ディジタル・オーディオのキーワード

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第 13 章
量子化,サンプリングからΔΣ変調まで
ディジタル・オーディオのキーワード
河合 一
基本特性
● 量子化とダイナミック・レンジ
振幅方向への離散化が量子化です.
信号V S [V]を分解能M [ビット]で量子化すると,
量子化ステップ N と量子化ノイズ N q が求まり,これ
により理論的なダイナミック・レンジ DR が決定され
ます.
N q =V S /(N − 1)=V S /(2M − 1)
う)ですが,最近のコンバータ IC では高性能化のため
に量子化器を多値化しているものも多く見られます.
理論特性,すなわち量子化雑音の振幅と周波数分布は,
ΔΣ変調器のステージ数(次数)と動作サンプリング・
レートnf S で決定されます.
ΔΣ変調器のサンプリング・レートには,基準サン
プリング・レート f(
に対して
S 例えば f S = 44.1 kHz)
64f S ,128f S などが用いられています.
SACDでは64 f S の動作サンプリング・レート(44.1 k
× 64 = 2.8224 MHz)
を SACD のサンプリング・レート
と称しています.
量子化された信号のダイナミック・レンジDR はN q
のサイン波に対する分布と電力から計算できます.
DR [dB]= 6.02 ×M + 1.78
これはあくまでもディジタル領域での理論値で,ア
ナログ性能のダイナミック・レンジは,これより悪く
なります.
● サンプリング・レート
時間方向への離散化がサンプリングで,サンプリン
グ周波数のことをサンプリング・レートともいいます.
サンプリング周波数 f S[Hz]と,再生可能最大周
波数f A [Hz]は,
f A = f S/ 2
の関係があります.サンプリング周波数はメディアご
とに標準化されており,その代表的なものは次の通り
です.
● サンプル・レート変換
サンプル・レート変換は,入力サンプリング・レー
ト f S 1 を変換器で出力サンプリング・レートf S 2 に変換
する機能です.これを実行するデバイスはサンプル・
レート・コンバータと呼ばれています.
パソコン内部のオーディオ・コーデックなどでは,
多くの音楽ファイルに対応するためにサンプル・レー
ト変換機能が用いられています.
▶例 1:f S 1 = 44.1 kHz →f S 2 = 192 kHz
D−A コンバータ機器で,内部 D−A コンバータを入
力フォーマット(サンプリング・レート)に関係なく固
定のサンプル・レートで動作させる目的の変換
▶例 2:f S 1 = 96 kHz →f S 2 = 44.1 kHz
スタジオで 96 kHz サンプリングで録音した音楽デ
ータを CD−DA フォーマットのデータにするためマス
タリング工程で変換
●
CD(CD−DA)
:f S = 44.1 kHz
●
DVD
(Audio):f S = 48 k/96 k/192 kHz
●
BS :f S = 32 k/48 kHz
アナログ
信号
加減算器
( )
Δ
積分器
(Σ)
● ΔΣ
(デルタ−シグマ)変調
ΔΣ変調は,現在のオーディオ用 A−D コンバータ
ディジタル
信号
遅延
や D−A コンバータ IC の基本アーキテクチャです.
ΣΔ 変調と呼ばれることもあります.量子化ノイズの
分布をシェープする動作から,ノイズ・シェーピング
とも呼称されています.ブロック図を図 1 に示します.
量子化器は通常 1 ビット(なので 1 ビット方式ともい
量子化器
Z −1
サンプリング・クロック:nfS
図 1 1 次ΔΣ変調器のブロック図
基本特性
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