社会不安障害を克服するために ~治療ガイダンス~ 赤坂クリニック なごやメンタルクリニック 横浜クリニック 社会不安障害はどんな病気か 社会不安障害とは? 社会不安障害は、人から注目されるような場 面(人前で話す、電話で話す、会話を交わす)や、 恥ずかしい思いをするかもしれないという状況に 対して強い不安を感じる疾患です。 このような強い不安から、人から注目されるよう な場面や状況があまりにも苦痛で会社をやめよう と悩んだり、人と接することを怖れて家に閉じこ もった生活を送るようになり、日常生活に支障が 出てくるようになります。 社会不安障害のタイプ 全般性タイプ 非全般性タイプ 人と接するような場面すべ てを苦手とするタイプです。 特定の場面でしか不安を 感じないタイプです。 例えば、人と話をすることも 人前で食事をすることも苦手、 電車などの人がいる場所でも 人から見られているように感 じて不安になるなどです。 例えば、大勢の前でス ピーチをする、人前で文字を 書くなどです。 不安・恐怖を感じる場面・状況 スピーチ恐怖 赤面恐怖 会食恐怖 書痙 電話恐怖 振線恐怖 視線恐怖 腹鳴恐怖 排尿恐怖 発汗恐怖 など 社会不安障害の症状① 身体症状 □激しい緊張、あがり □頭が真っ白になる □手足の震え □吐き気 □全身の震え □赤面 □動悸 □汗 □顔や身体のこわばり □排便、排尿の困難 □声の震え 自律神経系の症状 社会不安障害の症状② 認知的な症状 □ 周囲から注目されている □ 周囲から否定的な評価を受けるのではないかという懸念 □ 相手を傷つけてしまうのではないかという懸念 行動的な症状 欧米ではあまり報告されていないが、 日本で多く報告されている。 □ 社会的な場面や状況を避ける □ 社会的な場面や状況において感じる強い不安や苦痛に 耐え忍んでいる 社会不安障害は ポピュラーな不安の病 社会不安障害は、人口のおよそ10人に1 人が、一生のうちのどこかで経験すると報 告されています。 社会不安障害は多くの人がかかる可能 性のあるポピュラーな病気なのです。 社会不安障害によくみられる 他の病気 ■うつ症状 社会不安障害を患う方のうち、 非全般型では32~37%、全般型 では47~57%に、うつ病の合併 がみられたと報告されています。 ・気分の落ち込み ・意欲の低下 ・何に対しても興味・喜びがもてない ・食欲低下あるいは過食 ・睡眠障害 ・疲れやすい ・自責感 ・集中力がない、決断できない ・死を考える 社会不安障害によくみられる 他の病気 ■パニック発作 ある時間内に、強い恐怖感や不快感とともに以下のような症状が4つ以上、 突然あらわれて、10分以内にピークに達するような状態です。 ・心臓がドキドキする ・汗をかく ・体や手足の震え ・呼吸が早くなる、息苦しい ・息がつまる ・胸の痛みまたは不快感 ・吐き気、腹部のいやな感じ ・めまい、ふらつき、頭が軽くなる、 気が遠くなる感じ ・現実でない感じ、 自分が自分でない感じ ・コントロールを失うことや、気が狂って しまうのではないかという心配 ・死ぬのではないかと怖くなる ・しびれやうずき感 ・寒気またはほてり 社会不安障害によくみられる 他の病気 ■アルコール依存・乱用 社会不安障害を患う方の19~28%が、アルコールの 問題を抱えていると報告されています。また、社会不安 障害の方はそうでない方に比べると、2倍以上の確率で アルコール問題を抱えやすいと言われています。 苦手な場面で起る不安や身体症状を和らげるために、 アルコールを使用した結果、アルコールをやめられなく なることもあります。 社会不安障害によくみられる 他の病気 このような症状が ある方は主治医 にご相談ください。 ■うつ症状 ■パニック発作 ■アルコール問題 など 社会不安障害の治療 社会不安障害は どうして起こるのか? 社会不安障害の原因はいくつかの説がありますが、今のところはっきりして いません。 主な原因として遺伝的要因、家庭環境、学習経験が言われており、これら の影響の強さは個人によって異なると考えらます。そして、これらは互いに関 連していると考えられます。 学習経験 家庭環境 遺伝的要因 社会不安障害の治療 社会不安障害の治療は、お薬による治療が 中心になります。 ◆SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) NA活性を和らげる神経伝達物質ーセロトニンの 利用率を高める抗うつ薬 ◆抗不安薬 NAの活動性を調整するGABAという神経伝達物 質の活性を高める作用 お薬による治療を続けることで、症状は改善されます。 主治医の先生から処方されたお薬をきちんと服用していくことが大 切です。 社会不安障害の治療 治療の基本はお薬ですが、 人から注目されるときに感じる不 安や恐怖、またこのような状況を 避けてしまう行動には、カウンセ リング(認知行動療法)との併用 が効果的です。お薬とカウンセリ ングを併用することで、治療終了 後の治療効果が長く維持される といわれています。 社会不安障害の治療 薬物療法 ・恐怖感の軽減、予期不安の軽減 ・回避行動の改善 ・不安や恐怖に伴う身体症状 認知行動療法 ・恐怖感の軽減、予期不安の軽減 ・回避行動の改善 お薬について 社会不安障害の治療はお薬が中心 です。 しかしながら、多くの患者さんはお薬 に対して不安を感じるようです。 そこで、これまでに患者さんからよせ られたお薬に関する不安について Q&Aにて紹介します。 お薬についてQ&A Q1 お薬はいつまで服用すれ ばよいのですか? お薬についてQ&A A1 症状がおさまると、すぐに服薬を止めて しまう患者さんもいます。 しかし、これは良いことではありません。 服薬の期間(医師の指示のもと行います) 維持療法期間 (症状が完全に消失した後半年から1年) 漸増期 薬 の 量 漸減期 (症状をコン トロールする ためのもの) (少しずつ減 らしていき断 薬まで) 症状の再燃を コントロール 1ヶ月~3ヶ月 1~6ヶ月 時 間 6ヶ月~1年 お薬についてQ&A Q2 お薬を飲み続けると、お薬に 依存してしまうのではないかと心配 ですが、大丈夫ですか? お薬についてQ&A A2 専門家の医師があなたの症状を診ながら 適切に処方していますので、お薬への依 存はありません。 ただ、自分でお薬を急に減らしたり止め てしまうと、離脱症状を引き起こすことがあ ります。 医師と相談しながら服薬を進めましょう。 お薬についてQ&A Q3 薬を飲み始めて、すごく眠い、 ボーとするのですが・・・・ お薬についてQ&A A3 お薬を服用し始めた副作用と考えられま すが、しばらくするとこうした症状は減って いくと考えられます。 しかしながら、治療の開始では医師はあな たにあったお薬を調整している段階です。 まずはあなたの症状を主治医の先生に 伝えましょう。 お薬についてQ&A Q4 お酒は飲んでも大丈夫ですか? お薬についてQ&A A4 アルコールとお薬を一緒に服用すると、 お薬の効果が強くなりすぎてしまいます。 眠気、ふらつきなどから転倒することも起 こしかねません。 お薬とアルコールは一緒に服用しないで ください。 お薬についてQ&A Q5 風邪をひいたとき、市販のお薬を 飲んでも大丈夫ですか? お薬についてQ&A A5 市販のお薬を服用される場合、予 め主治医の先生に相談しておきましょ う。 また、ご心配な方は、お薬の併用に ついてお電話でクリニックまでお問い 合わせください。 お薬について お薬に対して不安や疑問をもっ たときには、ご自身だけで悩まな いようにしましょう。 主治医の先生にお話しましょう。 主治医の先生とのコミュニケーションが大切です。 苦手な状況で感じる 不安・恐怖に対する対応 自分が感じていることは本当か? 自己評価 40 他者評価 否 30 定 的 な 20 評 価 10 0 自分が思っているほど、周囲の人は 否定的に判断していないかも・・・ 社会不安障害 グループ 不安傾向の高い グループ 一般的なグループ 会話における自己評価と他者評価( Stopa & Clark, 1993 ) 女性の方へ 妊娠が判明した場合、主治医の先生に早めにご 報告ください。 また、望ましいのは計画的な妊娠・出産です。主 治医の先生と相談の上、治療を進めてください。 ◆参考文献 小山 司 編著 2005 社会不安障害治療のストラテ ジー 先端医学社
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