第2章 なぜ政府は貿易に介入するのか

第2章
なぜ政府は貿易に介入する
のか
1貿易政策の
実態
輸入関税と非関税障壁
貿易を制限する政策
<課税>
輸入関税(従量税・従価税)
輸出税
貿易を促進するような政策
輸出補助金
<技術的措置>
輸入数量制限
動植物検疫
非関税障壁
輸入関税(P28)
 図2-1
世界諸国の輸入関税率
世界諸国の平均関税率 26%(86年)→9%(07年)
発展途上国の平均輸入関税率 37.8%(83年)→10%以下(07年)
先進国の平均輸入関税率 10%以下(88年)→2.9%(07年)
↓
8回にわたる多角的貿易自由交渉
世界銀行や国際通貨基金などの国際機関からの政策提言
輸入関税(P28)
 表2-1
各国の輸入関税率(2008年)
すべての国で非農産品に比べて農産品の関税率が高い。
日本:非農産品2.5%(機械の関税率はほぼゼロ)
農産品24%(乳製品と穀物の関税率が極めて高い)
日本<韓国
中国<韓国
アメリカ…農産品に関する関税率はかなり低い。
(乳製品、砂糖および製品、飲料、たばこを除く)
非関税障壁(P31)
<中核措置>
輸入数量制限
価格制限
<非中核措置>
動植物検疫
規格・基準
 反ダンピング措置(輸出国の国内価格よりも低い価格に よって輸出する
ことに対する措置)
 相殺関税(輸出国の補助金を受けた輸入貨物に対し、国内産業保護のた
めに補助金額の範囲内で割増関税を課すこと)
税関http://www.customs.go.jp/tokusyu/sousai.htm
経済産業省http://www.meti.go.jp/index.html
2貿易政策の経済への影
響
輸入関税:小国のケース(P32)
貿易がない場合と自由貿易
輸入関税
貿易がない場合の消費量
国内供給
輸入量
国内供給 輸入量
輸入関税:小国のケース(P32)
貿易がない
B
E
H
自由貿易
B
F
E
F
H
J
K
輸入関税:小国のケース(P32)
輸入関税
B
E
H
自由貿易
B
E
F
J
K
H
F
J
K
輸入関税:大国のケース(P35)
 日本が中国からの衣類輸入に関税を課す
 日本での衣類の価格↑(供給↑
需要↓)
 中国は売れ残りが出ないように価格を引き下げる
 中国での衣類の価格↓(供給↓ 需要↑)
 日本での衣類の価格↓(需要↑)
↓
日本の衣類の輸入需要量と中国の衣類の輸出供給量が一致する
(貿易均衡が達成される)まで価格調整は繰り返される。
輸入関税:大国のケース(P35)
自由貿易
輸入関税
A
A
C
C
輸入関税:大国のケース(P35)
自由貿易
輸入関税
K
K
H
H
輸入数量制限(P38)
自由貿易
生産量
輸入量
輸入数量制限
生産量
輸入量
輸入数量制限(P38)
自由貿易
a
I
b
c
d
e
輸入数量制限
c
a
I
d
 輸入関税:政府が利益を獲得
 輸入数量制限:輸入業者が利益を獲得
 輸入数量制限は輸入業者が利益を得るために賄賂などで政府に働
きかけることがある。
 法制度が未整備な発展途上国で多い。
 輸入関税と比べて問題が起きやすい。
 いくら生産効率を上げて価格が下がっても、数量の制限が変化し
ないと輸入量は変化しない。
 輸入から保護を受ける側からすれば、輸入数量制限のほうが確実に保
護を受けられることになる。
 経済全体にとっては輸入関税のほうが望ましい。
3保護貿易政策に関する
議論
 経済全体では損失を発生させる保護貿易政策が実施さ
れる理由
↓
 保護貿易政策から利益を得る企業や労働者の政策決定
に関する影響力が強いから。
 損失を被る消費者に影響力がないから。
幼稚産業保護論(P42)
 幼稚産業保護論:発展の初期段階にある産業を競争力のある外国
企業から保護することで、将来その産業が競争力を持ち、世界全
体が利益を得るとして、保護政策を正当化する理論のこと。
・規模の経済が実現するのか?
・保護貿易か、生産補助金か?
PM+t
輸入関税
PM
AC
A
最適関税の理論(P44)
 大国であれば輸入関税を課すことで利益を得る。
→保護貿易の正当化
 輸入国にとって輸入関税率は高ければ高いほど良い?
 消費者余剰の損失が大きくなる。
 純利益が最大になるような輸入関税率が存在する。(最適関税率)
 報復のやり合い:関税戦争
 貿易量の低下、囚人のジレンマ(互いに協調する方が裏切り合うより
もよいと分かっていても、自身の利益を優先し、互いに裏切りあって
しまうというようなジレンマ)に陥る。
http://ja.wikipedia.org/wiki
4世界貿易体制
GATT/WTOの設立(P46)
 世界貿易機構WTO(95年設立)
 関税と貿易に関する一般協定(48年発効)
 目的:世界における自由な貿易を促進すること。
 第一次世界大戦後の大恐慌のもとで、自国産業保護のために保
護主義的措置をとった、
世界貿易を縮小→経済の低迷→第二次世界大戦の勃発
 貿易自由化→世界経済の拡大→経済的繁栄・政治的安定につな
がる
貿易の自由化(P46)
 多角的貿易自由化交渉(ラウンド)の実施
 GATT:モノ
 WTO:モノ、サービス貿易、貿易に関する加盟国間での紛争を
解決する機能
 GATT/WTOの二大原則
 最恵国待遇:すべての加盟国を同等に扱うこと。
 内国民待遇:輸入品と国産品を同様に扱うこと。
WTOの改革(P47)
 現在のWTOのもとでの多角的貿易交渉:
ドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド)
 交渉がうまくいかない原因
 決定方式が全会一致(加盟国150カ国以上)
 発展途上国による批判に応える形ではじまったが、先進国をは
じめ、全加盟国が実際に自国の利害を考えると、なかなか合意
できない。
 決定方式の変更など、WTO改革の必要性有