衛星搭載ドップラーライダー・キックオフ研究会 2011.9.30 衛星搭載ドップラーライダーの実現に向けて 岩崎俊樹 東北大学 大学院理学研究科 ドップラーライダー: レーザー光を風と共に移動するターゲットに照射し、散乱 光のドップラーシフトを測定し、風速の視線方向成分を観測する。 衛星搭載: 全球観測を実施して風観測のデータ空白域を解消する。 最大の難点は、安定した、高出力、高効率のレーザー開発? Coherent & Incoherent Coherent Doppler Lidar Eye Safe 近赤外レーザー 半導体 1.5μm or 2μm エアロゾル(~3km)、雲による散乱 単色性に優れ,スペクトルを直接測定 Incoherent Doppler Lidar Eye Safe 近紫外レーザー Nd-YAG第3高調波 355nm オゾン、大気分子、(エアロゾル 、 雲)による散乱 分子性散乱では散乱光スペクトルの半値幅が広くなるので 波長依存のあるフィルターで測定 下部成層圏で感度が高い。 ESA-ADM-Aeolus Aladine * Aladine Atmospheric Laser Doppler-Lidar Instrument これまでの計画とこれからの計画 日本計画 ・ISS搭載ドップラーライダー(米国)実証 Coherent 2005年打ち上げ予定 → 延期 → 中止 NASA計画 ・ISS搭載ドップラーライダー(米国)実証 Hybrid(Coherent & Incoherent) 2012-16 ライダー開発 2017 打ち上げ 2017(2018) 2年ミッション 日本計画 ・ドップラーライダ衛星(日本)実用? Hybrid(Coherent & Incoherent)? 2012-14(15?) feasibility study 2014(15)-19(20) ライダー開発 2020-2025 打ち上げ ESA計画 ・単独衛星 Incoherent (強力) 2011 ライダー開発 2013 打ち上げ 201? ?年ミッション 衛星による風観測 QuikScat/Seawind 海上風に関する面的な情報。1日でほぼ全球をカバー。 マイクロ波散乱計は自由大気の風を代表しているか? 雲または水蒸気追跡風 5個(?)の静止気象衛星で常時全球をカバー。 観測データは雲頂一層のみ。雲の生成消滅は風速エラー となり輝度温度エラーは観測高度エラーとなる。 NOAA/AMSUなどによる気温情報 データ同化により気温情報は風解析値にも反映。とくに 中高緯度では地衡風が強い拘束条件。 気温誤差が風の誤差となる。 現在の衛星による風観測はすべて間接的。空白域も広い。 衛星搭載ドップラーライダーの長所・短所 1.ドップラーシフトにより視線風速を直接測る。 (2方向観測を行えばベクトル風が分かる) 2.対流圏下層と成層圏で風速の鉛直分布が分かる。 3.軌道に沿って全球的なデータが得られる。 1.高出力・高効率の安定したEye Safe レーザーが必要。 * 強力な電源が必要 2.エアロゾル、雲が少ないと対流圏では観測できない。 3.面的なイメージは得られない。 → 有効利用のためにはデータ同化が必要。 衛星の軌道に沿った観測データが得られる 衛星搭載Doppler Lidar に期待される効果 海上での対流圏下層風(コヒーレント) 大気大循環 台風 水蒸気輸送 → モンスーン 大陸上の下層風 陸上でのデータ空白域 ダスト → エアロゾルのデータ同化 雲粒子からの直接観測 雲移動ベクトル → ドップラー風 精密化 熱帯上部対流圏(非地衡風の直接観測) 上部対流圏~成層圏(インコヒーレント) 対流圏-成層圏の質量交換 → 微量成分輸送 宇宙ステーション搭載コヒーレントドップラー ライダーの風観測に関する科学計画 平成11年3月 地球科学技術ファーラム/地球観測委員会 コヒーレント・ドップラー・ライダーサブグループ 1999年当時、日本では観測実績がほとんどない Eye Safe Lidarは米国のベンチャーの独壇場 (v.s. 三菱) コヒーレント 主に下層風を観測 水蒸気フラックスの 解析に最適 → モンスーン → 台風 宇宙ステーション搭載 コヒーレントドップラーライダーの 風観測に関する科学計画より 1010 1000 Psea(hPa) 990 980 970 960 950 940 930 920 910 0 10 20 30 40 50 60 70 79 Time(h) 図1 海面更生気圧の最低値の比較(T0914) 赤線(JRA25),青線(ERA interim),茶色線(best track) JRA25,ERA interimは1時間毎、ベストトラックは6時間毎のデータをプロット 横軸:2009年09月13日06UTCからの経過時間 JRA+ERA t=55,67,79 図6 海面更生気圧と最低値を とる位置の経路図(上図:JRA25、 下図:ERA interim) 時刻:2009年9月16日12UTC(78時 間) 図中の赤線(JRA25),青線 (ERA interim), 黒線(beat track) JRA25,ERA interimの経路図 は1時間毎、ベストトラックは6時 間毎のデータをプロット JRA+ERA t=55,67,79 図11 500hPa面ジオポテンシャ ル高度と 風速(上図:JRA25、下図:ERA interim) 時刻:2009年9月16日12UTC JRA25,ERA interimの経路図 は1時間毎、ベストトラックは6時 間毎のデータをプロット 基準の風速は図右下に記載 (30m/s) 雲による散乱、分子性散乱 → 熱帯上部対流圏の風 Hadley &Waker Circulation 宇宙ステーション搭載コヒーレントドップラーライダーの風観測に関する科学計画より インコヒーレント BD 循環 S-T質量交換 TTL 大気微量成分輸送 宇宙ステーション搭載 コヒーレントドップラーライダーの 風観測に関する科学計画より 1999年の状況 → 現在の状況 ○ 日本でも観測実績を積んだ(NICT, 北大) → 地上設置のリモートセンシングとして経験を積む → 衛星の前に航空機搭載実験を行う → データ処理ソフトウェアを開発する ○ Eye Safe Lidar、なお、日本のメーカーは消極的 → パワー(S/N )、効率(電源)、安定性(長期間)を改善の必要 → 現業用測器として普及(空港に設置) → 日本の強いメーカー? → 日本に強いメーカーがない。ベンチャーもない。 ○ 数値モデルの進展がデータの有効利用の可能性を広げる? → データ同化手法の進展 → 台風進路予報の進展 風を観測する衛星としての費用対効果はどうか? OSSEにより証明? 2003 ドップラーライダー(本体) 1軸回転 時空間高解像度観測 メソ観測に最適 レーザ波長 : 2.012 μm パルスエネルギ: 7 mJ/pulse パルス幅 560-1200nsec (84-180m) パルス断面 8cm 繰り返し100Hz (=10msec) 観測可能距離 0.5-10km データ処理部と冷却装置 16 2004年 コンテナに入る! 2軸回転 → PPIとRHI 観測 17 2005年コンテナをトラックに乗せる 優れた機動性 北 レーザ光 ・目に安全な波長2μmを使用 ・目に見えない波長 仰角 レーザ光送受信鏡面 装置(スキャナ) 西 山側 方位角 東 海側 南 18 まとめ ○衛星搭載ドップラーライダー観測は風の直接観測データとして有望 とくにデータ空白域 (海上下層風、陸上下層風、熱帯上層、圏界面付近) ○数値予報の進展による利用環境の向上 (データ同化手法、台風予報、ダスト予報) OSSEも行われるようになった。 ○地上および航空機搭載観測を通じてデータ処理に関する経験を積んだ ○Doppler Lidar の普及と、CALIPSOなどLidar 衛星の成功 ○ 大出力・高効率で安定なEye Safe Lidar → 日本のメーカーは消極的? ○海上下層風に関してはQuikScat/Seawind と競合 ○イメージャではなくトラックデータである。
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