Copied from Home page: University of South Calorina, Biology Course Syllabus, Neurobiology (Biol 635) (Labs) (Richard Vogt) G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 1 Figure 1 from R. A. Satterlie, et al (1985) Swimming in the pteropod mollusc, Clione Limacine, J. of experimental biology, 116, pp189204 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 2 行動の構成 を選択 コマンド系 Motor pattern の決定 移動器官 の制御器 移動器官 (下肢,羽, 体幹など) 移動の 企画・選択 姿勢の平衡 駆動力 ON/OFF 移動速度 1 2 環境情報 生体内部情報 3 ・・・・ n 空間の向き 制御器の 活動情報 制御器の 相互作用 感覚 フィードバック 1 2 3 ・・・・ n 移動 図0.1 A 一般的な移動の制御システムの基本要素と機能的組織 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 3 一般的な移動の制御システムの基本要素と機能的組織 特徴のいくつかは.. ・multilevel, hierarchical system ・通常,移動は,器官相互の協調作用によりrhythmicalに制御されている. rhythmには位相的な関係(definite phase relation)が存在する. ・移動が企画・選択されると,2つのコマンド系がはたらく.第1は必要な移動器 官の活性化(On/Off)と移動速度の調節,第2は移動方向と姿勢の平衡に関与. ・関節結合された器官は神経で結ばれており,協調運動と創り出す(下図0.1B). 関節制御神経機構 a b 関節制御機構間 の相互作用 c 感覚フィードバック 関節 a G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 b c 4 1部 軟体動物の移動 1章 翼足によるクリオネClione limacinaの遊泳 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 5 図1.1 クリオネの遊泳 A:クリオネは通常垂直方向を向いており, 頭は上方にある.成長すると3~5cm程度. B: •.泳ぎ方について,腹側に屈曲した(1)翼足 を背側(Dorsal)方向に移動させ(D-phase), 最大背側位に至る(3).その後腹側 (Ventral)方向に移動させ(V-phase, 4),元 の最大腹側位に戻る.これが1周期である. •翼足を静止すると浮力の関係でゆっくりと 沈む.通常の遊泳は1~2Hz程度で3~5 Hzまで可能である.翼足運動時には,形 態上から,上前縁が下後縁より常に前方 にありD-及びV-phase時共に,浮上する方 向に作用する. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 6 • 5対の神経節からなる無脊椎動物特有の 構造 Cerebral ganglia (CerG,大脳神経節) Pedal ganglia (PedG,移動神経節) Pleural ganglia (PleurG,胸膜神経節) Abdominal ganglia (AbdG,腹側神経 節) Buccal ganglia (BucG,口腔神経節) •1対の神経節は接合されており,PedGは Pedal commissure (PedC,移動神経 交連)となり,他の神経節は, 結合組織 で接合されている. •歩行器官である翼足と尻尾にはPedGから Wing nerve (WingN, 翼神経),Tail nerve (TailNs,尻尾神経)がでている G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 図1.1C クリオネのCNS 7 移動制御のための主要な神経節 ・PedG – 歩行パターン生成中枢.Pedal nerveは姿勢制御の効果器である翼 足と尻尾を支配. ・CerG – 高次移動機能中枢で,行動と,コマンドの選択を行う. 神経支配の概要 ・クリオネの神経総数は5000個と推定され,移動制御には200~300個が関与 している.PedGには約40個の神経があり,翼足の腹・背側部を神経支配して いる.図1.2A1に示す約20個の小さな神経と,2つの大きなもの(Fig.1.2A2)が ある.小さな神経は翼足筋を限定的に(Fig.1.2B1),大きな神経は翼足全体を (Fig.1.2B2)支配している. ・感覚入力の内,statocyst (St,平衡嚢)は重力受容器であり,移動時の姿勢 制御に重要な役割を果たす.この感覚器はPedGの背側部に位置し,神経は CerGに投射している. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 8 図1.2 A~C 遊泳運動神経の構造 A1:グループ2の2つの小さなMN.PedGの外側にあり,軸索はWingNへ. A2:通常の翼足運動を行い,神経細胞1は外側に,神経細胞2はより内側にある. B1,B2:翼足筋の異なるmotor neuron(MN)支配.B1には7つの小さなMN支配を, B2にはGeneral exitor, GEが翼足全体を支配している状態を示す. C:遊泳Interneuron(IN)の構造.神経細胞の軸索は同側及び対側のPedGに伸 びている. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 9 図1.2D,E 遊泳中のA1とA2の神経細胞内活動電位のSemi-intact preparation D:細胞内電位記録方法,クリオネの体は海水を満たした記録箱に固定さ れ,翼足は自由に運動可能.CNSは切開されSupporting platform(Sp, 支 持台)に固定.MNの活動は細胞内用のマイクロ電極(ME)と,WingNの軸 索から吸引式の細胞外電極(suction electrode, SE)で記録. E:海水を満たしたプレート内でのPedGの仮想移動時記録電極配置. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 10 1.2 Central pattern generator 図1.2F~H 移動時のMNの活動 F,G:翼足神経,及び1A及び2Aの MNの活動.Fは実際の,Gはfictive locomotionを示す. H:fictive locomotion時の2つのIN, group7,8の活動.IN7はD-phaseに IN8はV-phaseに活動.各INの活動 時に拮抗するINには IPSPが観察さ れる. Arshavasky etal (1985a,b); Satterlie etal (1985, 1993) IPSP G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 11 図1.3 ゆっくりした遊泳中の CPG •抵抗は細胞間の結合を示 す.中抜きの矢は興奮性, 黒塗りの矢は抑制性を示す. •CPGはリズム生成部と出力 部から構成され,前者はD及びV-phaseの2つのhalfcenterからなる. •各half-centerは互いに抑 制すると共に,時間遅れを 有する興奮作用(破線)を及 ぼす. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 12 クリオネのCPG 1.同側のPedG内にCPGが存在し,翼足は各々単独に制御. PedCを切断すると,2つの翼足は僅かに異なる周波数で動作する. (CPG研究の第1歩はリズム生成に関与する神経細胞の同定 方法1=電流刺激による分極を調べる,方法2=photoinactivation,光不活性) 2.リズムを生成する神経細胞には2groupsがあり,IN7と8は大きな役割を果 たす. 図2.HにはPedCを切断したPedal commissure ,PedGにおけるIN7と8の活動 を示す.各INは拮抗するINにIPSPを起こしている.このIPSPの作用はatropine によりブロックでき,神経伝達物質がaccetylcholineであることがわかる. (photoinactivation,光不活性により,PdeG内の全てのMN活動を停止させた場 合でも,図2.Hの結果と同様なINのrhythmical locomotion作用を観察できる) 3.CPGには,2つのモードがある.遊泳中のゆっくりした,捕食や逃避動作時の 速い動作モードである.(図1.3Aはゆっくりした動作モードのモデル) G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 13 図1.3B CPGにおけるMNとIN活 動のタイミング図 IN7と8eは交互抑制結合をしてい る.また同時に同側の活性化MNに EPSPを起こし,対側のMNにIPSP を起こす. MN MN G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 14 クリオネのCPG(2) CPG研究の第2段階では,リズム生成における 神経細胞膜の特性,ネットワーク特性を調べる. 細胞内電極法を用いて,IN7を取り出す(図 1.4A1とA2). • 図1.4 B1が取り出す前のIN7の活動で,周期的 な活動の他に,拮抗するIN8eによるIPSPが1周 期の中間部位に観察できる(矢印). • 図1.4B2は取り出した後のIN7の活動でIPSPの 作用が消失している. • 図14C1では,取り出したIsolatedなIN7の細胞 に,様々な強度の電流を流すと,周波数の異なる rhythmical locomotionが起こることが確認できた. IPSPあり 4.Isolated IN7は単独でリズミカルな放電を繰り 返し,half-centerはCPG機能を有する事が確認 できた. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 15 0.5Hz 注入電流 3Hz 図1.4 C1 Isolated IN7への注入電流の効果. •C1では,広範囲な神経細胞の脱・過分極により放電周波数が変化することを示す. •C2では連続した脱分極電流の注入によってリズミカルな放電が得られることを示 した.これは,充分強いtonicなシナプス性の信号がコマンド系から出力される状態 と同等である. •C3では過分極電流注入後の跳ね返り現象で活動電位が誘起されることを示す. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 16 クリオネのCPG(3) (a)図1.4Dにおいて,最初,PedGはリズミカルに活動していなく,IN7と8の 膜電位が自発放電閾値下にあるとする. (b) 過分極電流がIN7に注入され,リズミカルな放電が誘発される.この細 胞は電流注入終了後の跳ね返りで放電する.この時のIPSPがMN2で記録 され白抜きの矢印で示されている.同様な原理でIN8が興奮するとINに IPSPが生じる.これが跳ね返りによるリズミカルな放電のメカニズムである. 5.時間遅れを有する過分極リズム放電 (postinihibitory rebound excitation), このモードでの放電周波数は相対的に低い. IN8のMN delayed postinihibitory rebound excitation G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 17 1.3 CPGのhalf-center model •Brown(1911,1914) : Two half centers model 脊椎動物における下肢のステップ動作をを説明するために相互抑制機 能を有する2種類の神経細胞からなる神経回路を提案.彼のmodelでは, half-center間の相互作用がリズムの生成に必要な要件である. •Selverston(1985): 各half-centerがリズム生成機能を有する場合には, center間の相互作用は,リズムの生成にではなく,センター間のphaseを 調整するのに利用される.理論的考察 → Kawatoら(1980) •クリオネの移動リズム生成機能は,各half-centerが通常のゆっくりした 周期でリズム生成機能(endogenous rhythmicity)を有するので,上記の Selvertonらのモデルに該当する.しかし一方で,delayed postinihibitory rebound excitationによる機能は,Brownらの提唱したmodelと同等の機 能も併せ持っている事を示している. →モデルのredundancy特性 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 18 1.4 出力部と感覚フィードバック •CPGネットワークの特性分析 *リズム生成部と出力部間の接合特性 *MN膜の特性 図1.3Bから判るように,group3と4 のMNはINからの入力を受ける前に 放電を始めている.これは拮抗する INによるIPSP後のdelayed postinihibitory rebound excitation によるものである. 図1.3B CPGにおけるMNとIN活 動のタイミング図 IN7と8eは交互抑制結合をしてい る.また同時に同側の活性化MNに EPSPを起こし,対側のMNにIPSP を起こす. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 19 •現在まで研究されてきた種の多くは感覚フィードバックの重要なもの の1つとして,移動している運動器官内に存在し,その制御に影響を及 ぼす機械受容器(mechanoreceptor)がある. クリオネでは,機械受容器によるフィードバック動作として,ただ1つ 翼足の引っ込み反応がある.PedG内のINやMNにより制御されている. 1.5 移動系の活動と,移動速度の制御 1.5.1 Excitatory and inhibitory command neurons •クリオネの翼足制御,即ちCPGの一般的な興奮と抑制に関するコマン ド系は10グループ以上のN(全体で約50個の細胞)からなり,主に CerGに存在する.更にPedGやPleurGにもある. •コマンドNは出力部のMNに作用し,リズム放電強度を調整する. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 20 図1.5 コマンドNと,クリオネのlocomotor CPGの興奮と抑制. A:Cerebral serotonergic anterior cell (Cr-SA)の 構造.神経細胞はCerG内にあり,同側のCerebropedal connectiveを通り,両側のPedGに広く分岐. BとC:Cr-SAの放電により,Swim interneuron (SwimIN)が興奮する.この時のEPSPをCに示す. D:Cr-SAの放電は,大きなSwimMNであるGeneral excitor(GE)を興奮させる. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 21 図1.5E,F Pleural withdrawal cellの構 造と機能 •E: 細胞体はPleulGに存在し,CerG,PedG,及び AbdGに軸索を伸ばすと共に,末梢神経に入ってい る. •F:PleurGのPl-W2の放電により,locomotor活動を 抑制.小さなSwim motor neuron (SM)のリズミカ ルなPSPが消失し,スパイクが途絶える. • CPGの興奮と抑制を並列的に調整す るlocomotor開始システムの機構は, 他の種にも観ることができる.例えばヒ ル. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 22 1.5.2 速度制御 CNSでは,locomotion速度の調整は比較 的複雑.クリオネでは速度制御に関与するの は,CPGのIN, SwimMN,及び動作筋. 1.5.2.1 locomotor CPGの再編 IN 図1.6 クリオネの速度調整のためのlocomotor CPGの再編 A:ゆっくりした遊泳にはIN7と8eが関与する(図1.3A) が,速い遊泳には更にIN8dと12が参加. B:ゆっくりした遊泳時のIN7,8eの活動 C:速い遊泳時の4つのINの活動 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 23 図1.3A 図1.6 クリオネの速度調整のためのlocomotor CPGの再編 B:ゆっくりした遊泳時のIN7,8eの活動 C:速い遊泳時の4つのINの活動 Step1:V相のMN放電期間の延長:IN8dはIN8e入力で興奮し,遅れてV相で放電する.この ためMN2にEPSPが加算され,放電期間を延長する.更にIN8dはIN12を興奮させる. Step2:V相の抑制:IN12の膜電位には2つの安定域,上部の-15mV,下部の-50mVがある. IN12は脱分極入力により通常のAPを誘起するのではなく,上部の安定域に移行して安定期 を生成する.この時IN12は神経伝達物質を放出しV相のINとMNの作用を抑制する. Step3:拮抗half-center(IN7)を活性化:抑制効果をもつNegative feedback (recurrent inhibition)により急速にV相活動は消失する.一方,IN12は拮抗half-center(IN7)を活性化 させる.IN12はIN7の興奮までの間高い脱分極電位を維持する. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 24 1.5.2.2 大きなSwimMNの漸増 図1.6D,E D:Small swim motor neuron (SMN)はゆっく りした遊泳の時,及び速い遊泳の時も放電する. しかしGeneral excitors (GE)である大きなMN は速い遊泳時にのみ活動し(矢印参照),遊泳 周波数を増大させている. E:GEの神経支配を受けているfast-twitch muscleの作用により,翼足筋の筋力が増大し ている. PS:Satterlieら(1997)は,SMNとGEの存在の 他に,逃避反応の開始時に1対のMNがWing beatingを起こしていることを突き止めた. →Catch properties 1.5.2.3 Fast-twitch muscle fiberの漸増 翼足運動の筋には2種類の筋線維がある. (1)Slow-twitch fatigue-resistant fiberで大小の MNの支配を受ける,(2)Fast-twitch fatigable fiberで,大きなMNの支配を受ける. 従って,図Eにおいて,矢印時点で両者の筋線 維が活動参加して筋力が増大する. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 25 1.5.2.4 Serotonergic modulatory immunoreactive N による翼足筋の収縮亢進 図1.6F,G F:SWMが活動していない場合には Serotonergic modulatory N in pedal ganglia(Pd-SW)の刺激によるSMNの興奮は 起こらない. G: SWMが活動している場合には,Pd-SWと CPGはコマンド系から共通の興奮・抑制の入 力を受けており,SwimMNによる翼足筋のリズ ムと,その収縮力は増大する. アメフラシ(Aplasia)の口腔筋(buccal muscle) や足部の筋に同様の現象がある. One trigger for acceleration of swimming in Clione limacina is bath application or local application of serotonin (5- hydroxytryptamine, 5HT), .......suggesting that serotonergic inputs to the swimming system may be involved in at least some forms of swim acceleration. Similarly, serotonin (From Satterlie et al 1995) G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 26 From: Richard A. Satterlie, Tigran P. Norekian, Sheryl Jordan and Charles J. Kazilek, (1995) Serotonergic modulation of swimming speed in the pteropod mollusc clione limacina I. Serotonin immunoreactivity in the central nervous system and wings, The Journal of Experimental Biology, 198, pp895-904 Fig. 1. Schematic representation of the central ganglia of Clione limacina with the locations of serotonin-immunohistochemical neurons indicated. Immunoreactive somata are found only in the cerebral and pedal ganglia. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 27 1.6 姿勢の向きと平衡制御 図1.7A,B,C:クリオネの姿勢の向きと平 衡制御運動のしくみ 姿勢の向きと平衡運動制御 •遊泳中の基本姿勢は垂直(Fig 1.7A1, B1).姿勢 制御システムは,PedGの背側表面にある重力感 覚受容器:statocyst (St,平衡嚢)に反応する. 両側STの切除後は空間で安定姿勢を保持できな くなり,図1.7Cのように様々なループを描く(片側 のSTのみでは姿勢制御に大きな変化はなく,機能 的に左右等価). •2つの姿勢修正反応;(1) T1~3のMNによる尻尾 の曲げ:Aは前額面での,Bは矢状面での偏位に より同平面内で反応する(図1.7A2A3, B2B3, ) . . (2)非対称な翼足の振れ:垂直からの偏位に対し, 翼足は非対称な振れをして,下方の翼足振幅は 増大し上方では減少する(図 1.7A2A3) .4種類 の翼足MNはW1-4である. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 Frontal Sagittal Tail MN 28 姿勢の平衡反射活動 図1.8 クリオネの重力反射機構 •図1.8Aは主な重力反射機構を示し, Statocyst receptor cell (平衡胞受容器, SRC), CerPed IN,及び翼足と尻尾のMNから なる. •Stは直径約150μmの球状の器官でSRCとそ の支持細胞からなる.Stには9-11個のSRCが ある.球の中央窪みにはstatolithがあり,窪み の最下端にあるSRCに圧力を及ぼす. 図1.8B:90度傾いてSRCが最下端に来た時の SRCの放電を示す. ・SRCから3次元的なT1~3の遠心性出力伝 達制御はCPB3(cerebro-pedal interneurons) で行われる. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 29 SRCの神経機構 1.尻尾の曲げ •尻尾の筋は,PedG内でTail MN (TMNs)に神経支 配され,SRCからの情報を受けて重力姿勢制御を行 う.SRCからTMNsへの入力はCerPedIN(CPB3)が 介在している. •TMNsは空間位置によりT1-3の3群に分かれ,T2, T3は,左,右傾斜に反応する.実験室でT2MN,を 電気刺激すると,尻尾が右に, T3MN刺激では左に 傾斜する.T2とT3を同時に刺激すると背屈する.一 方T1MN刺激では,矢状面背側部が下がろうとする と腹側に屈曲する反応が最も大になる. ・CPB3-INの重力制御反応は,TMN,T3の運動神 経RN2と類似しているようにみえる(図1.8C). G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 図1.8C: 前額面でのtail-up, Tの傾斜角 度βの変化に対するTMN Groups T2, T3の応答を示す.左右のMN,LN2,RN2, およびsubpedal commissureの左側切断 端残根から記録 T=tail-up, L=left side up, H=head-up (中立位), R= right side up, 30 2.翼足の遊泳振動の非対称性 •非対称活動は, General excitors (GE)の大きなMNの漸増による. •翼足MNの周波数と振幅はその面が 上向いていくと減少し,反対では増加 している. 例えば,図1.8Dでは,グループW1-2 のGEはLで抑制され,Rで促通される. 翼足引っ込み機能を有するW3-4はそ れぞれ上側の時持続的に活動する. 図1.8D 長軸周りの回転角度γの変化に対する翼足MN groups W1~4の応答を示す.左右の翼足神経LNM, RNWから記録.水平位で固定され長軸回りに-180~ 180°回転.V=ventral side up, L=left side up, D=dorsal side up, R=right side up G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 31 図1.9 姿勢制御反応に作用する様々な MNの空間活動領域 A,B,C:尻尾のMNであるT1-3の活動領域. D: 翼足MNであるW1-4の活動領域.図Aの半径 矢印は重力場におけるクリオネの向きを示す. α,βは垂直軸からの矢状,前額面での偏位. •A,B,C:T1-3の空間活動領域は,全ての長軸 の垂直偏位に対応している.活動領域はかな り重なっており,1方向への偏位により2つの TMNが中程度に活動すると推測される. •D:遊泳時翼足の振れに非対称を誘発する翼 足MNが,垂直からより大きく変位した時に活 動していることを示す. •翼足MNの活動パターンの調節は,SRC (Statocyst receptor cell,平衡胞受容器)から の入力を受ける特別なIN,CPB2(cerebropedal IN)によって行われ,左右のGEに非対 称な活動を起こす.こうしたINの空間活動領域 の特性は厳密には解明されていない. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 32 クリオネの姿勢制御-1.6節のまとめ •リズム発生器(例えば図1.5のCr-SAやPlW)に作用するコマ ンドNと対照的に,CPB2のINは遊泳CPGの出力部(図1.3A のoutput motor stage)のみに影響を与え,GEの大きなMN 活動は,常に対応する小さなMN活動と位相的に一致している. 一方,人を含む殆どの種では,姿勢制御系はむしろ柔軟な特 質を持ち,様々な姿勢の向きを安定化させることが可能であ る(Horak and macpherson 1995; Macpherson et al 1997; Orlovsky 1991b; 11.5,14.3,15.4参照). •クリオネの3つの個別な姿勢制御モード (Panchin et al 1995a; deliagina et al 1998a,b). (1)Head-up 姿勢安定化モード: 最も一般的な様式で,偏位を 検出して尻尾を上方に曲げる反応をする(図1.10A1,A2). (2)Head-down姿勢安定化モード: 高温水中遊泳時や,捕食 動作時に観察される.偏位を検出して尻尾を上方に曲げる反 応をする(図1.10B1,B2). (3)特定の安定化モードがない状態がある.高温水中や防御 反応時に観察される. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 図1.10 姿勢制御モード 33 図1.10C,D:クリオネの姿勢制 御モードの切り替え •C: 水温は10°で,尻尾MNのT2-3重力 反応はLN1(1)とRN2(1)から,CPB3INは Left subpedal commissure,LSPから記 録.D:水温を20°に上昇 •低水温Cでは対側制御され,水温上昇で, 制御が同側制御に変わっている.しかし, SRCやCPB3がtemparature-sensitive なのか,特別な温度センサーによるもの なのかは不明. •温度によるHead-up制御の変化を通し て,2つの姿勢安定化モードの切り替えを 説明できるかも知れない.Head-upモード では対側制御で,重力に抗してhead up し,Head-downモードでは同側制御とな りdownする. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 34 1.7 複雑な動作の移動特性 1.7.1 回避反応 図1.11 回避反応の 共同動作 A1-2:尻尾を機械刺激 すると遊泳速度が急に 上昇. B:回避反応;CerG内の CPB1とその軸索からな り,同側のCerPed connectiveを通り,両側 のPerGに分岐. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 35 図1.11 C:尻尾の刺激によりCPB1 Nが興奮. D:CPB1 Nはtype7のINからモニターされているように強い遊泳CPGを誘発する. E:Heart excitatory Nをも興奮させ(D),常に強い相関があることが判る.(1)遊泳 CPGから直接,更に,(2)CPB1を介してリンクされている. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 36 1.7.2 受動的な逃避反応 通常,受動的な逃避反応は,頭部や翼足を刺激した時の平静な反応である.遊 泳は抑制され,翼足や頭部の触手は引っ込む.クリオネは沈んでいくことになる. コマンドNのPl-W(図1.5E参照)が関与し,様々な抑制作用を起こす. 図1.12 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 37 1.7.3 狩猟と捕食反応 •ミジンウキマイマイ(学名Limacina (=Stiratela) helici na )と接触すると,狩猟と捕食反応が起こる. •最初に,3対の触手が伸びて獲物を捕らえる.同時に尻尾 が屈曲しランダムな円を描く.その周波数は,も1-2から34Hzに高まる.その作用は心臓の周期をも加速させる.獲 物は,捕捉すると貝殻から取り出して飲み込む. •図1.13BのCPC1が以下のような重要な役割を果たす. (1)グループ7,8のINなどを興奮させ,遊泳CPGを活性化 (2)Serotonergic modulatory neurons in PedG (PD-SW) の活性化 (3)Heart excitatory MN (HE)を興奮させ,心拍数を高める. (4)触手を伸ばし,獲物を捕らえるCerMNの1つ,TenMNP を活性化 (5)触手引っ込み反応(Pl-W)のTenMNRを抑制 (6)SRCに作用し,分極させて重力姿勢制御を解除し,ラン ダムな円運動に入る. 図1.13A,B G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 38 コピー http://www.asahi-net.or.jp/~yy3h-yd/gon6004.htm 学名: Limacina(=Stiratela)helicina 北極圏を囲む北大西洋及び 太平洋, 日本では北緯43度以北 クリオネがメジャーならば、まだまだマ イナーなのが このミジンウキマイマイ。 巻き貝の仲間で なんと天使クリオネの エサでもあります。・・・・ G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 39 図1.13 •C:前述のCPC1の他に,捕食動作はPIN1で行う •遊泳CPGの活動は様々なコマンド系により活性化.例えば,CPB1は回避反応時 のCPGを活性化させるが,CPC1は狩猟・捕食中のCPG動作を起こす.後者のPlWの抑制作用はCPGの抑制を解除する. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 40 1.8 結論 (1) クリオネの遊泳は2枚の翼足のリズミカルな運動.その遊泳制御系は運動,神 経機構,細胞レベルで広く研究されてきた. (2) 翼足は分離された制御系を有し,2つは相互に作用して同期動作をする. (3) 翼足からの感覚フィードバックは遊泳制御にあまり重要な役割を有していない. 遊泳運動パターンは殆どCPGのみで生成され,リズム生成と出力部を有する. リズムは2相性で,2つの主な器官がある.1つはグループ7,8の遊泳INの作 用,他は過分極リズム放電 (postinihibitory rebound excitation)である.リズ ム生成機構には冗長性があり信頼性を高めている. 出力部では,シナプス性の相互作用や,MNの細胞膜特性により複雑なパター ンに変換される. CPGが解剖学的にリズム生成,出力部に分離されている ことにより、多重な翼運動が可能である. (4) 遊泳システムの活動と速度制御は,様々なコマンドNにより行われる.コマンド Nは遊泳MN,INに影響を与え,脱分極,過分極を起こす.遊泳リズムは,単に 加速されて変化するだけでなく,出力部の新しいIN, MN漸増,速筋線維の活 動により再構成されている. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 41 (5) 姿勢の向きと平衡制御は重力感覚受容器:statocyst (St,平衡嚢)の入力 に支配される.Head-upとHead-downの2つ主要なモードがある. 安定位からの偏位により,尻尾の曲げと,非対称な翼足振動が起こる.この 姿勢修正反射は,正常位に返ろうとする反応で,SRC, CPB2,CPB3のIN, 尻尾と翼足のMNからなる. ネットワークの再構成により、Head-upから-downへの切り替えられ,片側の StのSRCからのINへの入力は遮断され,反対側のSRCからの入力が活性 化される. (6) 様々な行動における移動は複雑なコマンド神経システムにより統合化されて いる.異なるコマンドは運動システムへの投射方法が異なる.こうした多様 性により遊泳CPGは様々な運動システムと協調している.コマンド・システム は感覚システムから共通の入力を受け取り,相互作用を行っているかも知 れない. G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 42 Appendix1 反回性抑制,recurrent inhibition + 図7.8 反回性抑制 αMNの軸索が神経細胞の 近傍でRenshow細胞上に分岐し,同一プールの αMNに抑制的に作用する(negative feedback). 前角内に存在し,γMNにも広く分岐している. αMNプールの活動を抑制すると共に,他からの外 乱の影響を少なくする. Renshow細胞は下行性 の情報も受け,CNSはnegative feedbackのゲイン を調整していると推測される ML Latash, Neurophysiological basis of movement, Human kinetics, 1998, pp59 43 Appendix 2 Fictive locomotion Fictive locomotion: More than 100 years ago, Sherrington (1898) observed that cats and other mammals can perform locomotor movements of the legs after a complete transection of the spinal cord.············ However, in 1911 Brown observed locomotor movements in cats after spinal section even when the dorsal roots were cut bilaterally. With these experiments he demonstrated that neuronal networks in the spinal cord deprived of sensory inputs and supraspinal influences can generate a coordinated rhythmic motor output. Such rhythmic alternating activity in the motoneuron pools of flexor and extensor muscles and also on opposite sides of the isolated spinal cord is called fictive locomotion. It is now clear that the autonomous spinal networks providing this activity – later called central pattern generators (CPGs) – are found in all vertebrates, probably including humans (Dietz et al., 1998). From: J. Streit, A. Tscherter, and P.Darbon, Rhythm generation in spinal cultures: is it the neuron or the network?, from Advances in Network Electrophysiology Using Multi-Electrode Arrays. Taketani, M. and Baudry, M. New York, Springer, 2005, Further experiments, especially those by a Swedish scientist, Stan Grillner, have demonstrated that individual CPGs exist for each limb. During normal locomotion, all the individual limb CPGs are coordinated so as to produce a coherent interlimb pattern. M. L. Latash, Neurophysiological basis of movement, Human kinetics, pp175, 1998, G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 44 Appendix 3 http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/bnsikato/protocol/4-10.html 免疫組織化学法 (松本高広) 東京大学 分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 加藤核内複合体プロジェクト 原理 免疫組織化学法は抗原-抗体反応という特異的な結合反応を利用して、目的とする蛋白質の 細胞内および組織内の局在を検出する手法である。方法としては1) 抗原に対する特異的抗 体である一次抗体に酵素や蛍光物質を直接結合させて検出する直接法と2) 一次抗体に対す る抗体である二次抗体を用いて可視化する間接法がある。間接法ではシグナルを増強した高 感度の検出が可能であり、かつ一次抗体にそのつど標識する手間がかからないという利点で 現在広く利用されている。以下に3つの代表的な間接法をあげる。①蛍光法-二次抗体に蛍光 標識、②酵素法-二次抗体に酵素を結合させ、発色基質を沈着させる、③ABC法-ビオチン化 二次抗体を用いてそこに標識済みのアビジンービオチン複合体を結合させる増感度法。この 他に、さらに検出感度を増強させたチラミド法が開発されている(高感度In situの項を参照)。 免疫染色の出来は一にも二にも用いる抗体の抗体価に依存しており、どの抗体を用いるか が成功の鍵を握っているといって過言ではない。文献等でよく調べたうえで実験に移ろう。 G.N. Orlovsky, T.G. Deliagina, and S. Grillner, Neural control of locomotion, Oxford university press, 2003 45
© Copyright 2024 ExpyDoc