仮題目 ストレス反応による過労死につ いて 千葉ゼミ A83054 北川ゆう 「背景」 現代日本社会は「経済大国」と言われているが、これを支 えるもっとも大きい特色の一つが、諸外国の人々から“働き中 毒”(ワーカ・ホリック)と呼ばれている、働く人々の人間の 生理的限界を超えた長時間・過密・不規則・反生理的労働の 存在である。 長時間の労働が疲労とストレスを蓄積させ働く人々の健康 を破壊することにより、ストレス疾患が蔓延している。 ストレスの内容として「多忙による心身の過労」をあげるも のが圧倒的に多いものなどから、《長時間労働→心身過労→ 疾病》という進行過程のあることは明らかであると結論づけ ている。(座長梅沢勉日本大学短大教授) そして過労死は,このようなストレス疾患の頂点に発生してい るものと考えられる。(岡村 1990) 「目的・方法」 ・「目的」 どの程度の負荷をかければ過労死と判 断されるのか ・「方法」 文献を調べる 「過労死とは」 仕事上のストレス、長時間労働による疲労等、業 務上の過重負荷により、脳や心臓の血管の病気が 著しく悪化し、やがて脳内出血、心筋梗塞等によ り死亡に至ることがある。これを「過労死」と呼 んでいる。現代的な疲労の蓄積の結果、体に異常 をきたしついには死亡、またはそれに近い重大な 突然の病気を引き起こした場合を「過労死」とい う。 過労死は仕事による疲労が原因で倒れ、他に重大 な個人的な原因がなければ、労災として認定され 救済される権利があるとの考えのもとに提起され たものである。 「過労死の定義」 医学 「過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動 脈硬化などの基礎疾患が悪化、脳血管疾患や虚血 性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働 の不能又は死に至った場合」 脳・心臓疾患には①仕事中の負傷が原因で発症 した場合と、②著しい長時間労働などによる業務 の過重負荷が原因で発症した場合がある。過労死 は②にあたる。なお、死亡事案以外の脳・心臓疾 患も含むので「過労死等」とも呼ばれている。 「過労死新認定基準」 第一 基本的な考え方 業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管 病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患 が発症する場合があり、そのような経過をたどり発症した 脳・心臓疾患は、その発症に当たって、業務が相対的に有力 な原因であると判断し、業務に起因することの明らかな疾病 として取り扱うものである。 このような脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による 明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷 のほか、長時間にわたる疲労の蓄積も考慮することとした。 また、業務の過重性の評価に当たっては、労働時間、勤務 形態、作業環境、精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に 把握、検討し、総合的に判断する必要がある。 「過労死新認定基準」 第2 対象疾病 本認定基準は、次に揚げる脳・心臓疾患を対象疾病として 取り扱う。 1 脳血管疾患 (1)脳内出血(脳出血) (2)くも膜下出血 (3)脳梗塞 (4)高血圧性脳症 2 虚血性心疾患等 (1)心筋梗塞 (2)狭心症 (3)心停止(心臓性突然死を含む。) (4)解離性大動脈瘤 疾患発症までの流れ 持病(高血圧・基礎疾患) ↓ 過重労働 ↓月100時間を超える長時間労働 ↓発症前2~6ヵ月間に1か月あたり80時間を ↓超える時間外労働 ↓ ↓ (持病悪化) ↓ 脳・心臓疾患の発症 「過重労働の評価要因」 1 不規則な勤務 不規則な勤務は睡眠ー覚醒のリズムを障害するため、不眠・睡眠 障害・昼間の眠気などを高め生活リズム悪化をもたらす場合が 多い 2 拘束時間の長い業務 3 出張の多い業務 4 交替制勤務・深夜勤務 夜遅くや主に夜間・早朝に働く労働者の虚血性心疾患のリスクが 高く、生体リズムと生活リズムにずれが生じ疲労がとれにくい 5 作業環境(温度環境、騒音、時差) 循環器系への負担が大きい 6 精神的緊張を伴う業務 仕事の要求度が高く、栽培量が低く、周囲からの支援が少ない場 合には精神的緊張を生じやすく脳・心臓疾患の危険性が高くな る 「過労死に多い職種」 ・ホワイトカラー(デスクワーク従事の仕事) 営業系 サンドイッチ症候群 専門技術職 長時間で不規則な労働時間 他 公務員特に学校教員や一般事務職等 ・ブルーカラー(肉体労働従事の仕事) 工事現場 特に夜勤労働 運転手 際限のない長時間労働と車両運転ストレス 他 大工、左官などの建設業従事者 ホワイトカラーの例 ・テクノ・ストレス 企業にパソコンが導入されたことにより慣れない道具を使わ なければならない労働者にとって新たなストレスをもたらす 原因ともなった。職場におけるコンピュータ導入に伴う問題 は大きく2つに分けることができる。第1が長時間にわたる コンピュータ作業に伴って引き起こされるVDT障害であり、 第2がコンピュータとのかかわりかたに起因する精神・身体 的問題で、テクノ・ストレスといわれるものである。 テクノ・ストレスとはソフト開発者の示すストレス反応や人 間関係上の問題を指していて、「コンピュータと人間の微妙 な関係が崩れた時に生じる症状」だと定義されている。 (Brod, 1984)テクノ・ストレスにはコンピュータに対する 拒絶反応であるテクノ不安症とコンピュータ中毒であるテク ノ依存症の2つがある。 ホワイトカラーの事例 国内の航空貨物運送業者の経理課 仕事内容は企業や団体が作成する各種ビジネス文書の集荷と 配達業務。早朝届いた荷物を午前中に営業担当が顧客に届け、 翌日配送分を午後に顧客から集めて夜8時過ぎに全国に発送 するように積み込みをするというシステム。 300社以上の得意先を抱えながら経理課はAさんを中心に たった3人の女子社員で一切の伝票整理を行っていた。 入社当時から忙しい会社だったが普段は9時前後に帰宅する 毎日だった。 しかしその後コンピュータの導入が決まってからは急激に忙 しくなり、会社に泊まり込んだり深夜1時過ぎに帰宅する日 が多くなった。Aさんは日常の経理の仕事をこなす一方でコ ンピュータの導入に備えて基礎データの打ち込みや操作の練 2 習をしなければならなかった。最初は余裕があったがだんだ ん元気がなくなっていくのが周囲にも感じられるようになっ た。 そしてこの頃にAさんは係長に任命されるのだが、少しも嬉 しそうではなく肩書きだけで責任と仕事の負担がますます重 くなることを感じ取っていた。 しかも運が悪いことにコンピュータの導入と同時に三人の事 務員のうちベテランの二人が退職してしまい、新人とAさん の二人だけになり珍しく普段言わない愚痴を言うようになっ た。この頃から帰宅は毎晩11時を過ぎ、そのうえ仕事を家 まで持って帰るようになった。会社には記録に残らないサー ビス残業である。 経理の仕事は伝票のコード化と入力だがその間にも顧客から の電話が鳴りっぱなしでその内容は苦情ばかりだった。 3 この苦情の処理はAさんに任されていた。 Aさんの残業時間は2月が64.5時間、3月が70時間。 しかし経理課にはタイムカードがなく残業の時間は記録され ない。勤務表上には休んだことになっているが実際には出勤 していることも多々あり、残業は月に100時間は軽く超え ていた。 コンピュータ導入の約半年後、激しい頭痛を訴え意識を失い 倒れ、病院に運ばれたが数日後に亡くなった。 バーンアウト症候群 心身の疲労が激しく、仕事に対する熱意を失い無気力になるこ と。 個人と仕事の乖離や不都合が大きくなるほど陥りやすい。 例えば ・自分の能力以上の仕事を要求された時 ・成果に見合った報酬が得られないとき ・職場で人間関係が損なわれたとき ・職場で公平に扱われなくなったとき ・職場の目標と自分の信念が食い違ったとき などの個人と仕事の不都合が発生しそれにより消耗感・シニニ ズム・非効力感を感じバーンアウトする。 やる事まとめ!! どこまで働けば死に至るのか 平均的な時間(100H以上)と働いた時間が詳しく書かれたWカラーの死 亡例を探す 心理的ストレスを入れる Wカラーの仕事で感じるストレッサーをはっきり挙げた死亡例を探す(早 急!!) 結論 高血圧性脳出血の死亡例 長距離トラック運転手 死亡前日トラックに200㎏入りドラム缶を50本積み込 み、三重県を出発し熊本県を同僚の2人で目指した。途中被 災者は、同僚と交代しながら計11時間45分を運転して熊 本へ到着した。この間休憩は20分・25分・10分・20 分で軽い軽食とトラックの燃料補給のみ。 到着後直ぐに積み荷の降ろす作業を35分間2人でし、同 僚の運転で帰途についた。 出発した2時間後、トラックの仮眠ベッドにいた被災者が 気分が悪いと訴え激しい嘔吐を繰り返した。被災者は意識は あったもの「身体がいうことをきかないと訴えていた。 その2時間半後救急車で移送。被災者の意識はなくなって いた。 被災者は診療所に収容されたが死亡。死因は高血圧性脳内出 血と診断された。 ・ 「過労死の予防」 ・業務に起因する脳・心臓疾患の発症を防止するに は、疲労回復のための十分な睡眠時間又は休息時 間が確保できないような長時間にわたる過重な労 働や劣悪な作業環境、仕事上の精神的ストレスな どを排除すると共に、疲労が蓄積する恐れがある 場合の健康管理対策の強化や、過重労働による業 務上の疾病が発生した場合の再発防止措置を徹底 することが必要である。 労働時間を把握し時間外労働を削減する。 深夜業は日中業務よりも身体的な負担を感じやす いため、深夜労働者に自発的な健康診断を受けて もらう。 「参考文献・引用文献」 過労死110番 大阪過労死問題連絡会(著)1989 栄養指導の実践に役立つ 社 生活習慣病予防セミナー 合同出版 月刊「生活」編集部 2004 産業保健版 個人情報の保護と活用の手引き 産業医科大学産業生態科学研究所 社員の健康管理と使用者責任 2004 岩出誠(著) 過労死Q&A その予防と労災補償 過労死の研究 上畑鉄之丞 日本プランニングセンター 自殺大国ニッポン 過重労働による健康障害を防止するために ワークストレスの行動科学 ソフト技術者はなぜ倒れたか 横山博司 岩永誠(著) 祢津加奈子(著) 2007 法研 労働調査会 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課 1993 フットワーク出版 2003 1990 北大路書房 にっかん書房 労働調査会 2006
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