保育要録について

保育要録について
保育所保育指針解説書
P145
記入例から考える
• 子どもの育ちに関わる事項
• 養護(生命の保持及び情緒の安定)に関わる
事項
• (子どもの健康状態)
• 教育(発達援助)に関わる事項
記入例から考える(2)
• 園児一人ひとりがどのように育ったのか、ど
んな保育を受けたのかという内容は、児童票
の発達経過記録などに記録がある。
• この役割が本来は学校の要録なのだが、児
童票との関係が不明確なまま、保育所では
要録が連携のための書類に位置づいてしま
ったため、小学校へ送ることが前提となり、小
学校の指導に役立つような「書きぶり」が目
立つ。
• このことを踏まえて、現実に対応しよう。
いつ入園したのかを
必ずいれよう。入園当
初の姿から、目立った
変化や成長に注目し
て記述するとよい。
途中入園ながら友だ
ちの中心、リーダー的
存在へと育っていった
育ちの過程がよみと
れる
子どもの育ちに関わる事項
例文1
3歳児から入園。園生活は初めての経験だった
が、はじめから物おじせず、友だちとかかわっ
ていくことができた。遊びの中心になり、みん
なをまとめる力も身についてきている。運動
遊びでは、友だちを手助けする姿もよくみら
子どもの資質や能力
育ちのなかでも、人間
れる。
がわかるような記述。
関係、社会性、コミュ
性格や気質なども表
現されるとよい。
ニケーションの様子を
とりだすとよい。活動
における参加意欲や
集団での態度など。
文章を記述すること
• 記述する力は、文章力の力ではない。
• 記述する「内容」をつかんでいること、理解し
ていること。箇条書きでもよいから、書きだせ
るか。
• 何をどう理解しているかは、「子ども理解」と
いう専門職としての保育者の基本。
• 理解していることを、どう文章にするかが文章
力である。
• そのために子どものどの側面に光を当てるか、
ということが「記入のポイント」になる。
子どもの育ちに関わる事項
例文2
0歳児より入園。
活動的な遊びよりも、
制作などの静かな遊
びを好むことがわかる。
「小学校でも落ち着い
た生活が送れそうだ」
乳児期から感情的に安定していて、友だちとの
かかわりも常に穏やかで、活発に遊ぶよりは、
お絵描きや粘土などを友だちと一緒に遊ぶ姿
がみられる。
人間関係も安定して
いることがわかる。
大人の助けが必要なことが
わかる。
どんな場面かというと
友だちとのトラブルのときで、
自分の気持ちのコントロー
ルすること。
子どもの育ちに関わる事項
例文3
2歳児より入園。
自分の気持ちを押し通して、友だちとトラブルに
なることもあるが、
保育者が話して聞かせると理解して、気持ちを
おさめることができる
小学校は、どんなところで援
ようになってきている。
助が必要か知りたいし、ど
んな援助でよくなるのかも
知りたいポイントである。
育ちの背景にふれている。
これも人間関係の育ちに関
するもの。
保育は心を育てるという基
本を考えさせられる。
自信をもつことの大切さ
子どもの育ちに関わる事項
例文4
家庭では6歳上の兄中心に生活がまわっているた
めか、
友だちから一歩引いて行動する様子が見えたが、
3歳ごろになると、だいぶ自信がもてるように
このように気弱な性格、消
なった。
極的な姿を具体的に記述す
るとわかりやすい。積極的
になる援助、どんな場面
だったら前向きになったか
などを「教育」で記述する。
ただ、絵や造形ではできばえを気にしたり、運動面
ではできないと思い込んでやろうとしなかったり
するなど、まだ、気弱で消極的な姿がみられる。
子どもの育ちに関わる事項
子どもの育ってきた過程を踏まえて
⇒入園の時期から現在までの変化
⇒過程には背景も含めてよい
その全体像を捉えて
⇒人格特性(資質や能力)の顕著なところ
⇒その子らしさの育ち(善さ)に焦点をあてる
綜合的に記載すること
⇒小学校へ送る情報のプロフィール
⇒「養護」と「教育」でどう援助して育ったか
まさしく情緒の安定に関す
養護(生命の保持及び情緒の安定)
るもの。
に関わる事項けんかでどんな葛藤をかか
えているのか、もうひとつ踏
事例1
み込んだ記述がほしい。
友だちとけんかすると大泣きして、いつまでも泣
きやまないことがある。
保育者が1対1になれるような場所でゆっくり話
を聞くようにすると、気持ちを落ち着かせること
ができる。
それ以外の面では、特に支援の必要を感じるこ
小学校でも、どうようのこと
が起きると予想されるので、
とはない。
この具体例が参考になる。
食事に関する気がかりなと
養護(生命の保持及び情緒の安定)
ころ。
に関わる事項小学校の給食でも小食がき
になるだろうが、特に援助
事例2
はいらない。
小柄で小食だが、生活習慣は身についており、
5歳児の1年間は、病気での欠席はなく元気
である。
どちらかというと、落ち着いて行動することが苦
手な面がみられる。
小学校でも、配慮が必要な
点になる。その原因は気質
なのか、発達特性の偏りな
のか、それとも愛着なのか
などの継続的な見守りが必
要と判断される。
特定の保育者と一緒だと、比較的落ち着いて行
動できている。
食物アレルギーや怪我の後
養護(生命の保持及び情緒の安定)
遺症、慢性疾患など、いわ
に関わる事項ゆる持病等は、右の「子ども
の健康」欄に記載する。
事例3
ここでは、養護の面から取り
上げた例。必要な手当てや
配慮を具体的に記述する。
牛乳と小麦粉に食物アレルギーがあり、アレル
ギー除去食が必要。
食事については本人も理解しているが、皮膚の
状態が悪い時の外遊びでは手袋をするように
声をかけたり、無意識にかきむしっているとき
配慮のなかでも、とくに伝え
ておきたいことを選びだして
には保健室につれていくなど、声掛けが必要
対応法をかいておくとよい。
な時もある。
今後も保護者との密な連携が必要である。
生活リズムの崩れは家庭に
養護(生命の保持及び情緒の安定)
原因がある。学校生活だけ
に関わる事項では気づきにくい家庭環境
の情報は伝えたい。
事例4
両親の仕事の関係上、夜型の生活の傾向があ
り、午前中は集中を欠く姿がよく見られた。午
後になると活発になり、友だちとも元気に遊ぶ
ことができている。
保護者も課題として理解し
ているかどうかが分かるよ
うな記載にするとよりよいだ
ろう。「家庭も早くねかせる
ようにしてきている」など。
養護に関わる事項
■「生命の保持」のねらい
快適に生活できるように
健康で安全に過ごせるように
生理的欲求が十分に満たされるように
健康増進が積極的に図れるように
⇒生活リズム、適度な運動や休息
⇒食事、排泄、衣類の着脱、身の回りの清潔
■「情緒の安定」のねらい
安定感をもって過ごす
自分の気持ちを安心して表す
主体として受けとめられ自分を肯定する気持ち
心身の疲れが癒される
⇒小学校でも「養護」があるのでつなぐ
⇒小学校でとくに配慮が必要なことを記載
かかりやすい病気や健康維
(子どもの健康状態等)
持に関すること。
事例4
とくに該当するものがなけ
れば「良好」などと記載。
家庭より、喘息、動物アレルギー(猫)の届け出
があるが、投薬等の要請はない。アレルゲンがなんであるの
か、投薬の必要はないこと
事例5
を予め把握できる。
重度の喘息があり、入院経験がある。日常的
に薬を服用している。
事例6
3月から4月にかけて、花粉症の症状がでる。
花粉のひどい日には、家庭からの要望で、外
に出るときはマスクをつけている。
教育(発達援助)に関わる事項
事例1(健康)
5領域はつながりあってい
るので、領域ごとに記入す
る必要はない。
ここでは「健康」の意欲面に
ついての姿が記載されてい
る。
外遊びなどで活発に遊ぶが、なわとびや鉄棒な
どは少し苦手なようである。ただ、苦手なモノ
も意欲を持って一生懸命がんばろうとする姿
が見られる。
外遊びが好きだが、苦手な
遊びが具体的に記述。
教育(発達援助)に関わる事項
事例2(健康)
ここでは領域「健康」や「人
間関係」の内容を取り上げ
ている。
ほとんどの保育内容は「環
境」と関係をもつ。
運動遊びが得意で、仲間の中心になって遊んで
いる。ドッジボールなどの集団遊びでは、苦手
な子を気づかったり、手助けしたりする姿もよ
く見られる。
得意な活動の把握は、エン
パワーメントに役立つ。
教育(発達援助)に関わる事項
事例3(人間関係)
ここでは領域「人間関係」の
内容を取り上げている。
幼稚園などと異なり、年度
ごとの記載ではないので、
過去の姿から現在への変
化の育ちを。
自我を通そうとする時期もあったが、年長になり、
まわりの子の気持ちに気づき、譲歩する姿が
みられるようになってきた。また後半の時期に
は、グループのまとめ役をする姿もよく見られ
る。
小学校は集団がまとまるか
どうかに関心が高い。リー
ダー役を担える可能性をよ
みとる。
教育(発達援助)に関わる事項
領域「人間関係」の内容を
取り上げている。
集団の中での育ちの姿が
具体的。
事例4(人間関係)
みんなで話し合うときなどは、積極的に発言する
ことができる。自己主張が強い傾向にあった
が、少しずつ友だちの話も受け入れられるよう
になってきている。
要録は学級編成の参考にさ
れる。人間関係についての
記述は、クラスをまとめる際
のヒントに。
教育(発達援助)に関わる事項
領域「人間関係」の内容を
取り上げている。
14項目から特徴的なもの
をとりあげる。
事例5(人間関係)
マイペースで、少人数で遊んでいる姿がよく見ら
れるが、集団での活動が必要な時は協力的な
態度で参加できる。
⑧友だちと一緒に活動する
中で、共通の目的を見いだ
し、協力して物事をやりとげ
ようする気持ちを持つ。
教育(発達援助)に関わる事項
領域「環境」の内容を取り上
げている。
ここでも具体的な事例に
よって子どもの姿がわかる。
事例6(環境)
生き物への興味・関心が高く、園で飼っていたモ
ルモットの世話を積極的に行っている。図鑑な
どを調べたりすることが好きで、知識も高く、保
育者や友だちに説明をする姿もよく見られる。
環境の領域は「周囲の様々
な環境に好奇心や探究心を
持って関わり、それらを生活
に取り入れていこうとする力
を養う」こと。
教育(発達援助)に関わる事項
領域「言葉」の内容を取り上
げている。
ここでも具体的な事例に
よって子どもの姿がわかる。
事例7(言葉)
自分から友だちに話しかけるとか、保育者には
なしかけてくるということはあまりないが、こち
らから話しかけると、言葉は多くないものの、
きちんと答えることができる。友だちとも、積極
的ではないが、楽しくかかわっている姿がみら
言葉の育ちの特徴をつたえ
れる。
ことで、クラス担任が子ども
とのやりとり、子ども同士の
やりとりをイメージできる。
教育(発達援助)に関わる事項
事例8(表現)
領域「表現」「環境」の内容を取
り上げている。
「健康」や「人間関係」とも関係
する姿。
5領域は切り離して考えない。
手先が器用で、自分のイメージしたものを作品
にしあげていくことを楽しむ姿が見られる。そ
の器用さは友だちからも認められていて、本
人にも大きな自信になっている。
低学年では国語、生活、音楽、図
画工作などと関連させる。
生活科を中心とした合科的な指導
の工夫を行う。
小学校生活が始まる時期に
は、友だちができることが大
切。自己発揮できる機会を
計画するときに役立つ。
教育(発達援助)に関わる事項
事例9(表現)
領域「表現」の内容を取り上げ
ている。
活動(遊びや生活)の場面で、
少し気になる姿をとりあげてい
る事例。
自分なりに描くことは得意だが、テーマを与えら
れると描くことをためらう姿もある。自分の思っ
たことを描けばいいよと声かけすると、時間は
かかるが少しずつ描くことができる。
同様な支援が必要であるこ
とがわかる。
教育(発達援助)に関わる事項
事例10(表現)
領域「表現」の内容を取り上げ
ている。
活動(遊びや生活)の場面で、
少し気になる姿をとりあげてい
る事例。
自分なりに描くことは得意だが、テーマを与えら
れると描くことをためらう姿もある。自分の思っ
たことを描けばいいよと声かけすると、時間は
かかるが少しずつ描くことができる。
同様な支援が必要であるこ
とがわかる。