第5章 振替価格 - 大阪大学 経済学研究科

第5章 振替価格
1振替価格の目的
2振替価格決定方法
基本原理
理想的状況
調達先への制約
制限された市場
コスト基準の振替価格
上流の固定費と利益
の単純化
3企業サービスの価格決定
サービス量についての管理
サービスのオプション利用
価格メカニズム
4振替価格の管理
交渉
鞘取りと衝突の解決
製品の分類
要約
1振替価格の目的
振替価格の目的
1)それは各事業単位に最適なトレードオフを会社の
コストと収益について決定するに必要な情報を提供す
る。
2)それは目標整合性を促す。事業部利益を改善さ
せる決定が全社の利益を改善する。
3)それは、個別の事業単位の経済業績を測定する
のに助けとなる。
4)それは、管理が容易で理解しやすい。
振替価格のデザインは大抵の企業にとってマネジメ
ントコントロールの中心的な課題である。
2 振替価格決定方法
ある研究者は振替価格を責任センター間での財とサービス
の振替で利用されるものとする。
我々はこれに制限をつけて利用する。すなわち、振替
価格は交換される組織の少なくとも1方が、利益責
任単位であるということ。
かかる価格は、利益要素を含む。すなわち独立した単
位間の取引で利用される価格と同義なものである。
理想的状況
全ての以下の条件が揃うと、市場価格による振
替が、目標整合性を導く。
その状況は現実にないので、これは振替価格の
あるべき姿を見るためのものである。
1)競争的な人材:
2)十分な雰囲気
3)市場価格
4)調達先への自由度
5)完全情報
6)交渉
基本原理
振替価格は外部への販売で使用される価格と何ら
違いはない。しかし、経済学では外部価格は、限
界費用をベースとするように提唱されているが、
これは現実的でない。むしろ、内部から、あるい
は外部から製品を買うとき次のような決定が行な
われる。
1)その会社は、外部からか内部単位から購入する
のか。これは、調達先の決定である。
2)内部生産されると、その製品は、どの価格で振
替すべきか。これは振替価格決定である。
理想的状況
それは、市場価格であるが、一般的にその条件は存在しな
いので、どのような改善点で振替価格を設定できるかに注
目しよう。
1)コンピテントなスタッフの存在
2)利益を正当な評価尺度とみなす雰囲気
3)市場価格:しかし内部取引はそれより取引コストが少ない
分安く設定されるべき。
4)調達先の選択権:振替価格は機会原価をしめす。
調達先の決定に売り手・買い手ともに自由度があれば。
5)完全情報
6)交渉の自由度
以上の条件があれば、振替価格は市場で行なわれるのが、
最善である。
調達先への制約
一定の条件の場合に、調達先の選定において自由度が制
限される場合がある。
1)センターにとって市場が制限される
その理由は、内部生産能力が外部販売を制限する。外部
の能力がいつでも利用できない場合。
2)外部の差別化された製品の市場がない。
3)供給において特定資産への投資が行なわれている。し
かしここでも振替は市価をベースとすべき。
市価を見つける方法:
1)公表された市場があるか。2)入札による価格の利用。
3)類似品で外販するものがあるときに、その価格。4)内部
振替品が独特(proprietary)に時に、外販している類似品価
格を利用する。
産業レベルでの生産能力の超過と不足
いずれの場合でも、アピールすることが、重要で
あり。競争価格で製品を受け入れる原則が守ら
れないといけない。
もたれ合いの問題が発生する可能性がある。
そのために、外部からの購入機会を買い手に残
すべきである。
コスト基準による振替価格
競争的価格が利用されないと、振替価格は、コス
トプラス利益に基づくべき。その場合に2つの意
思決定が必要
1)コストをどう定義するか。:標準原価が原則
2)利益マークアップをどう計算するか。:
なにが、利益マークアップの基礎か。利益の認
めうるレベルは、コスト比率が使われる。
あるいは、投資の規模による。
上流の固定費と利益
外部販売利益センターは、しばしば、上流での投資コ
ストや全体から見て必要な他部門の利益に関心を
払わない可能性がある。その解決。
1)事業単位間での合意
2)2段階価格の利用
3)利益シャアリング方式
4)二重価格方式
3 企業本部サービスの価格決定 211頁
振替するもの
1)セントラルサービスである。
2)利用についての拒否権が需要者側にある。
サービスの総額の管理方法(3つの考え方がある)
1)サービスの標準変動費をチャージする。
事例では、ボイセカスケード会社のデータ処理サービスの過小価格
の配賦が報告されている。
2)サービスに標準変動費プラス標準固定費の相当な
部分を加える。
3)サービスの市場価格で購入する、もしくは、標準全
部原価プラスマージン。
サービスのオプション的利用
選択的に利用されるようなサービスについては、独
立採算できるようにしておくことが重要である。量と
効率性(価格、品質)のいずれについても、利用者
側に選択を委ねる。
価格メカニズムの単純さ
ユーザーの理解できないサービス価格決定方法の
利用は、有益でない結果をもたらす。
4 振替価格の管理(保全)
1)交渉価格:
価格は供給・販売に決めさせる理由は、それが、BUのマネジャーの主要
な機能だから。
ローカルな情報を一番もっている人が決めるのが最善である。
2)裁定と衝突回避(解決):コンフリクト解決には、4つの方法がある。強制、
平準化、交渉、問題解決。前のものから、後程、解決プロセスが長く、困
難である。しかし、問題が提起されないで潜在化する方がはるかに深刻
である。
3)製品分類:2つに分かれる。大量でかつ外部調達の困難な製品振替。少
量で市価が利用できる比較一般化された製品。前者については、本部が、
調達先などについて権限を保持している。
後者については、事業部間でルールを決定できる。
要約
1 被委譲者は、最適な利益に関する決定を行
なうだけの情報をもっていること。
2 被委譲者の業績は、かれが、収益と費用の
トレードオフをどううまくやったかを測定する。