PDFをダウンロード - ドイツ語圏大学日本語教育研究会

会員発表要旨
発表①「『文献講読』の授業におけるポートフォリオ導入の実践報告」
木曽美耶子(ハンブルク大学アジア・アフリカ研究所日本学科ティーチングアシスタ
ント/神戸大学大学院人文学研究科研究員)
外国語教育において、自律的に学習を進める力を身に付けるためには、学習者が自分の学習
をふり返り、自分に何が足りないかを自覚し、新たな課題を見出すことが重要であると言わ
れている。発表者は、ハンブルク大学日本学科において 1 年間ティーチングアシスタントと
して活動し、その中で「文献講読」の授業(7 ゼメスター対象)の自律学習支援としてポー
トフォリオの導入を試みた。授業は現代日本語の短編小説を使用教材とし、毎回 2 名の学習
者がティーチングアシスタントと相談の時間を設け、発表の準備をしたうえで授業を進行す
る方法が採られた。ポートフォリオは、①授業を始める前の目標、②発表準備の記録、③発
表のふり返り、④授業が終わった時の自己評価の合計 4 つのシートで構成された。
本発表では、まず、「文献講読」の授業の概要とポートフォリオの導入に至るまでの過程に
ついて紹介する。次に、ポートフォリオの目的と内容について述べる。さらに、実践結果を
まとめたうえで得られた成果を報告し、最後に今後の課題について考察する。
----------------------------------------------------------------------------発表②「中級日本語学習者の文章のわかりにくさの要因」
加藤由実子(ハイデルベルク大学日本学科)
日本語学習者は中級になると、多様な文型や表現を駆使して、ある程度のまとまった文章が
書けるようになる。しかし、その文章には、読み手の理解を妨げる、わかりにくい部分があ
ることが多い。本発表では、ドイツ語を母語とする中級の学習者が書いたあらすじの説明を
例に、不適切な主語省略や主語交替、不自然な視点転換などの、文章をわかりにくくさせる
要因を考察する。また、教授上の問題についても考える。
----------------------------------------------------------------------------発表③「日本での CEFR 受容-多言語教育と能力記述文について」
アレクサンダー・イミック(中京大学国際教養学部)
本発表ではまず日本における CEFR 受容について自分の経験を含めて概説する。日本のドイ
ツ語教育分野において、CERF は主に「研究対象」として受容されている。それとは対照的
に、日本の英語教育では広範な CEFR 受容が見とめられる。本発表では特に CEFR-J と Japan
Association for Language Teaching FLP(Framework and Language Portfolio)における分野別研究部
会の活動について紹介したい。
(発表の URL:http://www.geocities.jp/dlinklist/DE/Forschungen/JaH2015.html)
1
内容
1.
2.
3.
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5.
イントロダクション:CEFR と経歴
英語の CEFR 受容
CEFR とドイツ語教育
CEFR の有り方?
結論と活動
尺度:聴衆の前での講演 (p64), adressing audiences (p60),
(独) vor Publikum sprechen (S. 66)
(能力)記述文
コメント
C2
話題について知識のない聴衆に対しても、自信を
持ってはっきりと複雑な内容を口頭発表できる。
聴衆の必要性にあわせて柔軟に話を構造化し、変
えていくことができる。
C1
複雑な話題について、明確なきちんとした構造を持
ったプレゼンテーションができる。補助事項、理
由、関連例を詳しく説明し、論点を展開し、立証で
きる。
はっきりとした、体系的に展開したプレゼンテー
ションができる。重要な要点や、関連する捕捉と
なる詳細に対して焦点を当てることができる。
B2.2.
B2.1. 事前に用意されたプレゼンテーションをはっきりと
B1
A2.2.
行うことができる。ある視点に賛成、反対の理由を
挙げて、いくつかの選択肢の利点と不利な点を示す
ことができる。
自分の専門でよく知っている話題について、事前に
用意された簡単なプレゼンテーションができる。ほ
とんどの場合、聴衆が難なく話しについていける程
度に、はっきりとしたプレゼンテーションをするこ
とができ、また要点をそこ正確に述べることができ
る。
自分の毎日の生活に直接関連のある話題につい
て、短い、練習済みのプレゼンテーションができ
る。意見、計画、行動に対して、理由を挙げて、
短く述べることができる。
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2
発表④「KanjiKreativ E 学習が開く漢『文』字学習への道 ― 母語 L1 教育の陥穽から脱し
『外国語としての日本語 L2 教育者』に必須知識の『常用漢文字体系性』を知る」
山田-ボヒネック頼子(European Institute for Japanese Language Education e.V. 代表)
発表動機: 国研 NINJAL Forum 第 8 回は 2014.9.21 に「世界の漢字教育 日本語漢字をまな
ぶ」と題名し、一橋大学講堂に 400 名余の聴衆を集め、基調講演加納千恵子筑波大学教授
「日本語教育における漢字学習の支援方法 – 漢字の面白さと難しさを考える−」に続けて、
日本語第二言語学習界の世界的成功者 5 名の各講演を呈示した。本稿執筆者は 当該フォーラ
ムに参与すべくベルリンより 4 泊 6 日で日本へ行き、21 世紀 CIT 時代の日本・ドイツ・欧
州・世界の日本語教育界の時代趨勢を読む中、自他第二言語習得実践研究、分けても「漢字
教育」領域での成果をドイツ語圏内高等教育の日本語授業に活かすための諸条件を検討し、
本稿発表の構想を立てた。下記はその構想の論理的筋道である。JaH 会員・名誉会長として
同領域に関し後進への指針の一環を提供できれば幸いである。
発表企画案:
キーワード: KanjiKreativ, 漢文字体系性, 意符・音符, 原子>分子>漢字, kanjizuki.de
1. 時代把握:国研 NINJAL 第 8 回フォーラム
http://www.ninjal.ac.jp/event/public/forum/ninjalforum008/「世界の漢字教育」という発想
— 21 世紀 CIT 時代の「外国語としての日本語 L2 教育」
2.
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6.
現状把握: 学習者側の「五里霧中」感と授業者側の焦燥感 ― L1 教育の陥穽
所謂「漢字教育」とは?:「2000 文字 vs. 20000 語彙」に見る伝統的思考誤謬
L2 教育への脱却: 漢文字体系性 —「意符・音符」という「原子」の記号構造
「漢字文法」論:A. Martinet 言語二重分節論で読み解くヒトの記号駆使能力*
KanjiKreativ:「原子>分子>漢字」の独学自主的漢文字学習法の効能 — ベルリン自
由大学 BA 第 IV 史学/文化学学部 ABV(一般職業準備講座)Blended-Learning 実践(1
学期間で全常用漢字 1945 文字を習う)を焦点に
7.
近・中未来の展望・展開: KanjiKreativ 漢文字から漢語彙学
習へ ― JDZB(成人教育)「新聞 1000 漢字講座」実践から誕生
し た S.Labis&Co. オ ン ラ イ ン 漢 字 ・ 漢 語 彙 学 習 サ イ ト
“Kanjizuki.de“
* Cf. A.マルティネの言語二重分節論と「漢字文法」に見る並行
性
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