名古屋大学地球水循環研究センター 共同研究報告書

別紙様式2
名古屋大学地球水循環研究センター
共同研究報告書
平成27年3月31日
名古屋大学地球水循環研究センター長 殿
申請者(研究代表者)
所属機関 _北海道大学大学院理学研究院
職
__准教授__________
氏名
__稲津 將________
e-mail
[email protected]
下記の共同研究について、別紙の通り報告します。
1 研究課題
「グローバルスケールとメソスケールを貫く気象学」研究集会
2 研究組織
氏名
代表者
稲津 將
分担者
竹見哲也
渡部雅浩
立花義裕
三浦裕亮
堀之内武
上野健一
山田広幸
柳瀬 亘
津口裕茂
福富慶樹
吉田 聡
所属
職
分担研究課題
北大院理
准教授
研究集会の準備
京大防災研
東大 AORI
三重大院生物資源
東大院理
北大地球環境
筑波大生命環境
琉球大理
東大 AORI
気象研
JAMSTEC
JAMSTEC
准教授
准教授
教授
准教授
准教授
准教授
准教授
助教
研究官
研究員
研究員
研究集会の準備
研究集会への参加
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
研究集会への参加・講演
名大 HyARC
准教授
研究集会の準備・参加・講演
センター対応教員
篠田太郎
3 研究内容 (別紙)
別紙
● 研究の目的
現象の時間的空間的スケールの多様性とそのスケール間の相互作用は気象学の本
質である。これまでグローバルスケールの気象学においてはロスビー波力学とハドレ
ー循環という理論的支柱のもとに気候力学解析が精力的に行われてきた。一方、メソ
スケールの気象学においては観測的事例研究によってその多様な動態の解明に重きを
おいてきた。この両者は互いに独立なものではなく、メソスケール現象はグローバル
スケールの状況により挙動が支配される一方、メソスケールの降水システムの集合体
がグローバルスケールの気候形成や気候変動に影響を与えることが多くの先行研究に
より知られている。全球気候モデリングにおいては、積雲による熱や運動量の鉛直混
合、 雲物理過程、境界層過程、および乱流過程などのパラメタリゼーションを通じ
て、スケール間の相互作用を表現してきたものの、パラメタリゼーションの不確実性
はシミュレーション結果の不確実性の大きな要因となっている。従って、メソスケー
ル現象の素過程を理解した上でグローバルスケール気候の課題の解決にあたることが
求められている。
本研究集会では、相互に強く作用し合うグローバルスケールとメソスケールの気
象現象について、観測、統計解析、およびモデリングなど手法を問わず現状の課題に
ついて議論する。メソスケール気象の立場からは、個々の事例解析ではなく、その統
計的な特徴やグローバルスケール現象とのかかわりについての検討を行う。そして、
グローバルスケール気象の立場からは、全球雲解像モデルにおけるメソスケール現象
の再現性や、全球気候モデルにおけるパラメタリゼーションとメソスケール現象との
関係を議論する。グローバル気象とメソスケール気象はそれぞれ独自に発展してきた
分野であるが、このような研究集会を通じて研究内容のみならず人的な交流を展開す
ることも目的とする。
● 研究内容
「グローバルスケールとメソスケールを貫く気象学」研究集会を 2014 年 12 月 25
日(木)と 26 日(金)の 2 日間にわたって名古屋大学環境総合館 3 階講義室 2 におい
て開催した。研究集会では、将来気候実験における海面水温の変化が台風や温帯低気
圧に及ぼす影響や、千島列島周辺で観測された局所的に海面水温が低い領域が大気現
象に及ぼす影響、大気環境場が熱帯低気圧と温帯低気圧の発達に及ぼす影響、顕著な
降水現象が発生した場合の大気環境場の特徴、台風の進路の予測可能性の観点からメ
ソ現象の再現が必要であることなど、多彩なテーマについての講演と質疑が行われた。
● 研究成果・成果発表
研究集会には、大学、研究所など 13 の組織から 27 名の参加者があった。また、総
観規模スケールの気象現象やメソスケールの気象現象に関連する分野より 14 件の講
演があった。本研究集会における講演のタイトルと講演者を以下に示す。
1.海面水温を変えた熱帯低気圧の温帯低気圧化の数値実験
勝部弘太郎*・稲津將(北大院理)
2.夏季オホーツク海の局所的な低水温がもたらす総観規模循環への遠隔影響
立花義裕*・藤田啓(三重大院生物資源)
3.再解析データを利用した総観~メソ α スケール低気圧の気候学的研究
柳瀬亘(東大大気海洋研)
4.客観的追跡手法を用いた冬季日本海上で発生する渦状擾乱発生環境場の統計解
析
渡邉俊一*・新野宏(東大大気海洋研)
5.集中豪雨が発生する総観~メソ α スケール環境場の統計解析
津口裕茂*・加藤輝之(気象研)
6.日本の暖候期における停滞性降水系発生時の環境条件
鵜沼昂*・竹見哲也(京大防災研)
7.雲解像モデルによるダウンスケール実験で再現された期間最大降水量の検証
加藤雅也(名大地球水循環)
8.チベット・ヒマラヤ山域における降水過程に内在するメソスケールと総観場の
相互関係
上野健一*・金子峻也(筑波大生命環境)・杉本志織(首都大学東京都市環
境)
9.メソ気象と総観気象のつながり-予測可能性研究の視点から-
吉田聡*(JAMSTEC)・榎本剛(京大防災研)・山口宗彦(気象研)・山崎
哲・中野満寿男(JAMSTEC)
10.正 20 面体力学コアの高精度化について
三浦裕亮(東大院理)
11.夏季の東アジア・北西太平洋上の降水と水輸送の総観的な変動に対する上部
対流圏の影響
堀之内武*・林歩夢(北大地球環境)
12.インド洋 ITCZ 波動擾乱と中緯度-熱帯相互作用
福富慶樹(JAMSTEC)
13.台風の発生に関わる熱帯波動とメソ対流システム
山田広幸(琉球大理)
14.非静力学大気海洋結合モデル CReSS-NHOES を用いた台風の発達に影響を
及ぼす環境因子の評価
久保圭之・篠田太郎*(名大地球水循環)・相木秀則(JAMSTEC)・吉岡真
由美(東北大大気海洋)・加藤雅也・坪木和久・上田博(名大地球水循環)
●今後の問題点
普段の気象学会では、並行した異なるセッションで発表をしている方々が、同じ研
究会で議論を行うことで、お互いの研究内容についての理解を深められた。全球モデ
ルにおけるパラメタリゼーションの精度について、細かいスケールの素過程を通じて
理解し、比較を行っていく研究は古くから行われているものの、決定的な成果は未だ
出ていない。今回は試みとしてグローバルスケールとメソスケール両分野の研究者を
集めて研究集会を実施し、用語の違いなども含めて交流を図ることに成功した。今後
も、数年間にわたって、このような分野を貫く研究集会を行っていくことで、互いの
研究分野の課題を理解し、新しい研究課題の開拓を目指していきたい。