パニック障害を克服するために ~治療ガイダンス~ 赤坂クリニック なごやメンタルクリニック 横浜クリニック パニック障害はどんな病気か パニック障害の症状 パニック障害は、わけもなく急に不安感や恐怖 感におそわれる病気です。このように頻繁におこる 恐怖感は、パニック発作といわれます。 パニック障害は、パニック発作を中心症状とし、 パニック発作がまた起きるのではないかと不安に なったり(予期不安)、発作が起こるのをさけようと して、いつもと同じ行動がとれなくなる(広場恐怖) といった症状があります。 そして、二次的な症状として抑うつがあります。 パニック障害の症状 パニック発作 予期不安 広場恐怖 うつ症状 パニック発作の症状 ある時間内に、強い恐怖感や不快感とともに以下のような症状が4つ以上、 突然あらわれて、10分以内にピークに達するような状態です。 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 心臓がドキドキする 自律神経系 汗をかく 症状 体や手足の震え 呼吸が早くなる、息苦しい 息がつまる 胸の痛みまたは不快感 吐き気、腹部のいやな感じ 精神症状 めまい、ふらつき、頭が軽くなる、気が遠くなる感じ 現実でない感じ、自分が自分でない感じ コントロールを失うことや、気が狂ってしまうのではないかという心配 死ぬのではないかと怖くなる しびれやうずき感 寒気またはほてり パニック障害はポピュラーな 不安の病 最近の調査では、我が国ではパニック 障害は100人のうちに3人以上は経験 すると報告されています。 パニック障害は多くの人が罹患する可 能性のあるポピュラーな病気なのです。 パニック障害を火山に例えると パニック発作 残 遺 症 状 マグマ 病気の元 う つ 空気穴 =ストレス うつ症状 うつ病の基本的症状は、気分の落ち込み、 何に対しても興味・喜びが持てない、食欲が ない、睡眠障害、疲れやすい、罪責感、死を 考える、です。 パニック障害にみられる うつ病は典型的なうつ病と 異なります。 パニック性不安うつ病 非定型うつ病の特徴 1)良いことがあれば気分がよ くなるが、悪い出来事に対して 極端に落ち込む 2)過眠 3)過食 4)体が鉛のように重くなる 5)他人の言葉に傷つきやすい このような症状がある方は 主治医の先生にご相談く ださい。 残遺症状 パニック障害は頑固な慢性の病気です。 パニック発作、予期不安、広場恐怖、うつ 症状以外にもさまざまな症状を呈する残遺 症状(非発作性不定愁訴)が出現します。 パニック発作では激しい症状が短期間に 出現したのに対して、残遺症状はより穏や かな症状が持続的に出現する状態です。 残遺症状 ・体がゾクゾクして鳥肌が立つ ・じっとり汗をかく ・息苦しくなる ・汗がひかない ・喉元がピクピクする ・胸がチクチクする ・肩こり ・胸が痛くなる ・頭痛 ・視界がチカチカする ・首の痛み ・頭に何か乗っている ・手が冷たい ・いつも雲の上を歩いてい るような感じ ・背中がピクンピクンする ・動悸がする (患者さんから実際に述べられた症 状) パニック障害の治療 パニック障害は どうして起こるの か? パニック障害の原因は、今のところまだはっきりしていませ ん。 しかし、これまでの研究から、パニック障害は脳内の不安 に関する神経系の機能異常に関連していることがわかってい ます。 ◆青斑核ノルアドレナリン系 パニック発作が起きているときは、脳内のノルアドレナリン (NA)という神経伝達物質の活動性が高まっていることが推定 されます→自律神経系の興奮 医学的な病気として、しっかり治療をしましょう。 パニック障害の治療 パニック障害の治療は、お薬による治療が中 心になります。 ◆SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) NA活性を和らげる神経伝達物質ーセロトニンの 利用率を高める抗うつ薬 ◆抗不安薬 NAの活動性を調整するGABAという神経伝達物 質の活性を高める作用 お薬による治療を続けることで、パニック発作はおさまります。 主治医の先生から処方されたお薬をきちんと服用していくことが大 切です。 パニック障害の治療 治療の基本はお薬ですが、 発作がまた起きたらどうしようと いう不安(予期不安)や、発作が 起こりそうな状況を避けてしまう 行動(広場恐怖)は、お薬だけで は治りにくいと報告されています。 特に広場恐怖は、カウンセリン グ(認知行動療法)との併用が効 果的です。 パニック障害の治療 ●パニック発作 ← 薬物療法 ●予期不安 ●広場恐怖 ← 薬物療法 + 認知行動療法 カウンセリングのお知らせ 広場恐怖を克服するためのセミナー 広場恐怖の仕組みなどを学び、広場恐怖を克服するた めの方法を学びます。 (4セッション グループカウンセリング) 個人カウンセリング 各個人の問題について取り組んでいきます。 カウンセリングは主治医の指示のもとに行います。 カウンセリングの導入については主治医の先生と相談しましょう。 薬物療法 パニック障害の治療はお薬が中心で す。 しかしながら、多くの患者さんはお薬 に対して不安を感じるようです。 そこで、これまでに患者さんからよせ られたお薬に関する不安について Q&Aにて紹介します。 お薬についてQ&A Q1 お薬はいつまで服用すれ ばよいのですか? お薬についてQ&A A1 発作がおさまると、すぐに服薬を止めて しまう患者さんもいます。 しかし、これは良いことではありません。 服薬の期間(医師の指示のもと行います) 維持療法期間 (症状が完全に消失した後半年から1年) 漸増期 薬 の 量 漸減期 (発作をコン トロールする ためのもの) (少しずつ減 らしていき断 薬まで) 発作の再燃や 残遺症状をコントロール 1ヶ月~3ヶ月 1~6ヶ月 時 間 6ヶ月~1年 お薬についてQ&A Q2 お薬を飲み続けると、お薬に 依存してしまうのではないかと心配 ですが、大丈夫ですか? お薬についてQ&A A2 専門家の医師があなたの症状を診ながら 適切に処方していますので、お薬への依 存はまずありません。 ただ、自分でお薬を急に減らすことや止 めてしまうことが離脱症状を引き起こすこと があります。 医師と相談しながら服薬を進めましょう。 お薬についてQ&A Q3 薬を飲み始めて、すごく眠い、 ボーとするのですが・・・・ お薬についてQ&A A3 お薬を服用し始めた副作用と考えられま すが、しばらくするとこうした症状は減って いくと考えられます。 しかしながら、 治療の開始では医師は あなたにあったお薬を調整している段階で す。 まずはあなたの症状を主治医の先生に 伝えましょう。 お薬についてQ&A Q4 お酒は飲んでも大丈夫ですか? お薬についてQ&A A4 アルコールとお薬を一緒に服用すると、 お薬の効果が強くなりすぎてしまいます。 眠気、ふらつきなどから転倒することも起 こしかねません。 お薬とアルコールは一緒に服用しないで ください。 お薬についてQ&A Q5 風邪をひいたとき、市販のお薬を 飲んでも大丈夫ですか? お薬についてQ&A A5 市販のお薬を服用される場合、予 め主治医の先生に相談しておきましょ う。 また、ご心配な方は、お薬の併用つ いてお電話でクリニックまでお問い合 わせください。 お薬について お薬に対して不安や疑問をもっ たときには、ご自身だけで悩まな いようにしましょう。 主治医の先生にお話しましょう。 主治医の先生とのコミュニケーションが大切です。 パニック発作に対する対応 5~10分 ~90分 5~15分 不 安 自然に不安が消える 時 間 時間とともに不安はどのように変化するか(坂野 1999) 不安のメカニズム どんなに強い不安でも、 実は自然に必ず落ちつくのです。 パニック発作への対応 あなたは パニック発作が起きたとき どのように対応しています か? パニック発作が起きたときの対応 パニック発作が起きたときの対応 ・ペットボトル(水・お茶)を持ち歩き、喉を潤す。 ・ガム ・スッとした飴 / タブレット ・携帯をいじる ・人と話をする 自分にあった対応法をた くさん見つけましょう!! ・歩く ・音楽を聴く ・電車では中吊りの広告を読む。 ・人間観察をする ・歌を歌う ・リラックスしているイメージを思い浮かべる など パニック障害を悪化させるもの 過労 規則正しい生活を心がけましょ う!! 睡眠不足 風邪 正常な日内リズムがくずれると、 自律神経がなおさら不安定にな ります。 二日酔い 体をまめに動かしましょう!! ストレス 有酸素運動のジョギングをする こともお勧めです。 女性の方へ 妊娠が判明した場合、主治医の先生に早めにご 報告ください。 また、望ましいのは計画的な妊娠・出産です。主 治医の先生と相談の上、治療を進めてください。 ◆参考文献 貝谷 久宣 パニック障害の理解と看護~患者とその家族 のために~ 医療ジャーナル社 2002 貝谷 久宣 不安・抑うつ臨床研究会【編】 パニック障害 日本評論社 1998
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