名古屋大学専門科目 2012年度 ファイナンス (http://www.soec.nagoya-u.ac.jp/~nakashima/FE12/) 投資の意思決定と資本市場 中島英喜 名古屋大学大学院経済学研究科 ([email protected]) (A) ⊂ (B) ⊂ (C) ①金利 ②利回り ③リターン 2 1 2. 金利と債券投資 2.1 金利と債券価格 2.2 金利の期間構造 2.3 金利と債券投資の整理 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 3 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・準備:基本的な考え方 ⇒個人の意思決定モデル(無差別曲線と予算制約条件) リンゴ(個) 無差別曲線(A2) n個 無差別曲線(B) 無差別曲線(A1) m個 予算制約線 ミカン(個) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 4 2 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・異時点間の消費問題 ⇒同じ財(例:リンゴ)を2時点間でどのように消費するか 今期(個) n個 無差別曲線 m個 予算制約線 (手持ちのリンゴ総数=m+n) 来期(個) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 5 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・異時点間の消費問題 ⇒単位を「円」に変更(ここではインフレ率=0を仮定) 今期(円) pn円 無差別曲線 pm円 予算制約線 (手持ちのリンゴ総額=p(m+n)円 ) 来期(円) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 6 3 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・異時点間の消費問題 ⇒インフレがなく,金利(r>0)がある場合 今期(円) XMr円 無差別曲線 YMr円 予算制約線 (手持ち資金 W=X+Y/(1+r)円 ) 来期(円) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 7 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・異時点間の消費問題(同じ予算を持つA氏とB氏) ⇒各期間の総生産がいずれも100とすると →不均衡 ・今期の総需要=80+55=135>100 ・来期の総需要=21+47= 68 <100 今期(円) XAr=80 無差別曲線(A) XBr=55 無差別曲線(B) YAr=21 YBr=47 予算制約線 (手持ち資金 100=X+Y/(1+r)円 ) 来期(円) 金利はr=5% 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 8 4 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・異時点間の生産と消費の均衡 ⇒総生産と総消費が均衡するまで価格と金利が変化 今期(円) 無差別曲線(A) 貨幣価値5%下落 ・今期の総需要=55+35= 90 <100 ・来期の総需要=44+66=110≦110 無差別曲線(B) YAR=55 YBR=35 XAR=44 XBR=66 予算制約線 (手持ち資金 95=Y+X/(1+R)円 ) 来期(円) 金利5%→10%に上昇 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 9 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・ミクロ・モデルのインプリケーション ⇒個人の最適消費計画(異時点間)は,金利水準に依存 する ⇒金利水準は,経済全体の総生産と総消費が均衡する ように決定される ⇒この均衡は,将来に亘って達成されれば十分であり, 各時点で満たされる必要はない(経済全体で見た貯蓄 (or投資)の許容) (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 10 5 2.1 金利と債券価格 2.1.1 金利決定のミクロ・モデル ・(つづき)ミクロ・モデルのインプリケーション ⇒金利(r)とは,「将来のある時点の1円」の現在価格(p) を裏返したものである(例:r=1/p-1) ⇒この価格p (裏を返すと金利r)は,市場で決定される ⇒通常の経済(成長率が非負)において金利が正である ことは,経済主体が目先の消費に喜びを覚えることを 意味している 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 11 2.1 金利と債券価格 2.1.2 債券とは ・一般的な定義は難しい(バリエーションが多い) ⇒最も標準的な債券は、予め決められた額面P、満期T、 クーポン(利息)C、利息支払い時点ti(i=1,2,・・・,N≦T) によって記述される ⇒このような債券は、将来支払うことを約束したキャッシ ュフローが現時点で完全に確定されていることから、固 定支払い(fixed income)証券と呼ばれる ⇒自国通貨建て国債の多くは、近似的(※)に上記の条件 を満たす(※債務不履行リスクが僅かながら存在する) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 12 6 2.1 金利と債券価格 2.1.2 債券とは ・fixed income証券のキャッシュフロー・イメージ ⇒額面を100で表し、半年毎に一定額の利金を支払う 利金(2円) 額面(100円) 発行(t=0) 利金(2円)・・・ ・・・ 現在 1年目 満期(t=10年) ↑ この債券の現在の売買価格は? 払込み(102円) ←額面と一致する必要はない 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 13 2.1 金利と債券価格 2.1.2 債券とは ・本講義で主に取り扱う債券 ⇒債務不履行リスク(default risk)のない固定支払い (fixed income)証券 ⇒この債券の価格情報は,金利の期間構造(term structure)に集約される(→2.2節) ⇒債務不履行リスクを無視できない証券,もしくは,支払 額が他の変数に依存する証券は基本的に扱わない →債務不履行リスクあり→信用リスクに関する価格情報が必要 →支払額が他の変数に依存→物価連動,株価連動,CAT等 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 14 7 2.1 金利と債券価格 2.1.3 金利と利回り ・個々のfixed income証券は,それぞれ固有の利 回りを持つ ・一方,金利は,市場全体の将来の特定の年限(将 来の特定の1時点)に対して与えられる数値である ・利回りと金利は密接に関係している ・利回りは個々の証券に対して与えられ,金利は市 場全体の個々の将来時点に対して与えられる 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 15 2.1 金利と債券価格 2.1.4 利回りと投資リターン ・ひとくちに「利回り」といっても,様々な定義(計算 方法)がある ⇒ひとつの債券が,定義(計算方法)によって複数の異な る利回り(具体的な数値)を持つ ⇒こうして計算される「利回り」は,一定の条件が満たさ れたケースにおいて「投資収益率(リターン)」と同値に なる 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 16 8 2.1 金利と債券価格 2.1.4 利回りと投資リターン ・リターン=投資の収益率 投資のキャッシュ・フロー ・Xはアウト・フロー ・Yはイン・フロー ⇒投資:資金X(元本)を投じ,期間T を経た(我慢した) 後に,資金Y を得ることができた ⇒投資のリターン(R)は,上の3つの変数の関数である R YX 1 X T 単位は「1/時間」? ⇒リターン=(利益÷元本)÷投資期間 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 17 2.1 金利と債券価格 2.1.4 利回りと投資リターン ・投資の利益はどのような形でもたらされるか ⇒①インカム・ゲイン :資産(asset)の保有者に支払わ れるキャッシュ・フロー →株式配当,預金利息,債券利金 ⇒②キャピタル・ゲイン:資産の売却者に支払われる売 却代金(から購入費用を引いた もの) ※当該資産に関して,信用すべき市場価格が存在する場合,実際に 売却しなくても,見做しの利益(or損失)を計上することができる (→未実現利益) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 18 9 2.1 金利と債券価格 2.1.4 利回りと投資リターン ・キャッシュ・フローの種別を考慮したリターン表記 ⇒ t 期の資産リターン(rt)は,インカム・リターン(dt)と キャピタル・リターン(pt)に分解できる キャピタル・リターンは 価格の変化率 {D ( Pt Pt 1 )} Dt P Pt 1 rt t t d t pt Pt 1 Pt 1 Pt 1 ⇒ここで,Ptはt 期末の資産価格(市場価格),Dtはt 期末 に支払われるインカム・ゲイン(配当や利金等) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 19 2.1 金利と債券価格 2.1.4 利回りと投資リターン ・信用リスクのない債券の投資リターン ⇒債券投資のインカム・リターンは確実 →fixed income証券の利金(クーポン)は予め確定しており、信 用リスクがなければインカム・リターンに不確実性はない ⇒債券の市場価格と額面は一致するとは限らない →信用リスクがなくても市場価格は市況に応じて変化する →債券投資のキャピタル・ゲインは一般に不確実 ⇒債券を満期まで持ち切る戦略のリターンは確実 →キャピタル・ゲイン=額面-購入価格(現在の市場価格) →この戦略のトータル・リターン=当該債券の最終利回り 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 20 10 2.1 金利と債券価格 2.1.5 利回りの計算 ・債券利回りの分類 ⇒実際の購入金額を考慮しない利回り: ・表面利率(クーポン・レート)=年間支払利金/額面 ⇒実際の購入金額を考慮した利回り ・直利=年間支払利金/購入金額 (額面考慮せず) ・最終利回り(単利)={年間支払利金 +(額面-購入価格)/残存年数}/購入金額 ・最終利回りは流通市場での期中購入を前提 ・応募者利回りは発行市場での購入を前提 ・満期(額面)を意識した利回り計算には、単利と複利がある 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 21 2.1 金利と債券価格 2.1.5 利回りの計算 ・債券利回りの計算例 ⇒p.12の利付債のケース ・表面利率(クーポン・レート)=(2+2)/100=4% ・直利(例:発行時点)=(2+2)/102=3.92% ・p.12のケースで「現在」が3年目の利払い後で,流通市場にお ける同債券の価格が97円である場合, 最終利回り(単利)= {(2+2)+(100-97)/7年}/97=4.57% ・応募者利回り(単利)={(2+2)+(100-102)/10年}/102=3.73% ・応募者利回りや最終利回りの複利は,少々計算が面倒 (内部収益率(IRR)と呼ばれるものに相当) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 22 11 2.1 金利と債券価格 2.1.5 利回りの計算 ・(つづき)債券利回りの計算例 ⇒p.12の利付債の複利利回り ・複利の最終利回り(res)は次式を解いて求める 購入金額 97 [2 /(1 res / 2)1 ] [2 /(1 res / 2) 2 ] [2 /(1 res / 2)14 ] [100/(1 res / 2)14 ] ・複利の応募者利回り(rep)も同様の方程式を解いて求める 購入金額 102 [2 /(1 rep / 2)1 ] [2 /(1 rep / 2) 2 ] [2 /(1 rep / 2) 20 ] [100/(1 rep / 2) 20 ] 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 23 2.1 金利と債券価格 2.1.5 利回りの計算 ・(つづき)債券利回りの計算例 ⇒複利の計算は,高次の方程式を解く必要がある ⇒電卓で求めるのは簡単ではない ⇒Excelを使って複利を計算してみよう ・数値計算による解法(マニュアル) ・ 〃 (ワークシート上での自動計算) ・ 〃 (ソルバー使用) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 24 12 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・リスクのない割引債(strip bond, zero coupon bond)が重要な役割を果たす ⇒割引債とは将来の特定時点(満期)において,額面金 額(通常は100と表記)の支払いを約束した証券 ⇒p.12のfixed income証券の例で,各期の利金がゼロ のケース(クーポン無し:strip)を想定すれば良い ⇒リスクのない割引債の市場利回りは,市場金利(spot rate)と一致するはず 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 25 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・標準的な fixed income証券(利付債)のキャッシュ フローは,満期の異なる割引債を適当に組み合わ せることで複製できる ⇒問題の利付債の市場価格は,そのキャッシュフローの 複製に要する割引債(の組み合わせ)の市場価格(総 額)と一致するはず ⇒一致しない場合,高い方を売って(空売り)安い方を買 えば,リスクゼロで利益を得ることができる(裁定機会 の存在) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 26 13 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・ケース・スタディ(p.12の利付債の例) ⇒p.12の利付債を,発行時点で100枚買うのに必要な金 額は10,200円 ⇒一方,この利付債を100枚保有しているケースと同様 のキャッシュ・インフローは,満期の異なる割引債(額 面100円)を適当に組み合わせることで達成可能 ・満期0.5年,1年,1.5年,・・・,9.5年の割引債を2枚ずつ購入し, 満期10年の割引債を102枚購入すればよい (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 27 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・(つづき)ケース・スタディ(p.12の利付債の例) ⇒当該利付債の発行時点(t=0)において,満期0.5年,1 年,1.5年,・・・,9.5年,10年の割引債(額面100円)の市 場価格が,それぞれ99円,97.2円,95円,・・・,65円, 63円であったする ⇒この時,問題の利付債券100枚の複製に必要な資金 は,(99+97.2+95+・・・+65)×2+(63×102) 円 ⇒裁定機会のない市場では,この額は10,200円になる (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 28 14 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・(つづき)ケース・スタディ(p.12の利付債の例) ⇒前頁の設定(満期の異なる割引債の価格)を用いて, t=0時点における市場金利の期間構造(yield curve)を 知ることができる ・t=0~0.5年の金利:r(0.5)=(100/99)1/0.5-1 =2.03% ・t=0~1.0年の金利:r(1.0)=(100/97.2)1/1.0-1 =2.88% ・t=0~1.5年の金利:r(1.5)=(100/95)1/1.5-1 =3.48% : ・t=0~1.0年の金利:r(10.0)=(100/63)1/10-1 =4.73% (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 29 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・市場金利の期間構造が分かれば,任意のfixed income証券(利付債を含む)の価格を評価できる 各満期の 市場金利水準 (期間構造) 各満期の 割引債の 利回り 各満期の割引債の 組合わせによる キャッシュ・インフローの複製 各満期の 割引債の 市場価格 複製にかかる 資金総額 その利付債の キャッシュ・インフロー ある利付債の 市場価格 その利付債の利回り 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 30 15 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・現実には,市場で取引される割引債は,種類や量 の点でマイナーな存在 ・したがって,市場のメジャーである利付債の市場 価格を基に,前頁のロジックを逆方向に適用して, 各満期の割引債の理論価格(市場金利に相当)を 求めることが多い 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 31 2.1 金利と債券価格 2.1.6 金利と債券価格 ・金利,債券利回り,債券価格の関係 ⇒ある時点からt期先までの金利(spot rate)は,同時点 における満期tの割引債の利回りとして定義できる ⇒割引債の利回りは額面(通常100円),満期までの期 間,現在の取引価格が分かれば,一意に定まる ⇒様々な満期の割引債の価格が分かれば,標準的な利 付債の価格は,無裁定条件によって一意に定まる ⇒標準的な利付債の価格が与えられると,その利回りは 一定の公式を用いて計算できる 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 32 16 2.2 金利の期間構造 2.2.1 金利の期間構造の定義 ・金利の期間構造:“term structure”の訳語 ⇒“yield curve”(利回り曲線)の一つと言える ・満期(年限)の異なる複数の割引債を,年限(横 軸)と利回り(縦軸)で描かれる散布図上にプロット すると,一定の傾向が顕れる ⇒プロットする割引債は,市場で取引される実在の割引 債だけでなく,満期の異なる利付債の価格から逆算し た仮想的な割引債も加えることができる 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 33 2.2 金利の期間構造 2.2.2 金利の期間構造の類型 ・1996年1月末の日本国債の利回り曲線と金利曲線 利回り(年率) 金利(年率) 4.0% 4.5% 3.5% 4.0% 3.5% 3.0% 3.0% 2.5% 2.5% 2.0% 2.0% 1.5% 1.5% yield curve 個別銘柄 スプレッド 1.0% 1.0% 0.5% 0.5% 残存 (年) 0.0% 0 5 10 15 20 0.0% -0.5% 0 5 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 10 15 20 残存 (年) 34 17 2.2 金利の期間構造 2.2.2 金利の期間構造の類型 ・金利の期間構造の類型 ⇒基本型:順イールド・・・年限に関して右上がり ⇒特殊型:逆イールド・・・年限に関して右下がり こぶ(hump)・・・年限に関して山形 利回り(金利) 年限 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 35 2.2 金利の期間構造 2.2.2 金利の期間構造の類型 ・金利の期間構造の表現 ⇒金利の期間構造(yield curve)の傾向は,3つの自由 度で概略表現できる (1)位置(たとえば短期金利の水準) (2)傾き(たとえば長短金利差) (3)曲率(たとえば中短金利差) ⇒これら3つの自由度は,3つの異なる年限の金利水準と, これらを滑らかに結ぶ曲線の関数形によって置き換え られる 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 36 18 2.2 金利の期間構造 2.2.3 金利の期間構造の推移 ・金利の期間構造の推移(1982/01~2007/04) ⇒講義HPの「金利期間構造アニメ」参照 水準(短期金利) 8% 傾き(長短金利差) 6% 曲率(中期金利の乖離) 4% 2% 0% 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 2006年1月 2004年1月 2002年1月 2000年1月 1998年1月 1996年1月 1994年1月 1992年1月 1990年1月 1988年1月 1986年1月 1984年1月 1982年1月 -2% 37 2.2 金利の期間構造 2.2.3 金利の期間構造の推移 ・事実 ⇒日本の短期金利は,過去20年余りの間,低下傾向を 辿ってきた ⇒いわゆる「バブルの発生~崩壊」の時期,短期金利は 低下から上昇に転じた ⇒短期金利と長短金利差には,逆相関の傾向が認めら れる(両者の相関係数は-0.56) ⇒長短金利差がマイナス(逆イールド)の時期は,短期金 利の上昇期(金融引締め期)に生じている (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 38 19 2.2 金利の期間構造 2.2.3 金利の期間構造の推移 ・(つづき)事実 ⇒曲率(中期金利-長短金利を結んだ直線からの乖離) は,ほぼゼロ近辺で推移しているが,プラス(期間構造 が凸)の期間が過半を占める ⇒傾きと曲率には,順相関の傾向が認められる(両者の 相関係数は0.62) ⇒期間構造の「変動性」は,短期金利の変動と長短金利 差の変動によってほとんど説明される(曲率の寄与は 小さい) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 39 2.3 金利と債券投資の整理 2.3.1 金利と債券 ・金利は,個人の異時点間の消費配分に影響を与 える ・金利は,経済全体の総生産と総消費が(将来に亘 って)均衡するように市場で決定される ・金利は,「将来のある時点における1円」の現在価 格を裏返したものである ・債券は幅広い種類の証券を含むが,狭義には確 定支払(fixed income)証券を指す (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 40 20 2.3 金利と債券投資の整理 2.3.2 金利と利回り ・金利は,経済全体に関して定められ,現在から見 た将来時点(年限)の関数になる ・利回りは,個別の債券に関して定められ,個別銘 柄の関数になる ・利回りの計算方法は複数存在し,計算方法によっ て,同じ銘柄でも利回りが異なる ・金利は,同じ年限の割引債の利回りとして定義で きる (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 41 2.3 金利と債券投資の整理 2.3.3 割引債と金利の期間構造 ・割引債の価格とその利回りは一対一に対応してい る ・全ての年限の割引債の価格が分かれば,市場金 利の期間構造(yield curve)を知ることができる ・また,この場合,あらゆる確定支払証券の価格は, 適当な年限の割引債価格の加重和として一意に 評価できる(無裁定条件に基づく) ・金利の期間構造には一定の傾向が存在する (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 42 21 2.3 金利と債券投資の整理 2.3.4 金利の期間構造の特徴 ・金利の期間構造を yield curve として表現すると, 通常は右上がりの凹関数になる(順イールド) ・一方,稀に右下がりの凸関数になることもある(逆 イールド) ・金利の期間構造は,位置,傾き,曲率の3要素で 概ね表現できる ・金利の期間構造の変動は,位置の変動(平行移 動)によって大部分説明できる (つづく) 2012年度「ファイナンス」資料(中島英喜) 43 22
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