楚人冠邸 田 中 貞 雄 月 の 日 射 し 古 文 書 棚 に 爆 ず ン 楚 人 冠 庭 を 陣 取 る 蕗 の 薹 二 春 呼 ん で ゐ る 空 打 ち の 花 鋏 一 冬 を 凌 ぎ し 芭 蕉 無 量 光 雪 解 風 や に は に 筑 波 山 見 た し 手賀沼の冥さを秘めてうすごほり 温 み だ し 言 問 ふ や う に 漣 す 我孫子杉村楚人冠邸 波見ゆ冬晴れの 「o 筑 o 洪いなる空に 楚人 冠」の句碑あり 鳥居おさむ 田 中 貞 雄 五月の句 桃咲くとわが影濃しや多摩郡 お さ む (句集『体内時計』より昭・ 年作) 貞 雄 (句集『田越川』より 昭・ 年作) つばめ来て湖の際より畝起す 51 58 ろんど集Ⅰ・Ⅱ作品抄 な に 我 ゑ が や 身 同 の 窓 鬼 会 は の 追 春 田 中 貞 雄 選 ル 泉 玲 欣 華 也 岸 本 幸 近 藤 と も ひ ろ 子 ー ず 小 藤 洋 ヨ せ り 佐 瀧 シ 出 け て 小 ひ き け 道 届 つ か む 杉 に 寄 る や つ ん つ ん 春 の こ ゑ あ 外 光 は 春 鬼 に へ 棚 子 荷 の 菓 づ 川 崎 か ず え 先 に 桑 名 さ つ き の 屋 和 し 稲 深 お 雪 群 白 真 の 夜 の 影 朝 の 一 誉 子 て 巻 孝 し う 鶴 本 に 失 磨 山 心 見 達 か 一 仙 雪 し な の 水 い か る 鶴 原 妙 関 元 子 山 本 エ リ カ の 野 来 畑 も 吉 鳥 ん る す 小 か け ま や み か 立 し 所 定 い 木 座 場 剪 追 冬 御 居 て 笑 も の 陀 の り 今 ち 雷 弥 い な 図 み の に 老 と 気 春 爆 は ー 天 氷 縁 ナ く 南 ー 遺 オ 有 り の 己 を か づ し 以 シ て ラ 魑 ノ 魅 と 魍 同 魎 初 湯 か な 川 南 隆 佐 藤 い づ み べ 道 石 倉 千 賀 子 先 白 獣 か 息 ろ 道 た 子 た 近 江 節 英 り 浮 の 儺 新 江 文 破 体 雪 追 り 入 村 土 の を な 薹 川 見 後 字 と の う う 課 の 鼻 蕗 や い こ 放 じ る も の 見 際 と の 香 往 ち 弘 ぎ の 焼 い 夕 藤 な 万 佐 一 歩 つ の 高 の を 月 ぬ 山 る 手 二 り 里 返 道 む を づ 福 島 し げ 子 冴 間 ざ て 愛 寒 を え 夫 雪 め ね 草 増 和 子 の 委 冬 の 辺 和 根 の 鰆 欲 渡 澤 球 梅 ゆ て 小 幡 喜 世 子 黄 影 く の 波 底 の に 川 き っ 人 日 下 部 亞 こ 相 恵 撒 と 豆 鬼 ぐ な 二 ろ 民 鳥 直 こ く な 藤 歩 す そ 老 か 風 斎 木 院 に く ぶ 東 り 並 退 死 紙 さ な を ど の ほ ん 数 れ 柿 け し り 残 の お 母 め や 溜 豆 葉 彰 葉 ろ 福 言 息 木 山 ひ の の 松 骨 土 ひ 反 産 か や づ 耕 神 春 洋子 ろんど集Ⅰ・Ⅱ作品鑑賞 小瀧 かむ杉とは「かみすぎ(神杉) 」のこと。辞書で確かめると「みもろの神 かむ杉に寄るやつんつん春のこゑ 田 中 貞 雄 選 の強い感動の措辞から、一声を風靡した映画『君の名』のヒロインが着用し 近藤ともひろ た斬新な「真知子巻き」を連想したりして、往時を懐かしんでいる。 「福は内鬼は外」は節分における一般的な掛け声である。 「鬼は外」には、 鬼 は 外 我 が 身 の 鬼 は 追 ひ 出 せ ず 一家に降りかかる諸々の禍をもたらす鬼を外へ追い払う願いが込められてい ある。地域の宮にも注連縄を張られた杉を見掛ける。深閑とした一宮の神杉 る。この句の「我が身の鬼は」は、自分の中の固定観念や気づかない悪習な のかむすぎ」(万葉集)の例示があり、 「神杉・斎杉」と崇められる御神木で に近づき耳を傾けていると、風の音、揺れる葉の音に混じって鳥の囀りや己 どを言うのであろう。心の中に巣食う鬼退治をないがしろにして、一家の主 小泉 欣也 の鼓動音が小気味よく聞こえ、そんな諸々の声を春の声と感じられたのであ ろう。今年は異常気象で梅や河津桜の開花が遅れたので、歯切れ良い擬音語 たる思いで共感している。 和 菓 子 屋 の 棚 に 春 光 届 き け り しゃれの一具であるが、この句は、 「ああ!なんとすばらしい春ショールな るような気がしないでもない。春ショールは婦人の肩掛けで、春を楽しむお で季節感が溢れるものもある。そんな菓子類が並ぶ老舗に柔らかく暖かく、 に種類が多い。そして、日本的なきめ細かさを表現されていたり、見るだけ ぎや餅類の生菓子、最中や羊羹等の半生菓子、煎餅に代表される干菓子と実 今更、句意を説明するまでもないわかりやすい句である。和菓子は、おは 人として追儺の役目を果たしているところに、我が身を振り返りながら忸怩 幸 が春の到来を待ち佗びていた気持ちを高めている。 岸本 同窓会はとても楽しい。だが、女性はどんな服装で参加するか大変迷うそ あ な に ゑ や 同 窓 会 の 春 シ ョ ー ル のであろうか」と、ショールを眺めながら感嘆の声を発しているように受け どんどん日脚が伸びる春の陽光が差し込んでいるのである。そんな和菓子屋 取れるので、豪華なものか、若しくは作者の好みと合ったものなのであろう。 が、町の衰退や洋菓子の普及に押されて、廃業を余儀なくされている。子ど うである。そんな話を耳にすると、同窓会は、おしゃれを見せ合う場でもあ こ こ で は、 そ の 詮 索 は 別 に 譲 る こ と と し て、 こ の 句 を 一 読、 「あなにゑや」 玲華 もの頃通った我が町も隣町の店もいつの間にか店代わりして、寂しい思いを している。 佐藤 冬 木 立 追 い か け る も の 見 失 う 桑名さつき 「追いかけるもの」の形体は句の表現からは読みとれないが、仕事のこと 趣味のことその他、詮索し出すと切りがないが、いずれにしても、追いかけ ても、追いかけても追いつけないものがある。だが、夢中になって追いかけ ている時が一番幸せであり、それらの目標を失ったときの寂寥感は想像する に難くない。そんな心象を、葉を落とした木が真っ直ぐに枝を伸ばして、天 今年の雪国の降雪の異常さは、テレビ画面をとおして、ただ傍観するだけ 雪 深 し 先 づ お 稲 荷 へ 道 つ け て であるが、屋根の雪降ろしをはじめ、きりがない除雪作業を見るたびに、現 鶴巻 誉白 テレビ各局は天気予報報道に専任の気象予報士を配置して力を入れてい よいが、雪達磨マークの方がよりわかりやすい。 春 の 雷 真 夜 の 遺 影 の 笑 い し か 山本 孝子 春雷は春の使者である。夏の雷と比べていくつも鳴らないので、気が付か ないときがあるが、軽い余震同様、少しでも轟きに気が付くと独特な情感が の句は、天気予報のマークに着目したところがユニーク。雪の結晶マークも る。また、その予報図も年々ビジュアル化されわかりやすくなっている。こ み ち の く の 天 気 図 今 朝 も 雪 達 磨 を指しているが、どうしても届かない 「冬木立」 の季語に託しての訴えである。 地では言葉では言い表せないほどの凄まじさであろう。そんな中、 この句は、 稲荷への参道を優先して除雪しているのである。この稲荷は、屋敷の裏や敷 川崎かずえ 地に付属した山林などに祀られている屋敷神と解し、いちばんに除雪するの は、家風や先祖の恩を受け継いでいる営みなのであろう。 水 仙 の 一 心 に し て 一 群 に 水仙は崇高とか自己愛と言った花言葉で知られるが、寒気の中で眼を見開 き凛々しく咲く姿は清楚である。この句は「一心にして一群に」の表現から、 群落の水仙がこころを一つにして咲いている姿を詠まれたのであろう。やや うつむきがちの花の高さや花冠の向きなどが目に映る。そして、かつて訪れ た越前岬、淡路島、南房総の水仙の群落地を振り返ると、水仙の群落には海 浜地域が育ちやすいのかもしれないと感じている。 働く。この句は静まりかえった真夜の雷に、ふと、欄間に眼をやると、遺影 妙 が微笑んでいたとの感覚的な句である。雷、遺影のどちらが誘因したのか興 鶴原 味深いが、いずれにしても作者へ励ましの行為のような気がする。 氷 爆 に 弥 陀 御 座 し ま す 吉 野 か な 下五「吉野かな」から、映像で見た奈良県吉野郡川上村の二段になって流 れ落ちる「御船の滝」を想像した。この滝は氷瀑すると文殊菩薩を現し、知 恵を授ける滝と伝えられているが、この伝承を踏まえての発想であることは 間違いなさそうだ。この句は仏の名は異なるが、 「御座します」の尊敬の意 元子 味を含む動詞によって聖地吉野の讃歌の句には代わりがないので、作者が弥 関 陀(阿弥陀)と捉えたことについては、追求することはないであろう。 南 縁 は 老 い の 居 場 所 や 小 鳥 来 る 作者は卒寿を越えたろんど会員の最高年齢者である。農作業に精を出しな がら、加齢を感じさせない句に励まされる思いで、度々作品抄に取りあげ紹 介して来たところである。この句も作者らしい句で、家族が居ても家庭の中 で居場所がないと嘆く高齢者が多い中、自分の居場所をしっかり確保してい 山本エリカ るのである。「小鳥来る」の季語の捉え方も若々しい。小鳥来る頃の日本の 空は美しい。 オ ー ナ ー と な り て 勢 定 み か ん 畑 果樹、野菜、棚田をはじめ多くのオーナー制度がある夏産物の場合、日頃 の管理は園主が行い、オーナーは農作業を体験しながら、収穫時に生産物を 受ける仕組みである。作者は、よく孫俳句を詠まれるので、孫のために、今 道 獣 道 春、はじめてオーナーになったのであろう。まだ、寒さが残る中、収穫を楽 しみに剪定にいそしむ花鋏の音に喜びを感じる。 ○共鳴句 近 川南 隆 の 有 り 体 の 己 を 浮 か べ 初 湯 か な 雪 佐藤いづみ の 後 石倉千賀子 息 白 し シ ラ ノ と 同 じ 鼻 と な り 先 づ 以 て 魑 魅 魍 魎 の 字 を 追 儺 課 新江 たか 放 入江 節子 川村 文英 と 見 こ う 見 土 破 り た る 蕗 の 薹 寒 夕 焼 い の ち の 際 の い ろ も や う 一 革命の難問繙く多喜二の忌 七日粥戻り来るかも椅子の子は 初障子座敷童の指の穴 ワイングラス試飲に光り春隣 春の気を木々へ花へと今日の雨 ともがらと人肌酒に春の色 雪降るふる白一色の万華鏡 水鳥の一岸の水温めおり 陽の恵みはにかむように溶ける雪 枯れの中パセリ一鉢買いにけり 眩しめり日を返しくる今朝の雪 佐 藤 美 紀 …陽の光の差し込む雲。雲は時間と共に明るい輝きに満ち溢れる。春立つ日、希望の朝だ。 佐 瀬 晶 子 …物事を根本的に変革することは至難。しかしと考え「繙く」に作者の真実への思いがある。 古 川 忠 利 …ぽつんと空いた椅子。そのうちに戻って来るだろう、七日粥が静かに願いを湛えている。 北 村 淳 子 …真新しい障子に小さな指穴。守り神のおかっぱ頭の可愛い子の仕業となれば家内繁栄の穴。 河 村 啓 花 …高級レストランでのテイストか。グラスに映る光はもう春の色。恋の予感のようでもある。 川 上 久 美 …降るとも見えぬ細やかな春の雨だ。春の気をいっぱいに優しくそそぐ煙る雨、命の讃歌だ。 川 井 秀 夫 …仲間や旧知の友人との中も、そして酒の温度も程よい温みが良い。今宵心の春景色である。 上 家 弘 子 …白一色の世界にキラキラと崩れては又、浮かびくる世界。未だ見ぬ未来が万華鏡のように。 鎌 田 悟 朗 …水鳥たちがその体温で温めている凍てつく水面の一所。小さな命の息遣いが伝わってくる。 鎌 田 慶 子 …一日一日近付いて来た春。雪解けの様をそして陽の慈しみをしなやかに捉えたアニミズム。 金 田 け い し …ひと時の幸せ。命ある日々に感謝し、大切にしている人の輝きがパセリに象徴されている。 加 藤 千 津 …新雪が目を射るような朝だ。輝く銀世界に包まれて雪国の人々の心豊かな一日が始まる。 すずき巴里 一塊の雲立春の日にふくれ 佐 藤 凉 宇 子 …東北人の作品を評しての関西弁の口語が面白い。山椿の素朴ながらの美しさが的確で賛成。 (五月集) 山椿藤沢周平好きやねん す ず き 巴 里 …天災地変、今日は天から霰がばらぱらと。地には元気いっぱいのAKBが跳ねて元気元気。 ろんど第三楽章讃 天より霰地にAKB48 大寒や生きる大地の軋む音 朱の塔の雪華に身なり窶しけり 肩を組む深雪連峰茂吉の地 枝垂れ梅膨らみいまだ正露丸 煮凝や父のゐさうな縁の椅子 枯芭蕉哲人像のごとく立つ 後期高齢笑ふ元気が雪降ろし 初音また妻に遅れてしまひけり 分身の影弾みけり冬麗ら 節分や鬼追ふ闇の底知れず 春月の水より離れ水に浮く 白梅に結ばれてゐる御籤かな 切岸の日を欲しいまま蕗の薹 ポラリスの指針ひとりの春迎ふ 蕗味噌やすなほになつてしまひさう 百歳を目指しすこやか母の春 豪雪や耳掻きほどの雪を掻く 雪に蹴るサッカーボール良寛忌 大西よしき 池 端 英 子 池 内 結 有 本 南 陵 有本惠美子 あかさか鷹乃 吉 田 克 美 山 𥔎 青 史 松 川 悠 乃 増 田 甚 平 福 永 尚 子 西 田 美 ち 中田のぶ子 中 島 讃 良 土 居 通 子 田 中 一 美 竹田ひろ子 園部早智子 …霜柱の音、余震に揺れる目々。今、大地は泣くように坤く様に軋む。大寒が命を確かめる。 …凛と鮮やかな朱色の塔に雪が降ってきたのだ。霏霏と絶え間ない雪の舞は朱よりも美しい。 …連なる山々。山形出身の歌人・医師の斎藤茂吉。肩を組むが里人の茂吉への親しみである。 …思わず笑ってしまった。梅の蕾は黒茶色で本当に正露丸のよう。本当すぎて笑ってしまう。 …煮凝りの色合いは様々なことを思わせる。娘にとり父は永遠の恋人とも言える、懐かしく。 …中国原産の芭蕉。大きな木の枯れた様を哲人のようだという、なるほど、そう見えてくる。 …後期高齢と言われることも笑い飛ばして雪を降ろすど根性。拘りの無い明るさが雪国人だ。 …どちらが先でも良さそうなものだが、妻に遅れたことが癪の種。男の可愛らしさが面白い。 …なんて明るい情景だろう。私の影がスキップしたり。明るい心が楽しい作品を生む力だ。 …追い払った鬼たちにはどんな闇があるのだろう。その先の闇の深さを思いやる。愛の深さ。 …春満月がゆらりと水面を離れ昇ってゆく。空に届いた春月は水に映る姿を見るのだろう。 …どんな内容の御籤だったか、香り豊かな白梅に結んだことですべては明るく成就に向かう。 …断崖の蕗の茎に日が降りそそぐ。寒さを耐えた小さな蕗の薹は今存分に日を浴びて早緑に。 …方角の目印となる星一つ、今からの人生は一人の歩み。よく見れば周りには沢山の春の星。 …人生多少の葛藤があることが味わいだと思っていたのに。素直になんて蕗味噌に負けそう。 …長寿の現代だが百歳は本当に目出度い。朗らかな母を支える一族みんなが尊く健やかだ。 …雪掻きには出てみたものの早々と降参。耳掻きほど掻いたとは豪雪を笑いのけて明るい。 …雪の中でのサッカー。今良寛となって見守る作者の眼差し、元気な声が聞こえるようだ。 俳 句 う 札 幌 れ し ろんど集Ⅲ 節分会 の 加 や 暦 藤 初 千 津 自習室 玉 の 影 の 不 東 揃 京 い つ や 枯 暇 山 惜 水 青 ん 森 の で 寒 鎌 宅 習 牡 室 丹 夫 田 配 慶 子 金 田 け い し 自 妨 げ る も の な き 空 や 寒 に 入 る 繭 枯 れ の 中 パ セ リ 一 鉢 買 い に け り 寒 林 や 骨 格 し か と 天 に 立 つ 待 一 む ら の 木 賊 の 節 に 雪 降 れ り 客 寸 水 仙 の 匂 え る ま ま に 暮 れ に け り 路 余 寒 悪 雪 太 筆 花 除 雪 車 の 入 れ ぬ 路 に 朝 刊 が の 眩 し め り 日 を 返 し く る 今 朝 の 雪 室 陽 の 恵 み は に か む よ う に 溶 け る 雪 り 雪 に 明 け 雪 に 暮 れ け り こ の 一 日 た 直 せ な い 早 と ち り 癖 余 寒 な お ぎ 窓 枠 に と ど く と 見 ゆ る 雪 の 嵩 す 紅 り 三 十 一 の 文 字 な つ か し や 草 城 忌 轟 音 は 暖 気 の 証 し 屋 根 の 雪 盛 列 島 の 南 を 恋 へ り 雪 に 住 む 思 い 込 み バ レ ン タ イ ン の 昼 下 り の 数 ふ る に は 豆 多 か り し 節 分 会
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