疲労 コンクリート工学研究室 岩城 一郎 1 劣化の進行と要因 • 道路橋の床版は,床版の支間長(主桁間隔)に比 べて床版厚が薄く輪荷重を直接支える部材である ため,荷重の繰返しによる疲労の影響により性能 が低下する代表的な構造物である. • 昭和40年代後半から,疲労による床版下面のひび 割れ発生とコンクリートのはく落が認められるよう になり,鉄筋が健全であるにも係わらずコンクリー トが陥没する状況も生じた.これらの床版の疲労の 主たる原因は,過積載車両の走行であるが,防水 層の未設置による雨水の浸透や現行の設計基準 に比べて,床版厚が薄く床版支間が大きいことなど, いわゆる既存不適格等の要因が複合して劣化が 急速に進行し,最終的に床版の押抜きせん断破壊 に至ることが判明している. コンクリート標準示方書 2 [維持管理編]より 疲労の進行過程 コンクリート標準示方書 3 [維持管理編]より 床版の疲労メカニズムの解明と対策 首都高速道路 今後供用50年以上の橋梁が急増 断面交通量:1日約10万台,1年約3000 万台,50年で約15億台+大型車(過積載 含む)混入率(平均20%) →疲労による損傷が顕在化 車両の大型化・交通量の増加 調査点検 補強方法の開発と適用 実際の橋の疲労状態を再現可能 な輪荷重走行試験 4 損傷状況の診断 凍結防止剤の作用による劣化 • 1991年スパイクタイヤの規制: 融雪剤(主にNaCl)の散布量急 増(規制前の約10倍) • JCI「融雪剤によるコンクリート構 造物の劣化研究委員会(1999 年)」 (三浦尚委員長) • 劣化の特徴 - コンクリート表面の激しいスケー リングとして現れる凍害 - アルカリシリカ反応の促進 - コンクリート中の鋼材の急速な 腐食(塩害) - 交通荷重による疲労 三浦尚:コンクリート工学,Vol.38,No.6,pp.3-8,2000. 本格散布から20年しか経っておら ず,多くが潜伏期にある!線では 5 なく面的な影響を受ける! 凍結防止剤によるRC床版の劣化 融雪剤の影響を受けて劣化した実RC床版 40mm アスファルト舗装 35mm アスファルト舗装 水平クラック 土砂化 防水工 (塗膜系、シート系) 塩分浸透 深さ 融雪剤の影響を受けて劣化したRC床版のイメージ図 6 対策 • • • • • • 橋面防水(床版への水の侵入を抑止) 縦桁増設(床版支間の減少) 鋼板接着(剛性の増加) 炭素繊維シート補強(変形の拘束,はく落防止) 床版上面(下面)増厚(剛性の向上) 部分あるいは全面打替え等 7
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