日語誤用分析 (大学院) 6月13日(月・一)~ 担当 神作晋一 第10章 言語習得に及ぼす個 人差の影響(2) 1.動機づけと第二言語習得 1.1 外国語学習に関わる動機づけの種類 1.2 学習者の動機づけを高める 2.学習者の性格は第二言語学習に影響するか 3.曖昧さに対する寛容性 4.学習ストラテジー 5.「不安]や「緊張感」の影響 6.個人差に関するまとめ 第10章 言語習得に及ぼす個 人差の影響(2) 「個人差」とは他に 動機づけ 性格(外向的、内向的) 学習の個人差(性格などの影響)を考えてみ る。 三段腹 1.動機づけと第二言語習得 1.1 外国語学習に関わる動機づけの種類 1.2 学習者の動機づけを高める 1.1 外国語学習に関わる動機 づけの種類 「動機づけ(motivation)」 統合的動機づけ やる気のある人の方が成功する どのような動機づけが必要か その言語を話す人々や文化を理解したい その文化や社会に参加したい 道具的動機づけ 試験に受かりたい いい仕事につきたい 社会的地位が向上する(ステータスstatus) 1.1 外国語学習に関わる動機 づけの種類 例:カナダのフランス語学習者 例:フィリピン・インドの英語学習者 統合的動機づけが大きく影響 道具的動機づけが高い学習者が高いレベルへ ⇒結果は一貫していない ⇒(長期的には)統合的動機づけの方が成功 しやすい 1.1 外国語学習に関わる動機 づけの種類 言語を学ぶ状況等により異なる 統合的動機付けがいい場合 道具的動機付けがいい場合 一人の学習者にどちらかしかない場合は希である。 「動機づけが高ければ上達する?」 動機づけの高い学習者が成績が良くなったのか (上達が見られた学習者が)上達したために学習 が面白くなって動機づけが高くなったのか、 ⇒両方の可能性「卵が先か、鶏が先か」 1.1 外国語学習に関わる動機 づけの種類 強い動機づけ ⇒良い結果につながる ⇒動機づけが維持、高まる 弱い動機づけ ⇒悪い結果になる ⇒動機づけが失われていく 1.2 学習者の動機づけを高める 「動機づけ」の研究 ⇒社会・文化的側面に行きすぎ 例:「試験に受かりたい/いい仕事につきたい」 例:「その国の人と仲良くなりたい」 ⇒日々の教室活動への興味や学習成果の満 足感 例:個人のニーズに関連しているか 例:興味の持てる教材か 例:(教室活動が)退屈ではないか 例:教師の教え方や人柄 1.2 学習者の動機づけを高める 「動機づけ」は一定ではない 学習が進んだ段階でやる気を失うこともある コースの途中から急に動機づけが上がる学習者も その日の活動や授業の種類によって変わることも ⇒例:「会話」や「作文」になるとやる気ナッシング ⇒動機づけは常に変動する 1.2 学習者の動機づけを高める 「動機づけ」は常に変動する 何かを「やろう」と思う段階(preactional stage) ⇒生み出される段階 動機づけを維持する段階(actional stage) ⇒維持していく段階 自分の学習を振り返る段階(postactional stage) ⇒満足感や達成感、勇気づけられるフィードバック それぞれ影響するものが違う (教師)どのように動機づけ、維持し、高めるか が課題 1.2 学習者の動機づけを高める 「日々の教室活動」そのものが関わっている 練習が単調ではないか 学習者にとって興味のあるトピックであるか タスクは簡単すぎ/難しすぎないか ⇒一つひとつが学習者の動機づけに関わる 1.2 学習者の動機づけを高める 内発的動機づけ 自分の内部から出てくる動機づけ 例:知りたいから、面白いから、楽しいから 外発的動機づけ 教育心理学などの分野 自分の外部から来る動機づけ 例:報酬がもらえる、どうしてもやらなければならない 教師の仕事・役割 教室内の活動に興味をもって取り組んでもらう 内発的動機づけを高めてもらう 1.2 学習者の動機づけを高める 適性や学習スタイルが合っているか ⇒適性や学習スタイルに授業が合っていなければ、 学習者の動機づけが下がってしまう。 ⇒研究結果に反映している 適性や学習スタイルに配慮することは、動機づ けの観点からも大切なこと 1.2 学習者の動機づけを高める 「動機づけ」は教師が変えられる!? 動機づけは変えられる 言語適性やスタイル(認知の仕方等と関連)、年齢 等は変えられない 教師が高めることも、下げてしまうこともありうる。 学習者の動機づけを高める授業に注目 例:読解教材、「読ませたい」より「(学習者が)興味 を持つか」という観点 2.学習者の性格は第二言語学 習に影響するか 2.学習者の性格は第二言語学習 に影響するか 「性格」の影響・有利不利はあるか →話し好きな人や社交的な人は上達が早い? →外向的な性格と、内向的な性格 結果は分かれる・一貫しない 外向的な方がコミュニケーション能力を測るテスト でよい結果/違いはなかったというものも 外向的な方が流暢だが、正確さは内向的な方に 勝るわけではない。 2.学習者の性格は第二言語学習 に影響するか コミュニケーション能力のどの要素と関わるか 文法能力:文を構成するためのもの 談話能力:一文レベルを越えた談話を作るの 社会言語能力:相手や状況に応じて適切な言 語使用をするためのもの 方略的能力:コミュニケーションを進めるため のストラテジー能力 2.学習者の性格は第二言語学習 に影響するか コミュニケーション能力のどの要素と関わるか 外向性 文法能力・談話能力・社会言語能力とは関係がない 方略的能力と関係がある ⇒コミュニケーション上の障害を克服する方法 例:他の言葉に言い換える、身振り手振り、聞き返し、 確認 コミュニケーション・ストラテジー(communication strategy)※ストラテジー能力が高いので流暢といえる 2.学習者の性格は第二言語学習 ストラテジー能力に頼りすぎると… に影響するか 学習の初期段階で文法の正確さの高い学習者の方 が(語彙力や流暢さのある学習者より)、その後の学 習で伸びを見せる ⇒語彙とストラテジーに頼りすぎると(長期的には)中 間言語発達に不利 話したいという志向の学生の方が、ブロークン (broken)になりがちである 積極的(外向的)な学習者の方が有利だが、言 語発達への過信は禁物 意味交渉やフィードバックが得られやすい ブロークンになりがち 3.曖昧さに対する寛容性 3.曖昧さに対する寛容性 曖昧さに対する寛容性(tolerance of ambiguity) ※第二言語発達に影響がある ⇒はっきりとした答えが得られず、あいまいさが残 っても、不満、不安やフラストレーションを起こさず にいられること ⇒言語のルールはすべて明確に説明できるも のばかりではない。 3.曖昧さに対する寛容性 曖昧さに対する寛容性(tolerance of ambiguity) 例:「~んです」:「どこへ行くんですか」「今日はちょっ と忙しいんです」 ⇒教える側にとってもその意味や機能を明確に示す ことは難しい ⇒どんな状況でどんなことを表すために使われ るかを何となく感じた状態で我慢し、インプットに 触れながら徐々に学んでいく 例:母語に当てはめるとどうなのか、というような欲求 への忍耐 3.曖昧さに対する寛容性 言語の学習は「曖昧さ」の連続である しかし、寛容性が高すぎることも言語習得 にはマイナスになる ⇒寛容性の高い学生が有利といえる 「なんとなく…」「ポイントだけ…」となると「正確 さ」への志向が育たず、中間言語の発達につ ながらない。 適度な曖昧さへの寛容性 3.曖昧さに対する寛容性 寛容性の低さによる学習時の不満や不安 曖昧さへの寛容性の低さから来る学習スタイル が学習の仕方に影響する ⇒文法書の解説のような説明を求める者も。すぐ 辞書に行く ⇒練習やインプットからの気づきが少なくなる ⇒インプットを聞く量が減る、コミュニケーション練 習が少なくなる、インプットの理解による自然な習 得が起きにくかったりする 習得を阻害する 3.曖昧さに対する寛容性 母語には訳せないような言語形式 (ここでは日本語のこと) 母語では言わない、母語にも英語にも訳せないよう なものがいろいろある。 ⇒「言葉を学ぶためには曖昧さへの寛容性というも のが必要だといわれている」と伝える Had better ~たほうがいい ~しないとただじゃすまないよ脅し 4.学習ストラテジー 4.学習ストラテジー 学習ストラテジー(strategy) 自分の学習をより効果的に進めるためにとる方略 例:英単語の覚え方 wednesday「ウエドネスデイ」 水曜日 さまざまなストラテジーを使用 学習者の使用ストラテジーを調査・研究 4.学習ストラテジー 学習者の使用ストラテジーを調査・研究 第二言語習得にどう影響するか どんなストラテジーが習得に効果的か 使用ストラテジーを分類 学習の成果との関係 優秀な人の使用ストラテジー ストラテジー使用をさせて効果を測定 4.学習ストラテジー レベッカ・オックスフォード(1990)の6分類 直接ストラテジー(習得に関わるもの) 認知ストラテジー 記憶ストラテジー 例:類推、母語に翻訳、ノート、発音 例:ゴロ合わせ、カテゴリー、語源 補償ストラテジー 例:文脈から推測、他のことばで補う 4.学習ストラテジー レベッカ・オックスフォード(1990)の6分類 間接ストラテジー(環境設定) メタ認知ストラテジー 情意ストラテジー 例:学習計画、目標設定、正しく評価 例:自身を勇気づける 社会的ストラテジー 例:質問する、友達を作る 4.学習ストラテジー 使われる学習ストラテジーと言語発達の関係 現在、よくわかっていない。どうトレーニングしたら いいか、言語習得を促進するか、わからない。 学習スタイルとのかかわりがある。 ⇒分析的な学習者は分析的に行うストラテジーを 取るなど ⇒別のトレーニングをしても自身のスタイルに合わ ないと効果が出ないかも。 学習者のスタイルに合わせたストラテジーが必要 まだまだ、研究が必要。 4.学習ストラテジー どんな母語話者がどんな言語を学ぶか 近い言語同士は、母語に置き換えて考えるとかな りの部分は成功する ⇒例:英語とフランス語、日本語と韓国語 英語と日本語のような遠い(タイプの違う)言語 ⇒上手くいかないことがある。切り替えが必要。 ⇒それでも学習者は経験から母語に置き換える ストラテジーを取ってしまうことがある 良いとされるストラテジーではなく、個々の学 習者が自律的に自分に合う学習ストラテジー を選んで学習していくための手助けをする 5.「不安」や「緊張感」の影響 5.「不安」や「緊張感」の影響 「不安(anxiety)」※第二言語の成果に影響 教室での不安(恥ずかしさ、緊張) コミュニケーション上の問題(緊張、真っ白) 不安な心理状態で学習が阻害される フィードバック、学習スタイル 「情意フィルター仮説」:動機づけが高く、リラック ス、不安を感じていない状態 5.「不安」や「緊張感」の影響 「不安(anxiety)」の種類 「コミュニケーション不安」:コミュニケーションが上 手くいくかどうか 「テスト不安」:テストでいい成績が取れるかどうか 「評価不安」:周囲の人から否定的な評価を受ける 不安の個人差 特定の教室活動(例:グループワークなど) 5.「不安」や「緊張感」の影響 「不安」と第二言語学習の成果の関係(研究) 「抑制的不安(debilitative anxiety)」 悪影響と考えるが、促進するという主張も 学習の妨げとなる 「促進的不安(facilitative anxiety)」 学習を促進する(適度な緊張により頑張る原動力) 「促進的不安」の効果を見た研究はほとんどなく、 不安はやはり学習を阻害するものだとする意見も 5.「不安」や「緊張感」の影響 「不安(緊張tension)」と習得促進 例:フランス語のイマージョンのクラス 教室での「緊張」は場面によって、プラスになったり マイナス(阻害)になったりする。 「適度な緊張」に関する研究が必要 習得を阻害するような不安のない教室にはしたい が…。 6.個人差に関するまとめ 6.個人差に関するまとめ 外国語学習の成否と個人差の関係 はっきりとした結果は出ていない 様々な側面があり、ある部分だけを測定して もわからない 個人差にどう対応していくか 個人差との「格闘」ではなく「共存」 個々の学習スタイル、適性、性格の違いを踏 まえ、言語発達にどうかかわるか。 第10章のまとめ まとめ 1.学習者の動機づけ 2.学習者の性格との関係 日々の教室活動とのかかわり 段階(生み出される、維持される、高められる)に応 じて、どのように教師が関わっていくか。 はっきりわからない。ストラテジーを使う能力と。 3.学習ストラテジーと言語発達の関係 訓練が必要かどうかも不明 学習者に合った学習ストラテジーの使用で成果は 上がるだろうと考えられている。
© Copyright 2024 ExpyDoc