医療概論 終末期における「臨床的真実」

共同討議Ⅱ:生・死とケアの哲学
終末期における「臨床的真実」
<決まり>と<思いやり>の根源
日本哲学会、千葉大、2007.5.19
森下直貴(浜松医大)
論文の趣旨
• 「臨床的真実」の成立条件
患者、家族、医療者の間の「合意」
後悔の気持を少しでも減らすこと
• 「ケースバイケース/あうんの呼吸」から、
「ガイドライン/ケアの心」への流れ
• 社会規範の生成という観点
安らぎ、根底的第三者性、相対的第三者性
• 合意の成立の三条件
終末期の定義、安らぎ=目標、第三者性保証
反省と展開
• 「ケアの哲学」:否定的、欠落
<広義の安らぎ>との関連づけ
• 社会規範の生成論理:未熟、強引
 <常識>の観点
• 哲学者の仕事・役割:後ろ向き
<常識>の再設定
• 「第三者性」:未展開
新たな<パブリック(世間)>の形成
基本スタンス(限界)
• 「合意」形成の条件の解明
合意のお膳立て・方向定位
合意の具体的決定は当事者の仕事
• 病態・処置をめぐる哲学論議はあえてしない
人工呼吸器、栄養補給、セデーション、、、
不開始・取り外し、行為・不行為、意図、、、
三条件、具体的なコンテキスト・プロセスの中で
• 哲学者の仕事<パブリック(世間)>への寄与
実例・意見・論点整理によるイメージ喚起
「普通の人々」にとっての参考・ヒント
<常識>の再設定、世間の構造転換、世論の成熟
終末期に関するガイドライン
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1987年以来、四度目の検討会
2007年4月、終末期に関して初めて
関係者の「合意」という目標
第三者性の導入、ケースバイケース
「最低限のルール」としての受け止め
日本社会における医療の「常識」
合意の合意?
• 患者本人、家族、医療者の間
一つの<最小限社会>という見方
• 三つの円の重なりというイメージ
完全な重なりからたんなる接触まで
重なるパターンの相違
• 「ガイドライン」で想定される「合意」
いくつかの徴候三者の一致?
実際の合意が困難あるべき理想?
困難な「合意」(1)
• 20世紀後半の科学技術環境
• バイオエシックスの誕生
消費者主権、対等性の要求
モダンな関係倫理
バイオエシックスの表面的な受容
健康志向の強まり
医療費抑制、効率・安全管理
困難な「合意」(2)
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一般国民の姿勢
医療者、とくに医師の姿勢
患者自身の姿勢
家族の姿勢
知識の格差・相互理解の溝
医療現場の混乱、終末期医療の混迷
三つの円の離反(合意困難)
最小限合意
• 現実の直視から、他者性を潜り抜けて
• 三つの円の最小限の重なり
共有目標と独自目標(ズレの余地)
• <最大限合意>から<最小限合意>へ
最善の実現最悪の回避、バランス
• <最小限合意>の基盤
暗黙の共通了解=常識
常識の三水準
• 第一水準:平穏・平凡な暮らし(安らぎ)
常識全体の基底、健康観、「大衆」
• 第二水準:時代の社会通念(世間・世論)
欲望・技術・知識・財・権力等をめぐる慣習
性愛観、男女観、親子観、秩序観
絶えざる衝突・変容の繰り返し、世代間のズレ
• 第三水準:文化の高度・精華(済まなさ)
人生観・死生観・幸福観、宗教性、「教養」
常識の再設定
• 常識全体臨床的真実=合意
• 第二水準の大変動
バイオエシックス
バイオテクノロジー、デジタルメディア
グローバル化、ポストモダン
• 第三水準の平準化・無効化
• 第一水準からの再設定
社会規範の生成の観点
合意の第一条件
• 終末期の定義(合意の前提)
• 「不治」と「末期」と「最終期」
「無益性」判断の背後「自然治癒力」
医療の営みの本質、医学哲学
• 概念上の区別知の不確実性
• 実践的含意現状への歯止め、一貫した対応
• 実際の病態や処置の多様さ・複雑さ
イメージ喚起困難、「意向」の不明瞭さ
合意の第二条件:
• 広義の「安らぎ」
狭義の「安らぎ」=誰かが側に=居場所
• 広義の安らぎへの関与としての「ケア」
機能的な親密圏
在宅主義・家族主義から社会的ネットワークへ
道具性への徹底を通じて共同性へ
臨床状態の背後へのまなざし、改善の工夫
スピリチュアルケア
済まなさ(宗教性の基盤)、「無の意識」
合意の第三条件
• 第三者性の実効的保証
相互的な評価・評判の機能
相対的距離 三人目 一般的視点
• 国家への依存や業界の発想から脱却
• 組織倫理の視点、内外の評価の交流
• 新たな<パブリック>の形成
終末期、親密圏、死生観をめぐる意見・実例の集積
個々人と従来型パブリックとを媒介、イメージ・参考
ブログ・ネット情報環境の活用、世間話の拡大