プラスチック廃棄物処理の難しさ

プラスチックごみ処理の
難しさ
角 一典(北海道教育大学)
問題の所在
われわれの生活の中にプラスチックは溢れ
返っているだけでなく、日々の生活になくて
はならない存在になっている
⇔プラスチックが廃棄の段階に入った時に
さまざまな困難が生じている
→なぜ困難が生じるのか?
どのような困難が生じているのか?
われわれに何が要求されているか
について理解をする必要がある
プラスチックとは何か?
「高分子化合物からなる物質の中
で、主に石油(ナフサ)を原料と
して、成型品や薄膜にして使用
することを目的として人為的に
製造されたもの」
「基本物質(モノマーと呼ぶ)
が多数つながった重合体
(ポリマー) 」
cf.天然樹脂:天然ゴム
鉱物質:アスファルト
1835年に発見(塩化ビニル)、
1869年にセルロイドが商
業生産開始、近年では工
業用部品にも用途拡大
プラスチック普及の理由
・物理的・化学的に安定した素材
→耐水性・耐酸化・耐腐食etc.優れた性質
「軽くて丈夫」
→木材や金属にはない優れた性質を持つ
・安価な製造コスト
⇔原油価格高騰により安価な材料ではなくなる?
・成型・加工の容易さ
・性質の多様さ
→配合剤等によってその性質は多様性を発揮
ex.ポリスチレン:牛乳パックのコーティング・
発泡スチロール・発泡トレー・
PSP(ポリスチレンペーパー)
メリットの対極に ―プラスチック廃棄の難点―
・難分解性
→環境中に放出されれば半永久的に残存
→埋め立てには不適であり、土地利用にも制約
→熱分解(油化・ガス化)にも多大なエネルギー
が必要
⇒サーマルリサイクル(焼却)への偏向
・分別がきわめて困難
→多様な種類のプラスチックを分別するのは不可能
→同じ用途で使用されているものでも、材質が異
なることが珍しくない
ex.ラップ:ポリエチレンとポリ塩化ビニリデン
ボトルキャップ:ポリエチレン・ポリプロピレン
ボトル本体:PET・ポリ塩化ビニル
プラスチック廃棄の難点②
・配合剤の問題
→プラスチックの製品化では配合剤が不可欠
⇔配合剤に使用されている化学物質の種類、
添加されている配合剤の種類と量等のデータ
についてはほとんど公表されていない。
→処理段階における不確実性の増大
⇒出口の確保が不十分なままの大量生産
主要なプラスチック
熱可塑性樹脂
熱硬化性樹脂
ペットボトル・卵
ポリエチレン
パック・磁気テー
テレフタレー
プ・作業着・哺乳
ト
ビン
ABS(アクリ
自動車部品・パ
プリント配線基
ロニトリルブ
フェノール
ソコン外枠・旅行
盤・ソケット・電話
タジエンスチ
樹脂
用トランク・家具
機・鍋の取っ手
レン)樹脂
バケツ・洗面器・
高密度ポリ
コンテナ・玩具・
エチレン
ポリタンク
陳列棚の仕切り
PMMA(アク 板・眼鏡レンズ・
リル)樹脂 コンタクトレンズ・
水槽
上下水道管・壁
ポリ塩化ビ 紙・農業用フィル
ニール
ム・コード被覆・
波板
自動車のライト・
PC(ポリカー
食器・お盆・化粧
ディスク・携帯電 メラミン樹
ボネート)樹
合板・自動車用
話・ノートパソコ
脂
脂
塗料
ン
ポリ袋・高圧電線
被覆・ストレッチ
フィルム・ラップ
PA(ポリアミ 衣類・自動車部
浴槽・小型船舶・
不飽和ポ
ド)樹脂(ナ 品・釣り糸・レトル
ユニットバス・浄
リエステル
イロン)
ト食品の袋
化槽
コンテナ・パレッ
ポリプロピレ ト・ハンガー・家
ン
電製品外枠・PP
バンド
充填材・緩衝材・
AS(アクリロ 調味料容器・使
ポリウレタ マットレス・断熱
ニトリルスチ い捨てライター・
ン
材・繊維(ジャー
レン)樹脂
扇風機の羽
ジなど)
発泡スチロール・
トレー・シュリンク
ポリスチレン
ラベル・食器・文
具
ポリテトラフ 調理器具表面塗
ルオロエチ
装・チューブ・
エポキシ
レン(テフロ ホース・粘着テー
樹脂
ン)
プ
低密度ポリ
エチレン
機械部品・ボタ
ユリア樹 ン・玩具・化粧品
脂
容器・合板接着
剤
接着剤・塗料・電
子回路基盤・IC
パッケージ封入
材
主要プラスチックに使用されている配合剤
滑
剤
・
離
型
剤
熱
硬
化
性
樹
脂
熱
可
塑
性
樹
脂
可
塑
剤
安
定
剤
酸
化
防
止
剤
紫
外
線
吸
収
剤
発
泡
剤
帯
電
防
止
剤
難
燃
剤
着
色
剤
架
橋
剤
・
硬
化
剤
充
填
剤
フェノール樹脂
◎
○
○
◎
◎
ユリア樹脂
○
○
◎
◎
◎
メラミン樹脂
◎
◎
◎
◎
ウレタンフォーム
◎
○
○
◎
○
○
○
○
ポリエチレン
○
◎
◎
○
○
○
◎
ポリスチレン
◎
○
◎
○
○
○
◎
ポリプロピレン
○
◎
◎
○
○
○
◎
塩化ビニル
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
◎
○
○
◎
プラスチックの生産量と排出量の推移
プラスチック生産量の推移
主要プラスチック別
プラスチック製品・廃棄物・再資源化フロー
(2007年)
廃プラスチック利用の実態
利用の主流はサーマルリサイクル
⇒熱源として利用=ごみ発電・ボイラーetc.
⇔化石燃料由来ゆえに無条件には容認できない?
⇔持続可能なリサイクルとはいえない
プラスチック廃棄の特徴
・約半数(500万トン弱)が「容器包装」
⇒家庭系では7割が容器包装
・特定の種類に偏る
⇒ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・
ポリ塩化ビニルで8割を占める
⇔生産量と廃棄量は種類によって差がある
→ポリエチレン・ポリスチレンはほぼ同量
=容器包装としての利用が多いため
プラスチックリサイクルの実態①
・サーマルリサイクル中心
⇒可燃物として焼却されている分も存在
・国外輸出の割合が高いマテリアルリサイクル
→経済成長著しい中国への輸出
→国内で処理するよりも経済的に優位
⇔廃棄物といえども、資源である以上安易に輸出
で処理すべきではないという意見もある
・特に高い回収コスト
→重量ベースの比較では他の資源物に比べて突出
してコスト高
プラスチックリサイクルの実態②
・生産加工ロスの割合が高いマテリアルリサイク
ル
→単一種類のプラスチックであるためリサイクルが
相対的に容易
⇔使用済みプラスチックの場合は混ざる可能性が
高いためにマテリアル・ケミカルリサイクルは困難
⇔製品として出荷されたプラスチックには複合材が
多い
ex.ラミネート製品(菓子袋)・紙との複合材(紙パック)
⇔流通段階での異物の付着
ex.シール・油脂・食品残渣
プラスチックリサイクルの実態③
・PETの割合が相対的に高い
⇒容器包装リサイクル法(以下容リ法)の影響
→PETボトルは他のプラスチックとは別に回収
することが義務付けられているため
→PETボトルは分別しやすい
⇔PETボトルの再生利用については問題もあり
ex.不十分な容器洗浄・別素材の混入
・相対的に進展が遅れている「その他プラ容器」
→ダイオキシン対策によって高度化した焼却施設
→プラスチックを焼却することが前提?
容器包装リサイクル法
1995.6.16 容器包装に係る分別収集及び再商品化の
促進等に関する法律(容リ法)制定
→2003.6.18までに6度の改正
1997年 容リ法一部施行(びん・缶・PETボトルなど)
2000年 完全施行(紙製容器包装・プラ製容器包装)
2006年6月 改正容器包装リサイクル法成立
12月 改正容器包装リサイクル法一部施行
(罰則強化、基本方針改正など)
2007年4月 改正容器包装リサイクル法施行
(容器包装廃棄物の排出抑制(リデュース)など)
2008年4月 改正容器包装リサイクル法完全施行
(事業者から市町村に資金を拠出する仕組など)
容リ法制定の背景
容積比(2006年度)
一般廃棄物の6割(容積比)が容器包装
⇒プラスチックは4割を占めている
→廃棄物の減量(減容)には容器包装対策が
効果的
容器包装リサイクル法のしくみ
ドイツのデュアルシステムをモデルにしている
⇔事業者の負担が軽いとの批判
⇒最もコストのかかる回収は主に市町村(税)負担
指定法人と契約した市町村数
2000
1500
1000
500
0
PETボトル(契約)
PETボトル(実績)
プラスチック(契約)
プラスチック(実績)
2005年度 2006年度 2007年度
1503
1352
1084
980
1084
1082
958
957
1084
1082
989
988
2008年度 2009年度
1138
1137
1019
1017
1212
1034
2006年3月末:1821自治体,2009年3月末:1800自治体
⇒契約自治体数の減少=別ルートでの処理増加
→システムの維持の点では大きな問題
⇒特に、処理能力の「過剰」問題
容器包装リサイクルの実績
(PET・プラ容器)
PETボトル(単位:トン)
2005年度
分別収集計画量
再商品化可能量
再商品化義務総量
協会の引取契約量
協会の引取実績量
再商品化製品販売量
229000
311000
229000
191314
191726
147698
2006年度
243000
315000
243000
176843
169917
143032
2007年度
285000
396000
285000
144078
140416
106445
2008年度
300000
400000
300000
141048
140013
111847
2009年度
303000
370000
303000
161982
153732
121500
プラスチック製容器包装(単位:トン)
2005年度
分別収集計画量
再商品化可能量
再商品化義務総量
協会の引取契約量
協会の引取実績量
再商品化製品販売量
629000
655000
578680
469150
446912
309537
2006年度
757000
776000
704010
576333
528528
365924
2007年度
724000
742000
687800
593682
548839
380434
2008年度
807000
762000
739140
630466
581340
381163
2009年度
804000
1271000
771840
669102
604486
374590
日本の廃棄物行政における根本問題
・リサイクル中心のシステム設計
⇔発生抑制の観点が弱い
→サーマルリサイクル中心の廃プラリサイクル
・規制の緩い法制度
→発生抑制の意識が働かない制度形成
→企業の負担が軽い?システム
→国内におけるサイクルを保障していない
→コスト重視の観点からは制度への参加インセン
ティヴが働きにくい
日本におけるリサイクルの問題点
・真面目にやるだけコストがかかる
ex.2002年度の旭川市における1トンあたりのごみ処理費用を比較すると、直
接埋立7332円、単純焼却16400円、ビン・カン等のリサイクル32152円、
ペットボトル104789円
⇔最終処分場の延命という利点もあるが・・・
・高度な能力を持った焼却施設の多さ
→リサイクルに努力するよりも焼却した方がコスト
がかからない
⇒ダイオキシン対策の結果、24時間操業が常態化
→大量の焼却ごみを必要とする処理システム
「リスク社会」の到来
リスク社会:
「近代が発展するにつれ富の社会的生産と平行して危険が社会的に生産
されるようになる。貧困社会においては富の分配問題とそれをめぐる
争いが存在した。危険社会ではこれに加えて次のような問題とそれを
めぐる争いが発生する。つまり科学技術が危険を造り出してしまうとい
う危険の生産の問題、そのような危険に該当するのは何かという危険
の定義の問題、そしてこの危険がどのように分配されているかという危
険の分配の問題である」 (Beck) 。
⇒意思決定に必然的にともなうリスクをどのようにし
て管理していくか?
→人はリスクを背負わずに行為できない
⇔現代は、リスクが理解しにくくかつ「決定的」に
なりえる社会
「工業社会の途上でこれまで産出されてきた脅威が限界に到達してしまっ
た」(Beck);ex.原発・遺伝子組み換え技術
リスクコミュニケーション
リスク社会における問題
リスクの増殖・知覚不能性・不確実性・不可避性・
循環性・リスク定義の科学依存性・知る権利の喪失
「過剰な」リスク認識の問題?
ex.ダイオキシン騒動・環境ホルモンなど
⇒「健全な」リスクコミュニケーションの必要性:
=リスクとどう付き合うか?
⇔リスクの閾値を決定するのは科学ではない
⇒「社会」がリスクの許容範囲を決定する
⇒リスク(定義・分配etc.)をめぐる政治の展開
リスクをめぐる政治
リスクをめぐる政治は新しくて旧いテーマ
→言説のみの主張は権力(や大衆)に軽んじられる
⇒「もっともらしさ(=より多くの人を納得させる
合理的主張)」をいかにして構築するか?
⇒「市民調査」による独自のデータの蓄積が重要
ex.沼津三島コンビナート阻止運動の例
「市民調査は、職業的研究者による研究の簡易版ではなく、独自の特徴と
意義をもったものである。職業的研究者の調査研究が、厳密な方法論
の上に立って行われ、学会やディシプリンへの貢献を目指すのに対し、
市民による調査は、さまざまな手法を、市民の視線で組み直すことに
よって、具体的な問題発見と解決、そして、より広い実践的な説得力、
を目指す」 (宮内,2003) 。
⇒「調べた人しか詳しくならない。聞いただけでは忘
れてしまうし地域の問題解決の当事者になりえな
い」(吉本)
(例)発ガンリスクの試算
有害大気汚染物質に起因する年間ガン発生推定数
米 日本
米 日本
米 日本
砒素
68 14 1.2ジクロロエタン 70 エチレンオキシド
6ヘキサクロロブタジエン
カドミウム
10
7 二臭化エチレン 68 9ニッケル
7 ジクロロメタン
5 83 ヒドラジン
6不完全燃焼生成物 438-1120 六価クロム 147-225 21 テトラクロロエチレン
6コークス炉排出物
アスベスト
88 塩化ビニル
25 7ベンゼン
181 133 塩化ビニリデン 10
9 ガソリン蒸発物 124 四塩化炭素
41 42 p-ジクロロベンゼン 16 放射性核種
3クロロホルム 115 1未満 ダイオキシン 2-125
3
ラドン
2ホルムアルデヒド 124
53 ベンゾビレン その他
15 402-2302
ディーゼル車排ガス トリクロロエチレン
7 1未満 アクリロニトリル 13 ジクロロエチレン 45 出典:中西(1995:140)
1.3ブタジエン 256 -
日本の環境は、人体への影響という観点からは、高
度経済成長期よりも改善されているし、アメリカと
の比較においても良好
⇔特定の物質に対するリスク意識が過剰に強い
母乳中ダイオキシンの年次推移
環境ホルモンをめぐる議論
環境ホルモン=内分泌系撹乱物質
⇒化学物質がホルモンと同様の働きをすることに
よって、生体および環境に影響を及ぼす恐れ
→特に、性ホルモンと類似の構造を持つ化学物
質(ビスフェノールAなど)が取り上げられる
⇔ビスフェノールAは天然の女性ホルモンに比べ
2万分の1のホルモン活性しかない
cf.大豆イソフラボンの方がホルモン活性が高い
⇒科学的根拠が薄弱なままにマスメディアによる報
道が過熱し、一般大衆をパニックに陥れた側面は
否めない
中西のリスク論
『安全領域がない危険性とわれわれはどう付
き合うか』
「私のリスク論は環境保護派の市民運動側から猛反発を食らうと心配して
くれている友人たちがいる。市民運動をしばしば絶対安全を要求してき
たからである。・・・もちろん、少し時間はかかるかもしれない。・・・誰か
に治めてもらうのではなく、自分たちで管理するという考え方になれば、
リスクをゼロにするという考え方では対処できず、リスクとどう付き合う
かという考え方に移行せざるを得ないからである。」(中西,1995:6)
⇒政策効果の高い方策を優先すべき
→政策効果を計る基準を、経済原則から『どうし
ても避けたい環境影響』へと転換する必要性
⇔マクロな視点としては正当性を持ちえるが・・・
杉並病問題①
不燃物を圧縮して積み替えるための施設(中継所)を
都内各地に建設:杉並は1996年4月から本格稼動
⇔周辺地域において健康被害の訴えが続出
⇒「化学物質過敏症」の疑い
→因果関係の特定ができず解決に至らず
→1997年5月、住民18人が公調委に調停申請
⇒2002年6月、公調委が、14人について原因不
明のまま因果関係を認める裁定
→2003年3月、杉並区が10年間で中継所廃止の
意向表明
杉並病問題②
杉並病問題の推定される原因
→容器が圧縮によって破損し中身が漏出
ex.殺虫剤スプレー・家庭向け農薬
→廃棄物同士のこすれによるモノマー等の発生
ex.塩ビモノマー・スチレンモノマー
→圧縮によって発生する熱による化学反応
1997年1月17日に、東京都清掃局が行った調査で、
揮発性有機化合物130種・半揮発性有機化合物
44種・金属17種が検出
⇒日によって異なる化学物質が発生
⇒ごみの内容によっている
⇒焼却を行っているわけではない施設
プラスチックごみ焼却によって発生する恐れのある有毒ガス
塩化ビニル
塩化水素・一酸化炭素・ホルムアルデヒド・ダイオキシン
ポリ塩化ビニリデン 塩化水素・一酸化炭素・ホルムアルデヒド・ダイオキシン
ポリメタクリレート
一酸化炭素・ホルムアルデヒド
フェノール樹脂
フェノール・ホルムアルデヒド
ユリア樹脂
アンモニア・一酸化炭素・ホルムアルデヒド・シアン化水素
ポリスチレン
一酸化炭素・ホルムアルデヒド・ベンゼン・スチレン
ポリウレタン
窒素酸化物
メラミン樹脂 アンモニア・一酸化炭素・ホルムアルデヒド・シアン化水素
出典:宮島/神谷(1998:207)
圧縮以上に危険をともなう焼却
→すべてのプラスチックが危険とはいえないかもしれ
ないが、安易に焼却処理するのはかなりの危険をと
もなう
⇒焼却炉内でどのような化学反応が起こるかは、
完全には予測不可能
杉並病問題が問いかけるもの
・原因の特定が困難な環境問題
→操業停止以外、対処の仕様がないともいえる状況
⇒技術にも限界は存在する
・基準値は一つの目安に過ぎない
→基準値が守られていても被害が出る可能性
⇒マクロの視座からこぼれ落ちてしまう被害
・依然として被害補償に偏る救済
⇒補償=「状況には変化なし」:根本解決ではない
→住民が求めた差し止めはできず
選択の可能性
①現状のリスクを許容
②可能な限りリスク縮減(リスクゼロを目指す)
③優先度等を鑑みつつリスクと『付き合う』
→③が今日のトレンドとなりつつある?
⇒リスクがどの程度のものかを「測定」する必要
→リスクのレベルに関する認識も重要
人体への影響?環境・生態系への影響?
市民と科学者のリスク認識の相違
科学者のリスク認識の根拠=定量的
⇒データに基づいたリスク認識
≒事故・死亡・発ガン等の確率
ex.原発<飛行機<自動車、食品添加物・農薬<喫煙
⇔必ずしも市民の納得を獲得できるものではない
⇒科学も不確実性をゼロにすることはできない
ex.原発がメルトダウンした際の被害
遺伝子組み換え作物の環境に対する影響
定量的にリスクを認識するのは一つの方法にしか過
ぎない
定量化の限界
「私が強調したいことは、私がこの後ずっと使うであろうリスクの数値の不
確かさである。やや自虐的に言えば、いい加減さである。このいい加減
さを知らずに、リスク論をふり回してはいけない。」(中西,1995:94)
⇒確率論を用いれば、ある程度の予測は可能
⇔解析に使うデータの信頼性の問題
⇔解析方法の問題:予測モデルは多数存在
→使用するモデルによってリスクは1000倍異な
る場合もある
まとめ①
・単純な方法・技術の方がリスク小
→技術開発による問題解決は新たなリスクを
生む可能性
⇒技術に頼れば、市民との距離が拡大
・安易に焼却に頼るべきではない
→焼却は、廃棄物の衛生的処理および減量・減容
の観点からは優れた方法
⇔予測不能な化学反応炉と化している焼却施設
まとめ②
・プラスチックでなくてもよいものは多数存在
ex.カップめん容器(紙)・飲料容器(ビン)
⇔エネルギー効率の観点からはリターナブル容器
よりもワンウェイ容器の方が優れている可能性
・そもそもごみになるものを作らないことが重要
⇒廃棄物問題のすべての原点はここにある
参考文献
・Beck,U., 1986, Risikogesellschaft Auf dem Weg in eine andere Moderne, Shurkamp.
(=東廉/伊藤美登里訳,1998,『危険社会 新しい近代への道』法政大学出版局)
・石渡正佳,2004,『リサイクルアンダーワールド 産廃Gメンが告発!黒い循環ビジネス』
WAVE出版.
・プラスチックごみ最適処理技術研究会編,1996a,『改訂版 プラスチックごみの減量化とリ
サイクル』日報.
・プラスチックごみ最適処理技術研究会編,1996b,『増補改訂版 プラスチックゴミの処理処
分』日報.
・北海道教育大学旭川校社会学研究室編,2004,『ごみ問題を考えるⅡ プラスチック廃棄
物処理の現状と課題』.
・原口弥生,2003,「リスク社会における『杉並病』問題」『地域社会学会年報』15:205-223.
・森住明弘,2000,『実学 民際学のすすめ』コモンズ.
・宮内泰介,2003,「市民調査という可能性 調査の方法と主体を組み直す」『社会学評論』
212:566-578.
・吉本哲郎,2006,「町や村の元気をつくる『地元学』 地域と人の持っている力を引き出す」
『Civil Engineering Consultant』233:36-39.
・吉本哲郎,2008,『地元学をはじめよう』岩波ジュニア新書.
・中西準子,1995,『環境リスク論 技術論からみた政策提言』岩波書店.
・宮島英紀/神谷一博,1998,『あなたの隣にある「杉並病」 化学物質過敏症があなたを襲
う』二期出版.
・川名英之/伊藤茂孝,2002,『杉並病公害』緑風出版.
・西川洋三,2003,『環境ホルモン 人身を「撹乱」した物質』日本評論社.
・橋本直樹,2006,『日本人の食育 賢く安心して食べるために』技報堂出版.
・坂田裕輔,2005,『ごみの環境経済学』晃洋書房.
参照HP
・日本容器包装リサイクル協会:http://www.jcpra.or.jp/
・プラスチック処理促進協会:http://www.pwmi.or.jp/home.htm
・「3R 容器包装リサイクル法」(環境省HP):http://www.env.go.jp/recycle/yoki/index.html
・塩ビ工業・環境協会HP:http://www.vec.gr.jp/lib/lib2_4.html
・プラスチック図書館HP:http://www.pwmi.jp/tosyokan.html
・都市環境サービス株式会社HP:http://www.eco-toshikan.com/
・環境ナビゲーター『第4回 ダイオキシン』(環境goo):
http://eco.goo.ne.jp/business/csr/navi/010718_02.html
・「ダイオキシン問題について」(塩ビ工業・環境協会/塩化ビニル環境対策協議会):
http://www.ikovec.or.kr/download.asp?file=dioxin(VEC).pdf
・株式会社環境総合研究所HP:http://eritokyo.jp/
・「廃プラ焼却による周辺大気の汚染」(池田こみち:環境総合研究所HP)
http://eritokyo.jp/haipura_taiki080923.pdf
・「プラスチック、ほんとうに燃やして大丈夫?!①②」 (池田こみち:環境総合研究所HP)
http://eritokyo.jp/shouhisha080918-1.pdf,http://eritokyo.jp/shouhisha080918-2.pdf