医療圏内に経営母体の異なる病院 が並立している状況

医療圏内に経営母体の異なる病院が並立し
ている状況における集約化
地域小児科センターへの集約化・重点化
大阪市立住吉市民病院小児科
舟本 仁一
小児科の集約化・重点化を考えるシンポジウム 10.28 2006
モデル案提出状況
D
提出済み ( 30都道府県 )
体制確定
21
一部未確定 4
未確定
5
提出未 ( 17県 )
体制未確定のある県
愛知
石川
4 医療圏
1 医療圏
大阪 17 全医療圏
滋賀 4 全医療圏
広島 11 全医療圏
青森
岩手
群馬
富山
3 医療圏
3 医療圏
7 全医療圏
4 全医療圏
中核病院経営母体
国立 (6%)
都道府県立 (10%)
62
大学 (77%)
市立 (6%)
私立 (0%)
地域小児科センター経営母体
国立 (10%)
大学 (11%)
私立 (11%)
都道府県立 (21%)
150
公的 (24%)
市町立 (23%)
経営母体の特徴(国立病院機構)
1.独立行政法人
2.都道府県を越えた広い地域を対象とする専
門病院や都道府県レベルを想定した医療セ
ンターなどが、政策医療、小児救急を含む一
般医療の提供
3.地域の事情に応じ、医療圏にとらわれない
広域対応が可能
経営母体の特徴(都道府県立)
1.都道府県各地域の中核総合病院として
の役割、専門分化した機能、地域医療提
供機能の3つのタイプがある
2.病院小児科の集約化・重点化に際しては
主たる役割を果たすよう求められている
3.地域医療提供を担う病院では、住民から
機能充実の要望が常に強い
4.小児救急など政策医療は避けられない
経営母体の特徴(市町立)
1.地域医療を主たる目的とするところがほと
んど
2.首長や議会は機能拡大には比較的同意す
るも、コスト増には拒否反応、機能縮小には
住民サービスの観点から反対
3.赤字経営が多く、民間移譲、経営委託が進
んでいる
経営母体の特徴(公的)
日赤、済生会、厚生連など
1.基本的には、診療報酬により運営
2.救命救急センター、僻地医療、災害医療
など公的役割も果たす
3.地域の中核的役割、あるいは地域で唯一
の医療機関といった特徴
4.集約化・重点化においては、位置づけが
容易であることが多い
経営母体の特徴(私立)
1.独立採算・・経営方針変更の可能性
2.病院独自の理念
3.採算性や理念に反する変化には抵抗
4.機能拡大への同意は得やすいが、縮小
については財政的支援が絶対条件
5.機能拡大でも必要経費の増加や、季節
変動からくる収入減への配慮が必要
6.他の私立病院の格差に対する不満
経営母体各々の特徴がある中で
並立する状況
1. 規模、小児科医数など条件面において、決定的な
差がなく、経営母体や関連大学のみが違う
2. 条件面で他方に比して劣る部分はあるが、経営母
体からみて望ましいと関係者により判断される
3. 並立はするが、いずれの病院も規模として小さい
4. 地域小児科センター候補が広い医療圏の端にある
地域小児科センター
都道府
県
設立主
体
研修指
定病院
小児科
病床数
新生児
病床数
(NICU)
常勤医
師数(欠
員)
紹介元
診療所
数
紹介元
病院数
A県
済生会
いいえ
30
4
3
6
10
地域小児科センター
A県
県立
いいえ
21
3
10
3
地域小児科センター
A県
県立
いいえ
8
3
2
6
2
中核病院型
A県
市立
いいえ
20
0
1(2)
10
B府
府立
はい
40
8
5
30
5
一般小児科(病院)
B府
市立
はい
36
22(3)
7(1)
10
3
地域小児科センター
B府
私立
はい
45
19(15)
11
20
8
地域小児科センター
B府
日赤
12
2
3
現状
一般小児科(病院)
一般小児科
三島
北河内
豊能
大阪市
中河内
堺市
南河内
泉州
集約化は困難と考える前に
集約化・重点化の必要がない?
当該地域で、小児医療や小児救急体制 (24
時間365日)が整備されているか、小児科
勤務医の労働条件も十分な形で確保され
ているかで判断されること
集約化の必要性を地域の関係者が理
解しているか?
1.関係医療機関が並立する医療圏では、
人的 and/or ハード的に集約化・重点化す
ることによって一定の改善が見込めるとい
う行政、医療機関、医師会など関係者の共
通理解を進める努力が必要。
集約化の必要性を地域の関係者が理
解しているか?
2.地域で病院が並立している場合、それだ
け各々に医療需要と存在意義があるとい
う見方もできる。この点を認めつつ、今の
形態で小児科医の労働条件は守られるの
か、効率的な医療を提供できるのかという
視点での議論が必要。
医療機関には
1.各病院の基本方針や意思を尊重する姿勢
を示す(体制への理解と協力を依頼)
2.集約化される病院が経済的に不利になら
ないよう配慮する
3.重点化する病院には「広域」に対して責任
をもってもらう
市町村に対して
1.国や都道府県からの指導・要請とともに財
政的援助をおこなう
2.地域医療対策協議会などの場に、首長の
参加を求める
3.集約化しない場合の将来像と集約化した
後のメリットを具体的に示す
住民に対する説明
1.集約化・重点化が必要である理由
2.集約化による住民のメリット・デメリット
3.将来展望
4.マスコミを通じた広報活動
5.行政による説明では、集約化される地域
の行政責任を回避する計画と捉えられな
いよう、その危険性を認識して対応する
選定が困難な場合にどうするか
1. 話し合いによる指定方式
2. 公募方式・・・自由競争
話し合いによる指定方式
長所
1. 地域全体のバランスを考慮できる
2. 過度の競争が避けられる
3. 行政的な支援をしやすい
短所
1. 必ずしも実績に基づかない
2. 最終的に不満が残る
公募方式
1.地域小児科センター病院(連携強化病
院)認定基準を公表し、公募する
2.一定年限内に基準をクリアすることを条
件に仮認定する
3.各病院、経営母体、関連大学などが合意
の下に医師確保、体制整備を行う
4.最終的に条件を満たした病院を認定する
公募方式
長所
1.自由競争であり、原則的には脱落した病院からの
不満は少ない
2.調整作業が少ない
短所
1.過度の競争が、他の医療圏での小児科医不足、
体制不備を招く危険
2.将来を見越した堅実な体制作りにならない危険
3.時間がかかる
4.地域に応じた基準の作成が難しい
結論(個人的意見)
1.各医療圏の特性を最優先に考慮して体
制案を作成(時には、重点化先行も)
2.経営母体の違いよりも、実績重視
3.小児科医が絶対的に少ない地域では、
医療圏の再検討や他医療圏からの医師誘
導も必要
4.病院が並立し、判断できない場合は、公
募方式をとる