橋梁エラー事例の技術的分析 ◆ 単純エラー 事例1 座標・高さ・角度に関するエラー 事例2 鉄筋コンクリート橋脚の中間帯鉄筋 事例3 鋼桁ブラケット取付部の構造詳細 事例4 フーチングの形状寸法設定 事例5 曲線橋梁の登坂車線部の横断勾配 事例6 工程管理及び照査の不備による数量記載漏れのエラー 事例7 中小橋(斜橋)における落橋防止構造の省略の適用に関するエラー 橋梁 1 ◆ 技術的判断エラー 事例8 B活荷重対応のPC桁補強設計 事例9 既設橋脚の耐震補強設計 事例10 杭の根入れ長の検討不足 事例11 仮設工設計における連携不足 事例12 橋脚の施工時温度応力 事例13 既設橋脚へのアンカー削孔 事例14 河川部橋台基礎の極限支持力 事例15 鋼管杭基礎の材質選定に関するエラー 事例16 鋼管矢板基礎の仮設時残留応力計算時の設定水位エラー 事例17 液状化地盤におけるフーチング床付け高選定エラー 橋梁 2 事例-1.座標・高さ・角度に関するエラー 橋梁 3 エラーの内容 資料収集段階 ① 旧資料を使用してしまった ② 設計途中で線形データの変更があった ③ “ブレーキ” があるのを見逃した 橋梁 4 線形ソフトへの入力段階 ④ 座標値を入れ間違えた ⑤ 角度の +,- を逆に入れた ⑥ 設計途中段階で ・ 上部高形状(桁配置、高さ) ・ 支承形状 (種類、配置、高さ) の変更があったが、連絡不十分のため 適切に対応できず 橋梁 5 出力から成果品化への段階 ⑦ 支承アンカーボルトの箱抜き位置や標高 を間違えた ⑧ 上部工計画高から追っていくと、 下部工天端高が合わない ⑨ 上部工と下部工の図面それぞれの数値が 合わない 橋梁 6 照査方法・対応策 資料収集段階 ・ 打合せ用の確認資料として「線形・座標関係 要素図」を作成し、発注者に確認(図-1) 橋梁 7 橋梁 8 線形ソフトへの入力段階 ・ エラー④,⑤ 図化可能な市販道路線形ソフト(APSなど)に より求めた座標をDXF等に変換して図化。 これをAutoCAD等で作成した一般図に貼付け、 合成させたときのズレによりエラーを確認(図-2) ・ エラー⑥ 上・下部工担当者どおしの連絡体制を強化し、 打合せ簿による最新情報を確認する等をシステ ム化 橋梁 9 橋梁 10 出力から成果品化への段階 ・ 上部工線形図の構造高内訳表の統一を 図り、図中での表示を義務づける (図-3) 橋梁 11 橋梁 12 出力から成果品化への段階 ・ 下部工構造図に上部構造を加え、寸法表示を モデル化 (図-4) 橋梁 13 橋梁 14 出力から成果品化への段階 ・ 支承図の作成を義務づけ、寸法表示をモデル 化 (図-5) 橋梁 15 橋梁 16 出力から成果品化への段階 ・ 確実に照査が実行されたことを確認できるシ ステムを構築 (表-1) 橋梁 17 橋梁 18 事例-2.鉄筋コンクリート橋脚の中間 帯鉄筋に関するエラー 橋梁 19 概 要 ・ 鉄筋コンクリート橋脚等のじん性の向上 ・ じん性向上に最も大きな役割を果たすのが ① 帯鉄筋 ② 中間帯鉄筋(横拘束鉄筋) 橋梁 20 橋梁 21 ① 帯鉄筋の機能 ・ 主鉄筋などの軸方向鉄筋の座屈を防止 ・ 内部(コア)コンクリートを横拘束 ・ せん断補強機能を通じて、橋脚の大地震 作用時におけるじん性を向上 橋梁 22 ② 中間帯鉄筋の機能 ・ 帯鉄筋のはらみだしを抑える ・ 帯鉄筋の機能発揮を確実にする 橋梁 23 橋梁 24 エラーの内容 ・ エラーの大半は、中間帯鉄筋の設定寸法(長 さ)の誤りにあった ・ 主鉄筋列間隔のみを考慮し、その外側に位 置する帯鉄筋の存在を見落としてしまった ・ この場合、拘束可能な対象鉄筋は帯鉄筋で はなく、その内側の主鉄筋(軸方向)となって しまう ⇒ 横拘束効果の不足 橋梁 25 橋梁 26 エラー原因の分析Ⅰ ① 設計者の耐震構造細目への理解不足 ・ 橋脚のじん性を向上させるための帯鉄筋の役割 ・ その機能発揮を確実にするための中間帯鉄筋の 役割 を理解していない場合、中間帯鉄筋を短絡的に主 鉄筋に引っ掛ける形としてしまうことが起こりえる 橋梁 27 エラー原因の分析Ⅱ ② 設計者の単純エラー ・ 配筋図上では、帯鉄筋寸法よりも主鉄筋に 着目した基本寸法表示をする場合が多い ・ このため、帯鉄筋の直径寸法の存在を失念し、 基本寸法表示のみに沿って中間拘束筋を決定 してしまう 橋梁 28 エラー原因の分析Ⅲ ③ 施工現場での帯鉄筋、中間帯鉄筋機能 への理解不足 ・ 中間帯鉄筋は “最も外側の帯鉄筋” に引っ掛ける という理解があれば、仮に設計図に誤りがあった 場合でも、鉄筋の加工・組立て前にその事実が明 らかになり、事態の改善が可能に ・ 逆の場合、たとえ設計図面が正しく表示されてい たとしても、 “最も外側の帯鉄筋” ではなく、主鉄筋 (軸方向鉄筋)に引っ掛けてしまう可能性を排除で きない 橋梁 29 改善策Ⅰ (1) 原因①に対して 鉄筋コンクリート橋脚などに的を絞った、 ・ かなり具体のレベルまで取り扱った耐震設計 に関する手引き集 ・ 留意事項集(チェックリストなど)等の整備 ・ これらを用いたCAD図面作成技術者への 教育 橋梁 30 改善策Ⅱ (2) 原因②,③に対して 鉄筋引っ掛け部ディテールの常時記載 ・ ディテールの設計図上への常時記載(図-2)を 義務づけ ⇒ 設計者自身のポカミスを防ぎ、 施工者への設計者のメッセージを確実に伝達 ・ これにより、仮に設計図にエラーがあったとして も、設計や施工現場での早期発見・対策実施・ 損害発生の抑止が可能に 橋梁 31 改善策Ⅲ (3) 適切な照査活動 詳細設計照査要領などを活用した設計図書の 適切な照査活動が、この種のエラー発生の抑制 に効果的 橋梁 32 <参考:現行示方書基準> ① ② ③ ④ ⑤ 拘束対象となる帯鉄筋と同材質、同径とする。 断面内配置間隔は1m以下を原則とする。 帯鉄筋を配置するすべての断面において配置する。 帯鉄筋への引掛け部にフック(半円形または鋭角)を付ける。 直角フック→千鳥配置/横拘束効果の低減(横拘束有効長を1.5倍)を考慮す る。 ⑥ 帯鉄筋の継手に直角フックを用いる場合、継手位置に半円形または鋭角 フックの中間帯鉄筋を設ける。 ⑦ フーチング内部、梁内部には中間帯鉄筋を配置する必要はない。 ⑧ 塑性ヒンジとならない、確実に弾性領域内である場合、単柱式橋脚の塑性ヒ ンジ長の4倍の区間以外は、帯鉄筋間隔を300mmとしてもよい。 橋梁 33 橋梁 34 事例-3.鋼桁ブラケット取付部の 構造詳細エラー 橋梁 35 設計概要 ・ 鋼連続曲線箱桁の詳細設計 ・ 1箱桁形式でブラケット・側縦桁を有する構造 橋梁 36 エラーの内容 ブラケット取付部の 構造詳細 が不適切 ブラケット取付部は 2軸応力状態 の照査が必要 橋梁 37 主げたフランジとラーメン横ばりのフランジが直接連結される場合等のよ うに、主げたに2方向の応力が加わる部分の応力度は、式( 10.2.5)を満足 するものとする。 σx 2 σx - σa σa σy σy 2 τ + + σa σa τa 2 ≦ 1.2 ………(10.2.5) ここに、 σx ,σy :照査する箇所で互いに直交する方向に生じる垂直応力度、 ただし、引張応力度を正、圧縮応力度を負とする。( N/mm2) τ:照査する箇所に生じるせん断応力度(N/mm2) σa :3.2.1 に規定する許容引張応力度(N/mm2) τa :3.2.1 に規定する許容せん断応力度(N/mm2) 橋梁 38 エラーの内容 設計では、2軸応力の照査を実施し、 2軸応力の影響を緩和する構造としていた しかし、設計図には反映されなかった 橋梁 39 橋梁 40 エラー発生原因の分析 ① 設計者と作図者のコミュニケーション不足 ② 作図者の技術力、及び知識の不足 ③ 照査の不徹底 橋梁 41 改善策 ① 担当者間の情報共有、コミュニケーションの確保 ② 担当者の技術力、知識の向上 ③ 確実な照査システムの確立 橋梁 42 事例-4. フーチングの形状寸法設定 橋梁 43 設計概要 斜面上の深礎杭を有する橋台 橋梁 44 エラーの内容 概略検討でフーチング厚を決めた後、詳細設計 で後列の杭頭鉄筋がD29からD32に変更 前列側の杭頭鉄筋のみに着目し、後列の変更を 見落としてフーチング厚は変更せず 橋梁 45 橋梁 46 エラー発生原因の分析 ① 設計者の思い込みによる単純エラー ② 設計者の経験が却って油断を招いたケース ③ 早期工事発注に伴う照査の不徹底 ④ 第三者によるチェック機能が作動せず 橋梁 47 改善策 ① 経験に奢らず、決定ケースを正確に把握 ② 各部材の取合い部には相手方の姿図を表現 ③ 照査機能の充実 ④ 作業分担した場合はクロスチェックを確実に ⑤ 設計エラーをデータベース化して共有 橋梁 48 事例-5.登坂車線を有する曲線橋梁の 横断勾配変化時におけるエ ラー 橋梁 49 設計概要 対象橋梁: 3径間連続曲線橋の詳細設計 特 徴: ① 山岳地の2車線道路で縦断勾配の値 が大きく、登坂車線を設置 ② S字の平面曲線部に位置し、横断勾配 が変化 6% ~ 0% ~ -5% (反転) 橋梁 50 エラーの内容 ① 橋梁区間内で横断勾配が1.5%~6%に変化 ② 登坂車線の最大横断勾配は4%(道路構造令) であったが、一般車線部と同勾配で変化させた ③ 本来、横断勾配の変化に対し、床版あるいはハ ンチ、舗装での調整が必要であったが、気づか ずに桁配置、床版図面を作成 橋梁 51 橋梁 52 エラー発生原因の分析 ① 設計担当者の知識不足 ② 道路線形担当者と橋梁設計担当者の コミュニケーション不足 ③ 照査不足 橋梁 53 改善策 ① 設計者に対する教育(教育管理業務など実施) ② 設計者間の確実な情報伝達 ③ 設計でのリスク管理 橋梁 54 事例-6.工程管理及び照査の不備に よる数量記載漏れのエラー 橋梁 55 設計概要 対象橋梁:JRを跨ぐ多径間連続鋼床版箱桁橋 特 徴: ① 鋼床版上に防護柵を設置 ② 定着鉄筋を鋼床版上に溶植 ただし、現場溶接箇所は現場溶植 橋梁 56 橋梁 57 エラーの内容 ① 現場溶植スタッドの図面・材料記載モレ ② 工場製作時の照査モレ ③ 通常は現場でスタットを溶植するところに図面表 記がないと現場から指摘された 橋梁 58 エラー発生原因の分析 ① 図面作成時の単純ミス ② 工程管理及び社内審査の不備 ③ 製作メーカーでの照査漏れ 橋梁 59 改善策 ① 工程管理を細やかに実施 ② 社内審査を確実に実施 ③ 照査の重大性の再認識 ④ 「単純であればあるほど間違い易い」ことを再認識 橋梁 60 事例-7.中小橋(斜橋)における落橋防 止構造の省略の適用に関するエラー 橋梁 61 設計概要 対象橋梁:中小河川を斜めに横過する市道橋 の詳細設計 ①斜角 62度 ②橋長 19.5m 橋梁 62 エラーの内容 ① 落橋防止構造の省略適用 ※斜角(62度)の場合は適用外 ② 変位制限装置の過大耐力 ※1.必要桁かかり長が大きくなると思い込み 変位制限構造→落橋防止装置にランクアッ プすることで対応 ※2.実際は支承座幅にて十分対応可能であっ た 橋梁 63 エラー発生原因の分析 ① 落橋防止構造の省略適用 ・斜角が小さい場合の適用外の見落とし ② 変位制限装置の過大耐力 ・過去の経験からの安易な判断 橋梁 64 改善策 ① 経験に頼らず、特殊性を考慮した照査実施 ② 同種事例を参考にする ③ 第三者による照査の徹底 橋梁 65 事例-8. B活荷重対応のPC桁補強 設計 橋梁 66 設計概要 ・縦断変更で路面の嵩上げ ・B活荷重対応での補強検討 橋梁 67 エラーの内容 ① 炭素繊維補強が既設分の死荷重に対して有効 としていること ② 増厚コンクリートが既設分の死荷重に対して有 効としていること ③ せん断力の照査を省略していること 橋梁 68 エラー発生原因の分析 ① 補強後の断面が全荷重を負担すると思い込み 橋梁 補強設計は合成桁と同様の設計方法となる 69 橋梁 70 ② コンクリート硬化前でも荷重を受け持つと勘違い 橋梁 補強コンクリートも硬化前は死荷重に過ぎない 71 橋梁 72 ③ せん断力の照査は不要と勘違い 当初設計の適用示方書においては、スラブ桁の せん断力の照査は省略できたことから、補強設 計においても同様と勘違い ⇒ 基準の変遷 橋梁 73 改善策 ① 補強材は、補強後の荷重に対して有効と理解 ② 補強コンクリートの自重は既設部材が負担と理解 ③ 基準の変遷と内容を理解 ④ 補強設計は高度な判断を要することを認識 橋梁 74 事例-9. 既設橋脚の耐震補強設計 橋梁 75 設計概要 RC巻き立て工法による 橋脚耐震補強設計 橋梁 76 エラーの内容 補強前の橋脚剛性で設計水平震度を算出 RC巻立て後の断面で震度を算出すべき 剛性 ⇒ 大 固有周期 ⇒ 短 設計水平震度 ⇒ 大 必要な耐力を確保できない 橋梁 77 固有周期と設計水平震度の関係 橋梁 78 エラー発生原因の分析 ① 「つい、うっかり」のエラー? ② 固有周期と設計水平震度の関係の理解度 が不足 (補強により構造特性が変化) ③ ベテランの「経験」が逆に災いか? ④ 第三者によるレビュー不足 橋梁 79 改善策 ① 耐震設計における固有周期の重要性を周知徹底 ② 構造系の固有周期が変わる要因をOJTで教育 ③ 「固有周期-設計水平震度の関係図」を照査シス テムに追加 ④ 必ず第三者の目を通すことの重要性を再確認 橋梁 80 事例-10.杭の根入長の検討不足 橋梁 81 設計概要 ・ 山間部の谷間に計画された高架橋 ・ 斜面部は地層構成や支持層位置が不明瞭 橋梁 82 エラーの内容 ① 支持層への根入れ長の検討不足(橋脚) 橋脚基礎は全旋回型の場所打ち杭 杭径は1.0m,支持層(軟岩)への根入れは 杭径の4~5倍 工事発注後、発注者より 「根入れが大きすぎる」と指摘 橋梁 83 杭径と根入れ長をパラメータとした検討を 実施していない 杭径を大きくし、根入れ長を短くしたほうが経済的 基礎の設計のやりなおし 橋梁 84 ② 杭先端位置の選定エラー (橋台) 斜面上の橋台基礎は杭径3mの深礎杭 支持層は7m程度確認された N>50の砂礫層 調査ボーリングでは砂礫層の下に 粘性土の一部を確認 橋梁 85 安定するまで杭長を伸ばした 杭先端と粘性土の土かぶりが1m未満 再調査し、基礎の設計をやりなおした 橋梁 86 橋梁 87 エラー発生原因の分析 ① 機械的にやみくもに設計? ② 「設計者」ではなく「計算屋」? ↓ ex) 地盤の性状や力学的な性質を、 鋼やコンクリートの物性値と同様に とらえてはいないか? ③ 第三者によるチェック、レビューの不足 橋梁 88 改善策 ① OJT で上級技術者の指導 ↓ ・ マクロ的な見方、判断を学習 ・ 全体一般図(柱状図明記)で総合的視点を ② 「設計者」としての意識改革 ③ 必ず第三者の目を通すことの重要性を 再認識、徹底 橋梁 89 事例-11. 仮設工設計における連携不足 橋梁 90 設計概要 ▽ 帯水層の被圧水位 ▽ 現況河床高 AP+3 .338 2268 湧水発生 AAP-2 c .188 ▽ 掘削底面 12870 2800 12500 8348 2280 1000 9180 4152 N= 0 γ=1 .54 tf/m3 900 鋼矢板Ⅳ型 L=12500 5100 A s c N=23 γ=1 .80 tf/m3 地盤のゆるみから 水みちがつ くられた D s1 N=48 γ=1 .90 tf/m3 被圧 された地下水 ・ 被圧された地下水をもつ砂層へ杭を根入れ 橋梁 5550 D c N=18 γ=1 .60 tf/m3 91 エラーの内容 仮締切りの設計 仮桟橋の設計 担当者が別で、お互いの影響を考えず 仮桟橋の支持杭から被圧水が湧出 橋梁 92 エラー発生原因の分析 ① 設計担当者間のコミュニケーション不足 ② 施工計画全体を通してのチェックが不足 ③ 被圧水による影響を軽視 ④ 施工計画に要領、注意事項の明記がない 橋梁 93 改善策 ① 設計者間のコミュニケーションを図る ② 施工現場に関する経験を積むような教育 ③ 施工に関するチェックリストの作成 ④ 施工計画書へ注意事項、想定される事故対 策を記述 橋梁 94 事例-12. 橋脚の施工時温度応力 橋梁 95 設計概要 ・ コンクリート打設リフトとひびわれ状況 橋梁 96 エラーの内容 幅29.5m,壁厚2.6mの橋脚を設計 景観を考慮してひびわれ誘発目地を省略 6mの高さを一度にコンクリート打設 開口部から橋座面までひびわれが発生 橋梁 97 エラー発生原因の分析 ① 開口の影響を考慮せず ② コンクリート打設時の温度応力への配慮不足 ③ 設計時でのマスコンクリートへの配慮不足 橋梁 98 改善策 ① 設計時に施工時の課題を把握 ② 施工時の課題を発注者へ十分説明 ③ 施工時の注意点を設計図書に明記 橋梁 99 事例-13.既設橋脚に対する穿孔に ともなう主鉄筋の誤切断 橋梁 100 設計概要 ・ 既設橋梁への落橋防止装置の設置 ・ 落橋防止装置の形式は橋脚~上部工連結方式 橋梁 101 エラーの内容 既設図面どおり構築されていると判断 机上で配筋図からケーブル位置を検討 鉄筋に近接した位置にケーブル配置 現場で計画図面どおりケーブル削孔実施 既設橋脚の鉄筋を誤切断 橋梁 102 エラー発生原因の分析 ① 現場施工・精度に対する知識不足 ② 上級技術者とのコミュニケーション不足 ③ 施工者の留意事項の伝達不足 ※図面に特記事項なし 橋梁 103 改善策 ① 設計者への現場施工知識の教育 ② 上司(上級・経験技術者)との連携強化 ③ 設計でのリスク管理 設計におけるリスクの認識 (なにが問題となり得るかの認識) 橋梁 104 事例-14 橋台直接基礎の極限支持力 算出に関するエラー 橋梁 105 設計概要 ・ 河川堤防部への直接基礎橋台の設置 橋梁 106 エラーの内容 ① 直接基礎の支持力を道路橋示方書の極限 支持力式で算出 1 1・ Q u = A eα ・ κ ・ c ・ N c ・ S c + κ ・ q ・ N q ・ S q + γ β ・ B e ・ N γ ・ S γ 2 ② 有効根入れを橋台前面での根入深さで設定 ③ 本来は、河床等の最深部での根入れ深さでの 設定が正解 ④ したがって、支持力不足となる 橋梁 107 橋梁 108 エラー発生原因の分析 ① 使用計算式の理論的背景の理解不足 ② 上司(経験技術者)とのコミュニケーション不足 ③ 照査不足 橋梁 109 改善策 ① 設計者への教育 ② 設計ソフトウェアへの安易な数値入力を避ける ※入力パラメータの意味を理解する ③ 経験技術者の照査、チェックの強化 橋梁 110 事例-15 鋼管杭基礎の材質選定に関 するエラー 橋梁 111 設計概要 ・道路橋の詳細設計 ・中堀鋼管杭基礎採用(材質:SKK400材) 橋梁 112 エラーの内容 ① 材質SKK400材 t=16mm採用 ② しかし、材質SKK490材 t=12mm が安価 橋梁 113 エラーの原因分析 ① 設計者の理解不足 ※過去の設計では、杭に高強度の材質 を使用することが少なかった ② 規定・基準の改定認識不足 ③ 照査不足 橋梁 114 改善策 ① 使用材料・製品等の情報に対する対外・社 内研修の実施、社内情報データの整備 ② 道路橋示方書改訂の教育・講習 ③ 成果品のレビューを確実に実施 橋梁 115 事例-16 鋼管矢板基礎の仮設時残留 応力計算時の設定水位エラー 橋梁 116 設計概要 ・河川内橋脚 ・鋼管矢板基礎採用 ・施工時最高水位と 平水位に差があり 橋梁 117 エラーの内容 ① 鋼管矢板(仮締め切り兼用)の断面計算は 下記とおりである。 仮設時残留応力度+設計荷重時応力度 ② 仮設時残留応力度は仮設時の土圧・水圧に て計算 ③ 水圧計算の水位を仮設時最高水位で設定し たため、過大な応力度となっていた ※河川状況・特性により異なる 橋梁 118 エラーの原因分析 ① 現場施工と設計計算の乖離 ② 条件設定時の配慮不足 ③ 経験技術者の照査不足 橋梁 119 改善策 ① 経験技術者による照査 ※特殊基礎等の場合は必須 仮設時の応力を考慮する基礎形式は 少ない ② 現場施工に関する教育 橋梁 120 事例-17 液状化地盤におけるフーチング 床付け高選定エラー 橋梁 121 設計概要 床付け位置を上げた案 床付け位置を下げた案 杭本数 8本 杭本数 8本 コスト比率 1.000 1.482 ・液状化地盤(DE=0)上に計画される 橋梁詳細設計 (黄着色部 As層) 橋梁 122 エラーの内容 ① 支承のみの選定比較で免震支承を採用 ② 免震支承採用にあたり、液状化層より下に フーチングの床付けを計画 ※不安定な地盤に基礎がある場合は、免 震設計不可 ③ ただし、仮締め切り等の仮設費を含めたトー タルコストを比較した結果、不経済な計画と なっていた ④ 最終的には、フーチングを上げ、かつ液状化層 がレンズ上であることから、免震支承を採用した (地盤解析により免震支承の有効性を確認) 橋梁 123 エラーの原因分析 ① 免震支承の採用のみの経済性に 着目し、フーチングの床付け高さを 下げることによる仮設費の増加を見 落としていた。 ② 地質調査の不足も含め、安全側設計 ということで、地層の状況・特性を十分 検討していなかった。 橋梁 124 改善策 ① 経済比較では、トレードオフの関係が常に存 在することを認識しておく ② 最終的には地質調査を追加して検討を行っ た結果、経済設計が可能となった事例であ る。 <地質調査は非常に重要であることから、 不足する場合は早期に調査追加提案を 行うことが重要> 橋梁 125 橋 梁 (ま と め) 事例集からみた 橋梁のエラーの特徴と留意点 橋梁 126 (1) 「詳細設計照査要領」の運用 橋梁 「照査要領」の確実・厳格な適用によりエ ラーを防止できたとする事例が多い ⇒ 適用の重要性の認識 「照査要領」を適用したにもかかわらずエ ラーを見逃した事例も多い ⇒ 照査行為の形骸化の回避 「照査要領」の適用ではエラーを防ぎきれな かった事例も存在する ⇒ 「照査要領」改善の必要性 127 (2) 「詳細設計照査要領」の改善 (a) 橋梁全体に共通する事項 ① ② ③ ④ 図面最終チェックが最終成果に反映されているか? 一般図に記入すべき事項は網羅されているか? 基準改訂時の要注意個所はクリアされているか? 配筋方法、加工図の表現方法などに目が行き届い ているか? ⑤ CADデータはチェック済みか?最新であるか? ⑥ 設計条件は設計時・施工時・将来計画のいずれにお いても妥当か? ⑦ 仮納品時においても事前照査はなされているか? 橋梁 128 (b) 上部・下部・基礎構造に関する事項 ① 鋼橋において、最終鋼重と仮定鋼重の差は妥当な 範囲にあるか? ② 免震・反力分散支承のバネ定数の設定は妥当か? ③ 落橋防止構造は上下部構造間で不整合はないか? ④ 既設橋の補強設計で最新基準の要求はすべて満た されているか? ……… 橋梁は複雑で多くの構造部分から成り、設計も 高度化。エラーは種々の局面で発生 おかしやすいエラーをシステマティックにリスト アップし、組織で継承していくことが肝要 橋梁 129 (3) 「詳細設計照査要領」以外での対応 「照査要領」では回避できないエラーの存在 ① 社員教育の継続的実施(若手技術者・施工 経験・示方書改訂時・既設構造物補強等の テーマで) ② 二重チェック体制の確立 ③ 図面・数量チェックシートの自主的な提出 ④ 段階的レビューによるエラーの事前予防/最 終成果の水際チェック 橋梁 130
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