『企業の仕組み』 (2013年度秋学期) 第3回 株式会社とその成立について 担当: 樋口徹 ([email protected]) ※ 配布資料は「 http://www.thiguch.net/ 」に掲載 代金 協力者 資源調達 (取引先/ 家計/市 (人材・材料等) 場) 代金 会社 顧客 販売網を整備) (消費者や 利用者) 財やサー (加工し、流通 ビス提供 会社に必要なものは 資源(人、モノ、金、情報)+仕組み 1 会社とは:営利を目的とする社団法人 日本の会社総数は約 2万6千 社あり、その内、有限会社(会 社法施行前に設立)を含めると約 99%が 株式会社 と なる。 日本国内の 従業員 数約4千万人の内、約99%が株式会社で 働いている。 株式会社形式が多い理由は株主が 有限責任 であることであ る。これにより所有者(出資者)は最大の被害を小さくするこ とができる(リスク管理)。 株式会社において株主が有限責任となっている背景には、 株式 会社では 所有と経営 が分離されていることがある。 ※お金持ちが金を自由に投資しやすくする(大航海時代の名残)。 2 株主と会社の関係 • 株主(=会社法上の社員) =所有者 ≠ 経営者 • 株主は会社にとって重要な案件を決定する 株主総会 に 参加し、議決権を行使する(承認または否認、放棄)。 • 株主総会を年 1 回以上開催することが会社法で義務付 けられている。 • 株式会社では、株式譲渡に 制限 が無いのが一般的であ るので、株主は 簡単に譲渡できることになっている(誰でも 社員になれる)。 ※一部譲渡制限株式なども発行されている。この株式は会社 からの承認が無ければ譲渡ができない。 3 会社法施行前の日本企業の組織構造 • 以前の日本企業のトップは、最高経営責任者である社長を中 心とする「 常務会 」あるいは「 経営会議 」などが中心で あった。これらが最高意思決定機関として、企業経営の全般的 な マネジメント も担っていた(決定と執行の未分離)。 • 商法上の 取締役会 は、特に株主を中心としたステークホ ルダーの利害から逸脱した経営が行われているかを監視する 役割を担うものであった。 • したがって、商法上は、取締役会は全般的なマネジメントを担 当するトップとは、その役割が区別されるものとされている。 ※現実には取締役会と「常務会」、「経営会議」のメンバーが重 なっており、この点(自分で決定した行動を自分で監督・評価 する体制)が問題とされていた。 4 図: 日本の株式会社の典型的な構造の変化 会社法施行後 日本企業 会社法施行前 日本企業 株主総会 株主総会 (選任)↓ ↑(報告) (選任)↓ ↑(報告) 取締役会 報酬委員会 指名委員会 監査委員会 取締役会 代表取締役 (選任・監督)↓ ↑(報告) 常務会 取締役 取り締まり行為と 執行職務の未分離 // 代表執行役 執行役 決定と執行の職務分離 (委員会設置会社の場合) 5 ▼日本企業の従来型トップの組織 • 日本企業の従来型トップの組織は取締役会の中に最高意思 決定機関である常務会もしくは経営会議が設置され、そのメン バーおよび取締役会の構成メンバーが執行していた(取締役 の大半は、企業 生え抜き の人材)。 • その結果、株主総会から委任を受けて経営の監査を行うとい う意識が薄れ、株主 が軽視されてきた。 • さらに、基本的な経営事項の決定・執行が取締役会構成メン バーで行われ、決定と執行の任務が 未分離 であった。 • そのため、取締役会が決定した内容を自分で実行し、結果を 評価するので、チェック機能が働かないという問題があった。 ※会社法制定(商法改正)の狙いは経営の執行の監視と強化、 および経営の監督機能と執行機能を分離することによって意 思決定の迅速化・効率化を図ることであった。 6 株式会社の種類 種類 規模 取締役会 委員会設 置会社 無関係 大会社 公開 非公開 資本金5億円又は貸借対照 表の負債額200億円以上 設置必要 設置必要 不要(設置必要) ↥↥ 監査役会 それ以外の会社 公開 大会社の規模に満たないも の(委員会設置会社でない) 設置必要 不要(設置必要) ↥↥ ↥↥ 設置不可 設置必要 不要(設置可) 非公開 不要 不要(設置可) ⇊ 監査役 設置不可 設置必要 設置必要 設置必要 会計参与 設置必要 設置必要 設置必要 不要 不要 不要 ⇊ 不要(設置必要) ↥↥ 会計監査 人 ↥↥ ↥↥ 不要 不要 (設置可) 不要 不要(設置可) ※公開会社とは株式譲渡制限の定めがない株式を発行している会社 ※非公開会社とは全ての株式に譲渡の制限のある会社 (上場/非上場とは別) 7 ●委員会等設置会社 • 委員会等設置会社の特徴は、監査役制度にかわり、社外 取締役を中心とした 指名委員会 (取締役の選・解任)、 監査委員会 (取締役会の監査、業務執行の監査)、 報酬委員会(役員報酬の決定)を設置することである。 • 同時に、業務執行を担当する役員として 執行役 を置き、 監督機能と業務機能が分離した会社を指すものである。 • このことによって、取締役会が行ってきた 業務執行 が 執行役に移行し、取締役会の権限は、基本的な経営事項の 決定と執行役の選任・監督に縮小される。 ※委員会等設置会社は、現在のところそれほど多くの企業で 採用されるという段階には至ってない。 8 株式会社の設立手続き:法人格の取得 • 定款 作成:事業内容、商号、本店所在地、出資財産価額、発 起人の氏名・住所、発行可能株式数と譲渡制限などを記載 • 公証人 の認証:認証された公証人役場で閲覧・謄本請求可能 (原本は公証人役場で20年保管される) ※公証人とは法務大臣が任命する法律実務家の公務員 • 社員 の確定:出資義務履行 ※最低資本金の廃止(株式会社の出資金は千万以上だった) ※廃止の理由は形式化(取り崩し)と起業の妨げ、財産開示を義務化 • 機関 の決定:設立時代表取締役、設立時取締役、設立時監 査役などを選任。 • 設立登記 :本店所在地の法務局において設立の登記をする ことによって、 法人格 を取得。 9
© Copyright 2024 ExpyDoc