物語を書くことによるストレスの軽 減 文学部人文学科心理学専攻3回生 石山 裕菜 目次 0、序論 1、目的 2、独立変数 3、従属変数 4、場面・装置 5、参加者 6、研究計画 7、今後の課題 8、引用・参考文献 0、序論① • ストレス社会 exストレスはワーキング・メモリーに関連 する(ペネベーガー,2007) ・ストレスコーピング 0、序論② ・筆記療法(レポーレ&スミス,2004) ①健康な人(トラウマや精神的な疾患を抱えてい ない人)の健康促進にも効果がある ②ストレス・コーピングの手段として利用されて いる cf.ストレスに対処できると思っているほどウェ ル・ビーイングが高い(林&堀毛,2007) ③だれでも、どこでも、安価でできる 0、序論③ • 効果のない筆記(筆記のマイナス面) (Pennebaker,1997) ①逃避行動としての筆記 ②知的欲求を満たすための筆記 ③不満を自由に表現できる場としての筆記 ④自己陶酔のための筆記 0、序論④ <自己物語の利点> ・自己物語は物語として切り取っておけるので、 否定的な出来事の体験もその意味を再構成し、 心に納めていくのに適している。(森岡, 2002) ・自己物語は複数の自己の視点を併置し、物語の 中間部では出来事が一つの方向性を持って秩序 づけられる。それによって現在までの自己の連 続性一貫性を確認し、自己の未来をも暗示する ことができる。(森岡,2002) 0、序論⑤ <物語自己の特性>(森岡:2002) ・自己概念やアイデンティティの研究において、 従来方法論的に困難であった自己意識の移行状 態やプロセスについて、言語化することが出来 る。 ・現在「語っている自己」とは別に「語られてい る私」という視点ができ、後者の視点を前者に 一致させる作業が成されることで、自己はアイ デンティティを持つ存在として構成される。 0、序論⑥ <先行研究> • トラウマ体験のない参加者に架空のトラウマの 物語を自分を主人公にして書かせると健康状態 が改善する(Greenberg,Wortman&Stone,1996) • 自分の最善の未来(理想的な近未来の自分)の 物語を書かせると健康状態が改善する (King,2001) ↓ 自分を主人公にしなければ健康は改善しないのか 1、目的 ・自分以外の人を主人公にした物語を書くことで は健康は改善しないのか調べる *健康の定義が広いので今回はストレスに焦点化 する <自分以外の人を主人公にする利点> ・多種の代名詞を使用すると健康改善が著しい (Campbell&Pennebaker,2003) ・表現の幅が広がる ・役割の演じわけがしやすい ・感情的になりにくい 2、独立変数 • 物語を「書く」こと A群:自分を主人公にしたもの。(先行研 究にそったもの。ただし、物語の内容に ついては先行研究の様に「最善の可能自 己とはしていない。) B群:主人公を自分以外に設定したもの。 C群:自分を主人公にして最善の未来を書 いたもの。(先行研究と同様) 3、従属変数 • 質問紙(精神的健康パターン診断検査: ストレスと生きがいが測定できる) • 生理的指標:唾液中のアミラーゼの増減 (COCORO METER) • 物語を書いたことについて語ってもらう 4、場面・装置 場面:実験室(広めの部屋) 装置:COCORO METER ストレスが増加すると唾液中のアミラー ゼ濃度が濃くなる(荒垣,2004)という 理論に基づいたストレス測定機器。 5、参加者 • 「書く」ことに対して嫌悪感のない大学 生 • 物語の記述体験について実験者に語るこ と、それを録音されることを厭わない者 ↓ 前もってインフォームド・コンセントをし ておく 9人を三人ずつ各々の群にふりわける 6、研究計画① • 実験デザイン プレテスト→介入→ポストテスト? 群間比較法・個人内比較法 6、研究計画② • 参加者に実験室に来てもらいCOCORO METERでスト レスを測定する • 20分~30分程度ノートに物語を書いてもらう(自己を主 人公にしてもらう群・自己以外を主人公にした群) • COCORO METER でストレスを測定する • 物語終了後質問紙とインタビューをしてもらう(この後 もストレス度合いを測るべきか否か。) これを1セッションとし、週一回計4セッション行う (1セッション目の前と4セッション目の後に質問紙を行 う) 6、研究計画③仮想データ 1.8 唾液アミラーゼの含有量 1.6 1.4 A1 A2 A3 B1 B2 B3 C1 C2 C3 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 1-pre 1-pos 2-pre 2-post 3-pre 3-post セッション 図1ストレス値の変化 4-pre 4-post 精神的健康パターン診断検査のストレス値 6、研究計画③仮想データ 90 80 70 60 50 40 pre post 30 20 10 0 A1 A2 A3 B1 B2 B3 参加者 図2ストレスの値 C1 C2 C3 精神的健康パターン診断尺度のQOL項目 6、研究計画③仮想データ 50 45 40 35 30 25 pre post 20 15 10 5 0 A1 A2 A3 B1 B2 B3 参加者 図3 QOL値の変化 C1 C2 C3 6、研究計画③仮想データ 7、今後の課題 • 物語は書き手と読み手の共同行為としての「出 来事」の中に「意味の発生」がみられる(やま だ,2000)とされているが、参加者に自己の書 いた物語を読み返してもらうべきか • 実験を続けて毎日やらなくてよいか • インタビュー後も生理的指標をとるべきか • 自分以外の人を主人公にしてその人の最高の人 生を書いてもらう群はいらないか 9、引用・参考文献 • 荒垣聡亮(2004)唾液中アミラーゼとコルチゾによる心理ストレス の評価 日本口腔診断学会雑誌 第16巻第2号 • B.F.スキナー(訳)河合伊六他(2003)『科学と人間行動』 二瓶 社 • Campbell,R.S.,&J.W.Pennebaker.2003.The secret life of pronouns:Flexibility in writing style and physical health.Psychological Science 14:60-65. • Greenberg,M.A.,Wortman,C.B.&Stone,A.A.1996. Emotional Expression and Physical Health:Revising Traumatic Memories or Fostering Self-regulation? Journal of Personality and Social Psychology71:588-602 • 林あずさ&堀毛一也(2007)日常ストレスと精神的健康との関連に ついて:認知的評価に注目して 日本パーソナリティ心理学大会発 表論文集;110-111 ・ジェームズ・W・ペネベーガー(訳)獅子見照,獅子見元太郎 (2007)『こころのライティング~書いて回復ワークブック~』二 瓶社 9、引用・参考文献 • King.L.A.(2001).The health benefits of writing about life goals. Personality and Social Psychology Bulletin,27,798-807 • 河合隼雄(1995)『河合隼雄著作集12 物語と科学』 岩波書店 • 森岡正芳(2002)『物語としての面接~ミメーシスと自己の変容 ~』 新曜社 • 日本行動分析学会(編)(2001)『ことばと行動~言語の基礎から 臨床まで』 ブレーン出版株式会社 • (編)S.J.レポーレ&J.M.スミス(2004)『筆記療法』 北大路書 房 • 杉森信吉・坂本陽香(2007)筆記療法の効果の分析 日本社会心理 学第49回大会発表論文 • (編)津田彰,J.Q.プロチャスカ(2006)『新しいストレスマネ ジメントの実際~e-healthから筆記療法まで~』現代のエスプリ469, 至文堂 • 山口昌樹(2007)唾液マーカーでストレスを測る 日本薬理学雑誌 vol.129,80-84 • やまだようこ(2000)人生を物語ることの意味-なぜライフストー リー研究か- 教育心理学年報 vol,39 146-161
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