書評 『ドイツ軍の小失敗の研究』 06A2160X 磯田昂大 三野正洋著 光人社NF文庫 本の概要 本書は1939年9月1日から1945年5月8日第 二次世界大戦、とりわけ欧州戦線でのナチ ス・ドイツの戦局における「小失敗」を記述 陸・海・空軍・SSは勿論、外交・占領政策の 「失敗」も言及 だが、「ラーテ」・「マウス」には意識的に言及 しないなど、地味な「失敗」を刻々と記述 ユニークな戦史教本 ラーテ 想像上の戦車、ナチスでの開発計画は存在 ラーテのスペック ラーテは、重量約1,000トン、全長35m、全幅 14m、高さ11m。 「陸上戦艦」の異名を持ち、シャルンホルスト 級巡洋戦艦の主砲に相当する 28cm 3連装 砲。 しかし、1000トン級の戦車が完成しても道路 や橋が支えられるはずもなく構想のみで終 わった。 マウス 実際に開発された100トン戦車 左は終戦後にソ連軍に接収されたときの写真、右 は現在グビンカ軍事博物館での現在の「雄姿」 マウスのスペック 2号車まで製造 1号車は空冷エンジン搭載 主砲は55口径 12.8cm KwK44戦車砲 重量188トン ヒトラーとポルシェの「道楽」 戦闘車両の欠陥(抜粋) ディーゼルエンジンの未搭載 修理しにくい車両の構造 T34ショック 後期になればなるほどムダに巨大化 (80センチ列車砲「ドーラ」、大臼砲「カール」、 フェルディナンド自走砲、ティーガーⅡなど) だが、少数生産に ドイツ軍の戦闘車両 ドイツの戦闘車両 左から 1段目Ⅳ号戦車J型、フェルディナンド自走砲 2段目ケーニヒスティーガー、カール 1番右列車砲ドーラ (縮尺はバラバラ) 連合軍の戦闘車両 連合軍の戦闘車両 左から M4A3E8シャーマンイージーエイト(アメリカ) T-34-85(ソ連) シャーマンシリーズは5万両、T-34シリーズは6 万5千両生産。 対するⅣ号戦車は1万両に満たない生産数 本の印象 従来の「ラーテ」、「マウス」で軍事的な物笑い の種になるのがナチスだが、根本的な問題 点はセクショナリズムであり、それが世界最 強の陸軍を誇ったドイツの敗因だと指摘 ヒトラーの「一騎当千」妄想に偏ってしまった 兵器開発も失敗であり総じてナチスは戦略よ りも小手先の戦術に傾倒していたのが失敗、 という印象を受けた。
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