民法まるごと講義 生中継 セミナー レジュメ 【PDF】

2015/04/11
ホントにまるごと 生講義
【№1】債務の消滅時効制度の法的理解としては,主要なものとして次の 3 説が考えられる。
(Ⅰ説)債務の消滅時効は,債務が消滅していることを時の経過により証明できなくなったことから債
務者を救済する法定証拠の制度であり,債務を履行していない債務者を債務から解放する制度ではない。
(Ⅱ説)債務の消滅時効は,債務を負っている債務者を時の経過により債務から解放するための制度で
あり,時効完成により債務は当然に消滅する。
(Ⅲ説)債務の消滅時効は,債務を負っている債務者を時の経過により債務から解放するための制度で
あり,当事者の時効援用により債務は消滅する。
次のア~オの考え方のうち,それぞれの説から導き出すことができるものの組合せとして,妥当なの
はどれか。
(国総平 14)
ア.消滅時効の完成により債務は消滅し,ただ債務者は時効の利益を放棄してその効力を覆すことがで
きるのみである。
イ.時効完成後に,債務者がそのことを知らずに債権者に支払をしたならば,債務は消滅していないか
ら有効な弁済であり,実体法上の権利としての援用権はそれにより消滅する。
ウ.時効完成の効果は実体法上の援用権の成立であり,いかなる者に援用権を認めるかは実体法の問題
である。
エ.時効の援用は攻撃防御方法にすぎず,債務の消滅を主張する法的利益を持つすべての者は債務消滅
を援用できる。
オ.時効の援用は攻撃防御方法ではなく,実体法上の権利行使であるところの意思表示であり,裁判上
なされる必要はない。
(Ⅰ説)
(Ⅱ説)
(Ⅲ説)
1. ア
イ,ウ,オ
イ,ウ,オ
2. ア
ア,イ,エ,オ
ア,イ,ウ
3. イ
イ,エ,オ
ア,ウ,オ
4. エ
ア,イ
イ,ウ,オ
5. エ
ア,エ
イ,ウ,オ
【№2】物上代位に関する次の記述のうち,判例に照らし,妥当なのはどれか。(国般-平 15)
1.動産売買の先取特権を有する者が物上代位権を行使しようとする場合において,物上代位の目的と
なる債権(以下「目的債権」という。)が他の一般債権者によって差し押さえられたときは,一般債
権者を害することはできないから,その後に先取特権者が目的債権に対して物上代位権を行使するこ
とは許されない。
2.動産売買の先取特権を有する者が物上代位権を行使しようとする場合において,目的債権が第三者
に譲渡されたときは,当該第三者を害することはできないから,その後に先取特権者が目的債権に対
して物上代位権を行使することは許されない。
3.抵当権を有する者が物上代位権を行使しようとする場合において,目的債権が第三者に譲渡された
ときは.当該第三者を害することはできないから,その後に抵当権者が目的債権に対して物上代位権を
行使することは許されない。
4.抵当権は抵当権設定者に目的物の使用及び収益を認めるものであるから,抵当権の目的不動産が賃
貸された場合においては,抵当権者は,賃料債権に対して物上代位権を行使することは許されない。
5.譲渡担保権は,実質的には債権を担保するものではあるが,譲渡担保権者に目的物の所有権を移転
するものであるため,担保権に関する物上代位の規定は適用されず,譲渡担保権者は,譲渡担保権に
基づき物上代位権を行使することは許されない。
【№3】 債権者 A は,債務者 Y との間で Y 所有の不動産を目的物とする譲渡担保契約を締結したが,Y
が債務の支払を怠ったため,目的不動産を X に贈与した。
以上の法律関係に関する次の記述のうち,判例に照らし,妥当なのはどれか。(国般-平 12)
1.譲渡担保権者である A は,目的不動産の所有者であり,債務の弁済期の前後を問わず目的不動産を
自由に処分できるから,X は確定的に所有権を取得する。
2.譲渡担保権者である A が Y に対して清算金を提供するまでは,A は目的物につき所有権を確定的に
取得したものではないから,Y は債務を弁済して目的不動産を受け戻すことができる。
3.譲渡担保権者である A が弁済期後に目的不動産を X に贈与した場合は,Y は,債務を弁済して目的
不動産を受け戻すことはできないが,X がいわゆる背信的悪意者であるときは例外的に目的不動産を
受け戻すことができる。
4.X からの不動産明渡請求に対して,Y は,A に対する清算金支払請求権を被担保債権として,留置
権を主張することができる。
5.X は,Y の A に対する清算金支払請求権が時効により消滅したとしても,その権利の消滅により直
接利益を受ける者ではないから,消滅時効を援用することができない。
【№4】混同に関する次のア~オの記述のうち,適当なもののみをすべて挙げているのはどれか(争い
のあるときは,判例の見解による)。(裁事-平 0)
ア.土地所有者 A から地上権の設定を受けた B が,C のために当該地上権を目的として抵当権を設定し
ていた場合,A が死亡し B が単独で相続したときは,B の地上権は消滅する。
イ.土地所有者 A から地上権の設定を受けた B が,C のために当該地上権を目的として抵当権を設定し
ていた場合,B が死亡し C が単独で相続したときは,C の抵当権は消滅する。
ウ.A が,所有する土地に,B の A に対する債権を被担保債権とする第一順位の抵当権を設定し,C の
ために第二順位の抵当権を設定していた場合,A が死亡し B が単独で相続したときは,B の抵当権は
消滅しない。
エ.A 所有の土地に設定された地上権を B と C が準共有していた場合に,A が死亡し B が単独で相続し
たときは,B の当該地上権の共有持分は消滅しない。
オ.A が,所有する土地に,B に対して賃借権を設定してその旨の登記をした後,A の債権者 C に対し
て抵当権を設定した場合,A が死亡し B が単独で相続したときは,B の賃借権は消滅する。
1.ア,イ
2.ア,ウ,オ
3.イ,エ
4.ウ,オ
5.エ
【№5】弁済者代位に関するア~オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみをすべて挙げている
のはどれか。
(国総平 15)
ア.弁済者代位により取得した原債権のための抵当権を実行する場合において,その被担保債権として
扱うべきものは,求償権ではなく原債権であるが,弁済者代位は求債権を保護する制度であるから,
求債権よりも原債権の方が利息額が大きい場合であっても,代位弁済者は求債権を限度として配当を
受けられるにすぎない。
イ.弁済者代位により取得した原債権のための抵当権を実行する場合において,その被担保債権として
扱うべきものは,求償権ではなく原債権であるが,弁済者代位は求償権を保護する制度であるから,
原債権よりも求償権の方が利息額が大きければ,代位弁済者は求償権を基準として配当を受けられる。
ウ.代位弁済者は原債権と求償樺の二つの債権を取得することになるが,弁済者代位は求償権を保護す
る制度であるから,求債権につき消滅原因があれば原債権も消滅するが,原債権につき生じた事由が
求債権に効力を及ぼすことはあり得ない。
エ.原債権の担保として,保証と物上保証人による抵当権の設定がある場合に,保証人と物上保証人と
の間で物上保証人が全面的に求償のリスクを負担する旨の特約をすることは,後順位抵当権者を不利
益な立場に置くことになるから,物上保証人所有の抵当不動産の後順位抵当権者には,その特約を対
抗することはできない。
オ.債権者が物上保証人の設定にかかる抵当権の実行によって債権の一部の弁済を受けた場合,物上保
証人は,債権者と共に債権者の有する抵当権を行使することができるが,この抵当権が実行されたと
きは,債権者はその代金の配当については物上保証人に優先する。
1.ア,エ
2.ア,オ
3.イ,ウ,エ
4.イ,ウ,オ
5.イ,エ,オ
【№6】相殺に関するア~オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみをすべて挙げているのはど
れか。(国般-平 18)
ア.不法行為の被害者は,不法行為によって生じた加害者に対する損害賠償債権と,自己に対する損害
賠償債権以外の加害者の債権との相殺を主張することができない。
イ.請負契約の注文者は,請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の除斥期間が経過した
場合には,除斥期間経過前にすでに相殺適状に達していたときであっても,当該損害賠償債権と請負
代金債権との相殺を主張することはできない。
ウ.登記された抵当権の目的となっている建物が賃貸されている場合において,抵当権者が物上代位に
より賃料債権を差し押さえた後は,賃借人は抵当権設定登記後に取得した債権を自働債権として,差
し押さえられた賃料債権との相殺を主張することができない。
エ.債務者に対する清算義務を負っている仮登記担保権者は,後順位担保権者がいる場合には,債務者
に対して被担保債権以外の債権を有するときであっても,その債権を自働債権として,債務者の自己
に対する清算金債権との相殺を主張することができない。
オ.登記された抵当権の目的となっている建物が賃貸され,当該賃貸について敷金の授受がなされてい
る場合において,抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえたときは,賃貸借の終了により建
物を退去した賃借人は,退去時に敷金返還請求権と差し押さえられた賃料債権との相殺を主張してお
かない限り,賃料の支払を免れることができない。
1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,オ
4.ウ,エ
5.ウ,オ
【№7】解除の効果に関する次の甲及び乙の見解についてのア~オの記述のうち,適当なものはいくつ
あるか。
(裁事-平 21)
甲:解除により契約の効果は遡及的に消滅する。
乙:解除によって契約の効果は遡及的に消滅せず,原状回復が認められることによる間接的な影響を受
けるに過ぎない。
ア.甲説によれば,原状回復義務の性質は不当利得返還義務ないしその特則である。
イ.甲説によれば,解除とともに債務不履行に基づく損害賠償請求をすることは民法 545 条3項の有
無にかかわらず,当然認められる。
ウ.乙説によれば,売買契約が解除された場合,当然売買契約により売主から買主に移転した目的物の
所有権は,解除により買主から売主に復帰することになる。
エ.乙説によれば,未履行の債務は,解除時に当然に消滅する。
オ.乙説によれば,民法 545 条1項但書は,解除により不測の損害を被る第三者を特に保護するため
の規定ということになる。
(参照条文)
民法 545 条1項 当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復さ
せる義務を負う。但し,第三者の権利を害することはできない。
民法 545 条3項 解除権の行使は,損害賠償の請求を妨げない。
1.1個
2.2個
3.3個
4.4個 5.5個
【№8】 瑕疵担保責任について,次の2説があるとする。ア~オの記述のうち,「この説」がⅡ説を
指すものの組合せとして妥当なのはどれか。(国般-平 20)
(Ⅰ説)瑕疵担保責任は,売買が有償契約であるという性質を有することにかんがみて,売主と買主と
の間の不公平を調整するために,法律によって,債務不履行責任とは別の責任として,特に売主に課
した無過失責任である。
(Ⅱ説)瑕疵担保責任は,売買における債務不履行責任の特則を定めたものであり,瑕疵担保責任の規
定のないところには,一般原則である債務不履行責任の規定が適用される。
ア.この説によると,特定物を対象とした売買において,売主が瑕疵ある物を給付した場合にその修補
を求めることができるなど,もう一方の説に比べてより買主の期待にそった結果となりやすい。
イ.この説によると,民法 570 条の「売買の目的物」は特定物に限定されることになりやすい。
ウ.この説によると,売買契約の解除につき,特定物売買の場合には,催告が不要な場合があるが,不
特定物売買の場合には,原則として催告が必要となるのでバランスを欠くとの批判がされやすい。
エ.この説によると,不特定物のみならず特定物を対象とした売買の目的物に瑕疵があった場合にも,
売主は買主に対して瑕疵のない物を引き渡す債務を負うことになりやすい
オ.この説によると,悪意又は有過失等の帰責性を有しない売主の損害賠償の範囲は,信頼利益の賠償
に限定されることになりやすい。
1.ア,ウ
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.イ,オ
5.エ,オ