CaseStudy-4 かどやホテル 客室のリノベーションによって高稼働率と客単価アップを実現したホテルがあ る。東京・新宿のかどやホテルでは、ホテルの客室で使用する建材としては大 変珍しい本漆喰を使ってリニューアルを実施した。その狙いと効果とは。 ※関連カラー 9 ページ 日本の文化を客室で感じてほしい 東京都新宿区で 45 年にわたって営 業を続ける「かどやホテル」。客室規模 は 94 室、飲食施設 2 カ所、会議室 1 室を付帯する独立系ホテルだ。JR 新 宿駅西口の商業地区の一角に位置し交 通アクセスの利便性もよく、ビジネスか ら観光需要、近年ではインバウンドな ど幅広く集客を果たしている。 そのかどやホテルが昨年 12 月、新た な試みとして“蔵”をイメージした客室リ ニューアルを実施して話題を集めている。 その新客室「蔵シリーズ」の特徴は、 客室の天井、壁は職人によるに本漆喰 の手塗りで仕上げられていること。濃 茶の家具を配したり、傷よけを兼ねた 壁のアクセントに使っている木 材には 100 年以上前の木材を使用しあえて塗 装をせずに自然な風合いを生かすなど 和の情緒を表現している点だ。 「蔵シリー ズ」開発の経緯について同ホテル宿泊 部の今仲孝夫課長は次のように語る。 「ツインタイプの客室 3 室が経年劣化 し、バスルームの入れ替えを伴う大規 模なリノベーションを計画していました。 当初に改装した客室と同様に珪藻土を 使って快適な睡眠環境を整えようと考 えていましたが、インバウンド需要の増 加などもあり、日本文化を伝えられる 客室を作れないかということになったの です。そこで浮上したのが、日本古来 の建材である本漆喰を使った客室だっ たのです。漆喰には、調湿性能や、防 火効果、殺菌効果などもありますから ホテルの客室に適した素材だと考えま した」 天井には、パナソニックのナノイー発 生器を埋め込み、さらに快適な空間作 りにもこだわった。できあがってみると 本漆喰のひんやりとした手触りや職人 の手仕事が生み出す独特の風合いな ど、ほかのホテルでは体験できない趣 き深い独自の雰囲気を持つ客室となっ た。実際に利用した顧客からは「懐か しい手触りだった」 「落ち着きのある雰 囲気でゆっくり滞在できた」という感 想や、外国人利用客からは「日本の文 化に触れられた」 「珍しい宿泊体験が できた」など好評を博している。こうし た顧客の反応に今仲氏は、 「予想以上の反応に驚くと同時に、新 しいことへトライした手応えを感じてい ます」と話す。 人に伝えたくなるような客室を かどやホテル 宿泊部 課長 今仲氏は、 「独立系ホテルでは、何 かほかのホテルとは違う特徴を打ち出 さなければ競合に太刀打ちできないと 以前から考えていました。そうした取り 組みの一つとして 10 年以上前から快 眠環境に焦点を当ててきました」。 同ホテルでは、いち早くツインタイプ の全室にシモンズ社製のポケットコイル マットレスを導入。さらにすべての客室 にテンピュール ® コンフォートピローを備 えるなどさまざまな試みを実行してきた。 一昨年のリニューアルでは、東京西 川のマットレス「エアー SI」をシングル・ コンフォートタイプに導入し、これを機 にホテルの全スタッフが東京西川認定 ピローアドバイザー資格を取得した。 「当ホテルでは快眠に関して、マットや ピローなどアイテムに主眼を置いて導入 してきましたが、近年は競合他ホテル でも同様の取り組みが進み、差別化が 図りにくくなってきました。そこで着目 したのが、お客さまに快眠をアドバイス できる提案力を身につけるというマンパ ワーのアプローチでした」 1 階のパブリックスペースにピロー棚 コーナーを設け、首のカーブや後頭部 の張り出しなどを採寸し、体調や好み などを聞き出した上で一人一人にあわせ た枕を提案できるようにしたのだ。こ れにより顧客とのコミュニケーションの 機会も増えて、スタッフのモチベーショ ンアップにもつながるという効果も出て いるそうだ。 こうした取り組みが功を奏し、客室 稼働率も順調に推移。直近の 2013 年 は 88％、14 年は 92％となり、今年は さらにアップが期待できる状況だとい う。客室稼 働率が十分な数値を獲得 できるようになったいま、次なる目標は ADR の向上だ。そのソリューションの ひとつとして蔵シリーズが貢献している という。実際にラックレートは 2000 円 アップし手応えも感じている。 近年ウェブからの集客が増える中で、 クチコミや SNS などにおいて人に伝え たくなるような何かを持っているホテ ル。これからもリノベーションにおいて はそんなホテルを目指したいと語る。 今仲 孝夫氏 ー 2015.5.8 ー 17
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