サッカー選手年俸決定要因について

サッカー選手の年俸決定要因について
名古屋大学 根本ゼミ
目次
Ⅰ イントロダクション
Ⅱ 分析方法
Ⅲ 結果
Ⅳ まとめ
Ⅰ イントロダクション
サッカー選手の年俸ランキング(2012)
デイヴィッド・ベッカム
46億8000万円
リオネル・メッシ
45億5000万円
クリスティアーノ・ロナウド
39億円
サムエル・エトー
30億5500万円
ネイマール
26億円
セルヒオ・アグエロ
24億7000万円
ウェイン・ルーニー
23億4000万円
ズラタン・イブラヒモヴィッチ
22億7500
ヤヤ・トゥーレ
21億5800万円
フェルナンド・トーレス
21億1900万円
サッカー選手の年俸ランキング(2012)
10人中8人がフォワード
(ベッカムとヤヤ・トゥーレはMF)
攻撃的なポジションの選手が高
給ランキング上位を占める結果に。
ポジション間で年俸に格差がある
可能性。
ポジション別平均年俸
Jリーグ(万円)
セリエA(万ユーロ)
MLS(ドル)
FW
2,377
104
252,583
MF
2,141
81
146,106
DF
1,878
68
124,221
GK
1,382
60
94,509
全選手
2,020
79
183,075
ポジション別の平均年俸は、 3リーグいずれも
FW>MF>DF>GK の順となった。
研究のゴール
①ポジションによる所得格差は本当に存在するの
か?
②年俸は何によって決定されるのか?
③国(リーグ)によって年俸決定要因にどのような違
いが見られるか?
Ⅱ 分析方法
研究対象
◆Jリーグ ディビジョン1 (日本)
◆セリエA (イタリア)
◆メジャー・リーグ・サッカー (米国)
これら3つのリーグに属する1320選手を対象とする。
年俸は2012~2013シーズンのデータを使用。
※他のリーグからの移籍選手や2部リーグから昇格したチー
ムの選手は除外。
分析の流れ
データの収集
モデル・ビルディング
• 年俸決定のモデルを作成する
モデルの推定と検定
• 重回帰分析によるモデル推定・t検定
モデル・ビルディング(1)
• 被説明変数𝑌(年俸)を、複数の説明変数
𝑋1 , 𝑋2, 𝑋3 …で説明する重回帰モデルを採用。
• 説明変数として、使用可能なデータを考える。
※数値化されているもの
※多くの選手について入手できるもの。
モデル・ビルディング(2)
一般社会では…
プロサッカーにおいて
年齢
年齢 (Age)
勤続年数
身長 (Height)
能力
昨シーズン出場機会(Game)
成果
昨シーズンゴール数 (Goal)
配属部署
ポジション (Pd,Pm,Pf)
会社の支払い能力
チーム総年俸 (GY)
給与
年俸(Y)
モデル・ビルディング(3)
• 先に示した変数を用いて、年俸決定のモデルを立てる。
𝑌
= 𝛼 + 𝛽1 𝐴𝑔𝑒 + 𝛽2 𝐻𝑒𝑖𝑔ℎ𝑡 + 𝛽3 𝐺𝑎𝑚𝑒 + 𝛽4 𝐺𝑜𝑎𝑙
+ 𝛽5 𝐺𝑌 + 𝛽6 𝑃𝑑 + 𝛽7 𝑃𝑚 + 𝛽8 𝑃𝑓
• 𝑃𝑑, 𝑃𝑚, 𝑃𝑓 はダミー変数。
• この式に対して最小2乗法による重回帰分析を行う。
補足(1)
※ダミー変数についての補足
対象選手がFWであるとき
対象選手がMFであるとき
対象選手がDFであるとき
対象選手がGKであるとき
Pf=1, Pm=0, Pd=0
Pf=0, Pm=1, Pd=0
Pf=0, Pm=0, Pd=1
Pf=0, Pm=0, Pd=0
すなわち、回帰分析の結果導出されたPfの係数は、
ゴールキーパーに比べ、フォワードの賃金がどれだけ高いか
を意味する。
補足(2)
補足(3)
補足(4)
当てはまりが良い
当てはまりがよくない
※ただし、クロスセクション・データの分析においては
決定係数が0.5以上であれば、極めて良いとされる。
Ⅲ 結果
Jリーグ
〈推定式〉 Y= - 1.694e+04
+ 2.347e+02
+ 4.968e+01
+ 4.645e+01
+ 9.297e+01
+ 3.905e-02
+ 7.687e+02
+ 9.803e+02
+ 1.019e+03
括弧内はt値
(-5.063)
Age
(11.446)
Height (2.778)
Game
(5.364)
Goal
(2.546)
GY
(9.903)
Pd
(2.362)
Pm
(2.710)
Pf
(2.498)
𝑅2 = 0.5388
セリエA
〈推定式〉 Y= - 2.637411
+ 0.034301
+ 0.695910
+ 0.010741
+ 0.048442
+ 0.034793
+ 0.088173
+ 0.199034
+ 0.200904
括弧内はt値
(-1.955)
Age
(3.483)
Height (1.022)
Game
(3.082)
Goal
(4.227)
GY
(12.409)
Pd
(1.051)
Pm
(0.599)
Pf
(1.209)
𝑅2 = 0.5483
MLS
〈推定式〉 Y= - 3.298e+05
+ 1.966e+04
- 4.616e+04
- 2.005e+01
+ 5.132e+04
+ 3.879e-02
+ 3.105e+04
+ 8.605e+03
+ 6.435e+03
括弧内はt値
(-1.100)
Age
(4.244)
Height (-1.024)
Game
(-0.909)
Goal
(7.201)
GY
(4.100)
Pd
(0.463)
Pm
(0.132)
Pf
(0.087)
𝑅2 = 0.2592
係数の有意性と符合
年齢
身長
出場試合
数(時間)
ゴール
FW
ダミー
総年棒
DF
ダミー
MF
ダミー
+*
+** +*
+***
Jリーグ
+*** +** +*** +*
セリエA
+** +
+**
+*** +
+
+
+***
MLS
+*** -
-
+*** +
+
+
+***
*** 有意水準 0.1%
** 有意水準 1%
*
有意水準 5%
【Jリーグ】ポジションが与える年俸への影響
ポジション・ダミー 推定値(GKとの差
額)
優位性
Pf
1019 万円
*
Pm
980.3 万円
**
Pd
768.7 万円
*
Pg
( 0 万円 )
FWとMFの差 38.7万円
MFとDFの差 211.3 万円
FWとDFの差 250.3 万円
【Jリーグ】ポジションが与える年俸への影響
(FWを基準とした場合)
ポジション・ダミー
推定値(FWとの差
額)
Pf
( 0 万円)
Pm
-38.86 万円
Pd
-250.5万円
Pg
-1019万円
優位性
*
FWを基準とすると、優位となるのはGKダミーのみである。
フィールドプレイヤー(FW・MF・DF)とGKに年俸格差は見られるが、
フィールドプレイヤー間での格差は統計的には存在していない。
係数比較
3リーグの係数比較 (単位は円で統一)
リーグ名
Age
Game
Goal
Jリーグ
2,743,000
464,500
929,700
セリエA
4,630,635
1,450,035
6,539,670
メジャーリーグ
1,966,000
×
5,132,000
係数比較から読み取れること
Jリーグ
ゴール数、出場回数よりも年齢による変化分が多い。
⇒年功序列的
セリエA
すべての変数に対する係数が大きい。
⇒賃金格差が大きい。
MLS
ゴール数に対する変動が大きく、年齢に対する上昇幅は少なめ。
⇒成果主義的
Ⅳ まとめ
①ポジション間の収入格差は存在するか?
• Jリーグにおいては、GKを基準に見ると
GK<DF、GK<MF、GK<FWとなり、
FW基準に見ると
DF≒FW、MF≒FWとなる。これはGKは他のポジションより
低く、他三つのポジション間では差はないと考えられる。
• セリエA・MLSにおいては、統計的にみると、ポジションによる
収入の違いは発生していると考えにくい。
②年俸の決定要因は何か?
• Jリーグ
年齢、身長、出場試合、ゴール
• セリエA
年齢、出場試合、ゴール
• MLS
年齢、ゴール
③リーグによる年俸決定体系の特色
• Jリーグは年功序列的
• セリエAは収入格差が大きい
• MLSは成果主義
• その国の賃金決定上の特性が、プロスポー
ツ界にも及んでいると言えるのではないか。
ご清聴有難うございました。