男子大学生の短距離走・リレー学習について

SURE: Shizuoka University REpository
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男子大学生の短距離走・リレー学習について
伊藤, 宏; 野中, 基行; 関上, 洋靖
静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇. 31, p. 105-113
2000-03-23
http://dx.doi.org/10.14945/00001761
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静岡大学教育学部研究報告 (教 科教育学篇)第 31号 (2000.3)105∼ 113
男子大学生 の短距離走・ リレー学習 について
A study of 200m sprint relay performance of male
伊
藤
宏・ 野
中 基
行・ 関 上
students
洋 靖
Hiroshi ITo O MOtOyuki NoNAKA・ Hiroyasu SEKIGAMI
(平 成 11年 10月 1日
受理)
ABSttRACT
The purpose of this experilnental study was tO exanline performances of 22 male
′
university students in three relay and sprinting lessons。
rhe relay Was 4 × 50■ l and team
consisted of five. In the relay lesson the lead distance was calculated by the 20nl dash tilne
of the runner who wOuld receive the batOn and the speed fron1 50nl to 60m of the runner
who would pass the baton.The sub purpose was making a comparison between the none
of use the lead distance and the use of the lead distance. As a result, the sum of fOur
member'50m sprint time took more time than the first relay time(the none Of use the lead
distance)but nOne significantly the relay tilne of the use Of the lead distance was faster
than the none― use.
は じめに
この研究 は、昨年度 か らの研究報 告書 (教 育学部教 科教育学偏
第 49号 )の 継続研究 で ある。
教育 学部保健体育 専攻 の学生 が卒業後小・ 中、高校 の教員 になった場合、体 育授業 で児童・ 生
徒 に対 して短距 離走・ リレー も実際 に教 えなけれ ばな らな い。 それ も保健体育専 攻 生 は、小学
校 で は他 の教科 を専攻 した教師 よ りはよ り専門的 な知 識 と指導 が期待 され、 中・ 高校 で はよ り
専門的 な指導力 が 要求 され る こ とにな る。 しか し、体育授 業 での児童・生 徒 の短 距離走 0リ レー
ヘ の興味関心 は、高学年 になれ ばなるほ ど稀薄 にな り、 特 に女子 の児童・ 生 には
徒
最 も好 まれ
な い教材 になってい る。
また、指導場面 にお い て も短距離走・ リレー の技術指導 は、 一 見簡単 そ うに見 えるが 、実際
児童・ 生 徒 を前 に して教 える段階 にな る と、指導内容 が単純 で あ るが ゆえに、現場 で は単 一 で
画 一 的 な指導 にな りやす い と言 われて い る。 それ は技術指導 と称 して、 その場 での腿上 げや 、
上体 を前傾 させ、腕 をしっか り振 らせ、キックは強 くな ど、体 の部位 の動 か し方や フォーム を
意識 させ ることが主な ものにな り、 それ らを反復練習する ことが速 く走れる と教師 と児童・ 生
徒 が認識 していた と思われ る。 そして、実際児童・生徒 が走 る段 になると、教師は100mと い う
距離 をスター トか らゴール までいかに全力で走 らせ る ことか と言 うことに集中 させがちになっ
てい る。
伊 藤
宏・ 野
中 基 行・ 関 上
洋 靖
そ こで、今回の研究 では、教育学部保健体育専攻男子 1年 生20名 が必修専門 の陸上競技 の実技
授業 で、伊藤 が考案 して求 めた リー ド距離 を用 いた 4× 50mリ レー を学生 が どのように実践 し
て走 るかを主課題 にして行 った。バ トンをもって走 って くる前走者 の疾走速度 とバ トンを受 け
取 つて走 り出す次走者 の20m走 タイム を利用す る ことで、 リー ド距離 を求める ことと、 リー ド
距離 を利用 したスムースなバ トンパ ス をしたチームが どのように リレー を走 るのかを確 かめる
ことを目的 にした。
方法
1.学 習内容 について
教育学部保健体育専攻 1年 生男子学生20名 が必修専門 の陸上競技 の授業 を受講 した。今回 は
4時 間の授業 で、一斉指導 で行 った。指導・ 練習骨子 と学習時間割 は表 1に まとめた。
表 1 指導学習内容の骨子
指導学習内容
時限
1時 限
半習内容 の説明 準備運動 (ジ ョギング、ス
トレッチ ング、ウイン ドスプリン ト60m× 3)
loom m trial
準備運動 (ジ ョギング、ストレッチング、ウ
2時 限
イ ン ドスプ リン ト60mX3)試 行錯誤 で行 つ
たバ トンパスの練習 4× 50m rttv
3時 限
イ ン ドスプリント60m× 3)リ ー ド距離を用
いたバ トンパスの練習 4× 50m rdv
動 (ジ ョギ ング、ス トレッチ ング、ウ
猫 限
準備運動 (ジ ョギング、ス トレッチ ング、ウ
イ ン ドスプリント60m× 3)リ ー ド距離 を用
いたバ トンパスの練習 4× 50m rdv
男子学生の形態値 と100m疾 走能力 について
測定項 目は、被験者 の身長 と体重な どの形態値、100m疾 走中の速度、歩数頻度、歩幅 である。
これによって、疾走中の速度 や歩数・ 歩幅 の推移 か ら走 り方 を考察 す る ことが 出来 る。速度、
2。
歩数頻度、歩幅 の測定方法 は、1/100秒 で計測 で きるビデオタイマー付 の ビデオ カメラで スター
トか らゴール までを図 1の ように撮影 した。撮影 した ビデオを VTRで 再 生 しス ロ ウモーショ
ンとコマ送 りでそれぞれの区間 の通過時間 とその区間での 1歩 の接地所要時間 を読 み取 り、速
度=歩 数頻度 ×歩幅 の公式 を利 用 し、EXCELの 表計算 ソフ トに各区間の疾走速度、歩数頻度、
歩幅 の算出法 をプ ログラ ミングしてお くことによって求 め、図表化 まで行 った。 このように測
定すれば 1台 の ビデオ カメラで速度、歩数進度、歩幅 を求める ことが 出来 る。図 1参 照。
3.リ ー ド距離 について
リー ド距離 については、図 2の 次走者 Bの 立 ってい る位置 か らマーカーまでの距離 Xを 指 す。
「 4× 100mと 4× 200
この距離 については、日本陸上競技連盟 の陸上競技 ブ ックの第 166条 0に 、
男子大学生 の短距離走・ リレー学習 について
疾走速度・歩数頻度 。歩幅測定手順
1.信 号器の煙を撮影する。
2.走 者をスター トからゴールまでカメラで追 つて撮影する。
3.カ メラに 1008eCま で測定可能なビデオタイマーをつけて撮影する。
4.カ ラーコーンの設置を国のようにおく.こ れによって 1台 のカメラで
この口上に コーンを置 く.
この薔は翼際には1:か な い。
1′
5。
速度、歩数、歩幅が求め られる.
各区間の通過時間と 1歩 の所要時間を録画再生か ら読み取る。
6. 5番 で得 られたデータをEXCSELな
図1
ビデオカメラ
どの表計算 ソフ トで計 算 し、図表化する。
ビデオカメラによる100m疾 走中の疾走速度・ 歩数頻度・ 歩幅の測定図
走る方向
テイクオーバ‥ゾーン
mm
-
ダッシュマーク
一
lom
―
lom
―
xm
スター ト地点
Oテ イタオーバーソーンの中間点でバ トンパスができるようにする。
次走者Bが ダッシュゾーン10mと 中間地点までの10mと を合わせた20mを 何秒で
走るのか (ダ ッシュタイム)と 、前走者A050m∼ 60m間 の疾走速度を求める
ことでダッシュマータまでの距離Xmを もとめることができる.
その考え方を数式で示すと次のようになる。
次走者B020mダ ッシュタィム × 前走者AO速 度・前走者Aが ダッシュマータから中間点まで走る距離
リー ド距離 (次 走者Bか らダッシュマータまでの距離 )ヨ ダッシュマータから中間点までの距離 -20m
00m・ Ю
具体例
B020mタ ッシュタイムが 00・ で、AO速 度が毎秒8。 OmOと き、
3.0× 8.0〓 24.0 24.0日 20〓 4。 O X(リ ー ド距離)は 、4mと なる。
3。
図2
リー ド距離の求め方
宏・ 野
伊 藤
中 基 行・ 関 上
洋 靖
mリ レーでは、第 1走 者以外 のチームの走者 は、 テイク・ オーバ ー・ ゾー ンの前 10m以 内の と
ころか ら走 り始 めて もよい。 この延長 した範囲 を示すために、各 レー ンにマー クをつ ける。
」と
あ り、 マー クまでの距離 についての名称 はついていないので、 この距離 をリー ド距離 と命名 し
た。
リー ド距離 の求 め方 は、図 2に 示 した ように、 テイク・ オーバ ー 0ゾ ー ンの中間点 でバ トン
パ スがで きるように、次走者 のスター ト位置 か らゾーンの中間地点 までの20mま でのダッシュ
タイム と前走者 のマー クか ら中間地点 までの速度 を知 る こ とで、図中の計算方法 で求 める こと
がで きる。 これ らのダ ッシュタイム と疾走速度値 は、上記 の方法 1の 測定 か ら求 める ことがで
きる。
今回の研究 では、 この リー ド距離 を前走者 と次走者 が もちいて、 どの程度正確 なバ トンパ ス
がで きるかを調査す る ことが 目的 となってい る。
結果 と考察
1.受講 生の形態値 と疾走能力 について
表 2に 身長、体重、50m走 の平均 と標準偏差 を示 した。身長 と体重 は今年 5月 に本校保健管
理 センターで行われた健康調査で測定 された値 を全 国平均 と比較するために用 いた。身長 のみ
に 5%水 準 で有意差 がみ られた。50m走 タイム を疾走能力 として用 いたのは、全国値 として用
いた体力・運動能力調査報告書 (文 部省体育局 )に は、100m走 タイムが掲載 されてお らず、50
m走 のみが用 い られていたか らである。
身長 と体 重の分散 は全国 の分散 と等質 であつたが、50m走 の分散 は全 国の分散 と等質 と見 な
せ なかったので、ウ ェルチの法 による t検 定のをお こなった。その結果、全国の平均値 との差 は
有意 ではなかった。 したがって、身長 は本学生の方が高 く、体重・ 50m疾 走能力 は全 国 と同程
度 の形態、能力で あった。表 2参 照。
2.100m疾 走 について
表 2 男子学生の形態値 と疾走能力について
全国男子学生
1800名
有意差検定
m 劇 m d
s
男子学生
20名
身長 Ccmp
体重 αυ 50m走
173.35
64。 01
57
170。 60
5。 66
pcO。 05
7.09
4。
(秒 )
7.18
0。
30
62.22
7.27
7.92
0.51
授業時間数 は、 4時 間 をリレーの指導時間 に割 り当てた。 リレーの学習 では、個 々のペ アー
の リー ド距離 を計算 で求 めるために、20mの ダ ッシュタイム と50mか ら60mま での疾走速度 を
求 めな くてはい けないので、学生 には100mの 全力走 を課 した。
そ こで今回の男子学生の100m疾 走 の走 り方 について、最初 に、小林 らの報告 と比較 してみ
た。小林 らの報告つでは、東大生男子 の100m疾 走 タイムが13.99秒 で、総歩数が68.20歩 、歩数
頻度 は3。 64歩 /秒 、歩幅 は1.48m/歩 と報告 してい る。
男子大学生 の短距離走・ リンー学習 について
0ここ
5m
10m
飾
30m
40m
50m
mm
9om
loom
40m
50m
mm
70m
図 3-2歩 数頻度
80m
9om
図 3-1
mm
70m
凍庁曲線
官 ま し
5m
10m
mm
30m
10m
am
30m
loom
230
210
1.90
1.70
●
1.50
1.30
1.10
0。
90
070
5m
40m
図 3-3
50m
αhn
歩幅曲線
70m
mm
9om
loom
110
伊
藤
宏・ 野
中 基 行・ 関 上
洋 靖
同様 な観点 で今回の男子学生 を見 てみると、疾走 タイムは、13.50秒 で、総歩数 (走 タイム ×
歩数頻度)は 54.13歩 、歩数頻度 は4。 01歩 /秒 、歩幅 は1.86m/歩 であつた。静大生の方が、歩
数頻度 も歩幅 も大 きい走 り方で あった。
さらに、静大生の走 り方を、疾走中の速度、歩数、歩幅 の変化 か ら考察 を試 みた。考察 にあ
たっては、運動学 の立場 か ら、運動経過 の構造分析aと して100m区 間 をスター トか ら40mま で
を加速疾走局面 (導 入局面)、 40mか ら80mま でを疾走局面 (主 要局面 )、 80mか らゴール まで
を持久疾走局面 (終 末局面)と に区分 してそれぞれの局面 ごとに、100m走 タイムの速 い群 (上
位群 7名 )と 中間群 (中 位群 7名 )そ して遅 い群 (下 位群 6名 )の 3群 に分 けて走 り方 に考察
を加 えてい くことに した。
加速疾走局面 の速度変化 について 3群 を比較 す ると、上位群 は他 の 2群 とは違 いス ター トか
らゴール まで高水準 を示 し明確 な違 いが み られたが、中位群 と下位群 は40mま でほぼ同程度 の
速度水準 を示 していた。 しか し、 その後 の疾走局面 で 3群 間では明 らかな違 い を示 していた。
歩数頻度 と歩幅 とをリンクさせて考察 してみると、加速局面 で、中位群 の歩数頻度が30m地
点 まで一番高 く、次 いで上位群 であつた。下位群 では、 この立ち上 が りの局面 で脚 の素早 い回
転 がされていない走 りである ことが判明 した。 しか し、 この動 きは同時 に歩幅 を広 くして走 っ
たか らであ り、図 3-3か らもはっきり読 み取 れ る。
これ らの運動表象 を各群 の走 り方 として、 まとめてみる と、走 りの遅 い群 の走 り方 は、加速
区間か ら歩幅 を広 くして走 ろうと試 みて い るようで、 その結果歩数頻度 の上が らない動 きに
なってしまい、結果 として疾走速度 も高 まらない走 りになってい る。中位群 は、下位群 とは逆
で、 ス ター トか ら歩数頻度 をあげて走 ろ う としてお り、その結果歩幅 の短 い走 り方 になってい
ド距離 は4.10mに なる。また SSが 次走者 (一 番遅 い
学生)と して、KNが 前走者 (一 番速 い学生)の 場合、
09-20=14.54と なる。今回の学生 間では、
リー ド距 離 は約 4mか ら約 15mま で の 距 離 にな
3.80×
9。
り、バ トンをもらって走 る人 が速 く、バ トンを運ん
で来 る人が遅 い場合、リー ド距離 はなるべ く短 くし、
逆 にバ トンをもらって走 る人が遅 く、バ トンを運 ん
IY
OY
KM
KN
KN
KK
X
HA
MK
YS
WY
UH
SW
ST
SY
で来 る人が速 い場合 は、 リー ド距離 をなるべ く長 く
した方が良 い ことが判明 した。
SH
実際 の中学・ 高校 で この リー ド距離 を利用 しての
授業 は現在 の ところ皆無 であるつ。現行 の高校 の指
「 リレーでは、バ トンパ ス を確実 にで
導資料のでは、
WJ
m”
きるようにす るとともに、で きるだけ速 いス ピー ド
SS
NS
HT
70
60
68
7昭躙
6晰蜘8
78
7諷卸。
9
︲躙0
7“6
8
0
8
4
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。
.
.
.
.
. 7
.
.8
. 9
.
.7
7
8
8
7
7
7
KNが 次走
走速度 を表 3に まとめた。具体例 として、
者 (一 番速 い学生)と して、KM(一 番遅 い学生)が
前走者 とした ら3.23× 7.46-20=4.10に な り、 リー
7。
6
6鰤観4
47
。
5
8
3
2
4
錮昭
5
観3
畑鋼鰤昭m鰤畑畑3
.
.
.
. 3
.
.
.
3
3
3
3
た。上位群 は、 スター トか らゴール まで歩数頻度 を高 めにし、同時 に歩幅 も他 の 2群 よりは高
くせず、同程度 の歩幅 を用 いた走 りを示 した。
表 3 20mダ ッシュタイ ム と50m地 点
3.リ ー ド距離 について
過ぎの疾走速度
20mの ダッシュタイ ム と50mか ら60mま で の疾
8.13
0.41
男子大学生 の短距離走・ リレー学習 について
111
を維持 しなが らバ トンパ スがで きるように、受 け手 の走 り出 しのタイ ミングな どに重点 を置 い
て指導す る」 と述 べて あるが、 リー ド距離 の利用 についての指摘 はない。
学校体育授業事典のでは、追 いか けラ ンニ ング (逃 げ手 の背 にタ ッチ)=ダ ッシュマー クの位
置 を決める方法 として、逃 げ手 がベ ス トタッチゾー ンに逃 げ込んだかそ うでないかによって、
ダッシュマー クの位置 を変 えて、 うま く行 った ときの距離 を何足長 か歩測 してお くと説明 して
い る。
また、ダッシュマー ク距離 の とり方1)と して、G=20.20× (T2-Tl)/Tl、 20.20=定 数 (ゾ ー
ンの中程 でバ トンパ スす る)、 Tl=追 い手 のラス ト25mに 要す るタイム、T2=次 走者 が最初 の
25mに 要す るタイム、を挙 げて、25m走 タイム を測 る ことで リー ド距離 が求 められ るとしてい
る。
以上 のよ うに、バ トンパ スの学習や練習 では、実際生徒同志 の試行錯誤 によって、 リー ド距
離 が求 められ、 リレーが行われてい る。
4.リ レー タイム について
今回の授業 で用 いた リレー は、4人 1チ ームで200mを 走 る リレーで、一人 が50m走 る ことにな
る。一般 の リレー は、 4× 100mで 、一人 が100mを 走 る ことになってい る。 しか し、今回の授
業 では、走力勝負 になるのでな く、バ トンパ スの上手下手 やオーダーの順序、 さらにゲーム と
しての勝負 の不確定要素 が ある こと、最後 に疲労 が蓄積 せず に、何回 もやれ るように、 と言 う
配慮 か ら一人 の走 る距離 を短 くし、50mを 用 いた。
今回、各 チーム 4人 の合計 タイムの全チームの平均値 は28.51秒 (標 準偏差0.28秒 )で あった。
児童 0生 徒 に、 この合計 タイム とリレー タイム とではどち らが速 いかを質問 してみると、 たい
てい は合計 タイムの方が速 い と答 えてい るのを経験的 に認識 してい る。 その理 由 は、バ トンを
落 とす とか渡 らない場合 が あるな どバ トンパ スの難 しさを考慮 に入れ て答 えて いた と思われ
る。
そ こで、従来 の方法 で、何回かの試行錯誤 して、 自分 たちな りの リー ド距離 を用 いて リレー
を行 った結果、 どのチーム もリレー タイムの方が良 く、平均25。 02秒 (0.40秒 )で 走 り、3.49秒
も速 く走 る ことが出来 た。次 に、 リー ド距離 を用 いてバ トンパ ス を練習 した後 に リレー を行 い
22.50
23.50
24.50
︶
0 0
5 5
“ 節
冨
27.50
28.50
29.50
Seoond
the total ume
図2
リレー タイ ムの推移
Third (time trial)
伊 藤
宏・ 野
中 基 行・ 関 上
洋 靖
タイム を計測 した。 その結果平均24.67秒 (0.63秒 )で あった。 その差 はさらに0.75秒 の短縮 で
あつた。統計処理 については、分散分析、対応 のある有意差検定助も一応行 ったが、今回基本的
には例数が少ないため、有意差 が あるなしの判断 を行わ ないで単純 に比較 した。
また演J定 に当たってはバ トンパ ス も観察 した。
が、 どのチーム もゾー ン内のほぼ真 ん中あた り
で、確実 にパ スが行われてお り、学生 自身 もリー ド距離 を利用 したバ トンパ ス練習 に、半信半
疑 で取 り組 んだが、計算 どお りにパ スが出来 た ことに、少 なか らず驚 いたようであった。 ね ら
い通 りのパ スワー クが出来 た ことで、 より積極的 にバ トンパ スの練習 に取 り組 む態度 が見 られ
た。 さらに、 もう 1時 間パ スワー クのための授業 を行 い、最後 にリレー タイム を測定 した とこ
ろ、平均24.43秒 (0.31秒 )で 、わずかで あるが、0.16秒 の低下 を示 した。 この結果 か ら記録 の
方 は頭打 ちにな り、 リレー タイム としては限界 に近 づいたのではないか と思われ る。 しか し、
標準偏差 は約半分 になってお り、最終的 にはパ スワー クは安定 した もの と考 える。
以上の結果か ら、 リー ド距離 を利用 したバ トンパ スワー クは、従来方法 より確実 に、 より短
時間でパ スワー クが行 われ る ことが半J明 し、学習す る学生 にとって もバ トンパ スワー クヘ の認
知 が充分 にされた こ とによって、 より積極的 に学習が出来 た と思われた。
まとめ
男子大学生22名 を対象 に 4時 間 の リレー 0短 距離走 の実技授業 を行 い、バ トンパ スワー クで
の リー ド距離 をいかに上手 に利用す るかをメイ ンテーマ にして行 った。100m走 の上手 な走 り
方 とリー ド距離 の求 め方 について も学生 に理解 させ る ことに よって、学生 が どのように 4× 50
mリ レー を走 るのかを確 かめた。
100mの 走 り方については、疾走 タイムか ら上 0中・下位群 の 3群 で加速疾走・疾走・持久疾走
局面 ごとの速度・ 歩数頻度・ 歩幅変化 で比較 する と、上位群 は他 の 2群 とは違 いス ター トか ら
ゴール まで どの局面 も速度・ 歩数頻度・ 歩幅 は高水準 を示 し明確 な違 い を示 してぃた。中位群
と下位群 は40mま での加速局面 の速度変化 では同程度 の速度水準 を示 したが、中位群 は歩数頻
度 を高 くし、下位群 は歩幅 を広 くして走 っていた。
リー ド距離 を利用 したバ トンパ スワー クは、従来方法 より確実 に、 より短時間でパ スワー ク
が行 われ る こ とが判明 し、学習す る学生 に とって もバ トンパ スワー クヘ の認知 が充分 にされた
ことによって、 より積極的 に学習がなされた。
男子学生 を対象 とした リレー・ 短距離走 の授業 は、今後 とも授業時間数、人数、課題、練習
の量 と質 の設定な どをよ り統制 した研究授業 を今後重ねる こ とによって、 リレー・ 短距離走 の
よ り効果的 な指導 0学 習方法 を求 めてい きたい。
引用文献
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男子大学生 の短距離走・ リレー学習 について
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