高速 A−D/FPGA/DSP/DDS 搭載基板を 動かしながらしくみを学ぶ フルディジタル無線& 変復調 実験室 受信部IFフィルタとI /Q データの転送 西村 芳一 1 先月号で,65 MHz でサンプリングされた信号を, CIC などのダウン・サンプリングの手法を用いて,サ ンプリング周波数を 63.477 kHz にまで落としました. 今回は,その先の処理を説明します. 63kHz IF フィルタの設計 フルディジタル無線実験ボード TRX−305 MB の受 信処理では,図 1 のように IF フィルタの定数を変え る こ と で, 選 択 度 を 選 べ る よ う に な っ て い ま す. 30 kHz,15 kHz,6 kHz,3 kHz の 4 種です.CW モー ドの場合は 1 kHz になりますが,DSP の中でさらにフ ィルタリングされて 300 Hz まで狭められます.ここ でも,FIR フィルタを用いてフィルタリングを行って います. 最終的な 31.7 kHz のサンプリングでは,65 MHz の クロックが 2048 サイクル入ります.ですから,2000 タップ近くのフィルタを実装することが可能ですが, そこまでフィルタを急峻にする必要はありません.ま た,それだけ大きなタップ数では,かなり信号遅延が 大きくなってしまいます. この IF フィルタの設計変更を行えば,自由自在に IF フィルタ帯域を変えることができます.また,搭 載されている SH−2 プロセッサの力を借りれば,連続 可変の IF フィルタを実装することも可能です.単に フィルタの係数を変えればよいだけなので,もっとも 簡単に自作できる部分です. 2015 年 4 月号 509タップ FI Rフィルタ 2 31.7kHz ROM 30kHz 1/2 ダウン・サンプリング 63 kHz でサンプリングされた信号は,次にまた半 分のサンプリング速度 (31.7 kHz)まで落とします.単 に 半 分 に 落 と す だ け で は な く,IF (Intermediate Frequency;中間周波数) フィルタとして働きます. Yoshikazu Nishimura ROM 15kHz フィルタの 係数 ROM 6kHz ROM 3kHz ROM 1kHz 図 1 フルディジタル無線実験ボード TRX−305MB は IF フィル タ(1/2 ダウン・サンプリング)の定数を変えることで選択度を調 節できる ■ 係数出し ● 3 kHz 帯域用 509 タップの IF フィルタを作ってみました.帯域は 3 kHz,通過域は 1.25 kHz です.フィルタの係数の計 算は,先月号と同じ Matlab の FDATOOL を使い ました(図 2).私の作った無償版の FIR フィルタ設計 ソフトウェアを使っても求まります. マ イ ナ ス の 周 波 数 成 分 を 合 わ せ る と, 通 過 域 は 2.5 kHz になります.− 100 dB の減衰になる阻止域の 周波数は,1.85 kHz で設計していますから,マイナス の周波数を合わせて 3.7 kHz になります.ちなみに, − 3 dB になる周波数帯域幅は 2.87 kHz です. ▶狭帯域フィルタの問題点…正規化しないと特性が悪 くなる 図 3 に,FDATOOL で設計した 3 kHz の IF フィル タの係数を示します.このフィルタ設計ソフトウェア 189
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