Il mio vampiro −幸せの縮図− - タテ書き小説ネット

Il mio vampiro −幸せの縮図−
秋月彩深
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vampiro﹂の続編短編。最終話
vampiro
mio
−幸せの縮図−
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うぞ。
mio
︻小説タイトル︼
Il
︻Nコード︼
N0320BT
︻作者名︼
秋月彩深
︻あらすじ︼
完結小説﹁Il
直後のお話。本編を先に読むのを推奨します。http://nc
ode.syosetu.com/n7417bs/
1
石でも陶器でもない、見たことの無い素材で作られた白くて広い
湯船には、薔薇の花びらがたっぷりと贅沢にたゆたっていた。人の
世には殆ど見られない蒼薔薇は、こちらではそう珍しくない花だと
いう。甘い香りに酔いしれて、少女はこれからの事を思った。
青年が吸血鬼の帝国の皇子、と知っても驚きはしなかったが、半
ば勢いでここまでしてしまった事には一抹の不安を覚えている。彼
は、自分を正妻として迎えたいと言ってくれた。謁見の間で父であ
る皇帝にそう宣言し、何より驚いたのは簡単に許しを得られた事だ
った。全幅の信頼を寄せているらしい側仕えのアルヴィンに紹介さ
れた際も、好意的な反応に彼女はいくらか戸惑った。己が異分子な
のは理解している。きっと、この城の一部の者以外は自分に否定的
な態度を取るだろうと覚悟していた。それで良い、共に在る事を選
んだのは他でもない自分なのだから。
湯当りする前にと、湯船を出て柔らかなタオルを手に取る。いつ
もは召使が世話を焼いてくれていたが、なるべく自分で何でも出来
るようにしていたから一人でもさほど困りはしない。病弱だった自
分に甘えないように心掛けていて良かったと思う。流石に男性であ
るアルヴィンに頼むことは出来ず、一番信頼できる侍女も今は外し
ているらしかった。着替えなどはシルヴェスター自身が用意してく
れたと知り、一国の皇子にこんな事をさせていいのかと少し気恥ず
かしい気分にもなる。タオルの脇に綺麗に畳んで添えられていたシ
ルクのネグリジェは、あの日着ていたものとどこか似ていた。
蘇るのは、初めて抱かれた日の記憶。ほんの数日前の、最初で最
後の行為だったはずなのに。身体が火照るのを感じ、振り切るよう
に急いで袖を通した。
跡継ぎが産まれない限り、婚姻は出来ないという掟を理解してい
2
ない訳ではなかった。それでも、人間である彼女を奴隷の扱いにさ
せないため、帝国の法に逆らってでも護ると決意していた。今後様
々な妬み嫉みに晒されるであろう愛しい少女を思うと、原因を作っ
た自分が盾になってやらなくてはと策を巡らす。既にいくつか根回
しはしてあるが、“跡継ぎを産む候補”である女性達から何らかの
行動が示されるのは想像に難くない。結局のところいずれは彼女ら
と交わって子を為さねばならないが、その期限を延ばしてもらった
のだ。今は、愛するたった一人の者としか顔を合わせたくはない。
﹁⋮⋮セレスティア﹂
もう二度と、会えないと思っていた。皇族でありながらほとんど
物欲を感じたことのない彼が唯一執着した存在だった。初めて出会
いその血を口に含んだ瞬間から、そうなることは感付いていた。誇
り高く気高い、その眩しさに惹かれた。闇の中で光を求めるように、
色香に吸い寄せられ思わず唇に触れようとした事もある。拒まれた
時は無表情を装いながら、後悔と羞恥に身を焦がしたものだ。
けれど彼女は自分を呼んだ。そして、選んでくれた。今でも夢で
はないかと不安になる。もう膨らんだ想いを我慢しなくても良い。
一度断ち切ったはずの執着は新たな芽を宿し、急速に成長を重ねて
いく。それは、欲と名の付くあらゆるものを形取っていた。
程なく、扉を叩く音と側仕えの声が響く。お連れしました、と告
げるアルヴィンの顔は嬉しそうな感情を隠し切れていない。湯殿と
部屋の往復を警護するように頼んだのだが、どうやら事情を知らぬ
他の者と会わぬよう手配してくれたらしい。後ろからおずおずと姿
を見せる少女の色付いた肌に、湧き上がる劣情を無視出来なくなっ
た。
おやすみなさいませ、と丁寧に挨拶をして去るのを見送れば、静
寂に立ち尽くす彼女が残される。客人であれば余り余った部屋にで
も案内すれば良いが、彼女は誰が何と言おうと自分の妃だ。父は簡
単に許したように見えたが、それはこちらが本来の掟を理解してい
3
る前提でのものだ。
こちらに来させるまでの時間も惜しく、ベッドから立ち上がり彼
女の目の前に立つ。乾き切っていない金髪をそっと撫でながら、漆
黒の双眸を見つめる。
﹁蒼い花びらがとても良い香りで素敵だったわ。まるで貴方に包ま
れているみたいに﹂
無意識なのか、うっとりと告げる姿に頭を抱えそうになる。今す
ぐにでも地べたに組み敷いてしまいそうなのをどうにか堪えた。
﹁明日の夜、お前が俺の妃であると全国民に知らしめる。何があろ
うと、護る。⋮⋮わざわざ俺の怒りに触れようとする輩もそういな
いが、人間を蔑視する風潮はまだ根強い﹂
﹁ええ。わたくしは貴方に従います﹂
﹁随分物分りが良くなった﹂
﹁貴方は意外と情熱的で強引なのね。そしてやっぱり、ちょっと意
地悪だわ﹂
悪戯っぽく笑う姿も変わらないままだ。堪らなくなって、華奢な
身体を掻き抱く。無防備な首筋に噛み付きたくなる衝動を抑えて軽
く吸うに留めた。
﹁血はよろしくて?﹂
﹁返すものがない﹂
今までは、血を吸う代わりに己の生命力を与えていた。人間の生
き血を吸えば、相手は当然消耗していく。無理に啜れば簡単に干か
らびて死ぬのだ。
﹁それでもいいわ、貴方なら﹂
﹁魅力的な申し出だが、冗談じゃないな﹂
やっと手に入れたというのに、そんな馬鹿げたことをする訳がな
い。つくづく、進化を重ねた先人達に感謝する。生き血が命を繋い
だ時代であればこの誘惑に耐え切れなかっただろう。今、飢えを満
たす方法はいくらでもあるのだから。
親指でなぞった唇が少しだけ開くのを認めて、己のそれを性急に
4
重ねた。擦り合わせるだけで満足するはずもなく、無遠慮に口内に
入り込む。隙間から漏れる小さな声も昂らせる材料でしかない。わ
ざとらしく水音を奏で、思考を奪うような荒い口付けに涙目になる
表情すら己の欲を刺激する。ズル、と倒れこみそうになる彼女を支
えて、上気した熱い目尻を舐め取る。
﹁二度目の破瓜も、俺が奪っていいだろう?﹂
彼女の身体は処女のままだ。交わる前の状態に戻したのだから。
抱くのは二度目なのに、という矛盾も興奮を促すばかりだ。返事も
せずただこちらを見つめる彼女に拒絶の意思は見られない。軽々と
横抱きにしてベッドへと連れて行く。普段は饒舌な彼女がこういう
時は恥ずかしがって何も言えなくなることを可愛らしいと思い、随
分と溺れていると自嘲する。
瑞々しい肌に早く触れたいと心が急かす。前開きの薄手の夜着を
留めるのは、几帳面に蝶々結びをされたいくつかの細いリボンだ。
左右の長さもきっちりと揃ったそれは彼女の性格を思わせる。勿体
無いとは思えど、据え膳に手を着けぬ方が不躾というものだろう。
紐解いていく度に、彼女特有の甘い香りがふわりと鼻を擽る。もう
あの香水は無いというのに、変わらず匂い立つのは本当にその身体
からなのか、それとも記憶が補完したのか。最早どちらでも構わな
い。
灯かりを薄暗く調整したのも意味が無いと言わんばかりに、透き
通るような白い柔肌が浮かび上がる。リボンを外しそっと肌蹴させ
ただけでこの有様では、全てを脱がせたら目が眩むに違いない。着
衣のまま、というのも一興か。いや、それはただの理由付けでしか
なかった。一刻も早く。触れて、交わって、啼かせたい︱︱
正面から顔を逸らして遠くを見ている少女の頬に手をかけ、少々
強引に向き直らせる。羞恥に潤む瞳は黒曜石のように美しい。
﹁余所見をするな。俺だけを見ろ﹂
﹁だって、⋮⋮あ、んむ、﹂
5
言い訳は聞かない。唇に噛み付くようなキスもそこそこに、赤い
花を散らす如く首筋を吸い上げ鎖骨に至る。浮き上がる華奢な骨に
沿って舌でなぞりつつ、両の手で豊かな乳房を揉みしだく。
﹁や、ん⋮⋮ふ、いや⋮⋮っ﹂
声を出すまいと口を塞ごうとする手を無理やり解き、そのか細い
指を一本ずつ口に含む。
﹁声を聴かせろ。⋮⋮外には聞こえない﹂
薄桃色の頂を舌先で転がし、なだらかな腰を撫でる。骨張った指
が脚の付け根に到達した時、彼女の身体がびくりと跳ねた。きつく
閉じようと抵抗する膝裏を掴み難なく開かせ、雌の匂いの濃い泉へ
と顔を埋める。
﹁いや、やめて⋮⋮そんな、とこ、ひゃ⋮うっ、﹂
溢れ出す蜜を漏らさぬよう音を立てて啜る。肉芽を撫で上げるよ
うに秘裂をなぞり、高い嬌声に酔わされていく。達せてすらもらえ
ない緩やかで絶妙な刺激に、少女は気が狂いそうなほど高められて
いった。
﹁初めてでもないだろう、そんなに抵抗するな﹂
﹁この前と、ぜんぜんっ⋮⋮違⋮⋮﹂
﹁違う?当たり前だ。あの日は、別れる為に抱いたのだから﹂
あれでも理性で押し留めていたのだ。最後だからと滅茶苦茶に何
も考えず犯し尽くせば良いと奥底では願っても、そんな酷い仕打ち
が出来るはずもなかった。愛しているからこそ、優しく慈しむよう
な行為をした。けれど今欲した少女はここにいる。命にまで刻み付
けるような激情を、もう抑えることは出来そうにない。
﹁怖いか﹂
﹁⋮⋮いいえ。望んだのは、わたくしよ﹂
目尻に涙を滲ませながら、気高く彼女は応えた。深く口付けを交
わすと同時に、宛がっていた彼の欲を貫き入れる。痛みに耐える声
も唾液と共に嚥下させ、紛らわせるように敏感な部分を擦り責める。
﹁もう傷は治さない。お前は永遠に、俺のものだ﹂
6
穏やかで理知的な青年がこうも獣の如く理性を失くす事に、女と
しての悦びを感じずにはいられない。
﹁あ、あぁ、ふ⋮⋮っく、シル⋮⋮﹂
固く張り詰めたものが更にその大きさを増したような気がした。
﹁シルヴェスター⋮⋮!﹂
その顔で、その声で、悩ましく名前を呼ばれる度に強く突いては
今すぐに吐き出したいのを留まらせる。彼女の身体が少しづつ強張
るのに気付き、その感覚を助けるように角度を変えて深く出し入れ
すれば、小刻みな震えに合わせて彼に絡みつく襞の締め付けが強く
なる。限界を悟り、打ち付けるようにして小さな身体を抱き締めた。
﹁⋮⋮く、⋮⋮セレスティアッ⋮⋮﹂
﹁シル、ん、んうっ、やああっ﹂
おびただしい量の精が放たれ、全てが彼女の中に吸われていく。
蠢き搾り取るような本能の動きは彼女自身もおそらくは想定してい
ない。少女は今、どんなに美しい神話の女神も顔を隠してしまいそ
うなほどに妖艶だった。ねだるような赤い唇にそっとキスを落とす。
みるみるうちに大粒の涙が溢れるのを見て、青年は動揺した。
﹁無理をさせたか﹂
﹁ちが、ちがうの⋮⋮﹂
美しく拡がる金髪を撫でる。彼女を、というよりは自分を落ち着
かせるためだったのかもしれない。
﹁⋮⋮貴方の子を、産めれば良かったのに﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
一方的だと思っていた愛に気持ちが返ってくることは、こんなに
も幸せなものなのだろうか。心も身体も結ばれた今、これ以上何を
望めと言うのだ。ただただ愛しくて、切ない。
﹁お前がいれば俺は何も要らない。⋮⋮もう、離さない﹂
腕を彼女の頭の後ろに回し、抱き寄せる。乱れたままの衣服から
覗く肌に僅かに反応しかける心にぐっと蓋をした。泣き疲れた少女
が寝息を立てる頃、青年も眠りに付く。日の出を告げるかしましい
7
鳥はこの国にはいない。だが幸せの縮図は、確かにここにあったの
だ。
完
8
PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n0320bt/
Il mio vampiro -幸せの縮図-
2013年8月10日01時07分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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