トマト黄化葉巻病(TYLCV) の防除対策 トマト黄化葉巻病はトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)によって引き起こされる病害で、平成 8年に国内で初確認されてから、西日本を中心に急速に被害が拡大し、トマトにおける重要病害 となっています。 本県においては、平成12年に初確認されましたが、その後の発生はありませんでした。しか し、昨年になって県内の複数のトマト産地において本病の発生がみられ、みどり市、桐生市でも 発生が確認されました。まん延を防ぐためには、本病を早期に発見し、適切な防除対策を講ずる 必要があります。 早期に発見し、適切に防除を行いましょう! 平成19年3月 桐生地区農業指導センター JAぐんまみどり 桐生市 病原ウイルス 病 徴 トマト黄化葉巻ウイルス Tomato yellow leaf curl virus(TYLCV) ●新葉が周りから退緑しながら表側に巻き、後に葉脈間が黄化し縮葉します。 ●病状が進行すると頂部が叢生(そうせい)し株全体が萎縮します。 ●発病後は、開花しても結実しないことが多く、初期に感染すると収穫皆無にな ることもあります。 初期症状 生長点の節間のつまり 苗に発生した症状 明瞭な黄化と葉巻き症状 新葉の叢生 国内および県内の発生状況 ●国内では平成10年に静岡県、長崎県、愛知県で確認された後、西南日本を中心に急 速に被害が拡大し、平成18年10月現在28府県で発生が確認されています。 ●関東地方においても本県を含め埼玉県、神奈川県、千葉県(平成17年)、栃木県、茨 城県(平成18年)で発生が確認されました。 ●本県においては、平成12年に初確認されましたが、その後の発生はありませんでした。 しかし、昨年になって中部、西部、東部地域で発生が確認され、被害の拡大が懸念され ています。 伝染方法 ●タバココナジラミとシルバーリーフコナジラミによってのみ伝搬されます。 (タバココナジラミとシルバーリーフコナジラミは形態的には区別できません) ●これらの虫は、一度ウイルスを獲得すると死亡するまでウイルスを 伝搬します(永続伝染)。ただし、卵を介して次世代にウイルスが 移行(経卵伝染)することはありません。 ●管理作業による伝染や種子伝染、土壌伝染、他の昆虫による伝染 シルバーリーフコナジラミ成虫 はありません。 タバココナジラミ シルバーリーフコナジラミ オンシツコナジラミ 汁液伝染 種子伝染 土壌伝染 + + - - - - +:伝染あり。-:伝染なし。 汁液伝染:摘芽・摘葉などの管理作業時に発病株の汁液で汚染した手やハサミなどで起こる伝染 TYLCVが感染する植物 ●下の表に示すナス科、マメ科、キク科、リンドウ科、トウダイグサ 科、ナデシコ科、ヒユ科の栽培作物、雑草に感染が確認されてい ます。 ●このうち自然感染し症状が確認されている栽培作物は、トマト、 ミニトマト、トルコギキョウだけです。 ●雑草については感染していても症状が出ません(無病徴感染)。 科名 植物名 トマト、ミニトマト、ピーマン、タバコ、 ジャガイモ、ペチュニア インゲンマメ ヒャクニチソウ トルコギキョウ ナス科 マメ科 キク科 リンドウ科 (雑草) ナス科 キク科 トウダイグサ科 ナデシコ科 ヒユ科 トルコギキョウ シロバナチョウセンアサガオ ノゲシ、タカサブロウ、ノボロギク エノキグサ ウシハコベ、ハコベ ホソバツルノゲイトウ ノゲシ TYLCVの伝染環 4月 5月 6月 7月 栽培終了 ト マ ト ハ ウ 8月 9月 10月 育苗 トマト 11月 12月 1月 2月 3月 定植 トマト トマト ス 内 野 トマト 雑 草 野生えトマト 外 主なTYLCVの感染経路 主な感染時期 雑 草 原図:群馬農技セ ●タバココナジラミ、シルバーリーフコナジ ラミは野外では越冬できません。 ●春先、施設から外へ出た保毒虫が、雑 草やトマト、野生えトマトにウイルスを感染 させながら、増殖します。 ●トマトが栽培されるとトマト育苗温室や 本ぽに侵入し、ウイルスを媒介します。 ●夏期の高温期は虫の増殖も早く、 感染してから発病までの日数も短いです (7~20日)。 防除対策 防除のポイン ト ウイルスを持った虫(保毒虫)を発生させない ~虫の防除と感染源の除去~ 生息範囲が施設内に限定される冬期(12月~3月)に防除を徹底し、野外に 保毒虫を出さないようにしましょう! (1)感染源の除去 ● 発病株は、見つけ次第、土に埋めるかビニール袋に密閉し枯死 させてから処分しましょう。 ●ほ場および周辺の雑草は除去しましょう。こぼれ種などから発生 したトマトは特に要注意です。 ●施設内へ作物以外の植物(鉢植えや苗など)を持ち込まない ようにしましょう。 ●健全苗を定植しましょう。 (2)虫の防除 発病株の袋による処分 ●生育初期に感染すると被害が大きくなるので、育苗~生育初期の防除を徹底しましょう。 ●施設の開口部は全て防虫ネット(目合い0.4mm以下が望ましい)を設置して侵入、拡散を防止 しましょう。 ●光反射フイルム、UVカットフィルム、黄色粘着板などによる物理的防除法を実施しましょう。 ●定植時には殺虫粒剤処理を行いましょう。 ●栽培終了後は施設を密閉して蒸し込み(40℃:7日以上)、施設内の虫を死滅させましょう。 (3)その他 ●地域ぐるみの防除活動 まん延を防ぐためには、農家だけでなく、家庭菜園でトマトを栽培している方の協力も不可欠で す。除草、殺虫剤散布、発病株の処分に理解と協力をお願いします。 地域ぐるみの対応が必要です。 ●疑わしい症状が確認された場合は、下記へ問い合わせて下さい。 【問い合わせ先】 東部農業事務所 桐生地区農業指導センター 0277-76-2047 JAぐんまみどり営農課 0277-30-8900 桐生市農業振興課 0277-46-1111
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