口腔から目指す アンチエイジング 東京西徳洲会病院 副院長 口腔センター長 佐野 次夫 老化のきざし 歯→目→魔羅(仏僧の隠語) いつまでも元気に生きたい ↓ 必然的に進行してくる身体機能の衰え 入れ歯、老眼鏡、薬剤 寿命 野生動物の寿命は、彼らの歯の寿命と一致。 ↓ 肉食獣→獲物獲得ができなくなり、さらに外的 の闘争からも延命できない。 草食動物→生の固い植物を栄養源にできな い。 歯の重要性 歯科医の仕事 おいしい食べ物を、いつまでもしっかりと食べれるようにする こと。つまり咀嚼機能の維持を図ること。 歴史的背景 4000年前-ハンムラビ王の法典(医療に対する報酬、失敗し た場合の刑罰の記載) 旧約聖書「出エジプト記」-「目には目、歯には歯」 健康な歯は美と力の象徴-歯を失うことは 弱さと欠陥を意味する ユダヤ教の大祭司は歯1本失うことで不適格 入入れ歯の歴史「容貌の回復から始まった」 → 入れ歯(義歯)の歴史 5000年前に入れ歯らしきものとして製作されていた → 1914年ギザのピラミッドから発掘 (人工的な材料で身体の欠陥や障害を補う いわば リハビリ的医療 の先駆) 紀元前5世紀 古代フェニキアのシドン(レバノン)の女性の墓か らブリッジが発掘 →パリのルーブル美術館に保存 アメリカ合衆国初代大統領ジョージワシントン(28歳で入 れ歯)→2期8年の慣習 アメリカ繁栄の陰に入れ歯あり、たかが入れ歯」とはいえ ない 咀嚼の重要性(脳に与える影響) 1.硬いものがかめればぼけないの? 歯をうしなったマウスと歯があるマウス a)マウスを使った電気ショックからの回避実験 b)迷路を移動させる実験 ひとの脳血流量を機能的MRI撮像で見る実験 前頭前野領域の活動性の増加 2.歯を失うと硬いものが食べれないの? 1.咀嚼実験ー歯がすべて残っている有歯群(平均25歳)の筋電図 歯がほとんど残っている高齢者有歯群の筋電図は同じ 歯がまったく残っていない高齢総義歯群の筋電図は低下 歯の有無によって咀嚼筋の活動が異なり、骨の形体変化(廃用萎縮)をきたす。 3. 咀嚼ができると日常生活(ADL)が活発化 できるの? 介護を必要とする患者を使った実験(理学療法訓練実施) A.自分の歯もしくは義歯によって左右かむことができる群 B. 左右どこもかみあうところがない群 訓練前は両群ともレベル6(平行棒歩行)→訓練後 A. レベル10 B. レベル →歯が高度に失われたために硬いものがかめない人、何らかの疾患で 流動食しか摂取できない人、年齢に関係なく大変深刻である。 固いものを食べている方が、明らかに全身機能が優れている(知力体力とも) →噛むこと、声を出して歌ったりすることは脳の活性化に つながる。 咀嚼の重要性 人は噛むという動作ができないと、欲求不満が高じて平 常心を失い、活動に支障をきたす。 (1)咀嚼と脳活動 咀嚼によって脳に送り込まれる血液や感覚情報の量が増加し脳 の活動性が上昇し、集中力が持続。 例) 眠いときのガムの咀嚼、プロ野球選手、受験生…… 身体運動機能の最高中枢は、大脳皮質の運動野。 口に関する運動機能領域の割合は、運動野のな かでも大きい。 (2)咀嚼と唾液分泌 →噛むことで唾液の分泌量が増える。 [唾液の効能] 全身の皮膚や血管の細胞を活性化させ老化を防ぐ唾液腺 ホルモンのパロチン、消化酵素アミラーゼ、発癌物質を減少させ るペルオキシダーゼが含まれている。 (3)噛み合わせと全身の運動機能 咀嚼、嚥下および発音などの機能が正常に働くために 歯の噛み合わせは 正常 でなければならない。 例) オリンピック選手 咬合異常→顎口腔機能障害、姿勢の変化、歩行困難、頭痛、 腰痛などの自律神経失調症状を引き起こす。咀嚼機能低下は 身体的以外にも、精神的、心理的活動に影響をおよぼす。 (4)咀嚼と肥満予防 空腹感や満腹感はおなかで調整されるのではなく、視床下 部の摂食中枢、 満腹中枢の働きで調整されている。 噛む刺激(歯根膜、筋紡錘刺激)→視床下部の満腹中枢の 周囲に信号をおくる→かめばかむほど伝わる情報量が多い→神 経活性物質が放出→満腹中枢を活性化 咀嚼によって脳内代謝が盛んに行われ正常な満腹感を形成 するメカニズムのあることが証明された。 しっかり、噛んで食べましょう。 歯を喪失した後、ぼけることなく楽しい食事 をいつまでも、おいしく食べるためには? 口腔からアンチエイジングを目指す アルツハイマー型認知症を予防 →欠損した歯がある場合は速やか にそ の部分を補うことが最も重要となる 欠損補綴 義歯 (総義歯、部分床義歯) ブリッジ インプラント 現症 口腔内所見 顎堤の状態 義歯装着時 インプラント植立状態 手術直後 植立後1ヶ月 口腔内状態 インプラント植立後2ヶ月 閉口時 開口時 現症 口腔内所見 上顎の顎堤は比較的凸凹はなく平坦。 その他、異常所見は認められなかった。 インプラント植立状態 装着前の上部構造
© Copyright 2024 ExpyDoc