タンパク質立体構造の基礎知識

タンパク質立体構造の基礎知識
2006年 8月
東京理科大学 基礎工学部 安藤格士
生命活動はナノスケールの分子シ
ステムによって維持されている。
細胞内システムの
模式図
(From ExPASy Biochemical Pathways; http://www.expasy.org/cgi-bin/show_thumbnails.pl?2)
生命活動の主役、タンパク質。
タンパク質の働き
酵素(化学反応の触媒として働く。
例えば、アルコールを分解する酵
素。)
アルコールを
分解する酵
素
物質の運搬(物質の輸送に関わる。 ヘモグロビン
例えば、酸素を運ぶヘモグロビ
ン。)
情報の伝達(例えば、ホルモン。)
などなど、ありとあらゆる生命活動
にかかわっている。
血糖値を下
げる命令を出
すインスリン
タンパク質の基本単位は
アミノ酸。
R
NH3+ C
H
Rが様々な化学構造を
COO- もつことで、タンパク質
をつくる20種類のアミ
ノ酸が出来ている。
アミノ酸
20種類のアミノ酸。
グリシン (G)
アラニン (A)
プロリン (P)
メチオニン (M)
グルタミン (Q)
セリン (S)
アスパラギン酸 (D) グルタミン酸 (E)
バリン (V)
イソロイシン (I)
フェニルアラニン (F) トリプトファン (W)
ロイシン (L)
アスパラギン
(N)
スレオニン (T)
チロシン (Y)
システイン (C)
リジン (K)
アルギニン (R)
ヒスチジン (H)
白: 非極性アミノ酸、 緑: 極性アミノ酸、 赤: 酸性アミノ酸、 青; 塩基性アミノ酸
タンパク質はアミノ酸のポリマー。
R1
NH3 C
+
H
R2
C CO
+ NH
+3
CO
Oー
Oー
H
H2 O
アミノ基とカルボキシ
ル基が脱水縮合する。
H2 O
R1
+
R2
R3
NH3 C CO NH C CO NH C CO
+
H
A
F
ペプチド結合
G
N
S
H ペプチド結合 H
T
D
K
G
S
A
このアミノ酸配列を
一次構造と言う。
DNAには遺伝子が、遺伝子には
アミノ酸配列情報が書かれている。
DNA分子
=
・
G
C
G
C
T
T
A
A
G
C
G
C
・
・ DNAの
C
G 塩基配列
C
G
A
A
T
T
C
G
C
G
・
DNAには遺伝子が、遺伝子には
アミノ酸配列情報が書かれている。
T
T
1
番 C
目
の
文 A
字
G
TTT
TTC
TTA
TTG
CTT
CTC
CTA
CTG
ATT
ATC
ATA
ATG
GTT
GTC
GTA
GTG
C
Phe
Leu
Leu
Ile
Met
Val
TCT
TCC
TCA
TCG
CCT
CCC
CCA
CCG
ACT
ACC
ACA
ACG
GCT
GCC
GCA
GCG
2番目の文字
A
Ser
Pro
Thr
Ala
TAT
TAC
TAA
TAG
CAT
CAC
CAA
CAG
AAT
AAC
AAA
AAG
GAT
GAC
GAA
GAG
G
Tyr
Stop
His
Gln
Asn
Lys
Asp
Glu
TGT
TGC
TGA
TGG
CGT
CGC
CGA
CGG
AGT
AGC
AGA
AGG
GGT
GGC
GGA
GGG
Cys
Stop
Trp
Arg
Ser
Arg
Gly
T
C
A
G
T
C
A
G
T
C
A
G
T
C
A
G
3
番
目
の
文
字
遺伝子はタンパク質の設計図、
ゲノムは生命の設計図。
ゲノム (全遺伝子の情報)
DNA
遺伝子
タンパク質
遺伝子 遺伝子 遺伝子遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質 タンパク質 タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質 タンパク質
タンパク質 タンパク質
遺伝子はタンパク質の設計図、
ゲノムは生命の設計図。
解糖系のネットワーク
ゲノム (全遺伝子の情報)
遺伝子 遺伝子 遺伝子遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子 遺伝子 遺伝子
遺伝子
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質 タンパク質 タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質
タンパク質 タンパク質
タンパク質 タンパク質
2003年、ヒトゲノムが解読された!
ゲノムとは遺伝子情報すべてのこと。
2003年、ヒトゲノム解読完了。
ヒトゲノムの長さは30億塩基対。
遺伝子の数は約2万から2万5千と推定されている。
チンパンジーゲノムとヒトゲノムの違いはわずか1.23%。
30億塩基対 → 6 ギガ文字
1文字 →1 バイト
CD-ROM 10枚程度!!
タンパク質は立体構造をとる。
アミノ酸配列
NLKTEWPELVGKSVEEA
KKVILQDKPEAQIIVLPVG
TIVTMEYRIDRVRLFVDK
LDNIAEVPRVG
折り畳み!
タンパク質立体構造の
基本ブロック、二次構造。
α-ヘリックス
β-シート
どちらも規則的な水素結合の
パターンを持つ。α-へリックス
とβ-シートを二次構造と言う。
タンパク質の高次構造。
三次構造
四
次
構
造
タンパク質の階層構造。
一次構造(アミノ酸配列)
↓
二次構造(α-ヘリックス、β-シート)
↓
三次構造(二次構造を組み合わせてできる立体構造
で、1つのアミノ酸ポリマーで形成される。)
↓
四次構造(複数のアミノ酸ポリマーで形成される。)
立体構造と機能は
密接に関わっている。
ホルモンの受容
体
酵素の例
A
タンパク
質
タンパク
質
B
Bの物質
とは形
が合わ
ない。
分解。
タンパク
質
A
Aの物質と結合。
抗体
タンパク質の立体構造予測は50
年来未解決の難問題。
「アミノ酸配列が与えられたとき
に、そのタンパク質のとる立体
構造を予測できるか。」
未だに解決されていない!
まとめ
タンパク質は生命活動の要となる分子。
タンパク質は20種類のアミノ酸からなるポリマー。
タンパク質はそれぞれに固有の立体構造に折り畳ま
れている。
タンパク質の構造は階層的である。
タンパク質の立体構造と機能は密接に結びついてい
る。
タンパク質の立体構造予測は未だ解決していない大
問題。