これからの社会福祉士に求めら れる視点=地域主義 小林正弥(2010) 『友愛革命は可能か 公共哲学から 考える』平凡社新書より 身近なところで起こっていること • 「空き家」「猫屋敷」の増加 • 深刻な高齢化と「まちの不活性化」 • 子どもの貧困や人間関係的貧困 • 競争主義や成果主義から撤退を強いられる 社会福祉士の専門性 • 倫理綱領に指針化・具体化 • 専門職として自らの限界を知ること ≒適任性の理解、アイデンティティの確立 • 日本型ソーシャルワーカー=社会福祉士は、 社会システムとして、どのような方向性の中 で、必要とされているのか 1つの答えとして「地域主義」 • 「今、ここで起きていること」へ着目 =ローカルに、地元で • 実践のチェック =倫理綱領やグローバルスタンダードで * 地域主義をソーシャルワークの思想に 小林の見解を 拠り所に • 友愛とは • 兄弟の間の情愛 • 友人に対する親愛 の情。 「友愛」が求められる背景 • 伝統的な公共の領域は衰弱し、人々からお 互いの絆が失われ、公共心も薄く弱くなった。 • 公とは、かっての町内会活動や今のNPO活 動のような相互扶助的な活動も含めて、「新 しい公共」ととらえられるようになった。 国家 VS 市民 • フランス革命における「友愛」 – 自由 – 平等 – 友愛(博愛) • 鳩山由紀夫首相の所信表明演説 リベラリズムの「正義」 と 人間関係の「ケア」 • ケアの倫理は、友愛の倫理、さらには愛の理 念と密接不可分である。 • ケアとは、愛の実践の表れとすら言える。 • 友愛の理念=福祉における精神性の重視。 福祉はただ、物質的な福祉だけではなく、 内的な問題、幸福の問題とも関連し、 双方を考慮する。 相愛扶助 ・ 公共 ・ 共同 1、我等は互いに親睦し、一致協力して相愛扶助の目 的を貫徹せんことを期す。 2、我等は公共の理想に従い、識見の開発、徳性の涵 養、技術の進歩をはららんことを期す。 3、我等は共同の力に依り、着実なる方法を以て、我 等の地位の改善をはからんことを期す。 1921年、友愛会(鈴木文治)の綱領 賀川豊彦の「友愛」運動 1、我等農民は知識を養い技術を磨き特性を涵養し、 農村生活を享楽し農村文化の完成を期す 2、我等相愛扶助の力に依り相信じ相依り農村生活の 向上を期す。 3、我等農民は穏健、着実、合理合法なる方法を以て 共同の理想に到達せんことを期す 「友愛公共運動」の特徴:日本農民組合綱領 友愛コミュニタリアニズム • コミュニタリアニズムは「善」をはじめとする倫理性や 共同性を重視する思想 • コミュニタリアニズムでは、コミュニティごとに善や美 徳などの考え方が違うということを想定して、コミュ ニティの文脈を重視するので、普遍的な倫理や規範 を成立させることができないと批判される。 • 友愛という観念は、さまざまなコミュニティで広く共有 されているから、友愛は普遍的な理念である グローカル公共哲学 • 友愛コミュニタリアニズムは、地球的ないし「グロー カル」(グローバルかつローカル)な公共哲学のもと で、グローバル・ナショナル・ローカルというような多 層的なコミュニティを想定し、人間は多層的なアイデ ンティティーをもつべきであると考える。 • 日本語で「共同体」というと、「同」という言葉が含ま れているので、同質性を強調・強制する閉鎖的で抑 圧的な前近代的な共同体を連想しやすい。 →「同」を「和」に。「共和体」 君子は和して同ぜず • 論語(子路篇)「君子は和して同ぜず」 =理想として、同質性の強制を伴わない 調和を目指すべきであるという。 • 「小人は同じて和せず」であり、本当の調和なしに同 質性を受け入れるのは好ましくないとされている。 • 同質性を強制せずに異質性・多様性を尊重 する調和としての「和」を「公共的和」と呼ぶ。 友愛と福祉政策 • 「福祉の基礎づけをどのように考えるのか」 =政治哲学や公共哲学の大きな課題。 まだ決定的な考え方はない。 • 「友愛」⇒「連帯」 =「連帯による福祉」という根拠付けが今も。 • リベラリズム優位の現在、ロールズの「正義」が福祉 政策を正当化している。 • が、友愛コミュニタリアニズムの観点から、 「友愛による福祉」という考え方のほうが自然!? 福祉の原点 • 同胞である他者を助けようという「愛」であり、 「友愛」である。 • 友愛は、家族や地域コミュニティやNPO・ NGOなどを支える理念でもある。 • 福祉は、国内福祉に限定されるものではなく、 地球的観点から考えるべき。 – 世界の貧困問題は実に深刻であり、飢餓で子ど もたちが死んでいる。 市民性の教育 • 世界で拡大している多文化状況に対する対応として、 多文化主義的な教育を行うこと。 – 少数派の文化に対する尊重の気持ち • コミュニタリアニズムにおける多文化主義を、教育に 反映するものであり、「地球的友愛」の教育 • その際、それぞれの文化の独自性の尊重と、民族 や文化を越えて、すべての人が地球人として、同胞 であることを教える。 公共民教育 • 人々が自主的に政治に参加して自治を行うこ とができるようにする教育 • 共和主義的教育の中心的目的 • 愛や友愛の理念は、およそあらゆる宗教・倫 理やコミュニティにおいて普遍的に存在する から、これは特定の価値観ではなく、万人に 適用できる普遍的なものである グローバル・シンキング、 ローカル・アクト • 考える視点や射程、チェックする尺度 =グローバル・シンキング • 文化・生活に根ざす問題への対応、効果測定 =ローカル・アクト
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