日本教育心理学会第47回総会 2005年9月17-19日 浅井学園大学 高校中退をもたらす因果構造の検討 寺尾敦 1 橋本佳子 2 1 北海道大学脳科学研究教育センター 2 横浜国立大学教育学部 問題と目的 Rumberger (1987) の指摘 ・ 多くは2変数間の相関研究 ・ 短期的 ・ プロセスが明らかでない 中退行動のプロセスについて,包括的な因果モデ ルが必要. この指摘は(特に日本で)現在でも妥当. 3つの要因の間で因果モデル(図1)を構成し,共分散構 造分析によってモデルの検証を行う. 家庭関連要因:両親からのサポート 学校関連要因:学校適応と学業成績 学校外環境要因:学外の楽しさ 学校外環境要因は,これまであまり注意が払われてこな かった. 学業成績が中退と関連していることは明確(Borus & Carpenter, 1984; Ekstrom et. al., 1986; Wehlage & Rutter, 1986) 方 法 参加者 八洲学園高等学校(東京)の在校生と愛知高等 学校(愛知県)の2年生,および両親に,質問紙への記入 を依頼した.両親および生徒の3者からすべて回答を得 た,八洲学園142家族,愛知高等学校330家族のデータ を分析に用いた. 学校適応:高校生用学校環境適応感尺度(内 藤ら, 1987)から,「学習意欲」「教師関係」「友 人関係」「進路意識」「規則への態度」の5因子 についての30項目.生徒が回答. 学業成績:市販の問題集を参考に,英語10問, 数学6問を作成.高校入試から高校1年生レベ ルの問題.生徒が回答. 学外の楽しさ:長谷川(1988)を参考に5項目 を作成.生徒が回答. 尺度 両親からのサポート:親役割診断尺度(谷井・上 地,1993)から「受容」と「適応援助」(共分散構造 分析で不適解が生じたため分析から除外された) の2因子についての16項目.両親が回答. 結果と考察 2つの高校からのデータを別の母集団から得 られたものと考え,同時分析を行った.(潜在 変数の指標の係数に等値制約) モデルの適合度はやや低いものの,推定され たパラメータの値を見ると,要因間に想定され た因果関係は支持されている. 両親のサポートによって学校適応感は高まる. 高い学校適応感は,高い学業成績につながる. 学校適応感が低いと学業成績は低くなる.これ には,学校に適応できないことから学外に楽し さを求め,(おそらくは学習時間が短くなるため に)学業成績が低下するという間接的な因果 関係もある. 両親の受容の程度,学習意欲,規則への適応 感,学業成績は,いずれも愛知高校の生徒の 方が有意に高かった. 学外の楽しさは,八洲学園の生徒の方が高 かった. 図1 中退にかかわる要因の因果モデルとパラメータの標 準化推定値.推定値は,上側が愛知高校,下側が八洲学 園.GFI=0.857,AGFI=0.806,RMSEA=0.073 てらおあつし:[email protected]
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