11.電子の比電荷 e/m の測定 実験の概要 右図のような実験装置の真空管の z 方向 に電圧 V を加えて電子を発射すると,電子は z 2 質量 m に依存した eV=1/2(mv )の運動エネル ギーをもち,z 方向に直線運動を行なう.一 y ガラス製の真空管 方,装置のコイルに電流 I を流し磁場 B を y x 方向にかけると,電荷 e 依存して運動方向に 常に垂直な,F=evB のローレンツ力が x 方向 に働く.F=mv2/r= evB の関係式が成り立つよ うに,V,I を設定すると,電子は半径 r の円運 動をはじめるので,円運動をしている電子 線の軌跡から r とその時の I,V を測定するこ とで,以下の式から電子の質量と電荷の比 装置の概要 e/m を測定する. 2V B 2r 2 e/m = B = (4 / 5) U 0 NI / R 3/ 2 式(1) V:加速電圧 [V] I:コイル電流 [A] r:電子軌跡の半径 [m] 式(2) U0:真空管の透磁率=4π10-7 [H/m] N:ヘルムヘルツコイルの巻数 130[回] R:ヘルムヘルツコイルの半径 0.15[m] 実験装置 e/m 測定実験器 電圧計 電流計 電源装置 実験方法 (1) 真空管用電源装置の電源スイッチ を ON する. (2) 真空管用電源装置の電圧調整ツマ ミを時計回りに回し,電圧計で確認 しながら,加速電圧 V を 150~300V の範囲で調節する.実験では 300V 端子に接続しているので,1 目盛り は 2V である.電圧を読む場合は,最 少目盛りの 1/10 の 0.2V 刻みで 読み取りを行う. (3) 実験前に, 必ず教員に目盛りの位 208.6V 置を調整してもらうこと。学生は絶 対に目盛を動かさないこと! (4) 電源装置の電源を ON にする.同時 に,隣にある直流・交流切替スイッ チが DC 側に倒れている事を確認す る.電源装置の電流調節ツマミを時 計回りに回す. (5) (4)の電源のつまみを回すことで, コイル電流 I を測定している電流計の 針が振れるのを確認する.電流計は3A 端子に接続しているので,1 目盛りは 0.02A である.電流値を読む場合は,最少 目盛りの1/10 の 0.002A 刻みで読み取 りを行う. (6) コイル電流 I を増加させていくと, 直線だった電子線が次第に曲り,さらに コイル電流Iを大きくすると,電子軌跡 が円を描くようになる.コイル電流Iの 強弱によって電子軌跡の直径が変化す ることを確認する. 左図の電流値の読みは 1.396A 指標をビーム正面にセットし たら,片目をつぶり,頭を左右に 振って,目盛り版がビームの正面 に来ているか確認する.右に正し い読み取り例と,角度をつけて読 み取ってしまった悪い例を示す. (7) 8.01cm 電子軌跡に指標を合わせ,電子軌跡の直径を測定する.目盛り板の1目盛は 2mmなので,0.2mmの精度で軌跡 の直径を読み取る.なお読み取りの際は,片目で目盛りを正面から読むこと. (8) まずは V=180.0[V],I=1.35[A]の条件で電子軌跡の直径を測定し,それらの値を式(1),(2)に代入して e/m の値をもと める.求めた実験値を式(3)に代入し最初の実験結果を計算したら, 教員に報告して指示を受ける. 最初のデータの計 算結果を教員に報告せず, やみくもに実験するとすべて再実験となる可能性があるので注意すること。ただ基本的 には実験誤差が 5%以内であったら,(1)~(7)の手順で電圧一定,電流一定条件でそれぞれ 10 回ずつ加速電圧V,コ イル電流Iを変化させ,電子軌跡の直径 2r を測定し 20 回 e/m の値を求める. 測定例としては,加速電圧V=180V 一定でIを 1.35A 付近から 0.05A 刻みで変化させて 10 回測定,コイル電流I=1.60A一定でVを 190V 付近から 10V 刻みで変化させ 10 回測定する.なお上記測定の際には,3 名編成の班は 10 回の測定あたり 1 名 3 回以上,4 名編 成の班は 1 名 2 回以上測定を行い,V 一定と I 一定の条件での測定者による計測値の変化を記録する. (9)全ての測定が終了した時点で,電源装置の電流調節ツマミを反時計回りいっぱいに回し、コイル電流Iを0にし て,電源を切る.同様に真空管用電源装置についても,電圧調節ツマミを反時計回りいっぱいに回し,加速電圧V を0にして,電源を切る. 実験及びデータ整理に使う公式等 e/m の実験式 2V e/m = B 2r 2 V:加速電圧 [V] 式(1) r:電子軌跡の半径 [m] B = (4 / 5) U 0 NI / R 3/ 2 e/m 文献値 I:コイル電流 [A] U0:真空管の透磁率=4π10-7 式(2) 1.758820174×1011 [C/kg] [H/m] N:ヘルムヘルツコイルの巻数 130[回] R:ヘルムヘルツコイルの半径 0.15[m] 理科年表第 78 冊,物 11(357),2005 より 実験誤差 実験値の計算値または文献値からの誤差. 実験誤差= 実験値 − 文献値 × 100 文献値 [%] 通常は数%程度の値を取る. 式(3) 相対誤差 間接測定によって求められる測定値が,間接測定による読み取り誤差により理論上発生すると考えられる誤差. 通常は 2%以内になる. Δe / m ⎡ ΔV ΔI Δr = ⎢ + 2 +2 e/m I r ⎣ V ⎤ [%] ⎥ × 100 ⎦ 式(4) 11 e/m 表1 実験結果1 e/m 測定結果 回数 測定者 V I 2r r e/m 実験誤差 相対誤差① 相対誤差② [v] [A] [cm] [10-2m] [1011C/kg] [%] [%] [%] 1 加 2 速 3 電 4 圧 5 V 6 一 7 定 8 9 10 11 コ 12 イ 13 ル 14 電 15 流 16 I 17 一 18 定 19 20 20 回平均値 注)相対誤差①は最少目盛りの1/10 まで桁を読み取ったと考えた理想状態の相対誤差 相対誤差は②は現実的な読み取り桁を考えて計算した相対誤差 ΔV:電圧の最小目盛り 2[V]→理想の最少読み取り桁 0.2[V]→現実的な読み取り桁→1[V] ΔI:電流の最小目盛り 0.02[A]→理想の最少読み取り桁 0.002[A]→現実的な読み取り桁→0.01[A] Δr:電子軌跡の最小読取値 2[mm]→理想の最少読み取り桁 0.2[mm]→現実的な読み取り桁→1[mm] 実験値の 20 回平均 実験誤差の 20 回平均 ×1011 [%] 相対誤差①の 20 回平均 [%] 相対誤差②の 20 回平均 [%] [C/kg] e/m 実験結果 2 11 表 2 測定値の最小測定単位と有効数字→表1の 2 行目の測定値を例に V I r 0.2V 0.002A 0.2mm 測定値(例) 最小測定単位 有効数字 よって実験により算出される有効数字は 桁 ただし測定は 20 回平均なので,最終的な有効数字は 桁(10 回以上の測定で有効数字は 1 桁上がる) 相対誤差の算出(表1の 2 行目の測定値を例に) Δe / m ⎡ ΔV ΔI Δr ⎤ =⎢ +2 +2 × 100 e/m I r ⎥⎦ ⎣ V 式(4) 相対誤差① 相対誤差② ΔV = ∴ % V ΔV = V ΔI 2 = I ∴ ΔI % 2 = I Δr = 2 r ∴ % 相対誤差① [%] 相対誤差② [%] 2 Δr = r 課題 (1) 相対誤差の各測定項をそれぞれ求め,どの項の誤差が一番大きいか述べよ. (2) 実験誤差と相対誤差を比較し,誤差の原因について考察せよ. 考察 その他分かったこと,さらに調べた事があれば記せ. ∴ % ∴ % ∴ %
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