スライド 1

電子記録債権制度の活用について
平成20年6月17日
経
小
済
宮
産
業
義
省
則
Ⅰ.電子記録債権法制定までの経緯
1
1.電子記録債権制度の検討経緯
○ 経済産業省では足掛け5年にわたり電子記録債権について研究を継続。この間、金融庁、法務省
により、金融システム面、私法面からの検討も進められた。
○法の成立後は、金融業界を中心に、記録機関の設立に向けた検討が進んでいる。
第166回通常国会
15年度
電子債権法提言
経
済
産
業
省
金融システム化
に関する検討小
委員会
16年度
電子債権構想
電子債権を活用
したビジネスモ
デルWG
沖縄電子手形
実証実験
電子記録債権法 公布(平成19年6月27日)
17年度
電子債権プログラム
電子債権の管理
・流通インフラに
関する研究会
18年度
19年度
電子債権制度に
関する研究会
中間報告(2月)
第二次報告(5月)
私法面検討
法要綱作成
電子債権研究会
法制審議会
電子債権法部会
金
融
庁
金融システム面検討
記録機関の要件検討
金融審議会
金融審議会
(ITWG)
(第二部会+ITWG)
(経産・法務・金融・日
銀)
(経産・法務・金融)
電子記録債権制度
の活用に関する研
究会
07年11月~08年3月
電子債権
シンポジウム
(文書)
電子債権に関す
る基本的な考え方
20年度
二次報告では、
電子手形にフォーカス
法
務
省
(文書)
電子債権について
1年6か月以内(平成20年
12月26日まで)に施行へ
金
融
業
界
(
全
銀
協
)
「電子記録債権の
活用・環境整備に
向けて」を公表
電子記録債権利用
推進等懇談会を開
催
記録機関の設立に向
けて具体的な検討に
着手する
事業会社、有識者等を
メンバーとし、利用促進
、広報活動等を実施
2
2.電子記録債権制度の概要①
電子記録債権とは、金銭債権情報を、
本法に基づき指定される「電子債権記録
機関」の保有する記録原簿に記録するこ
とによってのみ、その発生や譲渡がなさ
れる、従来の指名債権・手形債権とは別
の新しい金銭債権。
電子債権記録機関
記録原簿
申請により主
務大臣が指定
① 発生記録
② 譲渡記録
債務者
債権者
①電子記録債権で支払
②電子記録債権を譲渡
譲受人
③弁済(主として金融機関を通じての決済を想定)
金銭債権
手形債権 (手形法)
 権利の発生、譲渡、消滅及び条件設定が、完
全に定型化されるため、高い流動性を確保。た
だし、利用局面が限定される。
指名債権 (民法)
 権利の発生、譲渡、消滅が定型化されないため、
多様な形での利用が可能。ただし譲渡手続きは煩
雑である。
電子記録債権 (電子記録債権法)
☞ 電子記録債権は、手形債権、指名債権の両面を持つことができる制度
3.電子記録債権制度の概要②
3
手 形
売掛債権
紙媒体を利用することに内在する、保管コストや紛失リ
スクの問題などから、手形の利用が減少
(手形残高 72兆円(H2年度)→33兆円(H18年度))
売掛債権は、債権の存在・発生原因を確認するための
コストや二重譲渡リスクがあるため、流動性に乏しく 早
期現金化が困難
(事業者は209兆円にのぼる売掛金を保有(H18年度))
事業者の資金調達の円滑化等を図ることが必要
電子的な記録によって権利の内容を定め、取引の安全・流動
性の確保と利用者保護の要請に応える新たな制度を創設
【法律の概要】
(電子記録債権に関する私法上の規律)
(電子債権記録機関に対する監督等)
○電子記録債権の性質
・ 磁気ディスク等をもって作成される記録原簿への電子記録を発
生・譲渡の効力要件とする金銭債権
・ 記録原簿の記録により、権利の内容を規定
○電子記録債権の取引の安全の保護
・ 善意取得や人的抗弁の切断の制度を創設
・ 記録原簿上の債権者への支払につき支払免責の制度を創設
○その他
・ 手形保証類似の独立性を有する電子記録保証や、電子記録債
権を目的とする質権の制度を創設
・ 記録事項の変更、電子債権記録業に関する電子債権記録機関
の責任、債権記録等の開示等についての規定を整備
○電子債権記録機関の業務の適正性の確保
・ 主務大臣が申請を受け、財産的基盤や適切な業務遂行能
力を有する株式会社を電子債権記録業を行う者として指定
・ 公正性・中立性の確保や、他の事業からのリスクの遮断の
観点から、電子債権記録機関の兼業を禁止
・ 業務の適切かつ確実な遂行を図るため、所要の検査・監
督規定を整備
○その他
・ 電子記録債権が金融商品として広く取引される場合に、金
融商品取引法の規制を適用
Ⅱ.審議会等での議論について
1.法制審議会について
4
電子債権法部会において、私法上の観点から検討。(平成18年2月~19年2月)
⇒ 民法等の研究者や法曹関係者、産業界及び金融業界の実務家で構成され、債権者、債務者、金融機
関等の立場からの意見を審議に反映。
審議会での主な論点
① 債権の発生や譲渡等における意思表示
④ 電子記録債権との原因関係
② 電子記録債権の自由譲渡性
⑤ 当事者の請求によらない支払等記録
③ 不実の記録等についての記録機関の責任
⑥ 消費者保護
19年2月 要綱案を決定、法務大臣に答申
19年3月 第166回通常国会に法案を提出
2.法制審議会の主な論点①
5
① 債権の発生や譲渡等における意思表示
債権者(譲受人)
債務者(譲渡人)
電子債権記録機関
○ 債権者・債務者、譲渡人、譲受人の双方
による記録請求
・当事者の合意が原則とする立場。
債権者(譲受人)
債務者(譲渡人)
電子債権記録機関
○ 債務者、譲渡人の単独請求にて足りる
・取引先は数百ともなると、いちいち債権者の請
求を確認することが難しい。
・債務者が一方的に記録させて債権を発生させ
ることは不当。(債権者側で金額や支払条件を
確認できない。)
【結論】 原則として、双方の請求を必要とする。
○ 発生記録等によって当事者に権利・義務が生じることから、当事者双方の意思表示に基づくこととす
ることが民法の原則と整合的。
○ 電子記録債権の取得についての債権者・譲受人の意思を無視することは適当ではない。
【参考条文】
(第5条第1項)
電子記録の請求は、法令に特段の定めがある場合を除き、電子記録権利者及び電子記録義務者双方がしなければならない。
3.法制審議会の主な論点②
② 電子記録債権の自由譲渡性
民法の指名債権
当事者間で譲渡禁止特約をすることが認められている。(民法466条2項)
審議会では2つの案で議論
案① 電子記録債権では、全面的な譲渡禁止特約をすることはできない。
案② 譲渡禁止特約についての特則は設けず、電子記録債権においても譲渡禁止特約
を認める。
【結論】譲渡禁止特約を行うことは可能。譲渡の回数等の制限も可能。
○ 中小企業の資金調達の円滑化という観点では、自由譲渡性を確保すべきではあるものの、譲渡禁止
特約が様々な場面で用いられていることから、それを利用する当事者の意思を電子記録債権において
も尊重すべきである。
○ 記録機関において、譲渡記録の回数等について制限を行うことは可能。
【参考条文】
第16条の2(発生記録)
十二 譲渡記録、保証記録、質権設定記録若しくは分割記録をすることができないこととし、又はこれらの電子記録若しく
は譲渡記録について回数の制限その他の制限をしたときは、その定め。
6
4.法制審議会の主な論点③
③ 不実の記録等についての記録機関の責任
記録機関に無過失責任
記録機関に
過失の証明責任を転換
不可抗力を免責要件
7
以下の3案にて議論。
電子債権記録機関の領域内で発生した事象であり、記録機関が全面的に責任を負うべき。
⇒ 実務家からは、記録機関に過度の責任を負わせるものとの反対意見あり。
記録機関に無過失である旨の証明を負わせる。
⇒ 記録機関が過度の責任を負うことに配慮。(申請ファイルにウィルスが付着している場合などまで記録
機関に無過失責任を負わせることは酷とする意見もあり。
上記2案の折衷的な考え方。⇒不可抗力であることを証明できなければ、記録機関は責任を負う。
【結論】 記録機関に過失の証明責任を転換
④ 電子記録債権との原因関係
(パブリックコメントでは、経済界もこの案を支持)
電子記録債権は、発生させる原因となった法律関係にもとづく債
権とは別個の金銭債権という前提。
①原因関係に基づいて電子記録債権を発生させる場合、原因関係上の債権が消滅するか。
②原因債権と電子記録債権が並存する場合、いずれを先に行使すべきか。
⇒ 電子記録債権と原因債権の関係は、当事者の意思に委ねるか、新しい制度であるこ
とを勘案して、何らかの規定を設けるべきか。
【結論】 当事者の意思に委ねることとする。(特段の規定を設けず。)
5.法制審議会の主な論点④
8
⑤ 当事者の請求によらない支払等記録
支払等記録は、原則として当事者の請求に基づいて行われることとするが、債務者の二重払
いの危険性を低減するには、支払と支払等記録の「同期性」をできる限り確保することが必要と
の認識。
⇒ 電子債権記録機関が送金に関与する場合、記録機関において債権者口座への入金の確認ができ次第、
当事者の請求を待たずに支払等記録を行うことによって、同期性を確保することが考えられる。
【結論】口座間送金決済に係る契約等に基づく支払いについては、電子債権記録機
関において遅滞なく、当事者の請求によらずに支払等記録をする義務を負う。
○ 銀行等を通じた払い込みが支払の大部分を占めることが想定され、資金送金のタイミングと支払等記
録が同期的に実施される措置が有効と考えられる。
【参考条文】
第63条(口座間送金決済についての支払等記録)
2 ・・・支払期日に支払うべき電子記録債権に係る債務の全額について口座間送金決済があった旨の通知を同項に規定する
銀行等から受けたときは、電子債権記録機関は、遅滞なく、当該口座間送金決済についての支払等記録をしなければなら
ない。
6.法制審議会の主な論点⑤
9
⑥ 消費者保護
○ 消費者が電子記録債権の利用者となった場合に、消費者が不利益を受けることは適当では
ないという共通認識。
⇒ パブリックコメントでは、そもそも消費者を電子記録債権の利用対象者から除外するべきとの意見もあり。
一方で、利用者を法人に限定してしまうと、個人事業主の利用を排除することとなってしまう。
【結論】○ 個人も利用者に含める。(個人とは消費者契約法の消費者を指す。)
○ なお、記録の当事者が個人である場合、取引の安全を確保するための規
定(善意取得、人的抗弁の切断等)は適用されない。
○ 消費者であるかどうかは明確ではないため、消費者かどうかという債権記録上に現れない事象によっ
て、規定の適用の有無が定まるのは相当ではないことから、事業のために契約の当事者となる場合は、
「個人事業者」である旨を記録できることとされた。
○ なお、消費者保護の観点から、真実は消費者であるにも関わらず、個人事業者である旨の記録がさ
れた場合、当該記録は効力を有さない。
【参考条文】
第19条(善意取得)
譲渡記録の請求により電子記録債権の譲受人として記録された者は、当該電子記録債権を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があると
きは、この限りでない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。 場合
三 個人(個人事業者である旨の記録がされている者を除く。)である電子記録債権の譲渡人がした譲渡記録の請求における譲受人に対する意思表
示が効力を有しない場合において、前項に規定する者が当該譲渡記録後にされた譲渡記録の請求により記録されたものであるとき。
7.金融審議会について
10
電子債権記録機関のあり方を中心に検討を実施。(平成18年6月~12月)
審議会での主な論点
① 同期的管理の必要性
④ 電子記録債権と金融商品取引法との関係
② 専業制に関する議論
⑤ 電子記録債権の個人利用者の保護
③ CMSに関する議論
報告書の概要
○ 決済の安全性の確保
・債権者の口座への入金の確認を、記録機関が金融機関から受け、支払等記録を行う仕組みが考えられ、適切な実務的検討を期待。
・記録機関が債権の譲受・引受を行うこと、債権者を代理して支払を受領することは適当でない。(公共性・中立性阻害、破綻リスク)
○ 電子債権記録機関の適正性の確保
・記録機関の公立性・中立性の確保されるような制度設計の必要性。
・記録機関の破綻回避、破綻時の記録機関の原簿の円滑な移管の仕組みの必要性。
・記録機関の要件(専業制、一定の財産的基盤、業務遂行能力、検査・監督規制の整備)。
○ 利用者の保護
・利用者が消費者である場合、消費者保護のための対応を適切に講じる必要性。
・業務規定等の利用者への周知等。
○ その他の課題
・金融商品取引法との関係(投資性が高まるなどの規制を及ぼす必要性が生じた場合は機動的に対応)。
・電子記録債権のネッティング(実務上の利点の確保等から、どのような対応が適切か検討していく必要)。
8.金融審議会の主な論点①
11
① 同期的管理の必要性
同期的管理を必要とする理由
【債務者】支払等記録の失念による二重払いリスク回避
【債権者】支払受領前の段階での権利消滅を回避
【同期的管理の必要性を否定する意見はなかったものの、以下のような意見あり。】
○ 同期的管理とはどの程度のものを指すのか。
○ 同期的管理を厳格にすればするほど、金融機関のみが電子債権記録機関となりうる制度となるおそれ。
○ CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)については、同期的管理は不要。
【結論】 弁済受領を金融機関が確認し、その通知を受けた電子債権記録機関が支払
等記録を行う。
⇒ 電子債権記録機関は「ブックキーパー」に徹するという趣旨。(記録機関自らが債権者・債務者となっ
て同期的管理を徹底することは想定せず。)
【参考条文】
第63条(口座間送金決済についての支払等記録)
2 ・・・支払期日に支払うべき電子記録債権に係る債務の全額について口座間送金決済があった旨の通知を同項に規定する銀
行等から受けたときは、電子債権記録機関は、遅滞なく、当該口座間送金決済についての支払等記録をしなければならない。
9.金融審議会の主な論点②
② 記録機関の専業制に関する議論
12
専業とするか兼業とするかで意見が分かれた。
「専業制」を適切とする意見
○ 他業からの破綻リスクが及ばないこと。
○ 電子債権記録機関自らが債権者・債務者と
なることの弊害。
○ 兼業とすると、兼業部分にまで監督が必要。
⇒ 社債等振替機関、株式保管振替機関も同様
の趣旨から専業制を採用。
「兼業制」を適切とする意見
○ 現在使用しているシステムの共有化を図ること
により利便性が高まる。
○ CMSにて利用する場合、現在担っているCCP
が電子債権記録機関となることが望ましい。
○ 電子債権記録機関は収益を上げる事が困難と
見込まれる中、兼業からの利益を活用すること
が望ましい。
【結論】 電子債権記録機関の効率性・中立性という観点から、「専業制」を採用。
【参考条文】
第57条 (兼業の禁止)
電子債権記録機関は、電子債権記録業およびそれに附帯する業務のほか、他の業務を営むことができない。
10.金融審議会の主な論点③
13
③ CMSに関する議論
40
企業E
40
10
企業B
CCP ネッティング
20
50
債権
企業E
30
20
企業D
企業B
30
40
10
企業C
企業D 30
80
企業C
グループ内企業にて活用
(指名債権でも活用)
○ 債権・債務を引き受けるCCP(セントラル・カウンター・パーティー)に関係者の信用リスクが集中する。
○ 一部のデフォルトが全債権者に伝播するリスクの存在。
○ ネッティングに係る相殺について電子債権記録機関による同期的管理が行われないため、決済の安全
性を害するおそれ。
○ 電子記録債権のネッティングがグループ内にとどまらず、広範に多数の者で行われる可能性。
【結論】 電子記録債権のネッティングについて、実務上の利点の確保、決済の安全性
の確保や利用者保護の観点から、どのような対応が適切か検討していく必要
がある。
11.金融審議会の主な論点④
14
④ 電子記録債権と金融商品取引法との関係
電子記録債権を活用
(多様なビジネスモデル)
○ 電子記録債権は多様な利用方法が見込まれ、金融商品として利用される可能性もあり得る。
○ 投資家保護の観点から、電子記録債権を金融商品取引法の規制対象とするという見方。
【結論】 ○ 現在、商業手形や指名債権は金融商品取引法の規制対象外。従って、電子記
録債権の利用がこれらの範囲に留まる限り、同法の規制の対象とする必要はな
い。
○ 但し、利用実態を踏まえつつ、投資性が高まる等、規制を及ぼす必要が生じる場
合には、機動的に金融所品取引法の規制を適用することが適当。
【参考】
附則 第3条 (金融商品取引法の一部改正)
金融商品取引法の一部を次のように改正する。
第2条第2項中「当該有価証券のみなし」の下に、「電子記録債権のうち、流通性その他の事情を勘案し、社債券その他の前
項各号に掲げる有価証券とみなすことが必要と認められるものとして政令で定めるものは、当該電子記録債権を当該有価証
券とみなし」を加え、・・・・・。
12.金融審議会の主な論点⑤
15
⑤ 電子記録債権の個人利用者の保護
○ 個人が電子記録債権の債務者となり得る例として想定されるものは、住宅ローン、クレジットカード、消費者
ローン等があげられる。
○ 特に個人を想定した場合、二重払いや成りすまし等によるリスクも想定される中、利用者保護は重要との認識。
【結論】 ○ 消費者については、法制面での保護が図られることはもとより、そもそも紛争に巻き込
まれること自体が不利益であり、未然に防止することが重要。
○ 記録機関は、同期的管理を行うだけでなく、利用者が消費者の場合、消費者保護のた
めの対応を適切に講じる必要。
Ⅲ.電子記録債権の活用したビジネスについて
1.検討されてきたビジネスモデル①
16
手形代替
(電子手形)
現在の手形の代替的に電子記録債権を活用するモデル
・これまで、手形を活用し、中小企業を中心に回し手形や手形の割引等で資金調達を行っ
てきたが、手形の減少が顕著な中、新たな資金調達手段の創設が必要。
指名債権
(電子売掛債権)
売掛債権を電子記録債権化し、譲渡または担保提供することで、早期現金化を図るモデル
・これまで資金調達手段として十分に活用されていない売掛債権を活用した資金調達手段
・債権譲渡を嫌う商慣行の是正も期待。
シンジケート・ローン
ローン債権のセカンダリー市場の一層の拡大に向け、流通促進を図るモデル
・譲渡に係る事務の簡略化。
・譲渡の法的安定性の向上。
リース・クレジット
債権の流動化
小口多数の債権を電子記録債権化、証券化することで、保有債権の流動性を高めるモデル
・流動化の拡大(通常、オリジネーターからSPCに譲渡されるだけで、転々流通しない。)。
・法的安定性の向上(電子記録債権による二重譲渡リスク低減の重要性)。
CMS(キャッシュ・マ
ネジメント・システム)
グループ内企業の債権を電子記録債権化、相殺することで、資金の効率管理を図るモデル
・グループ企業間での活用(情報突合による差額決済)。
・法的安定性の向上(電子記録債権を活用した決済期日前の相殺の実現)。
2.検討されてきたビジネスモデル②
17
検討されてきたビジネスモデル
手形代替
(電子手形)
指名債権
(電子売掛債権)
法制化のプロセス
手形代替
(電子手形)
指名債権
(電子売掛債権)
シンジケート・ローン
リース・クレジット
債権の流動化
CMS(キャッシュ・マネジ
メント・システム)
記録機関の「財務健全性」や「安定性」を重視
・専業制の採用(株式会社組織)
・当局による所要の検査・監督
シンジケート・ローン
リース・クレジット債権の
流動化
CMS(キャッシュ・マネジ
メント・システム)
実務上、実現は困難と見られるモデル
手形代替
(電子手形)
指名債権
(電子売掛債権)
経済産業省では、中小企業金融の円滑化に資するため、07
年11月~08年3月にかけて研究会を開催し、電子手形、電子
指名債権の制度整備を検討。
(電子記録債権制度の活用に関する研究会報告書を公表)
 中小企業を含めた利用者の視点から見た商品設計と運用ルールのあり方に係る論点については、
債務者と債権者、大企業と中小企業との間において、共通理解の方向性
 今後、電子記録債権法が施行され、金融機関等が中心となって具体的な検討が進められることが
期待されるが、本研究会の成果が尊重されることを期待
3.電子手形のための電子債権記録機関
○ 経済産業省では、電子手形のための記録機関のシステム費用について試算を実施。
記録機関システムの試算
「試算A」・・・リスクに幅広く対応する堅牢な設計 → 構築費用:82億円、運用費用:21億円/年
「試算B」・・・「試算A」より低廉なコストを実現 → 構築費用:42億円、運用費用:12億円/年
(試算の前提)
① 全国の全ての預金取扱金融機関(=602金融機関)と連携
② 全国の事業所の3分の1(=約50万社)が利用
③ 年間3,000万件、300兆円(残高ベース:750万件、75兆円)の電子手形が発生・流通
④ データ保存期間:(場合により、)5年又は10年
(試算の注意事項)
•
粗い計画段階の見積りであるため、1/2~2倍の誤差が発生
収益シミュレーション (試算Aの場合)
初年度10万社/600万件、対前年比30%増 →
7年目で投資回収
初年度 5万社/300万件、対前年比15%増 → 17年目で投資回収
(シミュレーションの前提)
① 利用者の負担料:300円/件
② 金融機関の負担料:100円/件
③ 減価償却:5年均等償却
④ 記録機関経費:10億円/年
等
 5年程度(システムの償却年数)で、回収できるかが、投資判断の目安
 利用件数が記録機関の収益性の鍵
18
4.研究会での検討結果(電子手形について)
19
【基本的な考え方】 現在の手形と同じように使えること
既存の手形と同じ機能
電子手形の新たな機能
・金融機関による利用者の事前審査
・分割を可能とする
→ 不適格者を排除し、制度の信頼性を向上
→ ただし、分割による手数料の負担の仕組み等に関
する債務者への配慮が必要
・原則、記載事項は必要的記録事項に限定
→ 現在の手形制度の要件どおり
・譲渡における担保責任
→手形の遡求義務と同じ効果を持たせるため、自動的
に保証が付される仕組み
・譲渡禁止特約は認めない
→ 現在の手形と同等の高い流動性を確保
・不渡処分制度に類似した制度設計
→ 記録機関、手形交換所および金融機関が連携
・下請法との関係整備
→ 下請法等の枠組みに整合的な制度設計
・電子記録債権の記録請求手続き
→ 原則として双方の記録請求を必要とするが、債務
者が単独で債権を発生させるなどの仕組みを導入
する場合には、受取側企業に配慮した設計が必要
5.研究会での検討結果(電子売掛債権)について
20
【基本的な考え方】 電子手形とは違い、設計の自由度を高める。
研究会での検討項目
・利用者の事前審査について
現在の指名債権と同様、事前審査は必要としない仕組み
・任意的記録事項の項目について
(追加すべき項目)
現時点で追加すべき事項はないが、今後の利用拡大に応じ、
利便性の高いサービスとなるよう継続して検討
・記録請求手続きについて
原則として双方の請求を必要とするが、委任を含め当事者の
ニーズに応じたサービスの提供を検討
・譲渡人の担保責任について
様々な取引が考えられることから、現在の指名債権と同じく、
当事者の判断により個別に保証を行う仕組み
分割機能を認め、全面的譲渡禁止特約が存在しないことが望
・譲渡禁止特約の取扱いおよび債権の分割
ましいが、依然として譲渡禁止特約を求める意見もあり、限定的
について
にその余地を認める必要性も存在
上記のほか、企業が保有する売掛債権を広く一般的に譲渡等により流通できるような
形で利用する電子指名債権(売掛債権)についても検討を進めるべきとの提案に基づ
き、その概略を検討。
6.電子記録債権導入に向けた検討状況と今後の期待
21
【銀行業界】全国銀行協会は、電子債権記録機関の設立に向け具体的な検討に着手
○ 全銀行参加型の電子債権記録機関の必要性
・電子債権記録機関と利用者との間に銀行が介在して資金回収の役割を発揮。
・電子記録債権制度が、現在の手形交換制度と同様、重要な社会インフラとなり得ることを踏まえ、銀行界が中心
となって記録機関の設立に向けた検討に本格的に取り掛かることが必要。
○ 記録機関のカットオーバー時期
・現段階では、カット・オーバーまで2年半から5年程度の期間が必要。
(システム要件設定に1~2年程度、システム開発に1~2年程度、接続テスト等に6か月~1年程度)
【電子記録債権制度の普及・発展に向けて】
 電子記録債権法が施行され、金融機関等が中心となって具体的な検討が進めら
れ、早期にサービス提供されることを期待。その際に、経済産業省が検討を実施し
た共通ルール等が尊重されることを期待。
 電子記録債権が第二の通貨となり得る潜在力を、メリット及びデメリットの観点か
ら判断し、電子債権記録機関の監督規制がどの程度緩和されるかも大きなポイント。