現代世界経済をとらえるVer.5第1章

現代世界経済をとらえる Ver.5
第1章 グローバリゼーションを
どうとらえるか
現代世界経済を見る眼
©東洋経済新報社
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1.1 グローバリゼーションと
グローバリティ,グローバリズム
a 可動性とグローバリティ
グローバリゼーション:
結果
財,サービス,マネー,労働力,情報といった
基本的な生産要素が地球規模の可動性(global mobility)を
飛躍的に高めていくこと
=グローバリティ(globality)
マネー,財やサービスが生産される空間の越境(transnational)
フラグメンテーション :生産過程が工程として分解され,グローバルな規模で拡散すること
(fragmentation)
現代のグローバリゼーションの条件
•政治的条件…冷戦の終結,ソ連・東欧の社会主義体制の解体,地
球的規模の市場経済化
•技術的条件…IT革命の展開
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b グローバリゼーションとグローバリズム
グローバリゼーション⇒変容の過程
• グローバリティ
• グローバリズム
⇒既存の国境や境界がその意義を失う
ほどに地球規模の可動性をもった,
相互連関の性格
⇒グローバリズムを推進するもの(イデオ
ロギーや理論,そしてそれらを反映
した政策体系など)
⇒グローバリズムの内容がグローバリゼ
ーションの特徴を刻印する
アメリカン・グローバリズム主導のアメリカン・グローバリゼーション
・1990年代のニューエコノミー
⇒アメリカン・ビジネスモデルの成功
・2007~08年アメリカ発世界金融・経済危機
⇒アメリカン・ビジネスモデルとアメリカン・グローバリズムに根本的な批判
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グローバリゼーションを見るための視点
① アメリカン・ビジネスモデルとアメリカン・グローバリズムに
対して根本的な批判が加えられつつあり,それに代わる別
(alternative)のグローバリズムとグローバリゼーションをど
のように構想し,また創造するのかが問われている
② グローバリゼーションは,地球規模ですべてを飲み込む
変容の過程であるだけに,多次元的に多領域でとらえるべき
ものだろう
本章では,こうしたことを念頭に置きつつも,グローバリゼーションの
経済的次元に焦点を当てて,グローバリゼーションを見る
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グローバリゼーションの最大の中心的推進主体⇒
・多国籍企業
・多国籍金融機関
・グローバル機関投資家
国際化≠グローバリゼーション
c 貿易における国際化
d 多国籍企業とグローバリゼーション
生産主体はあくまでも自国に本社がある企業
国外
国内企業
輸
入
生産財
労働力
消費財
生産財・消費財
輸
出
生産財・消費財
・生産増加
・規模の経済性の達成
多国籍企業が生産に関わるすべての過程を直接支配
受入れ国における生産が左右される
グローバリティの高まり
⇒推進主体の進出先,投資先からの批判
グローバリズムへの転換期
・アメリカ⇒1971~74年 金・ドル交換停止,
資本移動規制の撤廃
・日本⇒1986年「前川レポート」と貿易立国型から多国
籍企業化の本格展開への転換
・中国⇒2001年「走去出政策」,WTO加盟
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1.2 IT革命と貿易のグローバリゼーション
a IT革命
●情報産業における技術革新
IT革命:
(コンピュータに代表されるハードウエアとそれを制御するソフトウエア)
●通信産業における技術革新
(コンピュータ間を結びつける光ファイバーやインターネット)
※これまでの技術革新と比較して,
財の各国への普及と技術の移転の速度が格段に速い
モジュール化:まとまりのある部品のセットであるモジュール
を組み合わせて生産する方式への転換
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デジタル化
モジュール化
脱垂直化
TCP/IP採用
オープン化とネットワーク化
影響
デジタル化: 知識・情報のデジタル情報への転換
モジュール化: 生産方式の変化
脱垂直化: 垂直的統合の解体と企業間関係の再編
オープン化: デジタル化された情報の共有化
ITが貿易,金融のグローバリゼーションを支える技術基盤に
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b 貿易のグローバリゼーション
産業内貿易
研究開発・設計
製造・組立て
先進国
途上国
マーケティング
先進国
グローバリゼーションが産業内部の工程間分業を促進
し,多くの発展途上国を巻き込んで産業内貿易を拡大
展開と歴史的画期
①
②
③
・
発展途上国の輸入代替工業化から輸出志向工業化への政策転換(11章参照)
途上国間の競争(底辺への競争:投資を呼び込むための政策間競争)
社会主義国の市場経済導入,世界市場の構造変化
「世界の工場」,「世界の市場」としての中国の重要性
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1.3 グローバリゼーションと
金融のメルトダウン
グローバル化を歴史的に見る意義
① 金融グローバリゼーション下では移動の速度がかなり速い
② しかし,金融面の可動性が抑制されていた時期もあった
「可動性とグローバリティの様相の違いがどこから生じたのか
が問われなければならない。それがマネーへの規制と管理の
強弱によって生じたことを,現局面から歴史をさかのぼることで
確認しておこう。」
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a 19世紀型グローバリゼーションとその破綻
過去にもグローバリゼーションが生じ,それが破綻したこと
絶頂期(20世紀初頭)
反グローバリゼーション
(1910年代以降)
反転(1930年代)
1890年代から20世紀初頭にかけて,
① 資本移動と人の移動が最大となる
② 自由化とグローバリゼーションのひずみも
① 極端な民族主義,社会主義革命,ファシズムなどへの動き
② 第一次世界大戦によって,19世紀型グローバリゼーション
の崩壊・中断
① 1920年代の「ニューエコノミー」と資本流入によるバブル化
② 1929年の株価暴落,不良債権問題の国際的な連鎖,
農業不況と周辺国の苦境
③ ニューディール政策,管理通貨制度,埋め込まれた
自由主義へ
グローバリゼーションとバブル化からの反転,
大不況による長期停滞へ
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b ニューディール政策
ニューディール政策
1933年F.D.ローズベルト大統領就任,危機に対処
・ 銀行の営業停止(モラトリアム)
・ 1933年銀行法
(グラス=スティーガル法、銀行と証券会社の兼営禁止)
・ 1934年証券取引所法,1935年銀行法,SEC(証券取引委員会)と
FDIC(連邦預金保険公社)の設置,FRB(連邦準備制度理事会)の
権限強化
・ 農業調整法,全国産業復興法,雇用促進局設置,ワグナー法,社
会保障法制定
ニューディール政策の意義
① マネーと金融を管理・規制する枠組みへ
② 経済活動全般に対する国家介入の拡大へ
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b ニューディール政策(1970年代までの時期)
ブレトン・ウッズ体制
① ニューディール国際版としてのブレトンウッズ体制
② 実物経済面
GATT(関税と貿易に関する一般協定)によって経常取引(貿易)を自由化
③ 金融面
・ 資本(国際金融)取引規制を容認し,各国は為替管理と規制を実施
・ IMFの監視下で為替相場の固定とアメリカによる金ドル交換
ブレトン・ウッズ体制の意義
① マネーの可動性の低下によるグローバリティの抑制
② 国内政策の自由度の高まり
・ ニューディール型の福祉国家政策やケインズ主義的経済成長政策
が可能になった
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c 1970年代以降の政策転換
① 1970年代以降に、20世紀型グローバリゼーションが進展
1970年代
金ドル交換停止,資本移動規制撤廃 ⇒ブレトン・ウッズ体制の変容・解体
1980年代
レーガン革命によるニューディール体制解体,金融自由化の欧州への飛
び火,冷戦の終結,ITの発達
1990年代
20世紀型グローバリゼーションの全面開花と通貨危機の頻発
② 金融グローバル化の特徴
・ 規制と保護が存在しないユーロダラー市場
・ BISの場では,国際金融市場の監督が放棄されてきた面も
・ 不安定性と浮動性を特徴とするカジノ資本主義
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過去のグローバリゼーションからの教訓
① 19世紀型グローバリゼーションと現代の共通点
• 金融革新による信用の膨張、海外資金流入による株高
→金融グローバル化との関連
•
グローバリゼーションの進展の中で,一次産品価格の低迷などによる途上国経済の不振は
放置され、世界的な需要縮小は見過ごされた
→現代の途上国問題
• 大不況を回避できるかどうかは,途上国支援を含めた国際協調を組織できるかどうか
→国際協調をいかにして行うべきか
② 20世紀の資本主義の前提条件の崩壊・消滅
• 20世紀から今日にかけてのグローバリゼーションは,1930年代以降1970年代ごろまでに20
世紀の資本主義を作り出していた諸制度を解体することによって展開
•
•
•
政府介入や国際協調、労働組合の圧力による賃金の下方硬直性、信用機構の充実、各種
セーフティーネットなどの多くは,1980年代以降の政策によって解体,消滅
ヨーロッパでは通貨統合の基準達成に向けて社会政策的支出が切り詰められた
発展途上国を巻き込む形で市場経済領域が拡大
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