書評 生活保護VSワーキングプア ~若者に広がる貧困~ 大山典宏

書評
生活保護VSワーキングプア
~若者に広がる貧困~
大山典宏 PHP新書
06A2019Y 猪瀬皓平
この本を選んだ理由

不況の影響でますます貧困者が増えることが
予想されるが、貧困者を救済するセーフィー
ネットである生活保護制度について関心を
持ったから。

生活保護を受ける人の数が増えているという
報道をよく目にするから。
若者に広がる貧困
1999年の労働者派遣法の改正
→不安定な状況におかれる若者たち。これを機
に増加するうつ病者、自殺者数、自己破産者
数、DV、離婚、母子家庭。

若者を取り巻く環境は明らかに厳しくなってい
るのにも関わらず、「自己責任」で片付けられ
てしまう。
→本当に悪いのは若者なのか?

生活保護制度

憲法第25条に規定された、「すべて国民は、
健康で文化的な最低限度の生活を営む権利
を有する」と定められている通り、最低限度の
生活を営む事ができない人に、その限度まで
給付を行うこと。
生活保護の仕組み
生活保護は、それぞれの自治体が管理して
いる。給付金もその自治体から支出される。
→生活保護の給付金、給付世帯数などは、予
算を組む時点では予測しかできず、予算を組
む事が難しい。
 社会保障の予算額が実際は不確定である
→自治体によってはその予算内に生活保護費
を抑えようとする動きがあるという確かに過去
には心無い判断により、申請を拒否される
ケースもあったことも事実。

生活保護を不正に受給する人々を見抜くために自
然と厳しい判断を下す事となったり、実際の現場で
の申請方法は、年収要件よりも生活保護や他の制
度などを説明したり、よりより方法を提供するために、
申請にきた方の情報を知り、それに応じた解決手段
を検討する事のほうが重視されている。
→厚生労働省の定めた生活保護申請時の対応として
認められている。なぜなら、財政というのは無限で
はないし、むやみに生活保護をばら撒くことは思わ
しくない。働ける体があるのなら働いてもらうことが
鉄則である。あらゆる手段を講じた上で、それでも
生活が厳しく、どうにもならないと言う場合に申請を
認可する。
→しかし、二重基準であるという批判もある。

問題点
若者の生活保護者数は20年前の半分近くに
減っている。
→これは年齢が若いから仕事が見つけやすい
という理由で生活保護申請が通りにくいとい
うことを示している。
→将来への大きな損失につながる可能性があ
る。

新しい動き
現状のままでは近い将来制度の破綻を招く可能性
がある。
→制度の運用の変革の必要性
ex さいたま市
 「守り」から「攻め」へ
①情報アクセス権の保証
②利用者の権利擁護システムの構築
③利用者の自立支援システムの構築
④支援者ネットワークの形成

まとめ

増え続ける若者の貧困層をこのまま放置す
ることは、確実に日本の将来に損失を与える。
生活保障制度の姿勢を変え、多くの人を積極
的に支援し、そして自立を促す必要がある。
感想

著者が元ケースワーカーということもあり、最
後まで中立的な視点から生活保護制度につ
いて述べている点がよかった。

現状に一番の犠牲を払っているのは若者で
あり、このままではいつか日本に大きな損失
が出ると考えられる。