Qualitative Briefing paper

血友病の
心理的・社会的問題に関する調査
HERO イニシアティブの定性的調査による調査結果の概観
HERO - Haemophilia, Experiences, Results and Opportunities
HERO はノボ ノルディスクが立ち上げ支援している国際的
なコミュニティベースの調査です。さまざまな専門領域の
国際的な血友病専門家グループ(HERO 国際諮問委員会)
の継続的な対話を通して血友病の心理的・社会的な問題を
調査しています。
血友病とともにある生活を血友病の人々、その家族、血友
病の人々を支援しケアする人々がどのように見ているかに
ついてエビデンスに基づく理解が得られることになります。
これらの人々の声を聞き、それに基づいて行動を起こし変
化をもたらすことがノボ ノルディスクの目標です。
調査は主に以下の 3 つの要素で構成されます。
●
文献レビュー:血友病の心理的・社会的要因に関する既存
の知識の研究
●
定性的調査:国 際 的な血 友 病コミュニティを反 映する
150 件の体系的な対面インタビューからア
イデアを得て、それを指針として定性的調
査を開発する
●
定量的調査:12 カ国(アルジェリア、アルゼンチン、ブラジ
ル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、
イタリア、スペ イン、英 国 及び 米 国 )の 約
1,200 人に対するオンライン調査を含む
文献レビューは www.changingpossibilities.com で
入手可能です。
この文書では定性的調査の結果の概観を報告しています。
定量的調査の結果は 2012 年に公表予定です。
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目 次
要 約 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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序 論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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定性的調査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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方 法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
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調査結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子供が血友病と最初に診断された後に両親が感じるショック、失望、懸念、不安の感情 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
6
6
学校での差別の問題と家族内の葛藤を含む小児期を通して変化する心理的・社会的な問題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
7
社会的不名誉や自身の健康と治療に対して多くの責任を要求されることについての恐れによって増幅する
平均的な 10 代の若者の抱くフラストレーションと反抗 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
8
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
9
さらなる問題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
9
職場での差別、人間関係の構築、子供を持つことに対する血友病の成人の懸念
結論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11
次のステップ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 12
添付資料 1:HERO 国際諮問委員会メンバー ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 13
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要 約
2010 年にノボ ノルディスクは血友病の人々とその支援
者が直面する心理的・社会的な問題を研究・調査するため
に HERO イニシアティブに着手しました。調査は包括的で
信頼できる結果が得られるようにデザインするため、さま
ざまな専門領域を包括する方法を適用しました。既存の文
献を詳細に分析するのみでなく、定性的調査も行いました。
本文書では 7 カ国、150 人の血友病の人々とその両親、医
師、看護師を対象にした対面インタビューから構成される
定性的調査の結果を報告します。調査の結果、主に以下の
4 つの問題に集約されることが示されました。
- 最初の診断におけるショック、懸念、不安と失望の感情
- 学校での差別の問題と家族内の葛藤を含む小児期を通
して変化する心理的・社会的な問題
- 平均的な十代の若者の抱くフラストレーションと反抗
が、社会的不名誉に対する恐れと自身の健康と治療に
対してより責任を持たなければならなくことにより増幅
されるという問題
- 職場での差別、人間関係の構築、子供を持つことに対
する血友病の成人の懸念
文 献レビュー及び 定 性 的 調 査 から 得ら れ た 情 報 は、
HERO 国際諮問委員会にとって、HERO の最終的な要素で
ある 12 カ国から 1,200 人が参加する充実したオンライン
の定量的調査を開発するための指針となりました。HERO
は、血友病とともにある生活に関する重要な心理的・社会
的な問題を数量化することによって、血友病の管理を改善
するための新しいガイドラインの開発にエビデンスを提供
することを目指しています。定量的調査は 2011 年に実施
される予定(一部 2012 年初旬)で、結果は 2012 年に公表
される予定です。
4
序 論
2010 年にノボ ノルディスクは血友病の人々及びその支
モントリオールの会議と HERO 国際諮問委員会の提言に
援者が直面する心理的・社会的な問題を研究・調査するた
続いて、血友病に関する心理的・社会的な要因に関連した最
めに HERO イニシアティブに着手しました。この国際コミ
新のエビデンスを評価するため文献レビューを行いました。
ュニティベースの調査から、血友病とともにある生活を血
友病の人々、そのご家族、医療従事者がどのように見てい
最新の文献から 3 つの重要な領域が明らかになりました:
るかについてエビデンスに基づく理解が得られることにな
最初の診断と治療を取り巻くストレスと懸念、社会、家族、
ります。
職場に対する血友病の影響、個人が直面する特定の心理
的な問題。また、文献レビューでは心理学者、ソーシャル
HERO イニシアティブは 2009 年 9 月(会議報告は www.
ワーカー及びカウンセラーを含む血友病治療への包括的な
changingpossibilities.com で入手可能です)にカナダのモン
アプローチの重要性が強調されています。文献レビューで
トリオールで行われたさまざまな専門領域の多彩な文化背景
は血友病とともに生きる人々の心理的・社会的なケアと特
を持つ専門家会議に続いて開始されました。独立の専門家
に関連する文献を調査しました。その結果、研究はほとん
グループである HERO 国際諮問委員会(添付資料 1 を参照)
どが国内のみで行なわれており、1 つのグループ(血友病の
は、血友病の人々とその家族、仲間、支援者、医療従事者、
人と両親又は医療従事者)から見た心理的・社会的な問題
一般社会との関係の中での血友病に関連する心理的・社会
が扱われていました。定性的かつ定量的な技術を使用した
的な問題を調査しました。会議期間中、HERO 国際諮問委
包括的な研究方法はいずれの研究でも採用されていません
員会は重要度が高く、よい方向に変化する可能性が高いと
でした。しかしながら、定性的かつ定量的な調査が必要な
いう点から 3 つの優先分野を特定しました。
ことは明らかです。
1. 血友病の人々と専門家医療チームを超えた教育と啓発、
2. 適切な理学療法と身体運動に関する適切なアドバイス
を得ることの重要性、
3. 自己管理(自己注射と治療遵守)
血友病に関連する心理的・社会的問題を調査するために、
HERO イニシアティブは定性的かつ定量的な方法の組み合
わせを含めてさまざまな専門領域を包括するアプローチを
1)
採用しました。これは慢性疾患 の管理に対する公衆衛生
HERO 国際諮問委員会は血友病とともにある生活に関し
研究で最も包括的な方法となると思われます。また、この
て重要な心理的・社会的な問題を公式に特定し、数量化す
方法は血友病とともにある生活の本来の姿を映し出し、調
る組織的な研究プログラムを開発し、生活の質を含む管理
査が頑強で科学的に信頼できるものであることを保証する
と転帰が改善されるような新しいガイドラインとアプロー
と思われます。よって、文献レビュー完了後、HERO の次の
チの開発にあたり、確実なエビデンスを得る必要性を認識
段階として 2 つの調査(定性的調査と定量的調査)の実施
しました。
を予定しました。
1)Casebeer AL, Verhoef MJ. Combining qualitative and quantitative research methods: considering the possibilities for enhancing the study of
chronic diseases. Chronic Disease in Canada. 1997;18, No. 3.(2010 年 10 月 21 日より引用)
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定性的調査
方法
して変化する心理的・社会的な問題
定性的調査の目的は血友病の人々に影響を与えている主
- 平均的な 10 代の若者の抱くフラストレーションと反抗
な心理的・社会的な問題を特定し、血友病についてどのよ
が、社会的不名誉に対する恐れと自身の健康と治療に対
うに感じているかに対する理解を改善し、血友病の人に対
してより責任を持たなければならなくことにより増幅さ
する両親、支援者及び医療従事者の態度と責任、また、ど
れるという問題
のように血友病の人の感じ方に関わればよいのかに関する
これらの人々の洞察力を高めることでした。
- 職場での差別、人間関係の構築、子供を持つことに対す
る血友病の成人の懸念
調査では、7 ヵ国(アルジェリア、ブラジル、フランス、
これらの項目については以下に述べますが、注目すべき
ドイツ、イタリア、英国、米国)の血友病の人々とその両親、
ことは、これらの項目はケアと援助が有効な一連の課題の
医師、看護師、心理学者及び理学療法士を含む 150 人に対
最初の実態をとらえてはいるものの、多くの肯定的な事柄
し半構造的な対面インタビューを行いました。医療従事者
が多く存在しているということです。
(医師とさまざまな専門領域のチームの他のメンバー)は世
界血友病連盟(WFH)がリストアップした血友病治療セン
調査結果
ターから選び出し、血友病の人々と支援者は看護師と医師
子供が血友病と最初に診断された後に両親が感じるショッ
(血友病本人と支援者に積極的に応募するよう依頼)の援助
ク、失望、懸念、不安の感情
の下で、また血友病の人たちのネットワークを通して募集
血友病の子供を持つことは両親にとって大きな課題で
しました。血友病 A と B 及びインヒビターを保有している
す。血友病の診断が確定すると、
(特に家族に血友病の人が
人を対象としました。
いない場合は)それが生涯の不治の遺伝性の疾患であると
知り、しばしば最悪の事態を恐れます。両親は子供の命が
半構造化インタビューのフォーマットは HERO 国際諮問
短いかもしれないとか、障害を抱えることになるかもしれ
委員会の指導の下で開発されました。すべての参加者に調
ない、又は車椅子での生活になるかもしれないと想像しま
査の説明をし、参加者は同意書を提出する前に、調査の目
す。実際、両親の中には診断を信じない「否定」の期間に陥
的と実施方法について質問をする機会がありました。すべ
る人もいます。外見上明らかな徴候が見られない限り、親
てのインタビューは現地語で行われました。
は否定の状態を持続しようとします。出血に直面した際、
子供を傷つけたことに対する非難と結果として生ずる不名
この定性的調査の結果に関する主題の分析により、心理
的・社会的な要因が血友病の人々の生活に大きな影響を及
誉のために、出血を隠そうする場合もあります。その結果、
両親は子供の治療の援助を躊躇することがあります。
ぼしていることが確認されました。出生から小児期、
思春期、
成人期に至るまで人生のさまざまな段階で、血友病の人と
さらに両親は子供の未来を危うくする血友病についての
その家族に影響を及ぼしている一連の問題が特定されまし
懸念と不安の感情を体験することになります。両親は血友
た。血友病の人々と両親 / 支援者の双方に影響を与える可
病の子供が「適切な」仕事に就く機会を減らし、又は他の人
能性のあるこれらの問題は概括的に 4 つの項目に分けるこ
たちとの関わりあいを含めて、子供が楽しむことができる活
とができます。
動の範囲に制約を課すことになると考える場合もあります。
- 子供が血友病と最初に診断された後に両親が感じるシ
ョック、失望、懸念、不安の感情
- 学校での差別の問題と家族内の葛藤を含む小児期を通
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このような感情はしばしば親の自尊心と個人的な関係に
対してストレスを与えます。例えば、
母親は罪の意識を感じ、
そして遺伝的保因者として子供に疾患をもたらしたことに
対し、自らを責めるかもしれません。その結果、母親は子
は、可能な限り普通の生活を送り、両親が過保護になるこ
供を過保護にするかもしれません。父親は落胆して、子供
とを避け、血友病が管理可能であることを認識し、子供を
に血友病をもたらしたとして母親を非難し、その結果、家
活動的な状態に保ち、ポジティブでいることと答えました。
庭が危機に陥り、離婚さえも引き起こしかねません。両親
回答者はこの疾患を隠さず、周囲の方々を教育し、決して
は疎外感を抱き、一般的に人生と社会に対して腹立たしさ
血友病が不名誉であると感じないことが重要であると強調
を感じるようになるかもしれません。血友病の子供を持つ
しました。しかしながら、この疾患に対する社会的不名誉
ことに対する怒りと不名誉が、しばしば社会から家族が孤
がまだ存在している遠隔地や途上国では、開かれた会話が
立する状況を作り出します。
うまく機能しないおそれがあるという意見もあります(アル
ジェリアでの報告)
。
「まさに破壊的状況です。母親は保因者であることが分
かると、自分は母親失格であると考えます。それは女性に
学校での差別の問題と家族内の葛藤を含む小児期を通し
対して極めて破壊的な結果となります」
(医者、フランス)
て変化する心理的・社会的な問題
血友病と診断された後、両親はこの疾患や疾患への対処
「これ以上子供を産むことはできないと思い考え、私は
方法が分からないためにしばしば打ちのめされたり、萎縮
完全に打ちのめされました。病院では子供の関節が悪化し、
する感情を体験します。家庭生活は血友病の子供の要求が
車椅子生活になるであろうと言われ、ひどい恐怖を感じま
中心となり、その結果、両親は自らの生活がこの疾患に支
した。その後血友病治療センターで事態はそれほど悪くな
配されているという感情を抱くようになります。
いことに気づきました」
(母親、英国)
最初の 3 年間の子供の生活が両親にとって特に問題とな
「親は本当に失望しています。誰もが健康な子供を欲し
ります。子供が歩くことを覚え始める時期は出血が起こる
がります。生涯にわたる疾患の診断は壊滅的な打撃です。
リスクが高く、そのため両親は高水準のケアを求めて病院
親はこの現実にうまく対処し、まず現実を理解する必要が
を頻繁に訪れることになります。両親は託児所 / 学校職員
あります。しかし、次に「誰のせいだろう?」と考えます。
の理解の欠如や自分の子供をケアすることを拒否されて無
これは夫婦の確執をもたらしかねません」
(医者、ドイツ)
力感に陥ることもあります。また、両親は子供が親を動揺
させないように、又は自分が楽しんでいる活動を続けるた
調査により、血友病の診断を取り巻く失望、懸念及び不
安の低減と克服に役立つ可能性のある多くの要因が特定さ
めに出血を隠す可能性があることについても考慮しなけれ
ばなりません。
れました。これらには血友病ケアチームからのアドバイス
とサポートネットワークを通して他の家族と早期に接触す
「私にとって 1 年目から 3 年目までの期間が最も苦しかっ
ることが含まれています。医療従事者が支援し、同じよう
たと言えるでしょう。この時期、子供たちはよく走り回り、
な境遇にある人と経験を共有するために、両親を他の血友
よく転び、そして四六時中入院していました。また、私たち
病の子供の両親に紹介します。
がよく不平を言った時期でもありました。子供についてで
はなく、現実を甘受しなければならないことへの不満でし
「血友病治療センターを通して他のご両親と最初に会い
ました。これは出生直後でした。それで本当に私は落ち着
た。本当に大変でした。すべてをあきらめなければならな
いのですから」
(母親、ブラジル)
いた気持ちになれました。紹介されたご両親は普通の生活
を送っていたのです」
(母親、ドイツ)
両親は子供を病院に連れて行ったり、治療後子供を家に
連れて帰らなければならないため、仕事を休まなければな
インタビューのある時点で回答者は、この疾患の管理に
らず、職を失うかもしれないと感じることでしょう。母親は
関して、新たに診断された人々とその両親に対して、どのよ
仕事を継続することが不可能だと思い込み、万一学校で何
うなアドバイスを送るかについて尋ねられました。回答者
かが起きたときに呼び出されるおそれがあるため、結局は
7
外で仕事ができないことがよくあります。働けないことに
が、積極的な社会参加を示す 2 枚の写真から 1 枚を選びまし
起因する収入減と高額の治療費が、対立、挫折及び懸念を
た。これらの調査結果により、他の血友病の人と支援者の支
もたらしかねないのです。
援の下、現在の治療によって、ほとんど社会的な不名誉を
受けることも学校を休むこともなく、子供が比較的普通の
血友病の子供の兄弟姉妹は自分たちの要求が聞き入れら
生活を送り、皆と同じ活動を行うことが可能になっているこ
れず、両親にかまってもらえないと感じ、不満を募らせる場
とが示唆されます。喘息あるいはてんかんを持つ兄弟姉妹
合もあります。血友病の兄弟と激しい遊びをしないよう、
がいる場合よりも、
(よい治療とケアにアクセスできる場合)
また喧嘩をしないようにという両親からの厳しい命令も他
血友病は対処が容易であると理解されています。
の兄弟姉妹の不満を募らせることになります。さらに、血友
病の子供が、自分が病気だということを口実に、他の子供
を従わせることも起こりえます。
「あなたは息子さんが血友病であることにおそらく気づ
かないでしょう。それは息子さんが血友病であることを感
じさせないからです。定期補充療法のおかげで学校を欠席
自身の経験 / 考え方に関連する感情と状況を示す一連の
することは一度もありません。半ば普通の健康な生活を息
12 枚の写真から、1 枚を選ぶ調査では、参加した両親 / 支
子さんが送る可能性は極めて高いと申し上げてよいかと思
援者の半数以上(60%)が、血友病とともに生きる生活に対
います」
(父親、米国)
して肯定的で、支えとなり、理解のある考え方を示す 3 枚の
写真から 1 枚を選びました。しかしながら、少数(20%)が
「私たちはいつも成果を上げています。子供たちはスポ
血友病に対処する際の懸念、不安感と問題を示す 2 枚の写真
ーツもしており、比較的普通の生活を送っています。毎年
の中から 1 枚を選びました。これらの調査結果から、血友病
冬にはスキーに出かけています。多くの制約を受けること
に対する両親の考え方には広範囲な感情が含まれており、
はあまりありません」
(母親、フランス)
この疾患とともに生きる生活にはさまざまな問題があるこ
とが示唆されます。
社会的不名誉や自身の健康と治療に対して多くの責任を要
求されることについての恐れによって増幅する平均的な 10
血友病の子供は学校で差別されるおそれがあり、他の生
徒によるいじめや、生徒のみでなく職員にも疎外や差別を
代の若者の抱くフラストレーションと反抗
調査の結果、10 代の血友病の若者を取り巻く問題はすべ
受けているという気持ちになるかもしれません。他の子供
ての関係者にとって、特に問題となることが分かりました。
たちと同じように活動に参加できないという事実も疎外感
多くの 10 代の若者のように、血友病の若者にも反抗期があ
の一因となる可能性があります。さらに、出血と治療の必
る可能性があり、それにより治療遵守に関わる特定の問題
要性から、学校を欠席する場合もあります。
が生じます。また、
「平均的な」同世代の若者と行動を共に
することを望み、疾患から制約を受けたくないと考えるでし
「学校の理事は、私が息子を学校に通わせることを望んで
いませんでした」
(母親、ブラジル)
ょう。疾患のために仲間外れにされることを恐れるかもしれ
ません。その結果、
「血友病者」として扱われないように、
自身の健康に対して不必要な危険を冒すおそれがあります。
「疾患のために息子は仲間から外され 、サッカーをするこ
とができませんでした。休み時間に男の子たちがサッカーを
「子供たち、特に 10 代の若者が時にさまざまな理由で
しているのに 、息子には女の子と遊ぶことしかできませんで
母親に対して腹を立てることがあります。その 1 つが遺伝
した。問題なのは除外されることでした」
(母親 、フランス)
的形質に対するものです。また別の理由としては、母親が
抗しがたい存在であり、また母親が罪の意識と気遣いのあ
しかしながら、親 / 支援者が子供の生活に関連する感情
まり、自分(血友病本人)に対して世話をやき過ぎる一方で、
と状況を示す一連の 12 枚の写真から、自分の子供を象徴す
本人は母親から離れたいもののどうしたらよいか分からな
参加者のほぼ半数
(47%)
るものとして 1 枚を選ぶ調査では、
いといったアプローチ / 回避の表れと考えることができま
8
す。母親がしていることはすべて本人の助けとなっている
く比較的普通の生活を送ることができるようになりました。
のに、本人は母親に対して腹を立てるのです」
(ソーシャル
出血の痛みも薬剤が改良され、出血直後に迅速な治療が可
ワーカー、米国)
能となった結果、それほど重大な問題ではなくなっています。
10 代の若者が両親と一般的な生活に対して抱くごく普
「私はどのようにして血友病とともにある家族を持てるか
通の怒りの表現は血友病があることでより深刻なものとな
を考えました。結婚して私はより大きな安心感を得ること
ります。10 代の血友病の人々は血友病を遺伝させたことに
ができました。血友病である私を好んでくれる人はいない
対して母親を責めるか、又は息子に対して父親が失望する
と思っていたので結婚できて私は幸せでした。神は私たち
たびに父親を責めるか、いずれにしても両親に対する少な
を祝福してくださり、私は妻と 11 年間共に暮らしています」
からぬ憤りを抱いている可能性があります。10 代になると、
(患者 、ブラジル)
血友病の人の自己管理責任は次第に重くなっていきます。
そのため、子供の疾患管理ができなくなることを恐れ、両
「もしあなたが生涯にわたる疾患を抱えるのであれば、
親は過保護に陥り、もっと血友病本人の憤りを煽ることに
血友病こそが抱えるべき最良の疾患であるといつも言って
なるのです。
います」
(患者 、英国)
職場での差別、人間関係の構築、子供を持つことに対する
血友病の成人の懸念
文献レビューで触れましたが、定性的調査により、成人
「私は血友病を受入れています。この疾患について知って
いますね。何をしてよいのか、また何をしてはいけないの
かも知っていますね」
(患者 、ドイツ)
の血友病の人が抱いている懸念についてより深く調査する
ことができました。成人となった血友病の人々が血友病と
上記の調査結果から、血友病の人々の状況及び生活展望
ともに生きる上で、繰り返される課題は、普段の生活で受
が治療の進歩により大幅に改善されていることは明らかで
ける差別をどのようになくすかというものであり、特に雇用
す。しかしながら、治療へのアクセスが容易ではないブラジ
及び人間関係に対する懸念です。成人の血友病の人々はよ
ルやアルジェリアなどの地域では、血友病の人々が依然とし
く疾患により就業機会が制約されるのではないかと思い悩
て問題を抱えていることに言及しておかねばなりません。高
むものです。また、肉体労働ができないのではないか、出
齢者、特に HIV / エイズや C 型肝炎患者は社会に対してなん
血時は仕事を休む時間が必要となるかもしれないと心配し
らかの敵意を抱いています。彼らは自身を「破損品」と考え、
ます。さらに、血友病に対する理解の欠如が原因で差別を
医学界に裏切られたと考えています。
受けることも恐れます。人間関係を構築する際、
どのように、
そしていつ血友病があることを話すべきかについて誰もが
さらなる問題
悩みます。血友病の人々は、働いて家族を十分に養うこと
HERO では、医療従事者の見地から血友病とその治療に
ができなくなるかもしれないと考え、家族を持つことに対し
関わる問題についても調査しました。医療従事者は一般的
て不安を感じるかもしれません。妊娠を考える女性保因者
に、血友病の人自身に、特に治療に対するコンプライアン
にとっても子供を持つことは特別な問題となります。
スが悪い場合、挫折を感じると報告しました。医療従事者
の血友病の人々に対する感じ方に示されています。成人の
一連の 12 枚の写真から、自身の経験 / 考え方に関連す
血友病の人と同じ、感情と状況を示す一連の 12 枚の写真
る感情と状況を示す 1 枚を選ぶ調査では、成人の血友病の
から、血友病の人々を象徴するものとして 1 枚を選ぶ調査
人の半数以上(51%)が、血友病とともに生きることに対す
において、成人の血友病の人では 51% が肯定的な考え方
る肯定的な考え方を示す 3 枚の写真から 1 枚を選びました。
を示す 3 枚の写真を選んだのに対し、医療従事者ではそれ
これは治療(定期補充療法の利用など)の進歩と近年の治
を選んだ人はたった 3 分の 1(34%)でした。ほぼ 3 分の
療の効果を反映していると言えるかもしれません。血友病
1(30%)の医療従事者は、悲しみ、悩み、懸 念、又は挫折
の人々の予後は大きく改善し、制約をほとんど受けることな
を示す 3 枚の否定的な写真から 1 枚を選びました。
9
また、医療従事者の中には、完治が見込まれず、凝固因
子の補充療法に対しインヒビターを発現する人もいること
から、治療の効果が保証されていないことを懸念する者も
いました。治療が奏効しなかった場合、医療従事者の中に
は最良の行動指針に対する疑念を抱き、もっと何かできた
のではないかと考える者もいました。さらに、治療や疾患
の管理に多額の費用がかかることは、資金不足もあり、主
要な問題として特定されました。ブラジルとアルジェリア
の参加者は、凝固因子製剤が持続的に確実に供給されるこ
とを要望していました。世界中の多くの医療従事者にとっ
て、この件は依然課題であることも心に留めておく必要が
あります。
血友病治療に対する考え方に関する感情と状況を示す
12 枚の写真から、1 枚を選ぶ調査において、医療従事者の
ほぼ 4 分の 3(73%)が次の 4 枚の写真のうちの 1 枚を選
びました。4 枚の写真のうち血友病治療への肯定的、楽天
的かつ実りある考え方を示す 2 枚から 1 枚を選んだ医療従
事者は 43% で、残りの医療従事者は、問題の大きさと疾患
を管理する最善の方法にかかわる深い懸念を示す 2 枚から
1 枚を選びました。全体的に言えることは、医療従事者は血
友病の人々に治療の効果がある場合大きな満足が得られて
いるということです。
「この仕事は私に極めて高い満足感を与えてくれます。血
友病は治療の効果が目に見える疾患です。血友病の人を導
き、その保護者となれるのです。私はそれが気に入ってい
ます」
(医者、ドイツ)
さらに、調査の結果から、文献レビューで特定されなかっ
た以下の新しい問題が提起されました。血友病に対する既
存の医療サービスの差を認識する必要性、仕事にかかわる
問題(雇用者や同僚とのコミュニケーション)
、ネットワーク
を支援するためのアクセス、文化的 / 国家特有の問題(治療
費と資金不足、医療保険の獲得及び治療へのアクセスなど)
10
結 論
血友病に対する課題や問題はなくなりませんが、血友病
の人が治療の利益を享受している分野もあります。治療の
利用しやすさや定期補充療法により、先進国では血友病の
人は、健康状態と生活の質が大幅に改善されました。血友
病がよく管理されていれば、普通に近い生活を送ることが
可能で、またこれにより疾 患を受入れることができます。
血友病で高齢の人は完全にこの疾患を受入れており、血友
病は自分たちにとって「普通の状態」だと述べています。ま
た、薬剤が改良された結果として、医療従事者は疾患管理
ができることに高い満足度を感じています。
医療従事者や他の血友病の人からの支援や血友病の人
どおしのコミュニティがこの疾患に対処する際に重要であ
ることが確認されています。
「…私たちは血友病について援助を得る方法について定
期的に血友病の人に説明する[意識高揚キャンペーン]を
展開しています。このようなイベント後のご両親とご本人の
顔を見ると高い満足感を感じます。彼らはとても幸せそう
なので私はわくわくします」
(医者、アルジェリア)
「血友病の若者が満面の笑みを浮かべて来院し、私たち
が定めた目標を達成できたと言ってくれることは実にやり
がいのあることです」
(精神科医、英国)
調査の結果、少なくとも両親は血友病の人に匹敵する課
題に直面することが示されました。この課題のほかにも、
女性保因者にとっては出産及び妊娠の計画に関して直面す
る課題があります。
最後に、定性的調査により、
(家族などの)血友病の人々
を支援しケアする人々の要求は次第に高くなることと、血
友病の人々を支援しケアする人々も変わっていくことが確
認されました。
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次のステップ
文 献レビュー及び 定 性 的 調 査 から 得ら れ た 情 報 は、
HERO の最終的な要素である 12 カ国から 1,200 人が参加
する充実したオンラインの定性的調査を開発する HERO 国
際諮問委員会の指針となりました。HERO は、血友病とと
もにある生活に関する重要な心理的・社会的な問題を数量
化することによって、血友病の管理を改善するための新し
いガイドラインの開発にエビデンスを提供することを目指
しています。新しいガイドラインの開発に情報を提供する
ことになる証拠を構築することを目指しています。
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添付資料 1:HERO 国際諮問委員会メンバー
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フレデリカ・カシス(ブラジル)
:サンパウロ、クリニカス病
シド・ラミレス(米国)
:米国のインヒビター・サミットに
出席、血友病の若者との対話に協力。インヒビター保有
会メンバー
重症血友病 A 。
エリアン・サンドバル(ブラジル)
:サンパウロ州立大学 血
友病専門ナースコーディネーター
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院血友病センター 臨床心理士、WFH 心理・社会学委員
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セサル・ガリド(ベネズエラ)
:世界血友病連盟の加盟国・
加盟地域団体の副会長
アン - マリエ・スタイン(カナダ)
:トロントのこども病院
(The Hospital for Sick Children in Toronto)の出血性
疾患外来の血友病ナースコーディネーター
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ワーナ ー・カルニンス(ドイツ)
:ドイツ血 友 病 友の 会
重症血友病 A
(Deutsche Ha¨ mophilie Gesellschaft)会長、
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アンドレア・ブジィ(イタリア)
:イタリア血友病友の会事務
局長、パラケルチェルソ財団(Fondazione Paracelso)代表
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アルフォンソ・イオリオ(カナダ)
:マクマスター大学准教授、
健康情報研究所、臨床疫学
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北村健太郎(日本)
:立命館大学衣笠総合研究機構ポストド
クトラルフェロー、立命館大学および大学院非常勤講師
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フェリペ・ケロル・フエンテス(スペイン):バレンシア、ラ・
フェ大学附属病院、先天性凝固疾患部門教授、血友病理
学療法専門家
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マット・グレゴリー(英国)
:英国血友病友の会の副会長、
重症血友病 A
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ケリー・ファチュラ(米国)
:NHF( 米国血友病財団 ) ペン
シルヴァニア西部支部局長、インヒビター保有重症血友病
A の息子 3 人の母親
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アンジェラ・フォルシス(米国):ペンシルヴァニア大学メ
ディカルセンター附属血友病センター(フィラデルフィア)
の理学療法士、WFH 筋骨格系委員会次席副委員長
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ダイアン・ヌジェント(米国)
:カリフォルニア州オレンジ・
カウンティーこども病院血友病治療センター所長、カリフ
ォルニア州・ネバダ州・ハワイ州および環太平洋地域を含
むリージョン 9(米国の血友病の人々の 15% 近くが居住
する地区)の支部長
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マーク・ペイロット(米国)
:ロヨラ大学社会学教授、ジョン・
ホプキンス大学医学部の研究部門に勤務予定
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