Ⅱ 意思決定とバイアス 1.ヒューリスティックスの逆機能 2.推論プロセスでの落とし穴 3.確率判断での落とし穴 1.ヒューリスティクスの逆機能 (1)ヒューリスティックスの利用 • われわれは、直観や経験則といった判断 のための近道(ヒューリスティックス) を用いて意思決定していることが多い。 • 無意識に用いていることが多いヒューリス ティックスを改めて意識し、それがどのよ うな副作用(バイアス=歪み)をもたらす 可能性をもっているかを検討する (2)利用可能性ヒューリスティックス • 利用可能性ヒューリスティックス =思い出しやすい事例を参照して判断しよ うとするヒューリスティックス • 思い出しやすい事例のあるものごとの方が、 事例が思い出しにくいものごとよりも より多く (大きく)判断される ○ヒューリスティックスの妥当性 • 発生頻度が高かった⇒記憶に残りやすい ↓ • 利用可能性ヒューリスティックスはそれなり に妥当性をもつ • だが、人間の記憶は過去の発生頻度以外 のものにも影響される →バイアスとしてはたらく可能性 ○利用可能性への影響要因 (a)近接性・近時性・具体性に基づくインパ クトの強さ =想起可能性 (b)情報の検索しやすさ、捉えやすさ =検索可能性 (3)アンカリング・ヒューリスティックス • アンカリング・ヒューリスティックス =最初に入手した情報を基点(アンカー)にし て、それに修正を行うことで判断しようとする ヒューリスティックス • パーフェクトな情報収集ができないのだから、 何らかの情報を基準(アンカー)としながら 判断するのは自然 ○ヒューリスティックスの危険性 • 修正の範囲が限定される傾向が強い ⇒最初に基準とした情報(アンカー)の正確 性や妥当性によって、判断が左右される • 知識をもたない領域や不慣れな事柄では、 アンカリング・ヒューリスティックスがバイアス を生み出す危険が高い (4)代表性ヒューリスティックス • 代表性ヒューリスティックス =AがBに属しているかどうかを考えるときに、Aの 特徴がBの典型的な特徴をどの程度反映したもの であるかによって判断しようとするヒューリスティック ス • AがBに属しているなら、Bの典型的な特徴を備えて いることも多い →正しく機能することも多い ○ヒューリスティックスの危険性 • ステレオタイプへの類似にばかり注目する と、落とし穴にはまることもある (a)ベースレート(基準率)の軽視 (b)サンプルサイズの軽視 (別の項目のなかで詳しく取り上げる) (c)連言錯誤 ○連言錯誤 • 制約条件の少ない方が、制約の多い方 (連言事象)よりも起こりうる確率が高い にもかかわらず、制約条件の組み合わ せのなかにストーリー性(因果的説明) を見いだすことで、前者よりも後者の起 こる確率を高く見積もってしまうこと (5)典型的ヒューリスティックスの まとめ (a)利用可能性ヒューリスティックス =想起可能性などを頼りにした判断 (b)アンカリング・ヒューリスティックス =初期情報をアンカーとした判断 (c)代表性ヒューリスティックス =ステレオタイプを頼りにした判断 (5)典型的ヒューリスティックスの まとめ(continued) • どのヒューリスティックスもそれなりに妥当性 をもち、スピーディな意思決定の実現に寄与 している。 • しかし、いずれも誤った判断に導く可能性が ある。 ⇒よりより意思決定を行うためには、それ ぞれのヒューリスティックスの落とし穴をよく 自覚することが重要となる
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