2015年 3月

平成27 年3月
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厚生年金と共済年金の一元化
年金制度のうち、共済年金制度(国家公務員、地方公務員
および私学学校教職員)と一般の厚生年金制度は、保険料
率や給付内容、制度設計が異なっていました。公平性と安定
性の観点から、平成 27 年 10 月より、基本的に厚生年金に統
一し、共済年金と厚生年金の制度差異の解消が図られま
す。保険料は、共済年金の1・2階部分の保険料を引き上
げ、厚生年金の保険料率(上限 18.3%)に統一されます。そ
⑤障害給付
保険料納付済期間
して、共済年金の制度にある、公的年金としての職域部分は
の支給要件
及び保険料免除期
廃止し、廃止後の新たな年金は、別に法律で定められます。
保険料納付要件なし
間を合意した期間が
3 分の 2 以上必要。
◆制度としての差異の解消(基本的に厚生年金に揃える)
厚生年金保険
①被保険
70 歳まで
者の年齢
今後、具体的な内容が決定、知らされることになります。
共済年金保険
年齢制限なし
外国人労働者との労働契約の成否(判例)
(私学共済除く)
原告の 28~49 歳のブラジル人従業員 5 人(Xら)
②未支給
死亡した者と生計を同
遺族(死亡した者によ
年金の給
じくしていた配偶者、
って生計を維持してい
付範囲
子、父母、孫、祖父母、
た配偶者、子、父母、
兄弟姉妹または 3 親等
孫、祖父母)、または
内の親族
遺 族 がな いときは 相
続人
③遺族年
先順位者が失権して
先順位者が失権した
金の転給
も、次順位以下の者に
場合、次順位者に支
支給されない。
給される。
④老齢給
支給停止の対象となる
退職共済年金受給者
付の在職
のは、「賃金+年金」が
が 共 済組 合員 とな っ
支給停止
・65 歳までは 28 万円を
た場合、「賃金+年金」
超えたとき
が 28 万円を超えたと
・65 歳以降は 47 万円
きに支給停止の対象
を超えたとき
が、被告トゥエンティファースト社(Y2 社)との間で労
働契約を締結し、被告自動車部品メーカーアンデン
社(Y1 社。Y2 社とあわせてY社ら)との間の業務請
負契約(本件請負契約)に基づき、Y1 社の工場で、
違法な偽装請負の状態で働かされたとして、Y社ら
に正規雇用の従業員としての地位確認と、未払い賃
金や慰謝料など計約 3,700 万円の支払いを求める訴
えを名古屋地裁岡崎支部に起こしました。(判決は、
平成 26.4.14)
◆地位の確認と慰謝料の請求
Xらは、①Y1 社に対し、本件請負契約は、偽装請
負であり、XらとY1 社との間で黙示の労働契約が成
立していたと主張して労働契約上の権利を有する地
位にあることの確認、月例賃金等の支払いを求め、
また、②Y社らに対し、Y社らが共同で職業安定法の
禁止する労働者供給または労働者派遣法に違反する労
ストレスチェック制度
働者派遣を行ったことにより精神的苦痛を被ったと主張
して、Xらそれぞれについて、共同不法行為に基づき連
労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴
帯して、慰謝料 200 万円等の支払いを求めました。
い、労働者の心理的な負担の程度を把握するための、
ここでの争点は、
医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施が
(1)XらとY1 社との間の黙示の労働契約の成否、
事業者に義務付けられることになりました。(平成 27 年
(2)Y社らの共同不法行為の成否
12 月施行) ただ、従業員 50 人未満の事業場について
です。
は、当分の間、努力義務となっています。
◆判決
ストレスチェック制度は、精神疾患の早期発見を行う
争点(1)について、結論としては、黙示の労働契約の
ことを一義的な目的としたものではなく、労働者の気づ
成立を否定しました。労働契約は黙示の意思表示の合
きを促し、職場改善につなげる、一次予防を目的にし
致によっても成立するのですが、社外労働者と受入企業
ていて、重要です。
との間に黙示の労働契約が成立するためには、①採用
実施は、次のステップで行います。
時の状況、②指揮命令及び労務提供の態様、③人事労
① 事業者による方針表明
務管理の態様、④対価としての賃金支払いの態様など
② 衛生委員会での推進の審議
に照らして、社外労働者と受入企業との間に労働契約関
係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その関係
(目的、体制、実施方法、情報の取扱い、結果の保
存、結果提供の同意取得方法、苦情処理)
から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合
③ 労働者に説明
致のあることが必要であるとしました。
④ ストレスチェックを実施する
本件では、具体的な事実認定により、①Y1 社がXらの採
⑤ 集団分析
否に決定権限を有していたとはいえない。②Xらの日常
⑥ 結果通知
的な指揮命令はY2 社が行なっているものと認められ、Y1
⑦ 高ストレス者対応(面接指導、就業上の措置など)
社の指揮命令に従っていたとは認められない。③配置の
や職場改善
変更や有給休暇取得を決定していたのはY2 社であった
ストレスチェック制度を実施すると、事業者は、検査
とし、XらとY1 社との間に労働契約を成立させる黙示の
結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面
意思表示の合致があったと認めることはできない、とし
接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いて、必
て、Y1 社に対する地位確認請求および賃金請求をいず
要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他
れも否定しました。また、違反による労働者派遣を行った
の適切な就業上の措置を講じなければなりません。注
という点については、最高裁判決を引用して、原告の主
意点としては、ストレスチェックの結果を労働者の同意
張を一蹴しました。
なく事業者に提供してはならないこと、があります。
争点(2)については、XらとY社らとの関係は、仮に本
そして、「ストレスチェックと面接指導の実施状況の
件の請負契約が偽装請負であったとしても、労働者派遣
点検・確認と改善事項の検討」を常に実現することは、
法 2 条 1 号にいう労働者派遣に該当すると解すべきであ
どの制度のマネジメントサイクルとも同様です。
り、職安法にいう労働者供給に該当する余地はない、と
してXらの主張には理由がないとしました。また、派遣法
■ 当事務所よりひとこと
で定める派遣期間の制限や直接雇用の申込義務に違反
仏教に「抜苦与楽」という言葉のあることを知り
して就労継続をしていた点等を理由とする不法行為の成
ました。この語は、さらに「慈悲」となるそうです。、
否については認められないとし、さらに、Xらが精神的苦
が、自分は「与苦抜楽」になっていないかと、気に
痛を被ったと主張した点についても否定しました。
なっています。ところで、待ちに待った花の季節と
こうして、Y1 社から直接雇用の申込みを受けられると
いうXらの期待は、崩れてしまいました。
なりました。みんな明るく健康でありたいです。