うつ病の精神療法のコツ 国立精神・神経センター武蔵病院 原田誠一 うつ病の精神療法のコツ 1.初期治療における精神療法 2.回復期に入るまでの精神療法 3.回復期の精神療法 4.トピックス 4-1:うつ病の認知療法 4-2:境界性人格障害における うつ状態の精神療法 初期治療における精神療法① ー初診の重要性ー ・精神障害の診療における初診の重要性 「何事も初めが肝腎である」(中井) 「初回面接の中でも、初めの5分が勝負」(村瀬) 「初診にかけた時間は報われる」(笠原) 「初回面接に、その後出てくる諸テーマが現れる」(神田橋) ・精神科診療の特殊性 客観的なデータ(数値、画像、生理所見など)がないまま、 (多くの場合情動不安定な)患者が理解可能で納得のいく 説明を行い、治療に導入し治療に協力してもらう必要 →スムーズな治療開始には初回面接での関係作りが不可欠 初期治療における精神療法② ーうつ病診療の3つの原則ー ・患者の状態:思考抑制(制止)、あせり、焦燥感 → 通常の対応が「気ぜわしい」ものに感じられ、 話の内容を理解できず、疎外感を抱くリスク → 次の3点をふまえるとよい (1)ペースダウンしよう! (2)相手の気持をくむ姿勢を! (原疾患による苦しみに加えて、様々な悩みを抱えて 受診.「治らない?」「甘え?」「遺伝?」「精神病?」) (3)わかりやすい説明を! cf 「話としてはわかるが、面接が終わらなくなる!?」 初期治療における精神療法③ ー症状把握の5つの意味(1)ー ・代表的な症状の有無を把握する5つの意味 1.正しい診断を下すのに役立つ 2.治療効果の評価に必要 3.安心感の創出効果 例:「これも病気の症状であり、治療で治る!」 4.治療を行っていく上での予測力、対応力の向上 例:希死念慮 ・どこまで具体的に考えているか?→リスクの評価 ・思いとどまっている事情→事情が変わる時が危険 5.治療関係作り 例:治療者を専門家と認める契機になる 初期治療における精神療法③ ー症状把握の5つの意味(2)ー ・うつ病の代表的な症状 -整理して頭に入れておくと便利な症状ー ・気分:憂うつ、気が晴れない、もの悲しい、不安 ・意欲:何をするのもおっくう、興味をもてない、根気がない ・思考:考えがまとまらない、決められない、理解力がおちた、 堂々巡り、自分を責める(自責感) ・身体症状:不眠(中途・早朝覚醒)、食欲低下、性欲減退、 頭重感、倦怠感 (*)以上に「日内変動」が認められることが多い (*)「3大妄想」:心配のテーマ→ 「健康状態」=心気妄想 「経済状態」=貧困妄想 「自分のミス」=罪業妄想 初期治療における精神療法④ ー治療方法と見通しの伝達(1)ー ・治療方法と見通しの伝え方 ・概要:「休養」と「クスリ」で必ず治ると保証する ・見通し:①少し楽になるまでの期間 薬効出現までのタイムラグの説明 ②十分回復するまでの期間 「平均6ヵ月くらい」(はやくて3カ月) (*)「えっ、そんなに長くかかりますか!?」 初期治療における精神療法④ ー治療方法と見通しの伝達(2)ー (*)「えっ、そんなに長くかかりますか!?」 →気持をくんだ上で・・・(以下のよう対応を) →他の臓器(例:胃、心臓、腎臓)の障害でも回復には 相当時間がかかる.ましてや、一番複雑で大切な 臓器である「脳」の回復には時間がかかるもの. 時間をかけて累積されたストレスが原因なので、 回復にも時間を要する. 最近の自分の生活を振り返り、今後を考える良い 機会になるので、「無駄な期間」にはならない. 初期治療における精神療法⑤ ー「激励」と「気晴らし」についてー ・周囲が「激励」したり、「気晴らし」(例:趣味、旅行)を すすめることのマイナス効果は、一般にもかなり 知られるようになっている. ・他方、「なぜまずいのか」は本人・周囲とも十分理解 しておらず、釈然としていないことが少なくない. (そして、理解不十分だと、ついやってしまいがち) (*)「激励や気晴らしは、なぜまずいのか?」をきちんと 理解しておき、説明できるようにしておくとよい (*)がんばれ→「どう頑張ったらいいの?」、自責感(↑) 気晴らし→中々始められず苦しい、楽しめず絶望(↑) 初期治療における精神療法⑥ ー精神科紹介・入院治療の適応についてー ・症状が重篤(例:希死念慮が強い、精神病症状 を伴う、経過中に躁状態あり) 長く複雑な治療歴 鑑別診断が必要そう などの場合は、精神科紹介の候補 ・精神科紹介・入院導入にまつわる問題 心因反応による行動化 (例:治療中断、自殺企図) →丁寧なバトンタッチを cf:「入院したいための行動化」 うつ病の精神療法のコツ 1.初期治療における精神療法 2.回復期に入るまでの精神療法 3.回復期の精神療法 4.トピックス 4-1:うつ病の認知療法 4-2:境界性人格障害における うつ状態の精神療法 回復期に入るまでの精神療法① ー合うクスリがみつかるまでの試行錯誤(1)ー ・当初の処方で十分改善しない場合、患者は「もう 治らないのでは?」と落胆しがち.そうした際には、 「別の薬で良くなると思う」と伝えた上、処方選択に 試行錯誤が必要なことが少なくない事情を説明する ・「勿論、なるべく合いそうなクスリから処方します」 ・「しかし、様々な薬理効果を持つ多くの薬剤の中から あなたに一番合う薬を選択するのに、試行錯誤が 必要な場合が少なくありません」 →その理由の説明は? 回復期に入るまでの精神療法① ー合うクスリがみつかるまでの試行錯誤(2)ー (理由の説明の1例) ・精神医学、ブレイン・サイエンスの発達が不十分 →「こういう場合に、この薬理作用の薬がよい」 という判断を正しく下すことが、現状では困難 ・「元来の気質、体質」や「発症に至った状況」が千差万別 →試行錯誤が必要なのは他疾患(例:高血圧)の治療でも 同じであるが、千差万別なだけに一層選択が困難 回復期に入るまでの精神療法② ー諸症状が消褪する順番の説明(1)ー ・諸症状は、一度に全部改善するわけではない。回復期 には、症状ごとに治療効果のムラが認められやすい →(当事者であり、悲観的になっている)患者は、 改善していない点ばかりを注目し、 一部認められる改善を無視して、 必要以上に絶望を深めることが少なくない. ・諸症状の回復は前後することが多く、回復過程では 特定の順序が認められる場合も多い、と説明 回復期に入るまでの精神療法② ー諸症状が消褪する順番の説明(2)ー ・笠原の「回復の3ステップ」は、臨床上の有用性が高い ステップ1: 不安・焦燥感が楽になる ステップ2: 憂うつ気分が楽になる ステップ3:意欲の低下が楽になる (おっくうさがとれてくる) (*)回復の段階のメドがたつと、不安が減り療養しやすくなる (*)おっくうの心理学(笠原)も有用 1.手をつけやすくなる 2.根気が出てくる 3.楽しめる (*)3ステップのあとに思考抑制(制止)が残る場合もある 回復期に入るまでの精神療法③ ー休養に関する説明ー 「あせり」や「自己治療努力」などにより、時期尚早に 活動してしまい、悪化する場合が少なくない →「休養と服薬で治る」「このまま怠け者になることはない」 と再保証し、「今無理をすると悪くなりがち」と伝えて、 時期尚早な活動を抑える →・本人の理解:自分で自分を追い込まない ・家族の理解:家族が本人を追い込まない (*)「復職をめぐるあせり」にシミュレーションが必要な場合 ①「時期尚早に出社して、じきにダウン」というストーリー ②本人→苦しい 家族→心配 職場→迷惑、評価低下 回復期に入るまでの精神療法④ ー「揺れ」の予告ー 一旦改善した後に、症状・状態像にゆり戻しが 起きることがある。患者がこれを深刻に受け 止めすぎて、更なる悪化につながる場合がある 例:悲観して悪化(→慢性化の一因) 思いつめて自殺企図 (「良くなってきた頃が危ない」理由の一つ) 説明法の例 ・季節の変化の比喩:寒の戻り、三寒四温 ・他の病気でもよくみられること うつ病の精神療法のコツ 1.初期治療における精神療法 2.回復期に入るまでの精神療法 3.回復期の精神療法 4.トピックス 4-1:うつ病の認知療法 4-2:境界性人格障害における うつ状態の精神療法 回復期の精神療法① ー再発ハイリスク期の存在の指摘ー ・回復後、無理をすると再発する可能性があることを伝え、 当面無理をしないようすすめる ・特に、新しいことを始めたり再開する際(例:復職)には、 当初の3カ月~半年くらいは疲れがたまりやすいので 十分気をつけるよう伝える (*)回復後半年程度の間に再発がおこりやすいのは、 身体疾患でも同様と説明(例:心筋梗塞) 回復期の精神療法② ー再発予防策(1):生活相談ー ・生活相談:再発しやすい3~6ヵ月間を極力 無理せずに過ごすよう指導 (本人、家族双方に伝える) (マラソンの比喩、貯金の比喩) ・ちょっとした身体疾患で体調を崩し、 精神面も不安定になる場合が少なくない 例:「かぜ」から「うつ」になるケース →睡眠の確保 手洗い、うがい励行 イソジン、PL(または葛根湯)手持 回復期の精神療法③ ー再発予防策:性格の振り返り(1)ー ・必要時には性格特徴の検討も加える <性格特徴と病態の関係の説明> 執着気質:気分が持続しがち、気分転換が苦手 →考え込んで心配し続け、不安・抑うつ症状 協調性:人との和を重んじる、自己主張を控えがち →断れず引き受けてしまう、ストレスがたまる 強迫性:責任感が強い、几帳面、仕事をきっちり行う →手抜きできない、いつも全力投球、任せられない 精力性:頑張り屋、凝り性、熱中しやすい →心身の疲れを無視して頑張りすぎ破綻 回復期の精神療法③ ー再発予防策:性格の振り返り(2)ー <再発予防の観点からみたポイントの説明> 執着気質:気分の持続、気分転換が苦手 →心配が続き不安・抑うつ症状 →気分転換の練習、認知療法の導入 協調性:人との和を重んじる、自己主張を控えがち →断れず引き受けてしまう、ストレスがたまる →断る練習、自己主張の練習 強迫性:責任感が強い、几帳面、仕事をきっちり行う →手抜きできない、全力投球、任せられない →手抜きの練習、人に任せる練習、遅刻の練習 精力性:頑張り屋、凝り性、熱中しやすい →心身の疲れを無視して頑張りすぎ破綻 →自己過信の修正、心身の疲れのモニター (*)「性格改造は不要。微調整して長所をさらに活かそう」 うつ病の精神療法のコツ 1.初期治療における精神療法 2.回復期に入るまでの精神療法 3.回復期の精神療法 4.トピックス 4-1:うつ病の認知療法 4-2:境界性人格障害における うつ状態の精神療法 認知療法 -症例提示ー 30代女性 双極Ⅱ型障害 ・10代後半、抑うつ状態になりA病院通院開始 ・20歳から、B大学精神科で治療(入院、外来) ・ここ数年、抑うつ状態が遷延 ・X年、C病院に紹介転院 (認知療法施行が紹介目的の一つ) 認知療法の実際① -テーマ 「家事」ー (状況)天気がいいので、洗濯物を干したいができない (受け止め方) こんなに疲れていては、干すなんて無理だ これくらいのことができないなんて主婦とは名ばかり この年になってこんな甘えた子どもみたいでは絶望的 (少し距離をおいて考えてみると・・・) 実際に疲れているのだから、 できるものだけとりあえずやってみればいいじゃない 何とかできる時もあるのだし (実際の経過) なんと、なんと、結局全部干せた しかも、室内でなく屋外に 認知療法の実際② -テーマ 「比較」ー (状況)他の家に行き、仕事と主婦業を見事に 両立させている様子をみた (受け止め方) 彼女の立派な様子に較べて、自分は 家事すらろくにできない駄目な人間 (少し距離をおいて考えてみると・・・) 私だってできる時は家事をこなしている. 悪い時ばかりを見るのは不公平 (実際の経過) その場でできることをやっているうちに、 「これが今の私」と自分を肯定できた 認知療法の実際③ -テーマ 「約束」「予定」ー (状況) 夫に頼まれて約束したが、果たせなかった (受け止め方) 何て責任感のない、決めたことを守れない奴! 主婦落第の自分は、夫に迷惑をかけるだけ! (少し距離をおいて考えてみると・・・) 健康な人でも、うまくいかない時もある 夫にひどい迷惑をかけたわけではない 夫の言=「気にしないでいい。ゆっくりしなさい」 一人相撲でおちこむと、かえって夫は悲しむ (実際の経過) 朝から何も食べずに考えつめていたことに気付く カロリーメイトで一息.「焦らないで気楽にいこう!」 どんよりした気持を、きっぱり断てた 認知療法の実際④ -テーマ 「近所付き合い」ー (状況) もうすぐ帰郷するのに、会計引継ぎの連絡がとれない (受け止め方) もっと前に連絡をすべきだった 「早く引継ぎをしてね」と言っていた人に申し訳ない 気持ばかりあせって疲れる 焦ると言いつつ何もしない怠け者の自分に嫌気がさす (少し距離をおいて考えてみると・・・) 年末は誰でも忙しいのだし、年明けでも間に合うはず まだこの時期に焦る必要はないだろう 連絡はしたのだから、あとで事情を説明すればよい (実際の経過) 当番さんと話していたら、「年末~年始も出かけない 自分が連絡しておく」と言ってくれて、すんなり解決 うつ病の精神療法のコツ 1.初期治療における精神療法 2.回復期に入るまでの精神療法 3.回復期の精神療法 4.トピックス 4-1:うつ病の認知療法 4-2:境界性人格障害における うつ状態の精神療法 境界性人格障害の認知療法 治療導入期の 心理教育で 用いる病態図式 (臨床精神医学 28; 1351, 1999) 境界性人格障害の病態モデル(1) 若い人の落ち込みでよくみられる悪循環 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない 境界性人格障害の病態モデル(2) 若い人の落ち込みでよくみられる悪循環 落ち込み、不安 あせり、空しさ 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない 境界性人格障害の病態モデル(3) 落ち込み、不安 あせり、空しさ 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない (対人関係の特徴) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 境界性人格障害の病態モデル(4) 落ち込み、不安 あせり、空しさ 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない 例:「見捨てられた!」「裏切り!」 「全否定された!」「侮辱!」 (対人関係の特徴) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 トラブル、行き違いで ショックを受けやすい 境界性人格障害の病態モデル(5) 落ち込み、不安 あせり、空しさ 過剰な反応 危険な行動化 喧嘩、きれる 大声、暴力 八つ当たり 過食・嘔吐 薬剤乱用 自傷 など (対人関係の特徴) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない トラブル、行き違いで ショックを受けやすい 多くの場合我慢するが・・・ 例:「見捨てられ」「裏切り」 「全否定」「侮辱」 境界性人格障害の病態モデル(6) 周囲との軋轢(↑) 周囲の反発、敬遠(↑) 孤立(↑)、後悔(↑) 過剰な反応 危険な行動化 喧嘩、きれる 大声、暴力 八つ当たり 過食・嘔吐 薬剤乱用 自傷 など 落ち込み、不安 あせり、空しさ 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない (対人関係の特徴) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 トラブル、行き違いで ショックを受けやすい 多くの場合我慢するが・・・ 例:「見捨てられ」「裏切り」 「全否定」「侮辱」 境界性人格障害の治療の説明(1) -精神療法に関する説明①ー 周囲との軋轢(↑) 周囲の反発、敬遠(↑) 孤立(↑)、後悔(↑) 過剰な反応(*) 危険な行動化 喧嘩、きれる 大声、暴力 八つ当たり 過食・嘔吐 薬剤乱用 自傷 など 落ち込み、不安(*) あせり、空しさ 基本の3テーマ(*) ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない (*)面接のテーマ 対人関係の特徴(*) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 (*) トラブル、行き違いで ショックを受けやすい 多くの場合我慢するが・・・ 例:「見捨てられ」「裏切り」 「全否定」「侮辱」 境界性人格障害の治療の説明(2) -精神療法に関する説明②- ・「基本の3テーマ」や「悪循環」に関する相談にのり、 本人の自助努力を援助する. ・「過剰な反応、危険な行動」(行動化)の話し合い ・行動化前後の心身の状態、変化 ・行動化を通してわかったこと ・今後、似た状況での対処法 など ・「周囲との軋轢」をふまえ、家族や関係者(学校、 職場の人など)と合同面接を行う用意. 境界性人格障害の治療の説明(3) -薬物療法に関する説明①ー 周囲との軋轢(↑) 周囲の反発、敬遠(↑) 孤立(↑)、後悔(↑) 過剰な反応 危険な行動化 喧嘩、きれる 大声、暴力 八つ当たり 過食・嘔吐 薬剤乱用 自傷 など 落ち込み、不安(*) あせり、空しさ 基本の3テーマ ①自分に自信を持てない ②生活の方向性が十分 定まっていない ③支えになる仲間が少ない (*)作用部位 対人関係の特徴(*) 過敏さ、傷つきやすさ 萎縮、心のバランスを とるのが不得手 トラブル、行き違いで ショックを受けやすい 多くの場合我慢するが・・・ 例:「見捨てられ」「裏切り」 「全否定」「侮辱」 境界性人格障害の治療の説明(4) ー薬物療法に関する説明②- ・向精神薬は、「落ち込み、不安」や「過敏さ、傷つきやすさ」を 対症的に和らげて、悪循環の進行を抑えるのに役立つ. ・クスリの効果はあくまで対症的.クスリだけで「基本3テーマ」 は変わらないし、パーソナリティーが豹変する訳でもない. ・しかし、当面クスリが悪循環にブレーキをかける手助けをして くれるので、クスリも大切. (*)患者・家族が薬物療法に対して抱きがちな「過度の期待」 や「怖れ」を和らげ、「薬物療法の役割・効果・限界」を正し く理解してもらうことが大切 境界性人格障害の 治療の説明(5) -うつ病との病態・治療法の違いー ・うつ病=中年以降の「協調性、強迫性、精力性」があり社会 適応の良い人が、過剰適応や生活の変化などで 過労となり発症することが多い. →「休養」と「服薬」で改善する. ・境界性人格障害=「休養」と「服薬」だけでは「基本の3テーマ」 や「悪循環」は変わりにくい. (*)境界性人格障害患者が、自分の性格を「協調性、強迫性、 精力性が顕著」ととらえていることがある. まとめ 1.うつ病の精神療法のコツを 「初期治療」 「回復期に入るまでの時期」 「回復期に入ってからの時期」 に分けて述べました. 2.うつ病の精神療法のトピックスとして 「認知療法」 「境界性人格障害の精神療法」 をとりあげてご紹介しました.
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