日本油化学会女性科学者奨励賞 山崎律子氏

オレオサイエンス 第 15 巻第 6 号(2015)
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表 彰
第 6 回日本油化学会女性科学者奨励賞
山 崎 律 子 氏
(花王㈱研究開発部門 開発研究第 1 セクター スキンケア研究所)
山崎律子氏は,1993 年に早稲田大学大学院理工学研
の有機系高分子,及び合成ヘクトライトなどの無機系層
究科応用化学専攻修士課程を修了した後,同年花王株式
状 化 合 物 に つ い て, 特 定 の 組 成 条 件 で Shear
会社に入社。一貫して香粧品分野の開発研究に携わり,
Thickening/Thinning が起こることを明らかにし,新し
現在は同社スキンケア研究所上席主任研究員,グループ
い化粧品の製剤化に活かしました。
リーダーとして活躍しています。また日本油化学会での
活動を通して,モノづくりの礎となる基盤研究について
3 日本油化学会での活動
日本油化学会においても多くの活動をしています。
研鑽して,2004 年には東京工業大学にて博士号(工学)
を取得し,早稲田大学大学院先進理工学研究科非常勤講
2000 年には日本油化学会定款委員を,また 2001 年 1 月
師,及び東京工業大学高分子工学科・化学工学科非常勤
から 2008 年 3 月までの 7 年間はオレオサイエンス編集
講師として,企業におけるソフトマテリアル研究概要の
委員を務められ,更にその間の 2003 年には非イオン界
講義を行っています。
面活性剤水溶液のレオロジーに関する研究について,日
これまでの主な活動,及び業績は以下のとおりです。
本油化学会サマースクールで講演をしています。特にオ
レオサイエンス編集委員では,特集号企画・抄録担当な
1 ‌非イオン界面活性剤水溶液の溶液構造とレオロジー
に関する研究(基礎研究)
どに加え,インタビューコーナーも担当して,東京理科
大学薬学部の寺田弘先生,慶応大学ビジネススクールの
香粧品が取り扱うソフトマテリアルとして,高分子・
嶋口充輝先生,参議院議員の加納時男氏(いずれも,イ
界面活性剤・ポリオールなどの多成分が混合する“複雑
ンタビュー当時の役職)など,学術・産業・経済・政治
系”の溶液構造とそのレオロジーについての理解に注力
など様々な分野を牽引している先生方へのユニークなイ
してきました。具体的には,香粧品で汎用されているア
ンタビューを企画・実施しました。そういった情報発信
ルキル基修飾ポリエチレングリコール水溶液にゲスト化
をすることで,異業種・異分野などの“橋渡し”となる
合物を添加した系の溶液構造が,線形粘弾性,非線形粘
ことに努めてきました。
弾性にどう影響するのかを明らかにしました。特にポリ
以上のように,山崎律子氏は商品開発研究(応用研究)
エチレングリコール鎖とゲスト化合物の“絡み合い”の
密度,及び体積をシミュレーション/熱力学的・分光学
に従事しながら,
“基礎研究”を継続することで双方の
的測定の双方から見積もったうえで,この“絡み合い”
研究を深化させることに留意し,油化学分野の発展に寄
が力学的な大破壊後の緩和に影響することを明らかにし
与してきました。企業における研究リーダー職を務める
た点は新規性が高いものです。
とともに,学会活動にも積極的に取組む姿勢は,これか
らの女性科学者を代表するものであり,女性活躍推進の
2 香粧品開発研究(応用研究)
あり方の 1 つともいえます。
上記知見を基に高分子・界面活性剤・ポリオールなど
従ってここに,山崎氏を日本油化学会女性科学者奨励
の多成分が混合する“複雑系”について,香粧品への応
賞に選定させて頂いた次第です。心よりお喜び申し上げ
用を目的とした製剤開発研究に従事してきました。特に
ますとともに,今後も産学官の橋渡し役として,益々ご
洗浄料・スキンケア化粧品などへの応用をねらい,“複
活躍されることを期待致します。
雑系”のままのレオロジーの理解に注力した結果,香粧
品素材として汎用であるポリアクリル酸系ポリマーなど
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(花王㈱研究開発部門 妻鳥 正樹)