音楽産業における音楽配信の重要性 早稲田大学 社会科学部 土門ゼミナール 概要 • 1章 音楽不況とその検証 • CD生産数の減少 CD以外音楽産業と音楽への関心 潜在需要の存在と問題点 2章 音楽配信の可能性 1節 楽曲数 2節 価格 3節 レコメンド・コミュニティ - • 「従来音楽コンテンツ産業」と「近未来音楽コンテンツ産業」比較図 3章 まとめ・考察 1章 音楽不況とその検証 はじめに 1. 近年の音楽産業の変化・不況 2. 「音楽配信」という新たな音楽取得手段 3. 音楽配信の将来性を見つめる CD生産数量の推移 CD生産数量(シングル・アルバム含む)は98年以降 減少傾向にある。 ⇒はたして、CD以外の音楽産業の動きは? 音楽配信 音楽配信サイト数 900 音楽配信サービスの利用 810 800 700 12.0 10.9 10.0 600 537 8.0 500 400 396 6.0 300 5.6 5.8 2002 2003 4.0 200 2.0 100 2.0 0.0 0 2002 2003 2004 2001 2004 P2P 2004年9月末時点におけるわが国のインターネット契約数は、約4.718.9万人(携帯電話・PHS 端末インターネット接続サービスの契約数は除く) 現在利用者 約4.718.9(万人)×0.027 = 約127.4万人 過去利用者 約4.718.9(万人)×0.063 = 約297.3万人 ※現在・過去合わせると420万人を超えるネットユーザーがP2Pを利用したことになる。 P2P ダウンロードしたことがあるファイルジャンル ⇒現在・過去利用者ともに「音楽関連」ファイルが最も多い。 携帯音楽配信 携帯音楽配信サービスサイト数 2,479 2,500 2,000 1,861 1,500 1,253 1,072 1,000 514 500 0 0 2002 2003 2004 着メロ 着うた 携帯音楽配信 音楽デバイスプレーヤー 音楽デバイスプレーヤー販売数量伸び率 200.0 180.0 160.0 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 177.3 月 20 04 /8 月 04 20 04 20 /7 月 114.1 /6 月 04 20 04 20 110.2 /5 月 114.3 /4 月 /3 04 20 20 04 /2 月 100.0 106.0 178.3 著作権使用料推移 音楽不況を叫ばれてはいるが、著作権使用料は微増している。 音楽コンテンツ流通別売上割合 CDセル 4,478億円 コンサート 9,931億 円 13 13% その他のセル 124億円 CDレンタル 600億円 CDセル 4,478億円 28 28% インターネット音楽配信 50億円 携帯電話着信メロディ 1,099億円 カラオケ 7,851億円 コンサート 9,931億円 その他のセル 124億 円 0.8 1% CDレンタル 600億円 3.7 4% カラオケ 7,851億円 48 47% インターネット音楽配 信 50億円 0.3 0% 合計1兆6,282億円 携帯電話着信メロ ディ 1,099億円 6.7 7% CD生産 音楽配信 P2P 携帯音楽配信 音楽デバイスプレーヤー 著作権使用料 の表では、 CD以外の音楽産業の需要は増加している。 だが 1.音楽産業の中でのCDの存在は重要 2.CD以外音楽産業需要はまだ小さい ⇒CDセールス減少が音楽産業全体におよぼす影響は大きい 一日あたりの音楽聴取時間 聴取時間(分) 一日あたり音楽聴取時間(学生・フリーター) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 年度 男子中学生 女子中学生 男子高校生 女子高校生 男子大学生 女子大学生 男性フリーター 女性フリーター 音楽を聴く時間の量に大きな変化はない。 ⇒一概に断定することはできないが、これは音楽その ものへの欲求・関心が減少していないと言えるので はないだろうか? 以上、すべてを相対・演繹的に考慮すると・・・ 現在の音楽コンテンツ産業は売上げ不振と呼ばれ る状況にはあるが、実際は音楽に対する欲求という ものは減少していないのではないか。 では、どうしてこのような状況が起きるのだろうか・・・? ⇒音楽産業がその消費者の潜在的需要に応えるよう なサービスを提供できていないと考えられる。 はたして、この潜在的需要を喚起し、消費者の需要を導くに はどうすればいいのか。 ⇒今後期待される新しい音楽取得サービス 「音楽配信」の可能性・影響力を考えていくとしよう。 2章 音楽配信の可能性 1節 楽曲数 ユーザーはCDショップで購入することができるCDよりも、さらに 多くの音楽を自由に聴いて楽しみたいと望んでいるはずである。 しかし ①市場に供給されるコンテンツは必然的に『売れ筋』に集中 ⇒廃盤の問題 ※ 邦盤;42,828タイトル / 洋盤;43,350タイトル 合計;86,378タイトル ⇒CDの廃盤数;約176,000タイトル(1985-2003年) ②しかし、これは「パレートの法則」に則って考 えれば、経済的合理性があると言える。 ※パレートの法則:全体の8割の数値は全体を 構成する2割の要素が生み出している。 ⇒日本のCDアルバムにこの法則を当てはめて考えると、全タ イトルの2割に相当する約1.2万タイトルが全売上の8割ま でも生み出していることが推測される。 ⇒市場に供給されCDショップなどで販売されるCDのタイトル数 が制限されるのは必然的なことである。 CD生産数からみたミリオンヒット比 16 11.8 13.3 14 12.1 11.6 10 7 20 04 年 20 03 年 20 02 年 20 01 年 20 00 年 19 99 年 19 98 年 19 97 年 4.1 19 96 年 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 19 95 年 % ミリオン数/CD生産数×100(%) 4.6 ③では、音楽配信ではどうなるか? →音楽配信は店舗・流通機構、そして在庫数を 低価格で無制限に拡大できる。 ⇒楽曲数に制限はない(技術・理論的には) iTunes Music Storeでは現在100万曲の品揃え→アルバ ム一枚に10曲の計算で10万枚分のアルバムに相当。 P2Pネットワークでは約2,500万曲の楽曲がシェアされている (米snocap社の調査) 「現在の売上げは少ないものの潜在需要のある商品群」 「極めて数少ない現状のベストセラー商品」 →この「失われた需要と供給」が『Long Tail』と呼ばれ るもの。 2節 価格 ユーザーはよりリーズナブルな価格で音楽を楽しみたい。 iTMSのサービス開始 →音楽配信利用者の爆発的増加 <要因>価格:99セント(日本では150円) ⇒他のサービスもiTMSに追随 99セントという価格水準がデファクトスタンダードに 価格設定の根拠 <米国レコード会社がネット配信事業者に楽曲提供する場合> 一般的に1曲あたり65~75セントの卸値 →アルバム全曲分を購入した場合にアルバムの卸売価格と同 等になるように設定(米Snocap社事業部長へのインタビュー記事) ⇒需給バランスを考えてではなく、供給要因からの設定 ⇒需給バランスをもとに料金設定をすれば、さらに価格 が下がる? ②P2Pとの競合 「P2Pで違法なファイルを訴追の危険を犯してダウンロードすること」 VS 「安全で合法&様々な付加価値のある環境でダウンロードすること」 ☆2005年3月に米国でダウンロードされた楽曲数のうち、有料ダウ ンロードによるものは、P2Pネットワークからの10分の1 ・ 有料サービスはまだP2Pに勝利しているとは言えない。 ・ “P2P利用⇒有料配信” にシフトするには ⇒価格競争だけでは無意味 ⇒P2Pにはない付加価値を提供する必要性 ③潜在的需要を喚起するような価格設定と付加価値 ⇒色々な料金モデル A.「従量課金制」 - iTMS B.「定額制」 - emusic C.「擬似的な定額制(レンタル)」 - Napster B.『定額制」 - emusicの例 会費(月額) ダウンロード可能な曲数 単価※ 9.99ドル 40曲まで 0.25ドル 14.99ドル 65曲まで 0.23ドル 19.99ドル 90曲まで 0.22ドル ※「単価」とは、ダウンロード可能な最大の曲数をダウンロードした場合の一曲あたりの単価のこと C.「擬似的な定額制(レンタル)」 - Napsterの例 プラン 会費(月額) 概要 無償ソフトフェアをダウンロードす Napster Light ―(会費無し) ることで、30秒間は無料で再生可 能。 Napster Napster to Go 9ドル95セント 14ドル95セン ト 1曲あたりの単価 99セント PC3台まで音楽ファイルを転送可 能。 99セント(ただし、ま PC3台分及びmp3プレイヤー3台ま とめ買いにより、最 で転送可能。また、最大50曲のプ 大50%の割引あり。 レイリストの一括転送も可 3節 レコメンド・コミュニティ iPod等を使って一人で音楽を楽しんでいるユーザーでさえ、 機会があれば自分が楽しんでいる音楽を推薦(レコメンド)し たり、推薦されたり、音楽を友人と共に楽しみたいと思ってい る。 インターネット上ではリアルなコミュニティでは限られ た人数、空間でしかありえない交流や情報の交換を、 そのような制限無くいともたやすくできることができ る。 ⇒不特定多数の互いに全く知らない人々、しかし自分 の好みと同じ人と情報を共有し、レコメンドし合うこと はCDの場合よりもさらに大きな楽しみになる。 「従来音楽コンテンツ産業」と「近未来音楽コンテンツ産業」比較 項目 従来の音楽コンテンツ産業 近未来のコンテンツ産業(インターネット音楽配信) ビジネスモデル パレートの法則(少数のメガヒットに依存) Long Tail(音楽需要の総体を事業化) 商品 パッケージ デジタルデータ カタログ数 限定的(在庫及び流通の制約) 原理的には無限 マイナーな音楽の位置づけ 発売されにくく、廃盤になりやすい メジャー/マイナーの区別にあまり意味はない 販売単位 基本はCDアルバム 基本は楽曲 価格 レコード会社が決定(再販売価格維持制度の対 象 配信事業者が決定 販売数量 供給サイドがある程度防御 需要次第 流行のサイクル 短い 流行に左右されない コミュニティ 限定的(ファンクラブ設立等) コミュニティ形成を最重要視 対象地域 基本的には自国内 技術的には国境は関係ない 一時的なデバイス CDプレーヤー PC等 二次的なデバイス ウォークマン・MDプレーヤー等 携帯音楽プレーヤー(iPod等)・携帯電 話 3章 まとめ・考察 「音楽配信」⇒多様な可能性を持つコンテンツの流通チャネル 「CD]⇒CDの利点に魅力を感じなくなってる? しかし 現段階で配信がCDに取って代わる、と考えるのは早急 ・価格 ・パッケージ ・利用法 ⇒商品としての性質が違う 配信とCDは競合相手というよりも共存関係 米国における音楽配信とCDセールスの関係 “音楽配信⇔CD” におけるシナジー効果の発生 Cf;タワーレコードのNapsterとの提携 音楽コンテンツは他の一般的な商品と違い、消費者 個々人の嗜好が商品の選択に大きな影響を与える。 商品の良し悪しが売上げに直結しない。 or 良し悪しそのものが判別できないとも言える。 ・文化の保護、育成 廃盤の無い配信 ・消費者の潜在需要満たす
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