オレオサイエンス 第 15 巻第 6 号(2015) 247 表 彰 第 6 回日本油化学会女性科学者奨励賞 山 崎 律 子 氏 (花王㈱研究開発部門 開発研究第 1 セクター スキンケア研究所) 山崎律子氏は,1993 年に早稲田大学大学院理工学研 の有機系高分子,及び合成ヘクトライトなどの無機系層 究科応用化学専攻修士課程を修了した後,同年花王株式 状 化 合 物 に つ い て, 特 定 の 組 成 条 件 で Shear 会社に入社。一貫して香粧品分野の開発研究に携わり, Thickening/Thinning が起こることを明らかにし,新し 現在は同社スキンケア研究所上席主任研究員,グループ い化粧品の製剤化に活かしました。 リーダーとして活躍しています。また日本油化学会での 活動を通して,モノづくりの礎となる基盤研究について 3 日本油化学会での活動 日本油化学会においても多くの活動をしています。 研鑽して,2004 年には東京工業大学にて博士号(工学) を取得し,早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講 2000 年には日本油化学会定款委員を,また 2001 年 1 月 師,及び東京工業大学高分子工学科・化学工学科非常勤 から 2008 年 3 月までの 7 年間はオレオサイエンス編集 講師として,企業におけるソフトマテリアル研究概要の 委員を務められ,更にその間の 2003 年には非イオン界 講義を行っています。 面活性剤水溶液のレオロジーに関する研究について,日 これまでの主な活動,及び業績は以下のとおりです。 本油化学会サマースクールで講演をしています。特にオ レオサイエンス編集委員では,特集号企画・抄録担当な 1 非イオン界面活性剤水溶液の溶液構造とレオロジー に関する研究(基礎研究) どに加え,インタビューコーナーも担当して,東京理科 大学薬学部の寺田弘先生,慶応大学ビジネススクールの 香粧品が取り扱うソフトマテリアルとして,高分子・ 嶋口充輝先生,参議院議員の加納時男氏(いずれも,イ 界面活性剤・ポリオールなどの多成分が混合する“複雑 ンタビュー当時の役職)など,学術・産業・経済・政治 系”の溶液構造とそのレオロジーについての理解に注力 など様々な分野を牽引している先生方へのユニークなイ してきました。具体的には,香粧品で汎用されているア ンタビューを企画・実施しました。そういった情報発信 ルキル基修飾ポリエチレングリコール水溶液にゲスト化 をすることで,異業種・異分野などの“橋渡し”となる 合物を添加した系の溶液構造が,線形粘弾性,非線形粘 ことに努めてきました。 弾性にどう影響するのかを明らかにしました。特にポリ 以上のように,山崎律子氏は商品開発研究(応用研究) エチレングリコール鎖とゲスト化合物の“絡み合い”の 密度,及び体積をシミュレーション/熱力学的・分光学 に従事しながら, “基礎研究”を継続することで双方の 的測定の双方から見積もったうえで,この“絡み合い” 研究を深化させることに留意し,油化学分野の発展に寄 が力学的な大破壊後の緩和に影響することを明らかにし 与してきました。企業における研究リーダー職を務める た点は新規性が高いものです。 とともに,学会活動にも積極的に取組む姿勢は,これか らの女性科学者を代表するものであり,女性活躍推進の 2 香粧品開発研究(応用研究) あり方の 1 つともいえます。 上記知見を基に高分子・界面活性剤・ポリオールなど 従ってここに,山崎氏を日本油化学会女性科学者奨励 の多成分が混合する“複雑系”について,香粧品への応 賞に選定させて頂いた次第です。心よりお喜び申し上げ 用を目的とした製剤開発研究に従事してきました。特に ますとともに,今後も産学官の橋渡し役として,益々ご 洗浄料・スキンケア化粧品などへの応用をねらい,“複 活躍されることを期待致します。 雑系”のままのレオロジーの理解に注力した結果,香粧 品素材として汎用であるポリアクリル酸系ポリマーなど ― 5 ― (花王㈱研究開発部門 妻鳥 正樹)
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