平成27 年3月 ご連絡先:〒 194-0045 東京都町田市南成瀬 5-29-3 電話/FAX:042-728-4714 e-mail: [email protected] 厚生年金と共済年金の一元化 年金制度のうち、共済年金制度(国家公務員、地方公務員 および私学学校教職員)と一般の厚生年金制度は、保険料 率や給付内容、制度設計が異なっていました。公平性と安定 性の観点から、平成 27 年 10 月より、基本的に厚生年金に統 一し、共済年金と厚生年金の制度差異の解消が図られま す。保険料は、共済年金の1・2階部分の保険料を引き上 げ、厚生年金の保険料率(上限 18.3%)に統一されます。そ ⑤障害給付 保険料納付済期間 して、共済年金の制度にある、公的年金としての職域部分は の支給要件 及び保険料免除期 廃止し、廃止後の新たな年金は、別に法律で定められます。 保険料納付要件なし 間を合意した期間が 3 分の 2 以上必要。 ◆制度としての差異の解消(基本的に厚生年金に揃える) 厚生年金保険 ①被保険 70 歳まで 者の年齢 今後、具体的な内容が決定、知らされることになります。 共済年金保険 年齢制限なし 外国人労働者との労働契約の成否(判例) (私学共済除く) 原告の 28~49 歳のブラジル人従業員 5 人(Xら) ②未支給 死亡した者と生計を同 遺族(死亡した者によ 年金の給 じくしていた配偶者、 って生計を維持してい 付範囲 子、父母、孫、祖父母、 た配偶者、子、父母、 兄弟姉妹または 3 親等 孫、祖父母)、または 内の親族 遺 族 がな いときは 相 続人 ③遺族年 先順位者が失権して 先順位者が失権した 金の転給 も、次順位以下の者に 場合、次順位者に支 支給されない。 給される。 ④老齢給 支給停止の対象となる 退職共済年金受給者 付の在職 のは、「賃金+年金」が が 共 済組 合員 とな っ 支給停止 ・65 歳までは 28 万円を た場合、「賃金+年金」 超えたとき が 28 万円を超えたと ・65 歳以降は 47 万円 きに支給停止の対象 を超えたとき が、被告トゥエンティファースト社(Y2 社)との間で労 働契約を締結し、被告自動車部品メーカーアンデン 社(Y1 社。Y2 社とあわせてY社ら)との間の業務請 負契約(本件請負契約)に基づき、Y1 社の工場で、 違法な偽装請負の状態で働かされたとして、Y社ら に正規雇用の従業員としての地位確認と、未払い賃 金や慰謝料など計約 3,700 万円の支払いを求める訴 えを名古屋地裁岡崎支部に起こしました。(判決は、 平成 26.4.14) ◆地位の確認と慰謝料の請求 Xらは、①Y1 社に対し、本件請負契約は、偽装請 負であり、XらとY1 社との間で黙示の労働契約が成 立していたと主張して労働契約上の権利を有する地 位にあることの確認、月例賃金等の支払いを求め、 また、②Y社らに対し、Y社らが共同で職業安定法の 禁止する労働者供給または労働者派遣法に違反する労 ストレスチェック制度 働者派遣を行ったことにより精神的苦痛を被ったと主張 して、Xらそれぞれについて、共同不法行為に基づき連 労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴 帯して、慰謝料 200 万円等の支払いを求めました。 い、労働者の心理的な負担の程度を把握するための、 ここでの争点は、 医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施が (1)XらとY1 社との間の黙示の労働契約の成否、 事業者に義務付けられることになりました。(平成 27 年 (2)Y社らの共同不法行為の成否 12 月施行) ただ、従業員 50 人未満の事業場について です。 は、当分の間、努力義務となっています。 ◆判決 ストレスチェック制度は、精神疾患の早期発見を行う 争点(1)について、結論としては、黙示の労働契約の ことを一義的な目的としたものではなく、労働者の気づ 成立を否定しました。労働契約は黙示の意思表示の合 きを促し、職場改善につなげる、一次予防を目的にし 致によっても成立するのですが、社外労働者と受入企業 ていて、重要です。 との間に黙示の労働契約が成立するためには、①採用 実施は、次のステップで行います。 時の状況、②指揮命令及び労務提供の態様、③人事労 ① 事業者による方針表明 務管理の態様、④対価としての賃金支払いの態様など ② 衛生委員会での推進の審議 に照らして、社外労働者と受入企業との間に労働契約関 係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その関係 (目的、体制、実施方法、情報の取扱い、結果の保 存、結果提供の同意取得方法、苦情処理) から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合 ③ 労働者に説明 致のあることが必要であるとしました。 ④ ストレスチェックを実施する 本件では、具体的な事実認定により、①Y1 社がXらの採 ⑤ 集団分析 否に決定権限を有していたとはいえない。②Xらの日常 ⑥ 結果通知 的な指揮命令はY2 社が行なっているものと認められ、Y1 ⑦ 高ストレス者対応(面接指導、就業上の措置など) 社の指揮命令に従っていたとは認められない。③配置の や職場改善 変更や有給休暇取得を決定していたのはY2 社であった ストレスチェック制度を実施すると、事業者は、検査 とし、XらとY1 社との間に労働契約を成立させる黙示の 結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面 意思表示の合致があったと認めることはできない、とし 接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いて、必 て、Y1 社に対する地位確認請求および賃金請求をいず 要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他 れも否定しました。また、違反による労働者派遣を行った の適切な就業上の措置を講じなければなりません。注 という点については、最高裁判決を引用して、原告の主 意点としては、ストレスチェックの結果を労働者の同意 張を一蹴しました。 なく事業者に提供してはならないこと、があります。 争点(2)については、XらとY社らとの関係は、仮に本 そして、「ストレスチェックと面接指導の実施状況の 件の請負契約が偽装請負であったとしても、労働者派遣 点検・確認と改善事項の検討」を常に実現することは、 法 2 条 1 号にいう労働者派遣に該当すると解すべきであ どの制度のマネジメントサイクルとも同様です。 り、職安法にいう労働者供給に該当する余地はない、と してXらの主張には理由がないとしました。また、派遣法 ■ 当事務所よりひとこと で定める派遣期間の制限や直接雇用の申込義務に違反 仏教に「抜苦与楽」という言葉のあることを知り して就労継続をしていた点等を理由とする不法行為の成 ました。この語は、さらに「慈悲」となるそうです。、 否については認められないとし、さらに、Xらが精神的苦 が、自分は「与苦抜楽」になっていないかと、気に 痛を被ったと主張した点についても否定しました。 なっています。ところで、待ちに待った花の季節と こうして、Y1 社から直接雇用の申込みを受けられると いうXらの期待は、崩れてしまいました。 なりました。みんな明るく健康でありたいです。
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