徴収するシステムに変更することを予定しているこ とが認められる……より多くのMP3ファイルの送信可能化行為 をさせることは,本件サービスを将来有料化したときの顧客数の 増加につながり,被告エム・エム・オーの利益に資するものとい える。etc… Gnutella型の訴訟 アメリカ(Morpheus / Grokster) 寄与侵害責任: ・ 「実質的にあるいは商業的に重大な、侵害にあたら ない使用」が可能である。 ・ 直接侵害のための「敷地と設備」を提供していない 代位侵害責任: ・ 金銭的利益 → 広告等で有り ・ 監督義務・権利 → 管理の外にあるネットワークで あるため、無し。 Winny利用者判決 2004年11月30日 東京地裁 公衆送信権侵害 送信可能化権侵害 WinMX、Winnyなど、ファイル交換サービスで、 著作者の許諾を得ずに著作物をアップロード する行為は、著作権侵害である。 Winny開発者逮捕 著作権侵害の幇助容疑 具体的には公衆送信権侵害の幇助 正犯は2004年11月30日に有罪判決 「幇助」: 正犯に当たる行為以外の方法で正犯の犯罪実行を 促進し、あるいは容易にすること。 凶器の貸与などの物理的方法でも、助言などの精神 的方法でもよい。 By コンサイス法律学用語辞典 問題点 幇助にあたるのか? 幇助の故意 概括的故意 • 誰かがどれかをやるであろうという程度の認識 未必の故意 • ひょっとしたらやるかもしれないがそれでも構わな いという程度の認識 中立的行為による幇助 Winny訴訟の行方 わかりません…… P2Pのこれから? アメリカではInduce Actの論議 日本の著作権法改正問題で中立的道具に関し て合法化にするという提案もでている。 ていうか、ユーザが合法的な行為にのみつかっ ていれば問題ないんだけどね。 訴訟の対象にならないために? 著作権侵害を可能にしないこと ユーザーの個人情報を把握しておくこと? 本件サービスにおいては,利用者の戸籍上の名称や 住民票の住所等,本人確認のための情報の入力は 要求されておらず,被告エム・エム・オーが講じたこの ような措置は,著作権侵害行為を防止するために十 分な措置であるということは到底できず,この点の被 告らの主張は採用できない By ファイルローグ事件中間判決
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