明治大学情報科学センター第8回情報教育研究会 関西大学における学生参画型授業の開発 —私たちの授業史— 2002年11月30日 長谷川伸(関西大学商学部) [email protected] http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/ 中南米経済論を題材として 現在の担当科目 中南米経済論 演習(3-4回生向けゼミ) 基礎演習(1回生向け導入期教育科目) 全ての担当科目で学生参画型を追求。 ※本報告では中南米経済論をとりあげる。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 1 中南米経済論の沿革 商・文学部2-4回生向け通年・専門科目。 出席30-50名(履修100-150名)程度。 授業運営方法 1. 1996/97年度:参集型 2. 1998/99年度:参与型 3. 2000年度以降:参画型 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 2 参加の型による教育の3類型 学 習 者 先 生 参集型教育 参与型教育 参画型教育 役割 視聴者 出演者 設営者 行動 出席・視聴・記録 発信・交流・生産 企画・実行・伝承 獲得 知識 認識 意識 役割 レクチャラー コーディネイター スーパーバイザー 行動 教える 調整する 学び合う 決定 独断 相談 協議 (林義樹「参画理論と情報システム」『武蔵大学総合研究所紀要』第6号,1996年,66頁) 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 3 96/97年度:参集型 伝統的な講義形式。毎回のたくさんのプリントを配布し てレクチャーを行い,最後に質問を受け付ける。 出席は一切とらない。レポートとテストさえできれば出席 は問わないというスタンス。 夏期レポートと学期末試験により成績評価。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 4 参集型から参与型へ 契機:愕然としたレポートと答案 そこには学びはなかった。 新米ゆえの未熟さはあるが,毎回時間をかけてプリントを作成し, レクチャーも手を抜かずにやってきたにもかかわらず, あるのは学びから逃走する姿 レポートは盗用のパッチワーク,テストは持ち込み可だが穴埋め問 であった。 喪失感と閉塞感 題すら満足にできず,論述も意味不明な文章の羅列。 ◆ レポートは「とにかく出せばいい」,テストは「とにかく書けばいい」。 ※「96年度学期末試験問題」 2002年11月30日 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/LAS.test.96.html 関西大学商学部長谷川研究室 5 「勉強」ではなく「学び」を 豊かな「学び」を再び取り戻すためには,一旦 「勉強」を断ち切らなければならない。 「学びからの大逃走」が起きている今日こそ「学 ぶことを学ぶ」=学習観・授業観の転換が何より もまず先に求められている。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 6 学生参画授業との出会い 1997年11月,経済学教育学会第13回全国大 会で,林義樹氏と学生参画授業,ラベルワー クと出会う。 藁をも掴む思いで参加した結果の出会い。 視野に入らなかった学生参画授業。 2002年11月30日 1997年3月6日,『学生参画授業論』購入。 関西大学商学部長谷川研究室 7 学生参画型とラベルの導入 基礎演習:翌1998年度からラベルを導入し,従 来の参与型から参画型に移行。 ■ 中南米経済論:この時点ではまだ参画型に移行 せず,ラベルの導入だけにとどめた。 ← 参画型の可能性(関西大学/商学部/専門科目へ の適用可能性)を限定的に見ていたから。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 8 98/99年度:参与型 Key Word: Translucence 成績評価基準も一緒に受講している学生の学びや思いもわか らなかったブラックボックス型授業から,それらが透けて見える 半透明な授業へ。 <教員→学生の一方向>という関係から, <学生間・教員−学生間の多方向>へ。 レポートコミュニケーション ラベルコミュニケーション 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 9 <教員→学生の一方向>という関係から <学生間・教員−学生間の多方向>へ monologue / 一対多 2002年11月30日 dialogue / 多対多 関西大学商学部長谷川研究室 10 毎回の授業の流れ[1998/99] 1. 2. 感想ラベルチャートの発表(前回感想ラベル) 学生によるレポート発表1(5分間) • 3. 学生によるレポート発表2(5分間) • 4. 6. 7. 質疑応答(質問ラベル)2 学生によるレポート発表3(5分間) • 5. 質疑応答(質問ラベル)1 質疑応答(質問ラベル)3 教員によるレポート形式の判定 教員による講評→補足的レクチャー 感想ラベル記入 ※「1999年度中南米経済論 授業運営・成績評価方法」 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/las99credit1.html 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 11 レポートコミュニケーションRCom 学生が作成するレポートを教員に提出するだけ でなく,授業において発表する。 ◆ 授業で学生が発言しにくい理由(準備と勇気が 必要)を逆手にとって,レポートの品質を高めて, 作品化する。 ◆ 学生間の直接的なやりとり(質疑応答)による相 互教育効果を生み出す。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 12 ラベルコミュニケーションLCom 感想ラベルIL 質問ラベルQL 感想ラベルチャートILC 学びのプロセスチャートPC 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 13 感想ラベルIL[1998-] 中南米経済論2002年11月30日 商00-980 関大 太郎 まさかサトウキビから味の素が できるとは知らなかった。 参画文化研究会 複写シールラベル (1.1型) 学生全員が毎回の授業終了時に, 科目名と日付,学籍番号と名前を記入し, ワンセンテンスで感想をサッと書く。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 14 質問ラベルQL[1998/99] 中南米経済論2002年11月30日 商00-980関大太郎→千里花子 表2からは「生産量が減少」とは 言えないのではないのか。 質問する際(前)に, 科目名と日付,学籍番号と名前,報告者名を記入し, ワンセンテンスで質問を書き,読み上げる。 質問点:ためにする質問も呼び水として歓迎。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 15 感想ラベルチャートILC[1998] 授業1回分の感想ラベルを全て使用し,次回の授業 までに希望者が, 「場づくりラベルワーク」によって構造化(チャート化) し, その回の授業がどのようなものであったのかをワン センテンスで表現する。 → 過負荷により2年で廃止:ラベル新聞へ移行。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 16 学びのプロセスチャートPC[1998-] 毎回作成する感想ラベルのうち作成者(受講 生)の手元に残される白ラベルを全て使って, 時系列に貼付けて1年間の授業をふりかえり, チャートの形で中南米経済論における学びのプ ロセスを表現する。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 17 参与型から参画型へ 授業でのやりとりが次第に活発化する一方,レポート発 表が終わった学生の欠席が目立つようになり,出席状 況が悪化。 レポート発表形式の限界性が見えた。 基礎演習での実践で参画型の可能性がわかる。 学生の主体性を最大限引き出すことができる。 「学び」をまるごと体験できる。 → http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/199904.html → http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/5fdf5.html 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 18 2000年度以降:参画型 Before 授業担当班が発見したことの中で最 も伝えたい発見を中心にして授業と して組み立てる。 In 授業担当班の学びの旅路を辿りな がら,発見を他の学生と分かち合い, 味わう。 After クラス新聞の作成で対話しふりかえ り,次回の授業での発表でクラスと してふりかえる。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 19 感想ラベルの三段活用[2001/02] 作品 作成者 0 感想ラベル 1 感想ラベルリプライ やりとり 学生:個人 教員 対話 自分自身 ⇆学生 クラス新聞 2 『中南米経済論新聞』 授業担当班 ⇆学生 対話とふりかえり 学びのプロセス 3 チャート 2002年11月30日 学生:個人 関西大学商学部長谷川研究室 自分自身 20 ツール/作品の変遷(1996-2002) 作成者 作品 年度 96 97 98 99 00 01 02 参集型 受講生 担当班 教員 レポート 質問ラベル 感想ラベル 学びのプロセスチャート Contribution Work Sheet 企画書 感想ラベルチャート ラベル新聞『中南米経済論新聞』 感想ラベルリプライ 2002年11月30日 ○ - 関西大学商学部長谷川研究室 ○ - 参与型 ○ ○ ○ ○ ○ - ○ ○ ○ ○ ○ - 参画型 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ ○ 21 われわれは何をしてきたのか 2002年11月30日 ラテンアメリカを鏡として, ふりかえりを繰り返し, 学ぶことを学びながら, 自分をつくり, 仲間をつくり, 作品をつくってきた。 関西大学商学部長谷川研究室 22 授業史からわかること 対話(やりとり),ふりかえりを重視するようにな り,そのためにラベルを活用してきた。 ラベルの活用によって,参集型から参与型へ, 参与型から参画型への発展が可能になった。 ◆ ラベルはシンプルだが/ゆえに強力なツール。 2002年11月30日 関西大学商学部長谷川研究室 23
© Copyright 2024 ExpyDoc