幻灯片 1

中級日本語
第20課 誤差
吉林華橋外国語学院
日本語学部 製作
第20課 形式段落
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第1段落 (話題提示:逆カルチャーショック)
一年余りの外国暮らしから戻ってくると、「逆カルチャーショック」を
感ぜずにはいられない。
第2段落 (話題の例示①:逆カルチャーショックの例①)
私が暮らしていた所では飛行機や汽車が十時間以上も遅れること
は大して珍しくもないが、一度もおわびを聞いたことはなかった。
第3段落 (話題の例示②:逆カルチャーショックの例②)
テレビでマラソンの実況を見ていたら、アナウンサーが折り返し点
までの距離をセンチ単位まで説明していた。
そのテレビ番組にしても、一秒の狂いもなく進行していく。
第20課 形式段落
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第4段落 (筆者の意見①:日本の正確を尊ぶ精神について)
ゆったりとした外国の生活に慣れていると、それがだんだん鼻につ
いてくる。
第5段落 (筆者の意見②:日本を覆うセカセカした空気について)
自動車や集積回路にこの精神が反映されているうちはよいが、日
常生活まで支配されるのはやり切れない。
第6段落 (話題の展開①:スウェーデンの公害学者の意見)
「どこにいてもニセ公害病患者の話を聞かされたのにはうんざりし
た」
第20課 形式段落
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第7段落 (話題の展開②:日本人の「誤差」の捉え方)
日本人は「誤差」を悪として考えている気がする。
第8段落 (筆者の意見③:誤差について)
誤差は人間性にも生活のゆとりにもつながる面がある。
第9段落 (まとめ)
日本のように教育から行政まですべてを規格に押し込めて、一切の
はみ出しを排除するのも案外住みづらいものだ。
第20課 意味段落
1-3段落
6・7段落
筆者が逆カルチャーショックを
味わった例
日本の正確を尊ぶ精神についての
筆者の意見
スウェーデン公害学者の意見
8・9段落
誤差についての筆者の意見
4・5段落
第20課 本文 第1段落
一年余りの外国暮らしから戻ってくると、「逆カルチャー
ショック」を感ぜずにはいられない。大阪まで国内便に乗っ
たら、出発がわずか十五分遅れただけで、スチュワーデス
が丁重におわびのアナウンスをする。これを聞きつつ、「あ
あ、日本に帰ってきた。」という実感がわいてきた。
第20課 本文 第2段落
私が暮らしていた所では飛行機や汽車が十時間以上も遅
れることは大して珍しくもないが、一度もおわびを聞いたこと
はなかった。乗客も乗務員も、遅れるのは当たり前だと思っ
ているので、その必要もないのである。
第20課 本文 第3段落
テレビでマラソンの実況を見ていたら、アナウンサーが
折り返し点までの距離をセンチ単位まで説明していた。二
十キロ以上もの距離をセンチまで表示するのに、どれだけ
の意味があるのだろうか。そのテレビ番組にしても、一秒
の狂いもなく進行していく。番組が勝手に長くなったり早く
終わったりするテレビを見慣れていた目には、ショックであ
る。
第20課 本文 第4段落
能率、効率を追求し、正確を尊ぶ精神は、ただただ驚く
ほかない。今や世界中にあふれている日本製品の優秀性
もこの精神の発露にほかならない。だが、ゆったりした外
国の生活に慣れていると、それがだんだん鼻についてくる。
第20課 本文 第5段落
日本列島を覆っているセカセカした空気は、定規で引い
た直線の上を、どう少しもはみ出さずに競争しつつ走って
いくか、という努力から出ている気がしてならない。自動車
や集積回路にこの精神が反映されているうちはよいが、
日常生活まで支配されるのはやり切れない。
第20課 本文 第6段落
スウェーデンの公害学者が、ナイロビに本部のある国連
環境計画から派遣されて、大気汚染防止のための対策を
調べに来た。彼は、日本の公害対策が短時間に整備され
たのを賞賛しながらも、「どこにいてもニセ公害病患者の
話を聞かされたのにはうんざりした。」という。
第20課 本文 第7段落
大気汚染地区に指定されたら、ぜんそく患者の大部分
が公害病に認定されて、本来のぜんそく患者がいなくなっ
てしまった、といったたぐいの話である。「十万人もの患者
を認定すれば、当然そうでない患者が誤差として入ってく
るのは避けられない。日本人と話していると、どうも“誤差”
を悪として考えている気がする。」と感想を述べる。
第20課 本文 第8段落
電車のダイヤにせよ、工業製品にせよ、マラソンの距離
にせよ、人間活動のあるところに誤差が付きまとうのはや
むをえない。誤差がない方がよいのにはちがいないが、見
方を変えれば、誤差は人間性にも生活のゆとりにもつなが
る面がある。
第20課 本文 第9段落
私のいた国のトイレットペーパーのように、長さが二倍以
上も違う大きな誤差も困るが、日本のように教育から行政ま
ですべてを規格に押し込めて、一切のはみ出しを排除する
のも案外住みづらいものだ。