高分子電解質膜内部のプロトン輸送メカニズムに関する分子論的解析

高分子電解質膜内部の
プロトン輸送メカニズムに関する分子論的解析
E-Mail: [email protected]
Tel/Fax: +81-22-217-5292
○馬渕 拓哉(工学研究科),徳増 崇(流体研)
結果と考察
背景
固体高分子形燃料電池(PEFC)
プロトン拡散
電解質膜内の構造
拡散係数
10
主鎖
水クラスター
(直径数 nm)
側鎖
実験値と
良い一致
2
DH+ [cm /s]
アインシュタインの関係式を用いて,平
均二乗変位[r(t)-r(0)]2の傾きより拡散係数
Dを求めた.
-5
1
2
D  lim
rt   r0
t  6t
10
-6
1
10
Exp.
2
Exp.
Simulation (EVB)
Simulation (Classical)
-7
0
1.
2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24
Water content 
Ochi et al., Solid State Ionics 2009, 180, 580. 2. Zawodzinski et al., J. Phys. Chem. 1991, 95, 6040.
Grotthuss機構の寄与度
プロトン輸送現象を
理解することが重要
プロトンの変位ベクトルはGrotthuss機構
およびvehicular機構の和として記述する
ことが出来る.
2種類のプロトン輸送機構
2
rH  t   rH  0   r H   r G  r V
1.6x10
D [cm /s]
PEFC
発電効率
プロトン
輸送効率
2.0x10
rH   rH   2 rG  rV
 rG  rG  rV  rV
D′G (Grotthuss)
D′V (Vehicular)
-5
Vehicular
Grotthuss
-5
1.2x10
-5
8.0x10
-6
4.0x10
-6
D’Gが
大きく
増加
0
2
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24
Water content 
λ=3~6において,プロトン拡散が大きく増加.
⇨輸送特性に起因するクラスター構造変化を示唆
クラスター構造解析
目的
クラスターの定義
溶媒分子間距離より水素結合の有無を判断し,クラスター構造を定量的に評価
した.
高分子電解質膜内におけるプロトン輸送特性を
分子動力学法によりナノスケールの観点から解明する
12
3.5 Å
10
gOwOw
プロトン輸送特性を決める支配的要因
膜内部の環境(含水率,温度,圧力)
膜の構造&水クラスターの構造




8
水素結合の分子間
距離 r ≤ 3.5Å
6
4
分子間距離からクラス
ターを分類 (例図)
2
含水率増加に伴う
プロトン輸送と水クラスター構造との相関を解明
0
0
2
4
6
8
10
r [Å]
クラスター分布・平均クラスター数
λ=3
λ=6
Probability
計算手法
バルク溶液中のプロトン輸送
Fitting
計算条件(バルク水)
 560 H2O, 10 H3O+, and 10 Cl T = 298.15 [K]
 P = 1 [atm]
 NPT equilibration (1 ns)
→ NVT ensemble (1 ns)
小クラスターが点在
2.2 (Ab initio)
2.4 (Ab initio)
2.6 (Ab initio)
2.8 (Ab initio)
2.2 (EVB)
2.4 (EVB)
2.6 (EVB)
2.8 (EVB)
Energy [kcal/mol]
40
30
20
Classical
λ=12
10
0
-0.2
-0.1
0.0
0.1
DH+ [10-5 cm2/s] DH2O [10-5 cm2/s]
0.75
2.37
EVB
4.8
2.48
Experiment
7.2
2.3
プロトン拡散係数 → 古典モデルの6.4倍
0.2
q [Å]
計算条件
Nafion鎖
溶媒分子
 (N7P)10→EW=1100
 4 chains
 NH3O+=NSO3-=40
 含水率 λ = 3, 6, 12, 18 (=Nsolv/NSO3-)
Annealing
Density [g/cm3]
N
2.0
1.8
1.4
Annealing
0
Experiment
Simulation
実験値と良く一致
(誤差2%以内)
1.6
0
5
14
10
Water content 
NVT simulations at 300 K
-2
10
-3
10
-4
10
-5
10
-6
10
-7
λ=6で
サイズ
大幅増加
=3
=6
=12
=18
10
無限大クラスターとして安定化
0
10
1
10
2
10
3
Cluster size Sclst
平均クラスター数
20
λ=6で
ネットワ
ーク形成
15
10
5
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
Water content 
クラスターネットワークの形成がプロトン拡散に大き
く影響
2.2
P
10
結論
(H3O++H2O)
Chemical structure of Nafion
-1
ネットワーク形成
(閾値)
60
50
10
Average Number of Clusters
Empirical Valence Bond (EVB)
method
10
クラスター分布
0
15
t (ns)
20
含水率増加に伴いGrotthuss機構の寄与度は大きく増加.
λ = 6 において,水クラスターネットワークを形成.
⇨プロトン拡散増加(特にD’G)に大きく寄与.
この研究は,NEDO委託事業およびJSPS特別研究員奨励費の助成により行われました.ここに厚く謝意
を表します.