第151号 - 日本健康太極拳協会 東京都支部

2017 年 3 月第 151 号
発行人
トピックス
茶木
登茂一
中野教室新年会は盛り沢山な祝賀会に
さる2月2日(木)夜に本部道場中野教室の新年会が『金陵』を貸切って開催されました。当日
は真下元支部長、土田副支部長、同稚子夫人など教室OBも多数参加して、竹植弘次先生、中野完
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二先生の「健康大賞」受賞、中野完二先生の傘寿のお祝い、また、会員の長寿のお祝い、皆勤賞の
お祝いなど、が相次ぎ、にぎやかな新年会となりました。
小生も「雲の手通信150号達成」ということで、とくに出席
させていただいた妻とともに皆さんから祝福され、立派な花束を
贈られ、また中野先生からは名前折り込みの詩の贈呈を受けまし
た。また、中野先生の傘寿を祝う短歌の色紙を私からお贈りしま
した。【写真右】
(詩、短歌とも第 150 号にてご紹介済みです。)
東大島鶴の会で研修会開催
東大島鶴の会(指導;茶木登茂一)では、さ
る 2 月 10 日(金)の練習日を利用して、
「ビデ
オ映像で検証する太極拳の多様性」と題する研
修会を、37 名が参加して開催しました。すでに
他教室で一部実施したのと同じ内容で、さまざ
まな太極拳の映像を比較することで、楊名時建康太極拳の特徴をより深く理解していただきました。
閑人閑話
ただごと
拡大する貧富の格差は只事ではない
昨年の米国大統領選の過程で、アメリカの中での貧富の格差の問題が大きく注目されました。民
主党の左派のサンダース候補が泡沫といわれながら、若年層の根強い支持で、最後までクリントン
候補を苦しめたことも意外でしたし、トランプ候補が白人労働者層の支持によって、思いもかけぬ
逆転勝利を得たことはそれ以上の驚きでした。
かっては“アメリカンドリーム”といわれ、誰にでも成功のチャンスがある社会とか言われてい
ましたが、現実には、ここ 20~30 年の間に、ごく一部の成功者と、多数の貧困層を生むようにな
ってしまったわけです。これはことアメリカに限
らず、世界中で、特に先進国で起きている普遍的
な現象のようです。
先日も新聞やテレビでこんな衝撃的な数字が
報道されました。それは世界の富豪のトップ 8 人
の総資産が 48 兆円であり、これは世界の下層か
ら数えた 36 億人の総資産に等しいというもので
した。
ちなみにトップは「マイクロソフト」の創業者
ビルゲイツ氏の 8.5 兆円とありました。
日本でも資産格差は驚くべきスピードで拡大しているようです。昨年 11 月に日経新聞が報道し
た記事から編集したブログによると、上の表のとおり、日本の富裕層上位 40 人の総資産は、2012
年から倍増しているのに、一方では、貯金ゼロ世帯が 427 万世帯も増えているのです。その総世帯
数 1788.6 万世帯(全世帯数の 35.5%)も驚くべき数字です。
別の数値(下表)もあります。それは単身家庭と二人以上家庭に分けての「貯金ゼロ家庭」比率
です。若い人が、車を買わなくなったとか、パスポートの取得率が落ちたとか、当然ですね。
貯金ゼロ家庭の比率の推移
2007 年
2012 年
2016 年
単身家庭
29.9%
33.8% 48.1%
二人以上家庭
20,6%
26.0% 30.9%
また、こんなデータもあります。いわゆる外貨取引ですが、世界中で毎日平均 10 億ドルの取引
があるのですが、このうち 9 割は、貿易決済ではない、いわゆる投機取引とされています。金融工
学の進歩で、コンマ何秒単位での超高速取引が行われているそうですが、ともあれ「利」を求めて、
想像を絶する巨額のマネーが日々秒速で飛び交い、増殖を続けているということです。
一方では、企業はどんどんグローバル化して、その反動で先進国の国家財政は窮乏化しつつあり
ます。何か恐ろしいような事態が猛烈な速度で世界中で進行しているようですが???
遊印遊語
「大吉祥」印のご紹介
今回は、中野完二先生のお使いになっている印をお借りしての「遊印遊語」
です。これは、先月の第150号記念号で、先生が小生に贈ってくれた詩の画
像に押印されていた印ですが、編集上の都合で縮尺していました。右の印影が
原寸です。
先生によると、むかし、西安の玄奘三蔵ゆかりの大雁塔の近くのお店で手に入れたものだそうで
す。ご覧のように、古い金文体で彫られている風雅な印で、日ごろ先生が愛用されておられるもの
です。
側款に「大吉祥」と彫ってある通り、その 3 文字が彫られているのですが、ちょっと読みにくい
と思うので、篆刻を趣味とする者として、以下解説させていただきます。
印影の右側は上下に「大」と「吉」とあり、これはすぐ読めます。問題
は左側の絵文字みたいな字ですが、これは「羊」という字の金文体【右の画
像の右側】です。羊を正面から見た姿です。ちなみに甲骨文体ですと、左側
の形です。いずれも、もっとも古い字体です。
ところで、私の「中国歴史文化なんでも勉強会」でもお話ししていますが、まったく言葉の通じ
ない、南の海洋民族と、北あるいは西の遊牧民族とが黄河下流域で出会い、黄河文明が生まれまし
たが、その時、必要に迫られて、
“絵文字・象形文字である漢字”が生まれたということなのです。
その当初から、
「羊」と「貝」の字はありました。たいへん重要な文字だからです。
「貝」は海洋
民族のお宝でした。夏、殷、周、春秋時代にかけて通貨として用いられていたのが「子安貝」です。
一方遊牧民族のお宝、財産は「羊」です。
ですから、
「貝」もそうですが、
「羊」からは多くの文字がさらに作られています。たとえば、
「美」
は“羊と大”ですし、
「幸」は“大と羊”です。
「羌(きょう)」は “羊と人”の組み合わせですが、
これは羊を飼っているチベット系の遊牧民族に対する蔑称として古代中国で用いられていた文字
です。ちなみに「養」は“羊と食”です。
「祥」は“示す偏に羊”ですが、
「示」は「神に生贄を供える台」の象形ですから、まさに神に
羊をささげることが「祥」
、つまり「めでたい」という意味です。
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この印の場合、
「祥」をあえて「羊」そのものにしていますが、これは篆刻の世界ではよくある
ことで、偏と旁の左右を入れ替えたり、あるいは上下に配置したり、することもあります。この場
合は偏を省略したということですが、神に生贄として供えるまでもなく、「羊」は、そもそも人間
にとって、美味しい、大切な“瑞祥”そのものですから、示す偏は無くともじゅうぶん分りますし、
また、造形的にもうまく出来ていると思います。
以上、お借りした素晴らしい『大吉祥』印について、“羊頭狗肉”にならぬよう、ちょっと、う
んちくを傾けさせていただきました。
左顧右眄
第18話 『肥大化する欲望の正体を探る その8』
第13章.欲望の商品化
一番気になることは、本来はヒトの生命力の発露であるはずの「欲望」が、現代社会、いいかえ
ればグローバル化した自由競争社会、あるいは大消費社会、極端な商業主義時代にあっては、さら
に“肥大化させられている”
、
“商品化されている”という現実です。無理やりに、あるいは上手に、
“欲望を強いられ続けている”と言い換えることが出来ます。二つの例をあげてみます。
1.テレビは公器か?
いま、たまたまスイッチを入れたテレビは、民放局の昼ドラ番組でしたが、ちょっとCMの長さ
などを測ってみましたら、【ドラマ本体放映…7分
CM放映…3分】の繰り返しパターンで55
分の番組が放映されていました。各3分のCMはそれぞれ9本!の違うCMが15秒~20秒ぐら
いずつ連続して流れました。内容を順番に書きますと、①スマホ②化粧品③学習塾④化粧品⑤日本
郵便⑥薬品⑦遊園地⑧マガジン⑨食品でした。2回目以降もほぼ同じような内容でした。ドラマの
本体はぶつ切り、CMは次から次にめまぐるしく変わり、理性も感性もどうにかなりそうでした。
ほかのチャンネルで、同じく昼ドラに廻して見ましたら、こちらは25分ほどドラマが流れ、そ
のあと3~4分の長いCMと言うパターンでした。このCMは単一商品を有名女優やら落語家など
が執拗にPRする内容で、例のごとく、最後に“一か月分○千円分を抽選で○万人様に無料で! 今
すぐお電話を!”と絶叫していました。
CMを長く入れないと採算が取れないということのようですが、本体の内容が劣化したり、短縮
されているのですから、ますます視聴者離れを起こして、悪循環に陥っているとの指摘もあります。
また、より直截な “買い物番組”も多いようです。私自身はそういう番組はまったく観ません
が、TVは今や公器と言えるのでしょうか?とつねづね疑問に思っています。
2. 成長しないと失速する経済
テレビに限らず、社会には広告が蔓延しています。新聞、雑誌、街頭、交通機関、チラシ、ある
いは、様々な勧誘電話、インターネット、ますます、多様化し、また量も膨大です。あらゆる分野
において、消費者にいかに良い商品を、良いサービスをと、お互いがしのぎを削り、知恵を絞って、
競争しているわけです。こうした戦略や行為を『マーケティング』と呼んでいます。
その定義は、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効
果的に得られるようにする」ことだそうです。しかし現実には、それをはるかに超えています。消
費者の欲望をさらに肥大化させたり、あるいは新たに創出したり、刺激し続けることに腐心せざる
を得ないのです。
これは倫理的にあれこれ非難されるべきものではありません。商業主義とは元来そういうものだ
からです。競争に負けるわけにはゆかないからです。成長を続けないと失速してしまう懸念がある
からです。どこまでも欲望を拡大させることが、経済成長の原動力ということなのです。
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蛇足ですが、るるお話ししたように、人間の欲望の根源は“食欲と性欲”ですから、いわゆる広
告に性、性的魅力を取り上げる、利用する、ことは古今東西の常道です。効果が絶大だから使うと
いうことです。
3.まとめ
煩悩をすべて捨て去ることは、お釈迦様の言うようには、とてもできません。煩悩とは生命エネ
ルギーであるからです。しかし、せめて自分なりにコントロールしたいのですが、そうはさせてく
れないのが今の時代ということでしょう。
いま買わないと損するとか、これを飲まないと危ないとか、いつまでも若くとか、繰り返し繰り
返し、消費者は洗脳され、一方的な情報を刷り込まれているようなものです。煽てられたり、脅さ
れたり、せかされたり、せわしないことこの上ありません。言い方をかえれば、常に受け身で、売
れているものに飛びつく、流行を追いかける、といった風潮になりがちです。
私流に言葉を整理すれば“優しく脅迫されて静かに洗脳されている毎日”なのだということを、
じゅうぶんに認識することが、まず大切なのではと思います。
そして、
『足るを知れば辱められず』
(第44章)
、また『足るを知る者は富む』
(第33章)とい
う老子の言葉もあります。ときには、立ち止まって見ることも必要なのではないでしょうか。
8回にわたって連載しました、
『肥大化する欲望の正体を探る』はこれで終わります。
【参考にした書籍】
書籍名
著者
出版社または叢書名
書籍名
著者
出版社または叢書名
内臓が生み出す心
西原克成
NHKブックス
心臓は語る
南淵明宏
PHP新書
腸は考える
藤田恒夫
岩波新書
脳の話
時実利彦
岩波新書
内臓感覚
福士審
NHKブックス
悲鳴を上げる身体
鷲田清一
PHP新書
脳死とは何か
竹内一夫
ブルーバックス
脳死・臓器移植の本当の話
私は臓器を提供しない
見知らぬ心臓
近藤誠ほか
洋泉社
シャルロット・ヴァランドレイ
体のしくみ・はたらきがわかる事典
記憶する心臓
小松美彦
PHP新書
クレア・シルビア (飛田野裕子訳) 角川書店
(鳥取絹子訳)マガジンハウス
森亨監修
西東社
東洋医学の基礎講座
佐藤弘・吉川信
成美堂出版
ニュートン誌「細胞」
(2009.2)
ニュートンプレス社
卵が私になるまで
栁澤桂子
新潮社
病気にならない生き方
サンマーク出版
ブッダのことば
中村元訳
岩波文庫
自由訳・老子
新井
朝日文庫
小説・死者の鼓動
山田宗樹
新谷弘実
老子入門
楠山春樹
講談社学術文庫
小説・闇の子供たち
梁石日
幻冬舎文庫
満
幻冬舎文庫
など。ほかにHP,ブログなど多数を参考にしました。
NHK短歌大会、今年も「秀作」止まり
1 月 21 日に開催された 28 年度全国短歌大会に、例年通り、応募しておきましたが、結果は以下
の 2 首が「入選」し、そのうち1首が「秀作」に選ばれました。大会に出場できる「特選」まで、
もう一歩でしたが、また、来年の挑戦となります。
作りかけの短歌保存しパソコンの熱で熟れるをゆっくりと待つ
早朝の太極拳舞う人群れにキジバト高く秋を告げゐる
入選・秀作
入選
近作2首
五十年来の飲み友達を送りました。
通夜のあとまた独り酌む
半世紀酒友でありし君を想いて
稀勢の里の横綱昇進を祝い、期待する短歌。名前を折り込みました。
気を強く
世評に負けず
のびのびと
さらなる心技
とわに鍛えよ
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