Document

[Last Update 2015/04/30]
建築環境工学・建築設備工学入門
<給排水・衛生設備編>
<排水通気設備>
雨水排水設備
2
雨水排水とは
建物の屋根など、敷地内に降る
雨は隣地や道路に流出させず
敷地外に排除し、敷地内に滞留
しないようにする。
雨水は放流・貯留(調整放流)・
浸透・再利用等により処理する。
雨水が滞留すると、臭気やボウフラ等
の幼虫が発生し周辺環境が悪化する。
雨どい
再利用
便器の洗浄水等
で利用する。
隣地や敷地外に出さない
グレーチング
トラップ桝 雨水桝
浸透桝
再利用設備
放流
浸透
貯留
下水道や河川の流下能力に対応させるため、
一次貯留して放流の調整を行う。
P
P
P
地下に雨水を浸透させ、
敷地外への流出を抑制する。
雨水排水配管の禁止事項
①専用配管とする
建物内では排水管・通気管と
いった他用途の配管と接続し
ない。
③トラップを設置する
外構で排水管と接続する場合
は、臭気等が雨水配管を経て
侵入しないようにする。
②管径縮小の禁止
排水の流下方向で管径を縮小
してはならない。
出典:「環境と空気・水・熱」空気調和・衛生工学会「地球環境負荷削減パンフレット」
4
雨水排水管径の決定①(立て管)
雨水立て管の管径は、その雨水立管が受け持つ屋根
面積で決定される。
雨水立て管の管径(HASS 206-2000)
管径(mm)
雨水立て管A
敷地
屋根
900m2
150m2
50
67
65
135
75
197
100
425
125
770
150
1,250
200
2,700
注
1)屋根面積は、すべて水平に投影した面積とする。
2)許容最大屋根面積は、雨量100mm/hを基礎として算出した
ものである。したがって、これ以外の雨量に対しては、表の数
値に「100/当該地域の最大雨量」を乗じて算出する。
3)正方形または長方形の雨水立て管は、それに接続される流
入管の断面積以上をとり、また内面の短辺をもって相当管径
とし、かつ「長辺/短辺」の倍率を表の数値に乗じ、その許容
最大屋根面積とする。
屋根面積900m2に雨どい6本の場合、
1本の雨どいの受け持ち面積は150m2
この時の雨水立て管Aの管径は 75mm
最大雨量60mm/hの場合の許容面積は
ただし、表は雨量100mm/hの場合。
150m2
これ以外の場合は次式で求める。
時間最大雨量は地域によって異なる。
受け持ち面積×
許容最大屋根面積(m2)
当該地域の最大雨量
×
60mm/h
100mm/h
= 90m2
この時の雨水立て管Aの管径は 65mm
100mm/h
空気調和・衛生工学便覧 第13版 第6編 給排水衛生設備設計 第7章 排水通気設備 P.235
5
雨水排水管径の決定②(横枝管・横主管)
雨水横枝管・横主管の管径は立て管と同様に、その
雨水横枝管・横主管が受け持つ面積で決定される。
雨水横枝管・雨水横主管・敷地雨水管の管径(HASS 206-2000)
許容最大屋根面積(m2)
管径
(mm)
雨水立て管A
敷地
屋根
900m2
150m2
1/25
1/50
1/75
65
137
97
79
75
201
141
116
100
100
306
250
125
554
150
904
200
250
300
350
屋根面積900m2に雨どい6本の場合、
1本の雨どいの受け持ち面積は150m2
この時の雨水管Aの管径は 150mm(1/100)
一般的に排水管の勾配は≪1/管径mm≫程度を目安とする。
ただし、表は雨量100mm/hの場合。
これ以外の場合は雨水立て管と同様に求める。
配管こう配
400
1/100
1/125
1/150
1/200
1/300
1/400
216
193
176
454
392
351
320
278
738
637
572
552
450
1590
1380
1230
1120
972
792
688
2490
2230
2030
1760
1440
1250
3640
3310
2870
2340
2030
5000
4320
3530
3060
6160
5040
4360
敷地雨水排水計画①(雨水流出量)
雨水は建物の屋根面の他、敷地内の外構部分にも降るが、隣地や道路に流出させず敷地外に排除する
ことが雨水排水の大原則である。
このため、敷地内の雨水排水を計画するには、敷地内の雨水流出量を算定する。
屋根面への降雨
敷地地表面への降雨
敷地内の雨水流出量
敷地地表面への降雨
Q=
1
360
CIA
Q=雨水流出量
[m3/sec]
C=流出係数
I=降雨強度
[mm/h]
A=排水区域の面積 [ha]
※1ha=10,000m2
6
7
敷地雨水排水計画②(流出係数)
流出係数(C)
Q=
降雨の一部は蒸発したり地下に浸透するため、
地表面の状態により乗じる係数のこと。
C=0.8
砂利道
路面
C=0.35
路肩・法面など
蒸発
浸透
砂質土の芝生
粘性土の芝生
流出量
:80
蒸発・浸透量:20
流出量
:35
蒸発・浸透量:65
流出係数は自治体によって設定されている場合がある。
360
CIA
地表面の工種別基礎流出係数(道路土工排水工指針より)
地表面の種類
アスファルト
1
流出係数
舗装
0.70~0.95
砂利道
0.30~0.70
細粒度
0.40~0.65
粗粒度
0.10~0.30
硬岩
0.70~0.85
軟岩
0.50~0.75
勾配0~2%
0.05~0.10
勾配2~7%
0.10~0.15
勾配7%以上
0.15~0.20
勾配0~2%
0.13~0.17
勾配2~7%
0.18~0.22
勾配7%以上
0.25~0.35
屋根
0.75~0.95
間地
0.20~0.40
芝・樹木の多い公園
0.10~0.25
勾配の緩い山地
0.20~0.40
勾配の急な山地
0.40~0.60
田・水面
0.70~0.80
畑
0.10~0.30
8
敷地雨水排水計画③(降雨強度)
降雨強度(I)
単位時間当たりの降雨量。各都市で異なり、自
治体によって設定されている場合がある。
I=
b
t+a
Q=
1
360
CIA
I=降雨強度 [mm/h]
t=流達時間 [min]
a,b=係数
■流達時間(t)
降雨が降雨地点から排水管を流下して雨水流
出量を算定する地点に到達するまでの時間。
◇流入時間(t1)
t=t1+t2
t1=流入時間
t2=流下時間
◇流下時間(t2)
排水区域の最遠隔地点から地表面を流れて排水
管に流入するまでの時間で5~10分。
一般的に5分を用いる。
排水管内を流下して雨水流出量を算定する地点に
到達するまでの時間。
一般的に管内平均流下速度は1.0~1.2m/secとする。
t1
t1
t2
雨水桝
[min]
[min]
雨水管
雨水桝
雨水桝
雨水管
雨水桝
敷地雨水排水計画④(マニングの式)
9
敷地排水管の管径と勾配は雨水流出量からマニングの式にて決定する。
※汚水排水系と合流する場合は、汚水排水量[m3/sec]との総量により決定する。
マニングの式
V=
1
n
R
1/3
I
Q= AV
1/2
V=流速
[m/sec]
n=粗度係数
R=径深(流水の断面積A/流水の潤辺長P)
I=勾配(小数※1/100の場合0.01)
Q=流出量
[m3/sec]
■粗度係数(n)
コンクリート管 :0.013
硬質塩化ビニル管:0.010
■径深(R=A/P)
A=流水の断面積
P=流水の潤辺長
(ぬれ面長さ)
径深
(A/P)
断面積A
潤辺長P
径深を著しく深く、または浅くしてはならない。
×〇×
深い
浅い
通気帯が確保できず
有効に流れない
固形物等が滞留する
管径の50%程度が
径深の目安
敷地雨水排水計画⑤(排水管径・勾配の決定)
10
敷地排水管の管径と勾配は、実際にはマニング
の式による早見表を用いて決定する。
勾配の表記について
A
B
1m
100m
A~B間
・距離 :100m
・高低差:1m
の場合、
A~B間の勾配は
1/100=0.01=1%
分数
小数
百分率
Q流出量=0.02m3/secの場合、
管内平均流下速度は1.0~1.2m/secとするので、
150mm、1.1%(1/91)
‰(パーミル)とは?
千分率のことをいい、1/1000=1‰となる。
即ち、
1‰=1/1000=0.001=0.1%
1/100=0.01=1%=0.1‰
出典:横浜市排水設備要覧 http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/gesui/youran/
排水管径・勾配選定時の留意事項
敷地外の下水道本管または雨水本管に直接
接続できることを原則とする。
(勾配を急にしすぎない。)
道路等
敷地内
下水道管
排水管内に雨水や固形物が滞留しないよう
にする。
(勾配を緩やかにしすぎない。)
管内平均流下速度
1.0~1.2m/sec
敷地外の下水道本管または雨水本管に
接続できる管径とする。
(下水道本管または雨水本管より太くしない)
敷地外の本管に自然勾配で接続できない場
合や地下の排水などは、排水槽を設けて一
旦貯留し、ポンプにより排水する。
(自治体によっては排水槽を設け、夜間放流
を義務付ける場合がある)
〇
×
接続管が太すぎると本館の断面欠損が大
きくなり接続できない
11
発 行
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
(SHASE: The Society of Heating, Air Conditioning and Sanitary Engineers of Japan)